情勢の特徴 - 2022年9月後半
●「ドル建てでみた日本が縮んでいる。1ドル=140円換算なら2022年の名目国内総生産(GDP)は30年ぶりに4兆ドル(約560兆円)を下回り、4位のドイツとほぼ並ぶ見込み。ドル建ての日経平均株価は今年2割安に沈む。賃金も30年前に逆戻りし、日本の購買力や人材吸引力を低下させている。付加価値の高い産業を基盤に、賃金が上がり通貨も強い経済構造への転換が急務だ。」(『日本経済新聞』2022.09.19)
●「総務省が20日発表した8月の消費者物価指数(CPI、2020年=100)は変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が102.5となり、前年同月比2.8%上昇した。消費増税の影響を除くと1991年9月(2.8%)以来、30年11カ月ぶりの上昇率だった。5カ月連続で2%台となった。資源高や円安が、エネルギー関連、食料品の価格を押し上げた。」(『日本経済新聞』2022.09.20)
●「日銀は21~22日の金融政策決定会合で大規模な金融緩和を維持する方針を決めた。米連邦準備理事会(FRB)は21日、3会合連続となる0.75%の大幅利上げに踏み切った。日米の金融政策の姿勢の違いが改めて鮮明になり、日米の2年債利回りの差が15年ぶりの水準に拡大。24年ぶりの円買い介入につながる急速な円安を呼び込んだ。欧州中央銀行(ECB)に続き、22日にはスイス中銀もマイナス金利政策の解除を発表した。政策金利がマイナス圏に沈むのは世界の主要中銀で日本だけとなった。」(『日本経済新聞』2022.09.23)
●「国土交通省と総務省は、直轄事業で2021年度補正予算から設定している事業加速円滑化国債について、地方自治体が事業主体の補助事業でも設定可能との見解を初めて示した。複数年にわたる事業の契約・完成の前倒し、計画的な事業の執行、事故繰越の縮減などが活用の効果に見込まれ、それが適正な工期の設定や施工時期の平準化につながるとして、積極的な活用を呼び掛けている。22年度補正予算編成の動きを踏まえた対応とみられる。」(『建設通信新聞』2022.09.28)
●「国土交通省は、資機材価格の急激な高騰を踏まえ、直轄工事で適用しているスライド条項の手続き簡素化に向けた検討を始めた。対象工事費の1%を受注者が負担することとしている『1%条項』についても、在り方を今後検討する。」(『建設通信新聞』2022.09.29)
●「内閣官房は国土強靭化政策の根幹となる『基本計画』(2018年12月改定)の見直しに当たり、考慮が必要な項目再整理した。被災自治体を企業が援助するなど官民連携の強化を観点の一つに挙げた。水害と震災に同時に備えるといった『複眼的防災対応』も課題とする。基本計画の施策立案の前段となる脆弱(ぜいじゃく)性の予備評価も実施しており、23年1月をめどに結果を取りまとめる予定だ。同年度の基本計画改定を目指している。」(『建設工業新聞』2022.09.30)
●「総務省が19日の『敬老の日』を前にまとめた2021年の65歳以上の就業者数は、20年に比べて6万人増の909万人だった。18年連続で増加し、過去最多を更新した。就業率は25.1%で、65~69歳に限れば50.3%と初めて5割を超えた。定年延長の広がりで高齢者が以前に比べて働きやすくなっているとともに、人手不足の現状も映し出している。9月15日時点の人口推計によると、65歳以上の高齢者人口は前年比6万人増の3627万人と過去最多だった。総人口に占める割合は前年から0.3ポイント上昇の29.1%で過去最高となった。」(『日本経済新聞』2022.09.19)
●「厚生労働省が20日にまとめた2022年1-8月の労働災害発生状況(速報、9月7日時点)によると、建設業の死亡者数は、前年同期比(前年同時点比)8.4%増(13人増)の168人となった。また、建設業の休業4日以上の死傷者数は9809人で8.6%増(777人増)だった。死亡者数、死傷者数とも前年同期比を上回る状況が続いている。」(『建設通信新聞』2022.09.21)
●「日本建設業連合会(宮本洋一会長)は21日、2021年度の会員企業労働時間調査結果を発表した。日建連として独自に掲げた自主規制目標への適合状況に加え、改正労働基準法の上限規制に対し、調査時点の達成状況も新たに分析した。時間外が年720時間以内など、四つの条件を満たす必要がある上限規制(特例)への対応は、規制対象となる非管理職のうちの3割弱が未達成だった。日建連は、1年前倒しとなる23年度からの特例規制適合を目指しており、会員各社に一層の取り組み強化を呼び掛けている。」(『建設通信新聞』2022.09.22)
●「厚生労働省の『建設業における墜落・転落防止対策の充実強化に関する実務者会合』(座長・蟹澤宏剛芝浦工大教授)は26日、足場の安全点検に関する具体的措置を盛り込んだ最終報告書案を承認した。2015年の足場からの墜落・転落防止対策推進要綱策定、18年の実務者会合初開催からあしかけ7年、足場の安全点検に関する具体的措置に関して最終報告書決定までこぎつけた。厚労省は今後、関係する省令改正を行う。」(『建設通信新聞』2022.09.27)
●「事業主であり労働者を雇用せず自ら技能労働を行う『一人親方』と、家族従事者などを抱える『中小事業主等』を加えた、『一人親方等』の2021年死亡災害の45%が70歳以上であることが分かった。日本建設業連合会が26日に開いた厚生労働省の『個人事業主等に対する安全衛生対策のあり方に関する検討会』で提起した資料で浮き彫りになったもので、業界団体ヒアリングを行った同日の会合には、日建連のほか全国建設業協会、建設産業専門団体連合会、住宅生産団体連合会などが参加した。日建連は厚労省が公表した、2021年一人親方等の死亡災害発生状況概要を基礎に分析。土木・建築、建築工事の中身、起因物別、年齢別などで分析結果を示した。一人親方等の21年死亡者94人のうち、70歳以上は45%、60歳以上では全体の66%を占めた。高齢者の死亡災害抑止対応が今後の鍵であることを改めて示した格好だ。」(『建設通信新聞』2022.09.27)
●「日本建設業連合会が一部大手企業を対象にした『2022年4月度労務賃金アンケート(一人親方・個人事業主)調査』で、一人親方等の方が雇用された一般労働者よりも、日当・年収平均で高く、就労日数・労働時間は短いことが浮き彫りになった。また、ある建設現場で作業する一人親方等は技能労働者数の8%程度であることも示した。…26日に開いた厚労省の『個人事業主等に対する安全衛生対策のあり方に関する検討会』『座長・土橋律東大大学院教授』で、日建連安全委員会の本多敦郎安全対策部会長が説明した。具体的には、工事代金48億円、延べ床面積1万平方メートル、工期1年8カ月の医療施設増設工事に関与した1次から4次までの会社数、技能者総実数、そのうちの一人親方総実数を示した。技能者総数は2752人に対し、一人親方は218人だった。また、日建連の本多部会長は自身が所属する企業(鹿島)で行った、2022年4月度労務賃金調査結果についても説明した。対象技能労働者数1万2000人に対し、一人親方と個人事業主は1500人程度だった。その上で、一人親方等と一般労働者の年収・日当平均比較、労働時間・就労日数を比較。その結果、年収・日当、労働時間・就労日数ともに一人親方等の方が収入が高く労働時間・日数も短かった。」(『建設通信新聞』2022.09.28)
●「全国建設業協会(奥村太加典会長)は、働き方改革の推進に向けた取り組み状況などに関するアンケートの結果をまとめた。全建が2021年度にスタートさせた『目指せ週休2日+360時間運動』は、検討中を含めて半数以上が取り組んでおり、着々と結実してきた。全建など建設業4団体と国土交通省が申し合わせた技能労働者の3%賃上げ目標については、8割弱が前向きな姿勢を示し、企業側への周知が進んでいることが分かった。他方、4週8休の取り組みは徐々に進展しているものの、現場レベルではいまだ2割程度にとどまった。建設キャリアアップシステム(CCUS)に関しては、新たな質問項目を加えて深掘りした結果、技能者の処遇改善や担い手確保といった本来の目的を登録理由に挙げた企業が少数であることが判明した。」(『建設通信新聞』2022.09.29)
●「日本トンネル専門工事業協会(野﨑正和会長)は14日、東京都千代田区の学士会館で秋季セミナーを開いた。野﨑会長は働き方改革に触れ、『現在のトンネル工事の就労時間は1日10時間で1カ月の稼働日数が23日であり、この歩掛かりでは改正労働基準法が施行になる2024年からは法律違反になる。積算基準から変えてもらわなければ働き方改革も、担い手の確保・育成もできない』と歩掛かりの変更を訴えた。また、安全に関して『トンネルの切羽での肌落ち災害がクローズアップされているが、われわれは十数年前からこの問題について言い続けてきて16年に肌落ち災害防止のガイドラインをつくってもらった。ガイドラインでは鏡吹き付けの厚さが決められているが、認めてくれない発注者がいる』と指摘し、『事業者責任というが元から変えてくれなければわれわれだけではできない』と強調した。さらに『現状は切羽に立ち入らないと仕事ができない。切羽に入らなくていいように機械化を進めてほしい。最近はゼネコンで取り組んでいるが、企業間で技術開発競争するのではなく、業界全体で取り組んでほしい』ということと、『海外では無線発破を使っている。国内でも水中発破は瀬戸大橋の工事など数十年前から使われており、トンネルでも使えるように開発してほしい』ということを行政、日建連との意見交換会で話していることも説明した。その上で、『当会の会員は切羽の肌落ち災害に危険感を持っており、自社だけの対策では限られている。災害防止は発注者、元請け、下請けが一丸となって取り組まなければ達成できない』と指摘。肌落ち災害などが起きるのは仕方がないというようなトンネル文化を『後輩や担い手のためにも使命感を持って改革していく』との決意を示した。」(『建設通信新聞』2022.09.16)
●「大和ハウス工業は2000億円を投じて2030年度に太陽光などの発電能力を現在の5倍の250万キロワットに高める。工場などの屋根にパネルを設置し企業に電気を売る。日本は山間部など太陽光設備の設置場所が限られた地域も多い。東京都は新築住宅にパネルの設置を義務化する方針で、屋根を再生可能エネルギーの供給地として開拓する動きが広がる。自社で建てた工場や商業施設などの屋根を借りて太陽光パネルを設置する。賃料を建物の所有者らに支払い、発電した電気を所有者や入居する企業などに販売する。大和ハウスの再エネは大半が太陽光発電で現在の発電能力は約50万キロワットある。これを5倍にする。沖縄電力(約215万キロワット)を上回る発電能力になる。年1300棟前後の工場やビルを建てており建物の建設からパネルの設置、電力の販売まで一貫して手掛けることを強調し設置を増やす。」(『日本経済新聞』2022.09.18)
●「建設物価調査会(北橋建治理事長)は2022年度上半期の鋼材価格動向をまとめた。最新版の『建設物価調査リポート』によると、鋼材価格は大半の品種で先行きの気配が『横ばい』となっている。価格急騰の要因となった鉄鉱石や原料炭は足元で下落に転じ、鉄スクラップもロシアによるウクライナ侵攻以前の水準を下回るようになった。同リポートでは『全般的に上昇基調が一服し天井感が台頭している』と現状を分析している。」(『建設工業新聞』2022.09.20)
●「全国建設業協会(奥村太加典会長)は、10月に全国9地区で開く地域懇談会・ブロック会議を前に、47都道府県建設業協会と会員1341社から回答を得た『品確法運用指針の運用状況等に関するアンケート』結果をまとめた。会員企業分の集計によると、ほぼすべての企業が資材価格高騰の影響を受け、利益面の悪化など経営への打撃にもつながっている。高騰分が予定価格に事前に反映されているか聞いたところ、国土交通省は約5割、都道府県は6割超、市区町村は7割半ばで『反映していない』との声が寄せられた。政府調達で2022年度から始まった賃上げ実施企業の総合評価方式での加点措置を巡っては、適用を受けるべく、予定も含めて約7割が賃上げを表明すると答えた。」(『建設通信新聞』2022.09.27)
●「不動産協会(不動協)の菰田正信理事長が29日に東京都内で開いた理事会後に会見し、建設資材価格の高騰に対応した請負金額の変更は難しいとの見解を示した。民間工事は従来の商慣習で総価一式の契約形態が前提になっていることを改めて説明。『(工事価格の設定で)資材価格などを細かく仕分けて積み上げているわけではない。どうやって物価スライドをするのか難しい状況』と述べ、建設業界が求めているスライド条項の適用には消極的な姿勢を見せた。」(『建設工業新聞』2022.09.30)
●「国土交通省が20日発表した2022年の基準地価で、住宅地が上昇した都道府県は14と前年から倍増した。東京近郊のほか、福岡市や札幌市など再開発が進む地方の中核都市とその周辺の伸びが目立つ。好立地や好環境の住宅地に人気が集まる一方で、東北や四国といった地方は下落が続き『二極化』も進む。…31年ぶりの全国平均の住宅地上昇は、好立地の都市近郊がけん引役となった。神奈川県では鎌倉市(1.3%上昇)のほか、茅ケ崎市も2.5%上がり、湘南エリアでプラスが目立つ。埼玉県でも東京都心へのアクセスがいい川口市(2.4%上昇)などが伸びた。再開発が進む地方の中核都市の周辺でも上昇機運は高まる。全国の住宅地の上昇率トップ10地点はすべて、北海道北広島市や江別市といった札幌市に隣接する市だった。福岡県でも博多駅を中心とした大型再開発が周辺都市に好影響を及ぼしている。佐賀県は住宅地が0.1%上昇と、1997年以来プラスに転じた。」(『日本経済新聞』2022.09.21)
●「三菱重工業は、安全性を高めた新型原子炉を関西電力など電力会社4社と共同開発する。日本政府が次世代型原子力発電所の開発・建設を検討するなか、既存の軽水炉をベースにした『革新軽水炉』と呼ばれる新型原子炉を開発し、2030年代半ばの実用化を目指す。原発の新増設を想定しない東日本大震災以降の方針を転換した日本のエネルギー政策が具体化に向けて動き出す。」(『日本経済新聞』2022.09.29)
●「東京都心で既存マンションの賃貸や売買の需要が鈍ってきた。東京カンテイ(東京・品川)がまとめた8月の分譲マンション賃料は、東京23区が1平方メートル当たり3813円と前月に比べ10円(0.3%)下落。4ヵ月連続で前月を下回った。物価の先高観などによる景況感の悪化観測から、賃料水準が高い物件のオーナーを中心に賃料を下げる動きが目立つ。」(『日本経済新聞』2022.09.30)