情勢の特徴 - 2022年10月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●日銀が13日発表した9月の国内企業物価指数(速報値、2020年平均=100)は前年同月比9.7%上昇し、過去最高の116.3となった。前年同月比の上昇は19カ月連続。ロシアのウクライナ侵攻に伴うエネルギーや原材料の価格高騰に加え、歴史的水準で推移する円安も影響し、幅広い品目で物価が押し上げられた。企業物価指数は、企業間で取引されるモノの価格を示す。日銀によると、515品目のうち435品目が上昇した。(『しんぶん赤旗』2022.10.14より抜粋。)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は、公共工事入札契約適正化法(入契法)に基づき、発注者による入札・契約の適正化に関する取り組みやその実施状況を確認する入契調査を始めた。資材価格の高騰を踏まえ、今回は予定価格の積算に使う資材単価の設定や更新の状況などを詳しく調べる。建設発生土の運搬・処分の費用負担が適切に実施されているかも確認する。11月15日まで回答を集め、2023年2月に結果を公表する。調査は入契法の適正化指針に基づき、公共工事の発注者の取り組みや講じている措置の実態を把握するため、02年度から実施している。主な調査項目は、一般競争入札・総合評価方式の導入、低入札価格調査制度・最低制限価格制度の導入、低入制度の調査基準価格の公表時期、請負代金内訳書での法定福利費の明示、施工時期の平準化の取り組みなど。9月30日に財務省、総務省との連名で、各省庁19団体、独立行政法人など特殊法人121団体、47都道府県、20政令市、1721市区町村に調査票を送付した。今回は新たに、予定価格の積算で使う資材単価の設定方法や更新の状況を確認する。資材単価の更新状況に関しては、国交省は都道府県を対象とした調査を既に実施したが、今回の調査で市町村の取り組み状況も明らかとなる。…建設発生土への対応も調べる。5月に改正された適正化指針で、運搬や処分の費用を予定価格に反映することや、設計図書で搬出先の情報を示すことが定められたことから、それらが適切に実施されているかを確認する。」(『建設通信新聞』2022.10.03)
●「国土交通省はインフラ整備の生産性向上や品質確保に向け、直轄の工事や業務の関連データを取り扱う際の全体像をまとめた。現状ではプロジェクト単位でプロセス間のデータを一元管理したり、工事単位で受発注者間のデータ共有を効率化したりするシステムを個々に構築している。これらのシステムを相互連携させる在り方を検討し、最適なデータ活用につなげる。今後、個別事業をモデルケースにシステム運用の現状と課題を分析する方針だ。11日に開いた有識者会議『発注者責任を果たすための今後の建設生産・管理システムのあり方に関する懇談会』で国交省が委員らに提示した。同懇談会で議論を積み上げてきた『データマネジメント』の目指す姿をより明確化。委員らの意見を踏まえ具体的な取り組みに落とし込み、全体像を随時ブラッシュアップしていく道筋を描く。」(『建設工業新聞』2022.10.12)
●「河野太郎デジタル相は13日の記者会見で、現行の健康保険証を2024年秋をメドに廃止すると発表した。マイナンバーカードと一体にした『マイナ保険証』に切り替える。医療分野のデジタル化を急ぎ、マイナンバー制度の利便性を高める。24年度末としてきたマイナンバーカードと運転免許証の一体化の時期についても前倒しする考えを示した。…首相はマイナ保険証について『細部にわたりきめ細かく環境を整備する必要がある』と指摘した。」(『日本経済新聞』2022.10.13)
●「国土交通省は12日、2022年度の建設投資見通しを公表した。物価変動を含む名目値は前年度見込み額(66兆6000億円)との比較で0.6%増の66兆9900億円と推計し、単純比較が可能な直近8年間で最高水準になると予測する。民間非住宅建築投資が大きく伸び、それが全体の増加に寄与すると見ている。物価変動を除く実質値は0.6%増の59兆2570億円とし、名目値と実質値のどちらも伸びると見込んだ。名目値を見ると、政府投資は3.7%減の22兆5300億円、民間投資は2.9%増の44兆4600億円と予測した。建設工事受注動態統計調査の結果を見ると、22年4-7月の4カ月間で、公共機関からの受注工事はおおむねマイナス、民間等からの受注工事はおおむねプラスの傾向となっており、この動きと整合的な見通しとなった。民間投資の内訳は、民間住宅建築投資が0.9%減の15兆9700億円、民間非住宅建設投資が7.2%増の19兆0200億円、民間建築補修(改装・改修)投資が1.2%増の9兆4700億円。民間非住宅建設投資の区分別は、建築が10.1%増の11兆9100億円、土木が2.7%増の7兆1100億円と推計した。」(『建設通信新聞』2022.10.13)
●「国土交通省は、『適切な施工確保のための技術者制度検討会(第2期)』が5月に公表した技術者制度の見直し方針のうち、建設業法の政令で対応する部分の改正案をまとめた。主任技術者または監理技術者の専任不要上限額を4000万円(建築一式工事8000万円)に見直すなど金額要件の引き上げは、2023年1月1日に施行する。12日に政令改正案を公表し、一般からの意見募集を始めた。11月10日まで受け付けている。改正内容は技術者制度の見直し方針から変更なし。22年内に公布する。主任技術者または監理技術者の専任不要上限額は、近年の工事費上昇を踏まえ、現行の3500万円(建築一式工事7000万円)から4000万円(同8000万円)に見直す。これに伴い、下請負人による主任技術者の配置を不要にできる特定専門工事の下請け代金額上限を現行の3500万円から4000万円に引き上げる。特定建設業の許可、監理技術者の配置、施工体制台帳の作成が必要な下請け代金額は、現行の4000万円(同6000万円)から4500万円(同7000万円)に変更する。これらは23年1月1日に施行する。技術検定も見直す。今回の政令改正では、新たな受験資格を省令で定めることを明記する。1級の第1次検定は19歳以上、第2次検定は1級技士補として一定規模以上の工事で3年の実務経験とするなど、求める実務経験年数を学歴ごとに規定する方式から、第1次検定は一律の年齢、第2次検定は実務経験の内容によって受検できる仕組みに改める考え。受検資格の見直しに伴い、専門性の高い学校課程の履修者を対象とした第1次検定の一部免除制度を政令改正で創設する。国交大臣が定める学科を修めて卒業した者か、その者と同等以上の知識を持つと認定した者は、申請で一部科目の受検を免除できることとする。この詳細は告示で規定する。」(『建設通信新聞』2022.10.13)

労働・福祉

●「港湾工事で建設キャリアアップシステム(CCUS)の導入や活用が広がっている。日本埋立浚渫協会(埋浚協、清水琢三会長)によると、協力会社で働く技術者や技能者のCCUSカード所持率は前年度と比べ2割増えて約8割となった。カードを所持する技能者のタッチ率も5割増の9割と大幅に向上している。…カード所持率は、作業船従事者や潜水士も含む技能者全体(921人)で前年度を26ポイント上回る78%、協力会社の技術者が22ポイント上回る86%に上昇した。技能者全体のカードタッチ率も『現場に行くたび日々タッチしている』と『元請にカードを預けタッチは元請職員に任せている』が合わせて44ポイント上回る90%に上る。カードリーダーを2個置く現場も12ポイント上回る20%の97件と増えた。」(『建設工業新聞』2022.10.05)
●「建設業で発生する労働災害の原因として最も多いのが、足場などからの墜落・転落災害だ。厚生労働省が設置した実務者会議は9月、墜落・転落防止対策の充実強化に向けた提言案をまとめた。足場の安全点検に関するルールを固めるとともに、建設現場では本足場の使用を原則化すると決めた。建設業団体が反対していた『手すり先行工法』の義務化は提言案に盛り込まれず、『見送り』という形で事実上決着した。建設業では労災が大きく減少しているが、今なお年間約300人が死亡し、死傷者数(休業4日以上)は1万5000人に上る。墜落・転落災害は死亡者数の4割程度、死傷者数の3割以上を占めている。…厚労省が設置した『建設業における墜落・転落防止対策の充実強化に関する実務者会合』(座長・蟹澤宏剛芝浦工業大学建築学部建築学科教授)は、墜落と転落災害の発生実態を踏まえ、実効性のある対策を検討してきた。成果を報告書としてまとめ、同省に提言する予定。報告事案を9月26日に東京都内で開いた会合で大筋了承した。報告書案によると、厚労省が労働安全衛生規則を改正し、安全性の高い本足場の使用を原則化する。設置スペースが無いなど一定の条件下では、一側足場の使用を例外的に認める。…足場の安全点検も強化。専門知識が求められる足場の組み立て後の点検は、足場の構造に関する研修を受講するなど、一定の能力を持つ者が実施するとしているが、法令で規定はしていない。厚労省が今後3年程度をかけて、実施者の能力と労災や法令違反発生の因果関係などを調査した上で、要件の検討を深める。…建設業で世界一労働災害が少ないとされる英国では、技能者が安全衛生に関する基本的な知識を習得し、それを証明するカードがなければ現場に入れないという。蟹澤氏はそれを国内で実施する手段として、建設キャリアアップシステム(CCUS)に着目。身元の情報、安全衛生教育や訓練の受講状況などをカードに登録するなど『CCUSを安全衛生の面でも活用してもらえると良い方向に行くのではないか』と示唆した。」(『建設工業新聞』2022.10.06)
●「外国人留学生の日本企業離れが進んでいる。就職情報会社ディスコ(東京)の7月の調査で、来日中の留学生のうち日系企業への就職を志望するのは42%にとどまり、初めて外資系志望者を下回った。新型コロナウイルス禍で学生時代、アルバイトなどで会話する機会が減ったこともあり、求められる高度な日本語力に不安を覚える人が多い。…日本での就職を望むのは約9割に上ったものの、『日本にある日系企業』を志望するのは42%で前年から9ポイント減った。一方で『日本にある外資系企業』は46%と前年より11ポイント増えた。外資系が日系を上回ったのは、この設問を設けた17年調査以来初めてだ。…日本学生支援機構によると、国内の留学生は21年5月時点で約24万2千人。同機構の21年度のアンケートでは58%が日本での就職を希望していた。しかし20年度の卒業生で進路の判明した約6万6千人のうち、国内で就職したのは31%どまりだ。」(『日本経済新聞』2022.10.07)
●「国土交通省を含む行政関係機関や建設業などの関係団体で組織する建設キャリアアップシステム処遇改善推進協議会(会長・蟹澤宏剛芝浦工大建築学部教授)は6日、東京都千代田区で第2回会合を開き、中長期的な重点課題と取り組みの方向性を共有した。技能者の処遇改善に向けて建設キャリアアップシステム(CCUS)と能力評価制度の連動を進めるとともに、一人親方の実態把握を強化する。長橋和久国交省不動産・建設経済局長は『登録した技能者に現場でシステムを利用してもらうため、元請け企業による環境整備強化の前提として、地域の建設業にメリットある制度であることをより明確にしていく取り組みを強化したい』と強調。技能者の処遇改善を例に挙げ、『今月スタートした公共事業労務費調査で、技能・経験に応じた賃金の実勢をより具体的に把達し、レベル別に賃金目安を示すなど、労務費と能力評価の連携について検討を進めたい』と話した。協議会の事務局を担当する国交省が示した重点課題は、▽CCUSの推進▽建設業の一人親方対策の推進▽建設業退職金共済制度・CCUS連携の利用促進――の三つ。」(『建設通信新聞』2022.10.07)
●「円安が外国人労働者の獲得に影を落としている。米ドル換算の賃金は過去10年で4割減り、アジア新興国との差は急速に縮まっている。建設や介護など人手が必要な業種で『日本離れ』が始まった。労働力確保には魅力ある就業環境の整備が急務だ。ベトナムで現地名門大と日本での就職を希望する建設技術者の育成講座を手掛けるNPO(非営利法人)、MP研究会(東京・千代田)では2019年に約50人の募集に5倍程度の応募があった。今秋予定する同規模の募集は定員割れの可能性があるという。大きな理由は円安だ。直近2年、円はベトナム・ドンに対し20%以上下落した。日本の外国人の建設技術者の賃金はここ数年、月20万円程度で推移する。この間、ベトナムの賃金は10~20%上昇し、比較的高度な建設人材は月約2500万ドン(約15万円)に高まった。MP研究会のペ・ミン・ニャット氏は『賃金格差の縮小で日本のステータスが低下している』と話す。…ドル建てでみた日本の賃金は低下が著しい。今年の円の急落を20~21年度の平均賃金に反映すると12年度比4割低下した。日本の非製造業の平均賃金を100とするとハノイやマニラは20~30でまだ差は大きい。ただ、建設技術者や看護人材の水準は50~70程度で差は縮まっている。人材業界では『1人当たり国内総生産(GDP)が7千ドルを超えると日本への労働力の送り出しが減り、1万ドルを超えると受け入れ国に変わる』といわれる。…円安で人手不足感が強まるリスクが大きく、全国鉄筋工事業協会(東京・千代田)の岩田正吾会長は『賃金改善を進めなければ建設現場は止まりかねない』と話す。」(『日本経済新聞』2022.10.09)
●「国土交通省は、経営事項審査の審査項目に新設した『建設キャリアアップシステム(CCUS)の導入状況』について、CCUSに登録している企業の対応見通しを調べるアンケートの結果をまとめた。民間を含む全建設工事で実施すると回答したのは、ゼネコンと設備・専門工事業のどちらも2割だった。活用の検討を含めると、ゼネコンの9割、設備・専門工事業者の8割が対応する。国交省は新設項目の適用開始により、建設現場のカードリーダー設置が一定程度進むとみている。…回答をみると、ゼネコンは『全建設工事で実施する』が20.5%、『全公共工事で実施する』が9.8%、『活用を検討する』が60.1%で、この三つを合わせた割合は90.4%を占めた。設備・専門工事業者も似た傾向となり、『全建設工事で実施する』が20.5%、『全公共工事で実施する』が5.7%、『活用を検討する』が56.3%。三つを合わせた割合は82.5%だった。」(『建設通信新聞』2022.10.11)

建設産業・経営

●「建設経済研究所と経済調査会が7日発表した建設投資予測の最新推計によると、2022年度の投資総額は物価変動の影響を取り除いた実質値で前年度比2.3%減の52兆8378億円。7月の前回調査からほぼ据え置きとなった。民間住宅投資は3.7%減の13兆4693億円、民間非住宅建設投資は1.3%増の14兆5016億円と予測。個人の住宅投資に懸念があるものの、非住宅は比較的好調で今後も底堅いとみる。」(『建設工業新聞』2022.10.11)
●「国土交通省は、建設業退職金共済制度の証紙貼付方式によって実施した工事で、地方自治体が発注者として履行確認をどの程度実施しているかを調べるアンケートを始めた。掛金充当が徹底されていないとの指摘がある証紙貼付方式について、発注者による履行確認の徹底を求める通知を発出してから1年半が経過したことを踏まえ、実施状況を把握する。31日を期限とし、回答は適正な履行確保に向けた施策の検討などにつなげる。…電子申請方式の開始に伴い、国交省は発注者による履行確認方法を示す通知を21年3月に発出した。例えば、証紙貼付方式で発注者は、工事契約締結後1カ月以内に、提出用台紙に貼り付けた掛金収納書を元請け企業に提出させ、証紙購入の算定根拠を確認する。工事完成時には掛金充当実績総括表の提出を求め、関係事務の履行状況をチェックする。著しく不適切な処理を行っていることが確認された場合、発注者は元請け企業を指導することになっている。」(『建設通信新聞』2022.10.12)
●「建設産業専門団体連合会(岩田正吾会長)の正会員34団体のうち、全国鉄筋工事業協会(同会長)など10団体は、建設キャリアアップシステムと連動した能力評価制度のレベル別に、技能者8職種の最低年収の目安を定めた。経験年数や資格に応じた年収アップの姿を団体として明示したことになる。担い手確保の観点から、日本人の若者を呼び込むために最低限必要な年収を考慮して設定した。目安の実現に向け、10団体は請負価格への反映に理解を求める活動を元請け企業に対して今後展開する。」(『建設通信新聞』2022.10.14)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「今年の通常国会で成立した改正建築物省エネ法などに基づき、建築物の容積率や建ぺい率の緩和が可能になる省エネ化工事の具体例が明らかになった。緩和対象となるのは、日光を遮るためのひさしの設置工事や断熱性を高める外壁工事、再エネ設備を設置する外壁工事。政府が9月30日に公表した同法などに基づく政省令の改正案に盛り込んだ。年間1000戸以上の分譲マンションを供給する事業者に『住宅トップランナー制度』への対応を義務付けることも定めた。」(『建設工業新聞』2022.10.04)

その他