情勢の特徴 - 2022年11月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は4日、保有資産の金融マーケットでの運用が7~9月期は1兆7220億円の赤字だったと発表した。運用成績の赤字は1~3月期から3四半期連続になった。3四半期連続の赤字はリーマン危機が起きた2008年7~9月期から09年1~3月期までの3四半期以来、約13年ぶりになる。」(『日本経済新聞』2022.11.05)
●「建設投資時期に関する企業のマインドが変化し、中止や延期を含めて事業年度の当初計画より後ろ倒しにする意識が強まっていることが、建設物価調査会が10日に発表した9月の設備投資マインド調査結果から分かった。円安や原材料価格高騰などに伴う事業コストの上昇が影響していると考えられる。2022年度内はこの状況が変わらないと建設物価調査会はみている。建設投資時期DI(建設投資時期について『かなり前倒し』『前倒し』と答えた企業の割合から『かなり後ろ倒し・中止・延期』『後ろ倒し』と答えた企業の割合を差し引いた値)は、現況(9月1日時点)が全産業でマイナス13.2となり、後ろ倒しが優勢だった。製造業(マイナス20.5)と非製造業(マイナス9.7)のどちらも、投資時期を後ろ倒しにする企業の割合が多い。6月1日時点を調べた前回調査では、製造業、非製造業ともに建設投資の実施予定時期を『計画どおり』と回答した企業が最も多かったため、前回調査後に企業のマインドが大きく変化したことが読み取れる。…一方で、建設投資の意欲は低くない。建設投資意欲判断DI(建設投資意欲について『前向き』『やや前向き』と答えた企業の割合から『後ろ向き』『やや後ろ向き』と答えた企業の割合を差し引いた値)は、現況が全産業でプラス1.2となり、製造業(プラス0.6)、非製造業(プラス1.5)ともに前向きが優勢だった。第3四半期、第4四半期もプラス域となっている。」(『建設通信新聞』2022.11.11)
●「内閣府が15日発表した7~9月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質の季節調整値で前期比0.3%減、年率換算で1.2%減だった。マイナス成長は4四半期ぶり。GDPの過半を占める個人消費は新型コロナウイルスの第7波などの影響で伸び悩み、前期比0.3%増にとどまった。」(『日本経済新聞』2022.11.15)

行政・公共事業・民営化

●「低入札価格調査制度と最低制限価格制度の算定式を最新の中央公共工事契約制度運用連絡協議会(中央公契連)モデルに基づき設定する市区町村が全国で約半数に達することが、国土交通省の調査で分かった。3月のモデル改定を踏まえ、町村レベルでも比較的速やかに最新モデルへの移行が進展している。国交省は各自治体の対応状況を近隣と比較できる最新版の『見える化』資料を作成。これを活用しダンピング対策のさらなる推進を働き掛ける。」(『建設工業新聞』2022.11.02)
●「国の予算が過大な状況に陥っている。2020年度と21年度は翌年度に持ち越すか、使わなかった使い残しの経費が全体の2割近くとなり、東日本大震災への対応で予算が増えた時期の2倍に迫る。規模ありきの経済対策には緊急性の乏しい事業が含まれ、予算がつけば既得権を生む。経済対策として29.1兆円となる22年度第2次補正予算案も使い方の検証が欠かせない。」(『日本経済新聞』2022.11.03)
●「国土交通省は、地方自治体向けとなるインフラメンテナンス業務の包括的民間委託導入手引きを2022年度内に策定する。多数のインフラを管理する自治体が財政と体制の両面で課題を抱えていることから、維持管理を効率化する契約方法の一つとして導入を促進するのが狙い。」(『建設通信新聞』2022.11.04)
●「厚生労働省が8日発表した9月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、1人当たりの賃金は物価変動を考慮した実質で前年同月比1.3%減少した。6カ月連続のマイナスとなった。資源高や円安で加速する物価上昇に賃金の伸びが追いついていない。この状況が長引けば家計の購買力が下がり。景気回復の足かせになる。」(『日本経済新聞』2022.11.08)

労働・福祉

●「加藤勝信厚生労働相は14日、日本経済新聞の取材に応じ、パートら短時間労働者が厚生年金と健康保険に入る要件の緩和について『企業規模要件を撤廃する方向で議論していくことが必要だ』と述べた。医療保険制度改革をめぐっては、75歳以上の後期高齢者の保険料の伸びと現役世代からの支援金の伸びを同水準にしていく方向で検討する考えを示した。」(『日本経済新聞』2022.11.15)

建設産業・経営

●「国土交通省は、元請け・下請け間の取引状況について、元請け業者の支店長や現場所長ら現場レベルの責任者を対象に実施したモニタリング調査の結果をまとめた。下請け業者に標準見積書の活用を働き掛けていないのは約5割を占め、依然として本社と現場の間で認識が乖離(かいり)している状況にある。国交省は調査対象企業に対し、適正な手順を経た契約の締結や施工体制の確立を徹底するよう要請している。2021年度に元請け業者として受注・施工した公共・民間工事の取引状況を5-8月にヒアリングした。調査対象の元請け業者は完成工事高の上位を中心に選定している。調査対象者数などは公表していない。元・下間における取引状況の結果を見ると、下請け業者に標準見積書の活用を働き掛けていなかったのは約5割。建設会社の本社を調査する21年度の下請取引等実態調査では、約7割の元請け業者が標準見積書の交付を下請け業者に働き掛けているとしており、21年度モニタリング調査の結果と同様に本社と現場の回答に開きがある。契約の内訳明細書に法定福利費が明示されていなかったのは約2割。法定福利費が明示されていた契約の5割程度は、一式計上されているなど内訳の算出根拠が不明なものだった。契約金額に占める法定福利費の割合が著しく低い事例は約2割あった。端数処理のレベルを超えた大幅な一括値引きが確認されたのは約1割。約1割の工事では、施工体制台帳、施行体系図、作業員名簿に記載されている内容の真正性を十分に確認していなかった。中央建設業審議会が20年7月に作成した『工期に関する基準』について、『知らない』『聞いたことはあるが、内容は分からない』とした回答は、合わせて約3割あった。元請け業者の現場で基準が十分に認知されていない状況にある。」(『建設通信新聞』2022.11.08)
●「建設資材であるセメントの市中価格が5カ月ぶりに上がり、最高値を更新した。東京地区では指標品が10月に比べて8%高い。燃料の石炭価格上昇による採算悪化を背景に、セメント各社が打ち出した値上げがほぼ満額浸透した。買い手の生コンクリートメーカーは転嫁値上げに動いている。様々な建材の価格が上がる中、建築物のコスト負担は一段と増す。」(『日本経済新聞』2022.11.11)
●「公共工事の予定価格の積算に使用する資材単価を毎月更新する都道府県が増えている。国土交通省の調査結果によると、最新の物価資料掲載価格を引用して全資材単価を毎月更新している都道府県数が、半年近くでほぼ倍増した。適正な請負代金を設定する観点から市場の実態を踏まえて資材単価を毎月更新するよう国交省が働き掛けたことや、5月に実施した前回調査の結果から資材単価設定状況を都道府県ごとに見える化したことなどが、都道府県の取り組み改善に影響したとみられる。」(『建設通信新聞』2022.11.11)
●「国土交通省は、建設工事での安全衛生経費の適切な支払いに向けた実効性ある施策を具体化するため、学識経験者や建設業関係団体などで構成するワーキンググループ(WG)を立ち上げた。住宅など5工種で先行的に、『安全衛生対策項目の確認表』と安全衛生経費を内訳明示するための『標準見積書』を作成する。5工種の確認表を2022年度内にまとめた後、23年度から標準見積書の作成に移る。」(『建設通信新聞』2022.11.14)
●「主要ゼネコン26社の2022年4~9月期決算が11日に出そろった。連結売上高は手持ち工事の順調な消化などで前年同期に比べて増収が目立った。その一方で、資材価格上昇の影響が顕著に表れ、工事原価の増加などで利益率が低下。本業のもうけを示す営業利益は15社が減益となった。通期業績予想を修正した企業も多く、生産性向上や原価低減などの取り組みが一層求められそうだ。」(『建設工業新聞』2022.11.14)
●「上場ゼネコン大手4社(鹿島、大林組、清水建設、大成建設)の2022年4~9月期連結決算は、全社が増収となった。業績の先行指標となる単体受注高は、4~9月期として過去最高となった大成建設や大型案件が寄与した鹿島が大きく伸ばした。需要は底堅く、新規受注案件では競争環境が改善してきているとの見方が強い。働き方改革も求められる中で、施工体制の兼ね合いを見ながら適正な工期・価格で受注を狙う動きが進みそうだ。」(『建設工業新聞』2022.11.14)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「東京都は5月公布の『宅地造成及び特定盛土等規制法(盛土規制法)』に基づき、規制区域を指定するため年度内に基礎調査を発注する。2022、23年度に調査し、結果を踏まえて24年度内に対象区域を決める。規制区域内の盛り土は許可制になるため、行政が関わる案件の増加が見込まれる。庁内だけでなく、規制区域を含む自治体などとの連携をさらに強める構えだ。」(『建設工業新聞』2022.11.02)
●「オフィス賃料の下落が加速している。日本経済新聞社がまとめたオフィスビル賃貸料調査によると、2022年下期の東京の賃料水準は東日本大震災以来11年ぶりの下落幅となった。在宅勤務の定着に伴う拠点集約が続くほか、足元も世界のインフレに伴う景気不安から企業がオフィス投資に慎重だ。23年もビルの大量供給を控え、賃料の下落圧力はおさまらない。調査はオフィス仲介大手4社から賃料を聞き取り、1985年2月を100として指数化した。東京地区の22年下期(9月時点)は、オフィス市場の大半を占める既存ビル(築後1年以上のビル)の指数が149.12と21年下期より5.65ポイント低下した。4.56ポイント低下した21年から下げ幅を広げ、東日本大震災の影響があった11年下期以来11年ぶりの下げ幅を記録した。下期として2年連続で下落するのも、リーマン・ショックや震災で下落していた09~11年の3年連続以来になる。下期の水準としては18年以来4年ぶりの低さだ。」(『日本経済新聞』2022.11.03)
●「不動産情報サービスのアットホーム㈱(東京都大田区)は2022年9月分の『首都圏における「新築戸建」の価格動向』をこのほど公表した。対象エリアは東京、神奈川、埼玉、千葉の1都3県となっている。分析はアットホームラボが実施した。首都圏8エリアの平均価格は11カ月連続して全エリアで前年同月超えと上昇傾向が継続している。中でも東京23区の前年同月比は14%増と大幅な上昇をみせており、前年差額も8000万円を超えた。」(『日本住宅新聞』2022.11.05)

その他