情勢の特徴 - 2022年11月後半
●「総務省が18日発表した10月の消費者物価指数(CPI、2020年=100)は変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が103.4となり、前年同月比で3.6%上昇した。伸び率は消費増税時も上回り、1982年2月(3.6%)以来40年8カ月ぶりの幅となった。円安や資源高の影響で、食料品やエネルギーなど生活に身近な品目の値上がりが続く。」(『日本経済新聞』2022.11.18)
●「政府・与党は消費税の税率や税額を請求書に正確に記載・保存する『インボイス制度』で、フリーランスなど小規模事業者の新たな負担軽減策を設ける調整に入った。納税を免除されてきた事業者が課税事業者にかわる際、納税額を売上時に受け取る消費税の2割に抑える。2023年10月から3年間の措置で円滑な制度導入をめざす。自民、公明両党で議論して対応案を固め、12月中をめどにまとめる23年度税制改正大綱に明記する方向だ。」(『日本経済新聞』2022.11.21)
●「政府が21日に2022年度第2次補正予算案を開会中の臨時国会に提出したことで、22年度の一般会計の公共事業予算規模は、土木分野の『公共事業関係費』が8兆0532億円、船舶建造費なども含む建築分野の『その他施設費』が1兆2229億円で、土木分野と建築分野を合わせた『公共事業費』の総額は9兆2761億円となった。公共事業費のうち、経常部門歳出分や出資金分、貸付金分を差し引き、空港燃料税や電波利用料による整備費などの特定財源見合を加えた『投資部門』で見た公共事業費は、公共事業関係費7兆9880億円に、その他施設費を足した9兆2246億円となっている。22年度第2次補正予算案の公共事業費委は、公共事業関係費1兆8214億円、その他施設費6605億円の計2兆4819億円。ただ、当初予算の公共事業関係費から55億円、その他施設費も6億円を減額補正していることから、実質の追加額は公共事業関係費1兆8158億円、その他施設費6598億円の計2兆4757億円となる。22年度第2次補正予算案は、臨時国会で成立すれば今後編成する23年度予算案と一体的に組む『16カ月予算』として執行することになる。」(『建設通信新聞』2022.11.22)
●「金融庁は証券取引所が3カ月ごとに上場企業へ求める『四半期決算短信』について、将来的に任意開示に切り替える検討を始めることが明らかになった。重要事項が発生した場合、その都度公表する『適時開示制度』と一本化し、制度としての決算短信は年1回の提出に減る。まず政府に提出する四半期報告書を廃止して決算短信に一本化し、第2段階として四半期決算短信は適時開示制度に移す。」(『日本経済新聞』2022.11.24)
●「企業向け電力の供給などを巡ってカルテルを結んだとして、公正取引委員会は25日、独占禁止法違反(不当な取引制限)で、中国電力、九州電力、中部電力の大手電力3社などに課徴金納付を命じる方針を固めた。関係者への取材で分かった。総額は少なくとも数百億円とみられ、過去最高となる見通し。公取委は電力自由化政策を骨抜きにしかねない行為とみており、公正な市場競争への影響が大きいと判断したもようだ。」(『日本経済新聞』2022.11.26)
●「経済産業省と公正取引委員会は25日、建設業を含む1650の関係事業者団体に対し、下請取引の適正化を経産大臣と公取委委員長の連名で要請した。要請文では、これから年末にかけて賃金需要が高まる中、下請け事業者の資金繰りが一層厳しさを増すことが懸念されることから、下請け事業者の資金繰りに支障を来すことがないよう、下請け代金支払いなどの適正化、適正な価格転嫁の実現に向けた取り組みを求めた。」(『建設通信新聞』2022.11.28)
●「国土交通省は技能労働者に適切な賃金を行き渡らせる方策を検討する一環で、都道府県の建設業行政担当部署などに各地域の重層下請構造の実態についての認識を確認するアンケートを行った。公共工事の下請次数は建築で3次以内、土木で2次以内にほぼ収まる。民間工事は実態把握が難しくなるものの、公共工事と同じく建築で3次以内、土木で2次以内になるとの回答が多かった。」(『建設工業新聞』2022.11.16)
●「単品スライド条項の運用を見直し、資材価格の急激な高騰に迅速に対応できるようにする動きが、都道府県と政令市にも広がっている。国土交通省のアンケートによると、都道府県の9割と政令市の8割が、直轄工事で6月に改正した単品スライド条項の運用ルールに沿って、地方自治体ごとに定める運用基準を改定した。国交省は引き続き、単品スライド条項の適切な運用を自治体に働き掛けるとしている。」(『建設通信新聞』2022.11.21)
●「都道府県の土木部局とその他部局の間で、施工時期の平準化に向けた取り組みの実施状況に差が生じている。国土交通省の調査によると、平準化の取り組みとして地方自治体に求めている全5項目の実施率が、土木部局で高く、農林部局と建築部局で低い傾向にあった。国交省は、都道府県発注工事全体の取り組みとして施工時期の平準化が進むよう、土木部局がけん引した部局間連携の推進を働き掛けている。」(『建設通信新聞』2022.11.22)
●「資材価格高騰に対応するスライド条項の運用を巡って、現状のように複数の資材価格が一斉に上昇する局面ではインフレスライドの適用が有効と指摘する声が上がっている。国土交通省直轄工事の単品スライドは個別の資材の価格変動額が工事費の1%を超えなければ受注者負担となり適用できない。資材価格や賃金のトータルの上昇額が大きい場合はインフレスライドが効果的と言える。適切にスライド条項を使いこなすため、受注者側の理解を深める必要がありそうだ。」(『建設工業新聞』2022.11.24)
●「国土交通省は賃上げを行う企業を総合評価方式で加点する措置の運用状況をまとめた。運用開始から8月末までの5か月間で国交省直轄工事2503件(内閣府沖縄総合事務局含む、農業・港湾空港関係を除く)が対象となり、競争参加者の63%が賃上げを表明。賃上げ表明者が落札した割合は70%だった。一般土木など公共需要の大きい工種や、直轄工事の受注機会が多い企業ほど表明率が高い傾向にある。国交省は建設業界の声を聞きながら適切な制度の運用や改善につなげていく方針だ。」(『建設工業新聞』2022.11.25)
●「建設業振興基金が運営し、建設業団体と国が連携して官民一体で普及に取り組む建設キャリアアップシステム(CCUS)の登録技能者数が100万人を超えた。2019年4月の本格稼働から4年弱で大台に到達。全技能者数の3分の1が登録したことになる。旗振り役の国土交通省はCCUSを技能者の処遇改善に結び付ける考えで、斉藤鉄夫国土交通相は15日の閣議後会見で『技能・経験に応じてレベル別に賃金目安を示し、職種ごとにレベルに合わせて賃金が上昇していくよう促していく』方針を示した。」(『建設通信新聞』2022.11.16)
●「厚生労働省がまとめた2022年1-10月の労働災害発生状況(速報、11月7日時点)によると、建設業の死亡者数は、前年同期比(前年同時点比)1.9%増(4人増)の216人となった。また、建設業の休業4日以上の死傷者数は1万2777人で5.9%増(717人増)だった。死亡者数、死傷者数とも前年同期比を上回る状況が続いている。」(『建設通信新聞』2022.11.18)
●「日本電設工業協会(山口博会長)がまとめた『第4回働き方改革フォローアップ調査結果』から、2024年4月に建設業でも適用が始まる時間外労働の上限規制に対応する上で、特別条項付きの36協定を結ばなければ、上限をクリアするのが困難な状況が判明した。上限規制対応が進んでいない中・小規模の企業よりも、対応が進む大規模企業の方が、特別条項を適用しなければ上限クリアは難しいようで、この結果を受けて山口会長は『厳しい結果だ』とコメントした。」(『建設通信新聞』2022.11.21)
●「国土交通省は、2024年4月から時間外労働の罰則付き上限規制が建設業に適用されることを見据え、直轄工事での週休2日の新たな方向性を打ち出した。これまで進めてきた『休日の質の確保』から『休日の質の向上』に移行し、月単位での週休2日実現を目指す。柔軟な休日の設定や、月単位での実現に必要な経費補正などを検討し、今後具体化する。」(『建設通信新聞』2022.11.24)
●「政府は22日、建設分野などに外国人を受け入れる技能実習制度と特定技能制度について、在り方を検討する有識者会議の設置を決めた。両制度の施行状況を検証し、課題を洗い出した上で、外国人の適正な受け入れ方策を議論する。2023年春ごろに中間報告書、秋ごろに最終報告書をまとめる。報告書の内容などを踏まえ、関係省庁が23年秋以降に両制度の在り方を具体的に協議する。」(『建設通信新聞』2022.11.24)
●「建設業振興基金は29日、運営する建設キャリアアップシステム(CCUS)の登録技能者数が100万人を突破したことを機に、登録技能者にCCUS関連情報を直接発信する取り組みを始めた。メールマガジンを年4回程度配信し、登録技能者向けの特典情報を中心に案内する。これまでは専門工事業団体を通じて技能者に情報提供してきたが、技能者個人に情報を直接届けるツールを有したという点で、この取り組みは大きな意味を持つと言えそうだ。」(『建設通信新聞』2022.11.30)
●「鋼材や木材などの建設資材の国内需要に停滞感が出てきた。都心部の大型再開発などが堅調な一方、中小ビルや住宅向けの荷動きが鈍っている。世界経済の先行き不透明感から施主が建設への投資に慎重になったほか、建材高による建設コストの上昇で工事を延期する動きもある。建設内需の停滞が長引けば国内全体の景況への悪影響も大きくなる。」(『日本経済新聞』2022.11.17)
●「国土交通省が16日に開いた『持続可能な建設業に向けた環境整備検討会』の第5回会合で、建設業が長年抱える課題の重層下請構造について、下位の下請けに対して元請けや1次下請けが負う責任を増大させることにより、下請け契約の重層化を回避できるとの意見が委員から上がった。適正な施工体制の確保に向けては、建設キャリアアップ(CCUS)を活用して施工体制を見える化することが有効との声もあった。」(『建設通信新聞』2022.11.18)
●「建設資材の価格動向を数値化している経済調査会(森北佳昭理事長)の『建設資材価格指数』が、全国の建築・土木の総合で2カ月連続の前月比マイナスとなった。2015年度の全国平均を『100』とした場合、10月調査(10月10日時点)に基づく指数は前月に比べ1.1ポイント下回る『146.8』。セメントやストレートアスファルト(ストアス)、コンクリート二次製品などは上昇したものの、異形棒鋼や一般建築用木材の続落に伴い指数の下落幅が前月のマイナス0.2ポイントから拡大した。同調査会は資材ごとに見られる市況感の温度差がより顕著になっていると分析。10月調査の指数(146.8)は前年同月比で見ると11.4ポイント上回る高い水準を維持する一方、『資材によっては天井感も台頭しており、指数の上昇圧力が弱まっている』とみている。指数を建築・土木別に見ると、建築は前月比2.0ポイント減の『155.4』、土木は0.5ポイント増の『133.1』だった。」(『建設工業新聞』2022.11.18)
●「建設産業専門団体連合会(建専連、岩田正吾会長)は18日、創立20周年を記念する全国大会を東京都港区のニッショーホールで開いた。テーマは『職人たちの未来予想図―若者たちがあこがれる職人の世界をもう一度―』。冒頭、岩田会長は『建設業界が抱える問題は相当根深い。先人が敷いてくれた(専門工事業界の)共通の道に乗り、建専連の総意として取り組むことが重要。全団体で結束し、職人たちが未来予想図を描ける業界を目指す』と決意表明した。」(『建設工業新聞』2022.11.21)
●「日本建設業連合会の宮本洋一会長は、25日の理事会後に開いた記者会見で、国会審議が始まった2022年度第2次補正予算案について、前年度と同等規模の国土強靭化予算が確保されるとともに、日建連が訴えてきた再開発事業への支援措置が盛り込まれたことなどに謝意を示した上で、『日本経済を下支えする社会資本整備を着実に推進するためにも、補正予算案の早期成立と迅速な執行に期待したい。日建連としてもDX(デジタルトランスフォーメーション)など生産性向上の取り組みを強力に進めるとともに、十分な施工余力を生かして工事の円滑な施工に万全を期す』と強調した。また、国土交通省の『持続可能な建設業に向けた環境整備検討会』での議論を通じて、『(資材高騰に対する)民間発注者の理解が進むことを期待する』と述べた。」(『建設通信新聞』2022.11.28)
●「日本建設業連合会が29日に発表した受注調査結果によると、10月単月の受注総額は、前年同月比13.2%増の1兆1373億円となった。民間受注が引き続き高水準で推移していることに加え、官公庁受注も平年並みに回復し、国内受注は9.7%増の1兆0975億円と、過去10年間で最高額に達した。」(『建設通信新聞』2022.11.30)
●「国土交通省は17日、国土審議会の計画部会を開いた。新たな国土形成計画の重点テーマに位置付ける地域生活圏の形成、国土利用・管理を議論した。地域生活圏の形成に向けては、地域課題解決の取組み主体となる官民連携体制の構築に向けて、民間事業者の参画を促す方策などについて意見を交わした。新たな計画の期間は2032年までの10年間。目標にデジタルとリアルによる活力ある国土、安心・安全な国土、グリーンな国土を掲げている。」(『建設通信新聞』2022.11.18)
●「第27回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP27)は20日、気象災害で『損失と被害』を受けた途上国を支援する基金の創設を決め、閉幕した。温暖化対策の輪に途上国をつなぎとめたが、本丸の温暖化ガスの排出削減でめぼしい進展はなかった。気温上昇の加速に歯止めをかける踏み込んだ対策は課題として持ち越す。各国には2023年末までに排出削減目標を上積みするよう求めた。」(『日本経済新聞』2022.11.21)
●「経済産業省は28日、今後の原子力政策に関する計画案を審議会に示した。『新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・建設を進めていく』と記し、まずは廃止が決まった原発の建て替えを具体化させていく方針を盛り込んだ。現行法で最長60年と定めた運転期間を延長できるようにすることも明記した。」(『日本経済新聞』2022.11.28)
●「環境省は脱炭素政策について、今後10年の取り組みの方向性をまとめた。住宅や建築物などの分野で脱炭素につながる製品が、価格面を含め消費者に選択しやすい形で提供されるよう環境を整備していく。新築の場合、住宅ではZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の普及支援に加え、より高みを目指しZEHプラス、建築物へのZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の導入を後押しする。再生可能エネルギーを最大限活用する国土や土地利用の在り方も模索する。既存住宅や建築物は、建材トップランナー制度などでの対応とともに、断熱リフォームや省エネ、ZEB化改修などを後押ししていく。官民ファンドの脱炭素化機構による資金供給も実施。木材利用の拡大も促進する。こうした施策と併せて、消費者の意識や行動変容を促す施策を効果的に展開し、住宅や建築物の市場で脱炭素需要を創出する方針だ。」(『建設工業新聞』2022.11.29)
●「人口減少の進展を見据え、水道事業の広域連携が注目されている。水道事業者となる地方自治体が、近隣自治体と施設の共同整備・利用、事業・経営の一体化などに取り組むことで、経営の効率化や基盤強化を目指す。水道料金の収入減や技術職員の減少など水道事業を巡る環境は今後も一層厳しくなる見込み。自治体が将来にわたって水道サービスを安定的に提供し続けるために、厚生労働省も財政支援などで取り組みを後押ししている。」(『建設工業新聞』2022.11.30)