情勢の特徴 - 2023年1月前半
●「2023年も食品・日用品の値上げが広がりそうだ。日本経済新聞社が主要メーカー46社を対象にアンケート調査したところ、6割の企業が『値上げする』と回答した。『価格を据え置く』は1社にとどまった。原材料高が続く一方、値上げは消費者の買い控えにつながる可能性がある。賃上げで物価上昇の影響を吸収する循環を生み出せるかが経済全体として今年の焦点となる。」(『日本経済新聞』2023.01.03)
●「日銀は4日、2022年12月の長期国債の買い入れ額が16兆1809億円だったと発表した。年間の購入額は111兆607億円と長短金利操作(イールドカーブ・コントロール=YCC)を導入した16年(119兆2416億円)以来の高水準となった。日銀の政策修正で長期金利に上昇圧力がかかり、金利を抑え込むための買い入れが膨らんだ。日銀は短期金利をマイナス0.1%、長期金利をゼロ%程度に誘導するYCCを16年9月から続けている。22年は世界でインフレが進み、米欧の中央銀行が利上げに動いた。日銀もいずれ政策を修正するとの思惑が浮上し、海外投資家を中心に国債売りが加速した。日銀は6月に過去最高の16兆円を超える国債を購入するなど、防戦買いを余儀なくされた。日銀が操作対象の10年債利回りを強く抑え込んだために、利回り曲線のその部分だけが極端に低くなってしまう『ゆがみ』が発生。企業や地方自治体の資金調達にも悪影響が広がり、日銀は12月、長期金利の許容変動幅をプラスマイナス0.25%程度から0.5%程度へと拡大することを決めた。だが、海外勢の国債売りの動きは収まっていない。財務省によると、海外投資家は12月18~24日に国内の中長期債を4兆8623億円売り越した。国際売りが最初のピークを迎えた6月中旬を上回り、比較可能な14年以降で最大となった。長期金利は12月21日に一時0.48%を付け、政策修正前の0.25%程度から急上昇した。」(『日本経済新聞』2023.01.05)
●「公正取引委員会は、事業者が労務費や原材料費、エネルギーコストの上昇分を発注者に適切に価格転嫁できているか把握するための緊急調査の結果をまとめた。総合工事業については、受注者として取引価格の引き上げを要請した割合が、発注者として取引価格の引き上げを要請された割合を下回り、その開きが大きかったことから『価格転嫁の要請が滞っている可能性がある』と指摘している。」(『建設通信新聞』2023.01.05)
●「2022年の日本国内の企業倒産件数が3年ぶりに前年を上回った。ウクライナ侵攻などで原燃料価格が高騰し、建設業や運輸業で資金繰りが行き詰った。21年が実施無利子・無担保融資の『ゼロゼロ融資』の恩恵で57年ぶりの低水準だった反動に加え、物価高や人手不足は厳しさを増し23年は中小などの倒産が増える可能性がある。東京商工リサーチ(TSR)によると、22年の倒産件数は11月まで8カ月連続で前年同月を上回り、11月までの累計で5822件と前年同期比5%増えた。通年では6400件程度となり21年通年(6030件)を超えたもようだ。負債総額は2兆3000億円程度と21年から倍増したもよう。17年の3兆1676億円以来の高水準となる。」(『日本経済新聞』2023.01.09)
●「新型コロナウイルス禍で収入が減った世帯に特例で生活賃金を貸し付ける国の制度を巡り、返済免除を求める申請が2022年10月末時点で貸付総額の3割超(約106万件)に上ることが日本経済新聞の調査で分かった。既に約63万件の申請が認められ、約2108億円分の免除が決まっていた。生活再建の支援を含め、制度全体の見通しの甘さが浮き彫りになった。」(『日本経済新聞』2023.01.10)
●「新型コロナウイルス禍からの経済再開が進むなか、労働力を確保できず、経営に行き詰る企業が増えている。信用調査会社の帝国データバンクによると、2022年は人手不足が原因の倒産が前年比26%増えた。増加は3年ぶりで、倒産件数全体の増加率(6%)よりも大きい。実質無利子・無担保の『ゼロゼロ融資』の返済も本格化し、23年は企業倒産がさらに増える公算が大きい。帝国データが13日公表した調査によると、従業員の離職や採用難で収益が悪化し、経営難に陥る『人手不足倒産』は26%増の140件だった。業種別では建設(34件)と運輸(20件)が多く、この2業種で全体の4割弱を占めた。運輸の人手不足倒産の件数は2倍に急増した。…円安や原材料高も加わり、企業の経営環境は厳しくなっている。帝国データによると、22年の企業倒産件数(全体)は6%増の6376件と3年ぶりに増えた。このうち物価高が原因の倒産は2.3倍の320件に急増し、過去最高を更新した。後継者不足による倒産は2%増の476件で、同じく過去最高となった。」(『日本経済新聞』2023.01.14)
●「国土交通省は2022年12月27日に開いた有識者会議『持続可能な建設業に向けた環境整備検討会』の第6回会合で行われた意見交換の内容を明らかにした。技能者の賃金を圧迫する過度な低価格受注の抑止策や、多能工の普及方策を主要テーマに議論が交わされた。低価格受注を巡っては、建設業法で規定する『不当に低い請負代金の禁止』の適用要件を緩和し、実効性の高い仕組みに見直す必要性に多くの賛同意見が上がった。」(『建設工業新聞』2023.01.05)
●「建設業許可・経営事項審査(経審)の電子申請システムが、きょうから運用を開始する。国土交通省がインターネット上に『JCIP』の名称でシステムを立ち上げた。大臣許可の受け付けに合わせ、知事許可を受け付ける行政庁のうち42道県が電子化に対応する。各行政庁に出向いたり書類を郵送したりする必要がなくなり、申請手続きにかかる事務負担の軽減が期待できる。」(『建設工業新聞』2023.01.10)
●「国土交通省は市区町村を含む全地方自治体の発注工事を対象に施工時期の平準化の進捗状況をまとめた。2021年度の『平準化率』の全国平均は都道府県発注工事で0.80(20年度0.77)、市区町村発注工事で0.62(0.57)に改善。債券負担行為の活用や柔軟な工期設定など、国交省が『さしすせそ』と称し働き掛ける5項目の取り組みも小規模自治体を含めて着実に進展している。」(『建設工業新聞』2023.01.12)
●「厚生労働省が6日発表した2022年11月の毎月勤労統計調査によると、従業員5人以上の事業所の1人あたり賃金は物価変動の影響を考慮した実質で前年同月比3.8%減だった。減少は8カ月連続で、下落幅は消費税増税後の14年5月(4.1%減)以来8年半ぶりの大きさになった。物価上昇の加速に賃金の伸びが追いつかない状況が続いている。」(『日本経済新聞』2023.01.06)
●「国際人材協力機構(JITCO、八木宏幸理事長)は、外国人材の受け入れや送り出しの事業を行う監理団体、実習実施者、登録支援機関、特定技能所属機関、送出機関といった国内外の機関を対象に、技能実習制度と特定技能制度に関するアンケートを実施した。実務者の“生の声”として、両制度の特長を生かした『併存』を求める声が全体の約4割を占めた。」(『建設通信新聞』2023.01.06)
●ひとり親世帯の平均年間就労収入は、母子世帯が236万円、父子世帯が496万円で260万円の差があることが11日までに分かった。厚生労働省が昨年12月に公表したひとり親世帯調査(2021年度)によるもの。同省によると、同年度の同世帯数は推計値で母子119.5万世帯、父子14.9万世帯だった。同居する全員の収入で見ると、母子世帯の年間平均は373万円。国民生活基礎調査で児童のいる世帯の平均所得を100として比較すると、45.9。一方、父子世帯は74.5(606万円)。就業状況では、パート・アルバイトが母子世帯で38.3%になるのに対し、父子世帯は4.9%。正規職員・従業員は、母子世帯が48.8%で父子世帯が69.9%だった。(『しんぶん赤旗』2023.01.12より抜粋。)
●「建設業関係11団体は5日、東京都港区の東京プリンスホテルで2023年新春賀詞交歓会を開いた。長引くコロナ禍や資材高騰への継続的な対応、24年4月から適用される時間外労働の上限規制への備えといった各種課題に対峙しつつ、それらの解決が建設業界の魅力向上、さらには担い手確保につながっていくという認識を共有し、業過一丸となったさまざまな取り組みの推進へ気持ちを新たにした。主催団体を代表してあいさつに立った日本建設業連合会の宮本洋一会長は『建設需要は堅調に推移しているが、未曽有の資材価格高騰が企業経営に大きな影響を与えている』と指摘。資材高騰に対する適正な価格転嫁などに加え、上限規制を見据えた建設現場の4週8閉所についても、特に民間発注者の理解獲得に注力していく方向を示した。また、政府の22年度第2次補正予算と23年度当初予算案における公共事業関係費について『防災・減災、国土強靭化を中心とした予算が十分に確保された』と謝意を示した上で、『十分な施工余力と適正な施工体制で、着実かつ円滑な施工に勤めていく』と強調した。政府・与党が検討中の国土強靭化5か年加速化対策の後継計画にも触れ、『整備スケジュールや事業費を明示した新たな長期整備計画の実現を大いに期待している』と述べた。」(『建設通信新聞』2023.01.06)
●「建築コスト管理システム研究所は、住宅を除く低層で小規模な木造建築物に対応した建築数量積算基準と建築工事内訳書標準書式の案を検討している。規格長さの製材から1本または複数の部材をひき出す『木取り』の概念を導入し、低層・小規模の木造工事の積算について、より実態を踏まえた数量算出を目指す。コンクリートや鉄筋、鉄骨などの構造部材の計測・計算規定に、木躯体(軸組構法)の区分や計測・計算方法などを追加する想定だ。」(『建設通信新聞』2023.01.13)
●「建設経済研究所(RICE)は12日、2022年度と23年度の建設投資見通し(1月推計)を発表した。23年度は、物価変動を含む名目値で前年度見通しに比べて3.4%増の69兆9000億円、物価変動を含まない実質値で1.3%増の57兆1559億円と見込んだ。22年度に大きく上昇した物価は高止まりするとともに、民間非住宅建設投資の回復が全体を底上げすると予測する。22年度は、名目値で1.5%増の67兆6200億円、実質値で4.3%減の56兆3999億円と見通した。23年度は、物価の上昇によって生じていた名目値と実質値の差が物価の高止まりによって縮まり、実質値はプラスに転じるとみる。」(『建設通信新聞』2023.01.13)
●「民間調査会社の富士経済(東京都中央区、菊地弘幸代表取締役)は、空調・熱源関連ビジネスの国内市場の動向を調査した。2021年実績では関連ビジネス全体の市場規模3兆4829億円のうち、約半数の1兆6574億円を『施工エンジニアリング』が占めた。施工エンジニアリング市場シェアは空調系サブコンが8割強、次いで電気系サブコン、メンテナンス会社、エレベーター保守会社の順になった。」(『建設工業新聞』2023.01.13)
●「国土交通省は、高速道路の更新や改良に必要な財源確保に向け、道路整備特別措置法で2065年までとする料金徴収期間を延長する改正法案の国会提出を目指している。高速道路では古い基準で設計された箇所などを対象に14年度から更新事業を実施している。また、同年度から始めた橋梁やトンネルといった道路構造物の5年に1度の定期点検が一巡した結果、床版補強材の想定以上の劣化や支承の損傷などが見つかり、更新事業を追加する必要性も明らかとなっている。」(『建設通信新聞』2023.01.10)
●「国土交通省は、盛土による災害防止に向けて、都道府県などに対する支援を強化する。盛土規制法に基づき都道府県などが実施する規制区域指定に必要な基礎調査に要する費用の国費率を2024年度までにかさ上げする。基礎調査の円滑化につなげ、速やかな規制区域指定を後押しする。都市防災総合推進事業は、避難地や避難路などの公共施設設備や避難場所の整備、避難地や避難路周辺の建築物の不燃化などを進め、防災上危険な市街地の防災性の向上を図る取り組み。22年度予算で事業メニューを拡充し、交付対象に都道府県などによる基礎調査も加えた。国費率は3分の1だった。この国費率を24年度まで2分の1にかさ上げする。22年度第2次補正予算から措置を始めており、23年度予算案にも関連経費を計上した。」(『建設通信新聞』2023.01.11)
●「厚生労働省は11日、改正石綿障害予防規則(石綿則)を公布した。改正石綿則では、トンネルの天井板や発電設備といった特定工作物の解体・改修工事で、アスベスト(石綿)の飛散防止対策を強化。工事前に石綿使用の有無に関する調査を実施するため、実施者の要件などを盛り込んだ。調査実施者の育成などに時間がかかるため猶予期間を設け、施行日は2026年1月1日とする。」(『建設工業新聞』2023.01.12)