情勢の特徴 - 2023年1月後半
●「日銀は16日発表した2022年の企業物価指数(速報値、2020年平均=100)は114.7と前年比9.7%上昇した。年間ベースの伸びは比較可能な1981年以来で最高。円安や資源高の一服で12月は10.2%上昇と前月比の伸び(0.5%)は鈍りつつあるものの、消費者物価指数(CPI)との開きは大きい。当面は物価上昇圧力が続きそうだ。」(『日本経済新聞』2023.01.17)
●「消費税の税率や税額を請求書に正確に記載・保存するために10月に導入するインボイス制度を巡り、政府は事業者登録の受け付けを事実上延長する方針を決めた。制度開始に間に合わせるには原則3月末までに申請する必要があったが、未登録の事業者が残っており、事情を問わず9月末まで受け付ける。制度の円滑な導入につなげる。16日の関係省庁会議で明らかにした。4月移行の申請には『困難な事情』があることが要件だったが、理由の深刻を不要にする。手続き柔軟化の方針は2022年12月に閣議決定した23年度税制改正大綱に盛り込んでいた。22年12月末時点の登録率は法人が75%、個人は34%にとどまっている。」(『日本経済新聞』2023.01.17)
●「経団連は17日、2023年の春季労使交渉の経営側指針を発表した。物価動向を重視し『企業の社会的な責務として賃金引上げのモメンタム(勢い)の維持・強化に向けた積極的な対応』を呼びかけた。デフレ下で賃上げが進みにくかった日本は実質賃金が伸びにくい状況が続いてきた。人材獲得の観点からも足元の物価高に対応した賃上げを実現できるか経営判断が問われている。」(『日本経済新聞』2023.01.18)
●「総務省が20日公表した2022年12月の消費者物価上昇率は生鮮食品を除く総合で前年同月比4.0%と、41年ぶりに4%台となった。資源高や円安でエネルギー価格が上がり、食品など身近な商品に値上げが広がった。食料の伸び率は7.4%と、46年4ヵ月ぶりの水準に達した。新型コロナウイルス禍後に回復してきた消費の先行きは、今春の賃上げ水準が左右する。」(『日本経済新聞』2023.01.21)
●「政府が23日召集の通常国会に2023年度予算案を提出したことで、一般会計の『公共事業費』は、土木分野の『公共事業関係費』が6兆0600億円、船舶建造費なども含む建築分野の『その他施設費』が9735億円で、土木分野と建築分野を合わせた『公共事業費』の総額が7兆0335億円となることが分かった。また、22年度第2次補正予算の公共事業費は、公共事業関係費1兆8159億円、その他施設費6598億円の計2兆4757億円となっていることから、今後本格的に執行する『16カ月予算』の公共事業費は、公共事業関係費の7兆7859億円、その他施設費の1兆6333億円を合わせた9兆5092億円になる。」(『建設通信新聞』2023.01.24)
●「人口の東京への集中が再加速している。総務省が30日発表した2022年の住民基本台帳人口移動報告では、東京都は転入者が転出者を上回る『転入超過』が3万8023人となり、超過幅は3年ぶりに拡大した。新型コロナウイルス禍の影響が薄れ、21年に比べて7倍に増えた。雇用の選択肢が乏しい地方の就業難を背景に、22道県で流出が拡大した。」(『日本経済新聞』2023.01.31)
●「国土交通省は担い手の確保などに課題を抱えるインフラの維持管理分野で今後必要とされる検討事項をまとめた。維持工事は1者応札が多い現状を踏まえ、企業が中長期的な視野で若手採用や資機材投資に取り組めるよう契約期間の長期化や、小規模であっても地域精通度が高い企業間の連携促進が必要と指摘。不調・不落が発生しやすい修繕工事ではフレームワーク方式など対策効果が高い発注方式の活用を拡大する方向性を提示した。」(『建設工業新聞』2023.01.17)
●「国土交通省は、市町村が目標に沿って入札契約制度の改善に取り組むための支援事業を2023年度に始める。支援を希望する都道府県ごとに勉強会を設け、専門的知見を有する事業者を派遣して、個別課題を踏まえた市町村ごとの改善ロードマップ作成を支援する。市町村によって予算や職員数、入札契約制度が異なる中、管内全体の取り組みを底上げすることが狙い。3月上旬までの応募を都道府県に近く呼び掛け、5都道府県程度を支援対象に選定する。」(『建設通信新聞』2023.01.18)
●「内閣官房は23日、国土強靭化政策の根幹となる新たな『基本計画』の策定に向けた脆弱(ぜいじゃく)性予備評価の結果を示した。総合評価では、国民の生命と財産を守るための防災インフラの整備・管理の必要性が浮き彫りになった。中長期的で明確な見通しの下、インフラ施設を整備するとともに、予防保全型メンテナンスへの転換、それらを支える建設業の人材育成を重視。ライフラインの強靭化や官民連携の強化を求められるとした。今後、本格的な評価を実施し、新たな基本計画に反映する。」(『建設工業新聞』2023.01.24)
●「国土交通省は公共事業で活用されているCM(コンストラクションマネジメント)方式の実態調査を行った。関係業界団体に2021年度まで累計で受注したピュア型CM業務を聞いたところ、建築事業で21社・340件、土木事業で26社・180件の計47社・520件の実績があった。ここ数年、建築は小規模案件、土木は災害復旧以外の新設・維持案件で活用が広がっている。国交省は技術職員が少ない地方自治体などのマンパワー不足を補完する有効な仕組みとして引き続き活用を促していく。」(『建設工業新聞』2023.01.26)
●「総務省は地方自治体の2022年度第1~2四半期(22年4~9月)の公共事業予算執行状況を公表した。21年度から繰り越された予算と22年度予算の合算額は22兆1229億円。うち契約済み額は13兆9073億円で、契約率は前年同期と同じ62.9%となった。支出済み額は4兆0654億円。予算合算額に対する割合は前年同期を0.8ポイント下回る18.4%だった。」(『建設工業新聞』2023.01.26)
●「建設業での労働災害による2022年(1—12月)の死亡者数は、21年の288人(確定値)を若干下回るとみられるものの、18—22年の5年間を計画期間とする第13次労働災害防止計画(13次防)で掲げた、建設業は『死亡者数を17年と比較して22年までに15%減少』との目標の達成が厳しい情勢であることが分かった。また、死傷者数は2年連続で増えることが確定した。厚生労働省が18日にまとめた22年の労働災害発生状況(速報、1月10日時点)によると、建設業での死亡者数は、前年同期比(前年同時点比)3.3%減(9人減)の265人と、2年ぶりに減少した。また、休業4日以上の死傷者数は、前年同時点比6.7%増(988人増)の1万5884人と2年連続で増加した。22年速報時点の死亡者数は、過去最少だった258人の20年確定値と比べ、現時点で既に7人多い。近年の確定値までの推移を踏まえると、22年の死亡者数(確定値)は280—285人程度と推計され、13次防の目標達成となる最終22年の死亡者数を274人以下に抑えることは厳しいとみられる。」(『建設通信新聞』2023.01.19)
●「経団連と連合の労使トップが23日会談し、2023年の春季労使交渉が始まった。足元の物価上昇を受け、経団連の十倉雅和会長は『物価動向を重視しながら、企業の社会的責務として賃金引き上げのモメンタム(勢い)の維持・強化にむけた積極的な対応』を呼び掛けると訴えた。持続的な賃上げにはより良い待遇を求めて人材が移動する環境づくりも欠かせない。十倉氏は会談の冒頭、歴史的な物価高の局面で迎えた交渉に触れて『デフレからの脱却と人への投資促進による構造的な賃金引き上げをめざした企業行動への転換を実現する、正念場かつ絶好の機会だ』と強調した。連合の芳野友子会長は今回の交渉を『労使が力を合わせて日本の未来をつくりかえるターニングポイントとすべきだ』とした。『大企業だけでなく中小企業やパート、契約社員なども含めて日本全体で継続した賃上げを実現しよう』と求めた。労使ともに賃上げに強い意欲を示すなかで、物価動向をどこまで反映できるかが焦点となる。総務省が20日の消費者物価指数は、実質賃金の算出に使う総合指数(持ち家の家賃換算分除く)で前年同月比4.8%上昇した。通年でも前年比3%の高い伸びを示した。」(『日本経済新聞』2023.01.23)
●「出入国在留管理庁は27日、2022年の外国人の新規入国者数(速報値)が前年比23倍の342万3000人だったと発表した。留学や一部の就労関連の在留資格による入国者は新型コロナウイルス禍前の19年の水準を上回った。観光目的の入国はコロナ前の1割程度にとどまった。政府は原則停止していた外国人の新規入国を22年3月に再開した。対象者はビジネス目的や留学、技能実習などに限り、受け入れ先の企業や学校が入国後の行動を管理することを条件にした。22年の在留資格『留学』での入国者数は16万7000人と、前年比で14倍に膨らんだ。19年の12万1000人も超えた。『経営・管理』や『高度専門職』といった就労目的での資格でも新型コロナ禍前より多い水準に達した。技能実習生は17万9000人と、95%程度まで回復した。大半は観光客にあたる『短期滞在』での入国は限定的だ。19年比で9割減の286万1000人だった。」(『日本経済新聞』2023.01.28)
●「厚生労働省が27日にまとめた2022年10月末時点の外国人雇用状況によると、建設業の外国人労働者数は前年同月末比6.2%増の11万6789人となった。2年ぶりの増加となり、今回データを公表している18—22年(5年)の中では最も多い労働者数になっている。建設業で外国人を雇用している事業所数は、5.1%増の3万5309カ所だった。19年4月に創設した在留資格『特定技能』の労働者数での『建設』は7132人で、特定技能で受け入れが認められている12分野で5番目に多い。全産業では、国内の外国人労働者数が5.5%増の182万2725人、外国人労働者を雇用している事業所数が4.8%増の28万8790カ所。07年に事業主に対して届け出を義務化して以降、労働者数、事業所数のどちらも過去最高を更新した。ただ、『対前年比の増加率はコロナ禍前の状況には戻っていない』(職業安定局)という。労働者数の増加は、在留資格別で『専門的・技術的分野の在留資格』の21.7%増が寄与した形。『留学生などコロナ禍の前から日本にいた大卒レベルの外国人が労働市場に出てきた』(同)とみている。中でも、専門的・技術的分野の在留資格のうち『技術・人文知識・国際業務』の外国人労働者が増えている。一方で、技能実習生は2.4%減の34万3254人だった。集計期間(21年11月—22年10月)全体ではないものの、新型コロナウイルスの水際対策によって外国人労働者が入ってこないことの影響が残ったといえる。全産業のうち、建設業の外国人労働者数が占める割合は6.4%で、事業所数では11.8%となっている。建設業での外国人労働者数の在留資格別内訳は、『技能実習』が7万0489人と60.3%を占めている。永住者などの『身分に基づく在留資格』は1万9551人、特定技能も含む『専門的・技術的分野音在留資格』が1万9168人で、うち技術・人文知識・国際業務は1万1405人だった。」(『建設通信新聞』2023.01.30)
●「日本建設産業職員労働組合協議会(日建協、角真也議長)は30日、2022年11月に実施した『4週8閉所ステップアップ運動』の結果を発表した。月によって土日・祝日の数が異なる点を補正した4週8閉所指数は、4週『5.27閉所』となり、前年同期より0.12ポイント上昇した。一方、土建別に見ると、土木は0.24ポイント上昇の『5.49閉所』と着実に向上しているものの、建築は0.01ポイント下降の『5.05閉所』とわずかとはいえマイナスに振れ、頭打ち感が鮮明になっている。」(『建設通信新聞』2023.01.31)
●「東京商工リサーチが13日発表した2022年(1~12月)の建設業倒産件数(負債1000万円以上)は、前年比12.1%増の1194件となり、3年ぶりに前年を上回った。ただバブル末期の1992年以降の30年間で見ると前年に次いで少なかった。」(『建設工業新聞』2023.01.16)
●「日刊建設通信新聞社は、主要建設会社を対象に設備投資に関するアンケートを実施した。2022年度の設備投資見込額では、100億円以上の設備投資を計画している会社が8社あった。トップは清水建設の640億円(前年度比32.6%減)、次いで大林組460億円(93.9%増)、戸田建設421億1600万円(91.5%増)、西松建設381億4000万円(87.1%増)、鹿島171億4700万円(32.5%減)、五洋建設140億円(99.1%増)、大成建設133億1800万円(72.6%増)、長谷工コーポレーション110億円(21.1%減)となっている。前年度実績との比較では21社が上回った。」(『建設通信新聞』2023.01.18)
●「国土交通省と中小企業庁は18日、2022年度下請取引等実態調査の結果を発表した。下請負人から資材などの価格高騰による請負代金額変更交渉の申し入れがあった際、変更を認めた元請負人は94.4%だった。下請負人も86.0%が交渉で請負代金額の変更が認められたと答えており、急激な物価高騰を受けて適切な価格転嫁の実施があらゆる業種で求められる中、建設業界の下請代金額変更は交渉によって多くが認められている状況にある。」(『建設通信新聞』2023.01.19)
●「国土交通省と中小企業庁は18日、2022年度下請取引等実態調査の結果を公表した。建設業法に基づく指導対象となる調査項目すべてに適正回答した事業者の割合は7.7%で、前年度から3.1ポイント下落した。調査項目別で見ると、適正回答率が例年低い傾向にある『見積もり提示内容』が19.2%(前年度比2.0ポイント下落)、『契約条項』が43.1%(4.5ポイント下落)とさらに悪化した。不適正回答が1項目でもあった8548者には指導票を送付した。」(『建設工業新聞』2023.01.19)
●「北海道、東日本、西日本の公共工事前払金保証事業会社3社は18日、2022年10~12月の建設業景況調査を公表した。地元建設業界の景気に関するBSI値(景況判断指数=「良い」と「悪い」の回答差)は前期(7~9月)から2.5ポイント悪化のマイナス14.0。官公庁工事を中心とした受注環境の厳しさや、先行きが見通せない建設資材の価格上昇が懸念材料となっているようだ。」(『建設工業新聞』2023.01.19)
●「建設資材の価格高騰が深刻化してから、建設業で価格転嫁がどの程度行われたか――。国土交通省と中小企業庁、公正取引委員会がそれぞれ実施した調査から、その実態が明らかになってきた。各調査の結果を見比べると、主に下請の立場でコスト上昇分の取引価格への転嫁を要請したり、価格変更を交渉したりした割合は50%台で共通する。コスト上昇分を自社で抱え込んだり、取引関係の悪化を恐れ元請への協議の申し入れに至らなかったりするケースも散見される。」(『建設工業新聞』2023.01.27)
●「国土交通省は住宅や賃貸オフィスの省エネルギー性能の表示に向けたルールを整備する。契約時の資料や広告にエネルギー消費や断熱の性能評価に関する情報を明示するよう不動産事業者に求める。2023年2月をメドにルール案をまとめる。」(『日本経済新聞』2023.01.16)
●「米国の木造価格が下落している。先物価格は2年8ヵ月ぶり安値圏で推移し、新型コロナウイルス禍の在宅勤務需要で価格が急騰した『ウッドショック』以前の水準に戻った。住宅ローン金利の上昇で住宅需要が落ちているためだ。価格の急反発を見込む声は少なく、住宅市場の停滞は長引きそうだ。」(『日本経済新聞』2023.01.18)
●「2020年東京五輪・パラリンピックの選手村を活用した大規模マンション『晴海フラッグ』の開発が最終局面に入っている。三井不動産レジデンシャルら10社が、25年秋の完成に向けて建設しているタワー棟のコンセプトやデザインを10日に公表した。総延べ約17万平方メートルの超高層ビルを2棟建設し計1455戸を供給。高さ180メートルのツインタワーとして、湾岸部の新たなランドマークを目指す。」(『建設工業新聞』2023.01.18)
●「東京都中心部のマンション価格が高騰している。東京カンテイ(東京・品川)が24日発表した2022年の都心6区の中古マンションの平均価格は9800万円と1億円の大台に迫った。『パワーカップル』と呼ばれる高所得の共働き世帯が、優良立地の物件を高値をいとわず購入している。低金利でローンの金利負担は軽いが、物件取得に必要なコストは1993年以来の高水準となってきた。金利上昇のリスクも大きくなっている。」(『日本経済新聞』2023.01.25)
●「復興庁が今国会に提出する福島復興再生特別措置法改正案の概要が判明した。帰還困難区域の特定復興再生拠点区域(拠点区域)外で、避難指示解除による住民の帰還、住民帰還後の生活再建を目指す『特定帰還居住区域』(仮称)を市町村が設定できる制度を創設する。市町村は、『特定帰還居住区域復興再生計画』(仮称)を作成し、政府が認定する。認定を受けると、計画に基づき国による特例措置を適用する。具体的には、国費負担による除染などを実施する。道路などのインフラ整備も代行する。」(『建設通信新聞』2023.01.26)
●「新築マンションの価格上昇が止まらない。不動産経済研究所(東京・新宿)が26日発表した2022年の首都圏新築マンションの平均価格は前年比微増の6288万円と、2年連続で過去最高を更新した。一方で、発売戸数は2年ぶりに前年実績を下回り、3万戸を割った。価格高騰で中間所得層を中心に顧客離れの兆しも出始めている。東京23区の平均価格は前年比1%下がり8236万円と2年連続で8000万円を超えた。新型コロナウイルス発生前の19年(7286万円)と比べ約1000万円高い。資材・人件費高に加え、低金利のなか富裕層や高所得の共働き世帯が都心部の高額物件を積極購入し、高値圏が続く。マンション価格の高騰は郊外にも広がる。神奈川県は5411万円、千葉県は4603万円とそれぞれ3%、7%上昇した。埼玉県は5267万円と前年比1割近く上昇した。新型コロナの影響で働き方が多様化して在宅勤務も普及し、さいたま市や千葉市内で発売された大型の高層マンションが人気となった。」(『日本経済新聞』2023.01.27)