情勢の特徴 - 2023年2月前半
●「新型コロナウイルス禍で積み上がった家計の『コロナ貯蓄』が、日本では減らずに増え続けている。民間試算によると、2022年9月末で62兆円に達し、国内総生産(GDP)の10%を超える水準にまで膨らんだ。将来不安などで個人消費にお金が回っていない。ピーク比6割減となった米国との違いは鮮明だ。賃上げや社会保障改革などで、安心して消費を増やせる環境を整えることが急務となる。」(『日本経済新聞』2023.02.05)
●「企業の賃上げ原資の確保に欠かせない価格転嫁が遅れている。米欧はコスト増の大半を販売価格に反映しているのに、日本は5割しか転嫁できていない。資源高のしわ寄せは立場の弱い中小企業に集まりやすい。構造的な賃上げによる経済の好循環の実現に向け、経済産業省は7日、価格交渉や転嫁に後ろ向きな企業名の公表に踏み切った。デフレで染み付いた商習慣を転換できるかが試される。」(『日本経済新聞』2023.02.08)
●「企業倒産の増勢が強まっている。東京商工リサーチが8日発表した1月の全国企業倒産件数は前年同月比26%増の570件で、増加率は2カ月連続で20%を超えた。新型コロナウイルス禍を受けた実質無利子・無担保の『ゼロゼロ融資』の返済が本格化し、中小企業を中心に経営に行き詰まる事例が増えている。倒産件数の増加率は2021年5月の50%以来の水準だが、このときは前年が歴史的低水準にとどまった反動が大きい。20年5月は緊急事態宣言の影響で、企業倒産に関わる業務が滞っていた。倒産件数が前年同月を上回るのは10カ月連続となる。増加率は当初1ケ夕から10%台前半だったが、22年9月以降は10%超えが定着し、12月は20%となるなど増加基調が鮮明になっている。目立つのが、コロナ禍をゼロゼロ融資で耐えたものの、返済が本格化するなかで経営再建を断念する『息切れ倒産』だ。ゼロゼロ融資を借りた後に倒産したケースは1月に48件と、前年同月の6倍に増えた。40件以上となるのは6カ月連続だ。倒産要因にコロナ禍が含まれるものは234件と前年同月の1.9倍に増え、5カ月連続で200件台に乗せた。20年2月の集計開始以来の累計件数は5000件となった。」(『日本経済新聞』2023.02.09)
●「新型コロナウイルス感染拡大後の日本の景気の戻りが鈍い。2022年の実質経済成長率は1.1%にとどまり、21年の2.1%から減速した。20~22年の経済成長率は平均でマイナス0.4%となり、コロナ禍の落ち込みを取り戻せていない。同時期にプラスとなった米欧とは対照的で、成長力の弱さが浮き彫りになっている。」(『日本経済新聞』2023.02.15)
●「国土交通省が今国会に近く提出する道路整備特別措置法(特措法)と日本高速道路保有・債務返済機構(高速道路機構)法の一括改正案の詳細が分かった。高速道路の大規模更新などに充てる財源を継続確保するため、2065年としていた料金徴収期限を2115年まで50年間延ばす。脱炭素化の一環で電気自動車(EV)や自動運転車の普及も促進。高速道路会社がSA・PAに設ける専用駐車場の整備資金を、高速道路機構から無利子で借りられる制度も創設する。」(『建設工業新聞』2023.02.02)
●「国土交通省の直轄業務で、納期が年度末に集中しがちな履行期間の平準化が進展している。3月を履行期限に設定する割合は2021年度に32%だった。18年度41%、19年度と20年度が34%で、近年は減少傾向にある。早期発注、適正な履行期間の設定、繰り越しや翌債の活用など、公共工事品質確保促進法(品確法)に基づく平準化の取り組みが着実に効果を上げている。」(『建設通信新聞』2023.02.06)
●「国土交通省のまとめによると、地方整備局などが2021年度に契約した直轄の調査・設計等業務のうち、契約件数に占める総合評価方式の導入率は59.6%で、過去最高だった。08年度の本格導入以降、導入率は上昇傾向にあり、6割が目前となっている。総合評価方式を導入した業務の当初契約額は21年度に3004億円で、これも過去最大を記録した。」(『建設通信新聞』2023.02.09)
●「国土交通省は、賃上げを表明した企業を政府調達の総合評価方式で加点する措置について、直轄工事における2022年11月末の実施状況をまとめた。実落札者の賃上げ表明率は73%で、実施状況を前回まとめた8月末から3ポイント上昇している。非表明者の落札状況を新たに分析した結果、表明者と非表明者の両方が参加した入札で非表明者が落札したケースは6%だった。このケースでは技術点の差で落札に至ったものが大半だった。」(『建設通信新聞』2023.02.13)
●「岸田文雄首相は1日、一定の所得を超えると税や社会保険料が発生する『年収の壁』への対応策を検討すると明らかにした。働き手不足が続いており、就労を抑える要因として『106万円』や『130万円』の壁が指摘される問題に向き合う。政府は厚生年金に加入するパート労働者を広げるなど目先は本人の負担増となる改革にも取り組む。さまざまな制度との調整が必要になる。」(『日本経済新聞』2023.02.02)
●「国土交通省は、安全衛生経費の適切な支払いを促すため、住宅など5工種で先行的に作成する『安全衛生対策項目の確認表』の取りまとめの方向性を示した。安全衛生対策項目の参考ひな型をまとめ、それを基に各工種ごとの確認表を作成する。統一的な確認表を求める意見も出たが、元請けと下請けの役割確認や下下間での活用を踏まえ、工種ごとに確認表をまとめる。」(『建設通信新聞』2023.02.02)
●「公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は3日、2022年10~12月期の運用実績が1兆8530億円の赤字だったと発表した。22年1~3月期から4四半期連続の赤字だった。世界的な利上げに伴う金利上昇で債券価格が下落し、22年秋から年末にかけての円高進行で円換算ベースの外国資産額が目減りした。」(『日本経済新聞』2023.02.04)
●「厚生労働省が7日発表した2022年の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、物価の影響を考慮した実質賃金は前年比0.9%減だった。2年ぶりのマイナスとなった。賃金の実質水準を算出する指標となる物価(持ち家の家賃換算分を除く総合指数)が3.0%上昇と賃金の伸びを上回り、賃金上昇が物価高に追いつかない状況を映した。名目賃金にあたる1人当たりの現金給与総額は月平均32万6157円だった。前年比で2.1%増となり、伸び率は1991年以来となる31年ぶりの大きさだった。新型コロナウイルス禍から経済再開へと進み、賞与の支給が大きく伸びた。」(『日本経済新聞』2023.02.07)
●「厚生労働省は2022年(1~12月)の毎月勤労統計調査の結果(確報値)を公表した。建設業の就業者に支払われた現金給与総額(1人当たり平均)は前年比4.0%増の43万2642円。常用雇用労働者総数は2.0%増の273.3万人となった。月間総実労働時間が、1.1%減の163.5時間だった。5人以上が働く事業所を対象に調査した。」(『建設工業新聞』2023.02.09)
●「厚生労働省は2024年4月から、建設現場で本足場の使用を原則義務化する。設置に必要なスペース(幅1メートル以上)があるすべての現場が対象。狭い敷地や障害物などで本足場の使用が困難な現場では例外的に一側足場の使用を認める。つり足場を使用する場合も適用を除外する。必要な制度整備の一環で、労働安全衛生規則(安衛則)の改正案をまとめた。3月の公布、24年4月1日の施行を目指す。より安全な本足場の使用を促進し、墜落・転落災害の防止を図る。」(『建設工業新聞』2023.02.14)
●「国土交通省は14日、2023年度の公共工事設計労働単価を発表した。全国・全職種の単純平均値は前年度に比べて5.2%の伸びで、足元の物価上昇率を上回った。11年連続の上昇。伸び率が5%以上になるのは9年ぶり。全国・全職種の加重平均値では金額が2万2227円に上り、労務単価の公表を始めた1997年度以降で最高値を更新した。直轄工事は例年と同様に3月から適用する。」(『建設通信新聞』2023.02.15)
●「国土交通省は1月31日、大手50社を対象とした2022年の建設工事受注動態統計調査報告を公表した。1-12月の受注総額は、前年比4.8%増の16兆5482億円だった。2年連続の増加。国内における民間工事の回復により、過去10年間で最多を記録した。」(『建設通信新聞』2023.02.01)
●「国土交通省の有識者会議は、持続可能な建設業の実現に必要な施策の方向性について、2022年度内を目指す取りまとめの論点を整理した。『価格変動に対応する契約の在り方』と『重層下請構造の適正化』の二つに分類。民間工事を念頭に置いた契約の在り方としては、価格変動に影響を与えかねないリスクの受注者による事前開示や、想定されるリスクへの対応経費の内訳明示など、リスクの透明性を高めて受発注者間で適切に分担する仕組みを検討する。」(『建設通信新聞』2023.02.07)
●「内閣府は上場企業を対象とした女性役員の登用状況(2022年7月末時点)を公表した。全産業の平均で執行役員などに起用されている女性の割合は4.3%にとどまる。一方、約60%の企業がこうした役職に女性を登用していない。業種別で見ると、建設業の執行役員などの女性の割合は1.6%で、70%超の企業で女性の登用がゼロだった。ゼロの企業の割合は、全33業種中6番目に多かった。」(『建設工業新聞』2023.02.09)
●「国土交通省がまとめた建設工事受注動態統計調査によると、2022年の受注総額は前年比7.1%増の114兆1226億円となった。元請受注高75兆2267億円(前年比7.2%増)のうち、公共工事は1.7%減の21兆3447億円、民間工事は11.1%増の53兆8820億円。下請受注高は6.8%増の38兆8959億円だった。」(『建設工業新聞』2023.02.13)
●「資材価格の高騰による業績への影響が継続している。14日までに開示された大手・準大手ゼネコン26社(単体27社)の2023年3月期第3四半期の連結決算は全体の半数を超す14社が前年同期からの『営業減益』で推移。豊富な手持ち工事の進捗によって売上高が順調に積み上がっていく一方で、全体として“利益が上がりにくい構造”から抜け出せていない。経済活動の回復によってコロナ禍で停滞していた民間投資の持ち直しの動きが顕著。連結ベースで約9割に相当する23社が『増収』を確保している現状からも全体感としてのマーケットは『堅調に推移している』というのが各社の共通認識となっている。豊富な手持ち工事の進捗によって着実に売上高が積み上がっていく一方で、業績の下押し要因となっているのが『物価高騰』による影響だ。特に物価変動の影響を受けやすい大型の建築プロジェクトを中心に、もともと受注段階での採算が低下していたところに、資材価格の高騰が追い打ちをかける構図は依然として変わっていない。」(『建設通信新聞』2023.02.15)
●「上場ゼネコン大手4社(鹿島、大林組、清水建設、大成建設)の2022年4~12月期連結決算は、全社が増収となった。業績の先行指標となる単体受注高も全社で増加。鹿島が建築、土木ともに大型案件を受注し4~12月期として過去最高となった。一方、大型再開発案件を中心に競争が厳しく、資機材高騰などに対する価格転嫁も課題に挙がる。各社は物価高を見込んだ採算重視の受注で利益確保に注力する。…単体の完成工事総利益(粗利益)率は、鹿島が2桁台を維持する。受注時採算はコスト管理の強化などで『回復傾向にある』(大林組)という。資材高騰の影響は『期首でかなり見込んでいたため想定の範囲内』(鹿島)との声もあるが、民間工事での利益を押し下げる要因にもなっている。『高止まり傾向だが資材によっては上昇している』(大成建設)、『価格転嫁に向けた交渉を重ねる』(清水建設)と対応を急ぐ。」(『建設工業新聞』2023.02.15)
●「政府は31日、放置された空き家の活用促進策をまとめた。窓や壁の一部が壊れているといった管理不全の空き家を対象に税優遇を見直す。自治体からの改善勧告に対応しない場合に、住宅の固定資産税を減らす特例から外す。中心市街地などに限定して建築規制も緩和する。高齢化で住宅の相続が増えることを見据え、所有者に適切な管理や活用を求める。」(『日本経済新聞』2023.02.01)
●「高速道路の新たな更新計画が始動する。東日本、中日本、西日本高速道路会社のNEXCO3社は、新たに更新が必要な箇所を取りまとめた計画の概略を公表した。総延長約500キロで、概算事業費は約1兆円と試算する。2032年3月には、3社が管理する高速道路延長約1万キロのうち、約6割で供用後40年以上が経過する。3社は災害時の代替路の確保や地域活性化などの高速道路ネットワークの役割を果たすため、更新事業を着実に進めていく。更新計画の延長と事業費の内訳は、東日本が延長180キロで3000億円、中日本は延長130キロで4000億円、西日本が延長190キロで3000億円となっている。新たに更新が必要となった箇所と同様の構造・基準の箇所は、今後の点検結果などを踏まえ、更新事業の追加を検討する。」(『建設通信新聞』2023.02.01)
●「国土交通省が1月31日に公表した2022年の建築着工統計調査報告によると、1-12月の新設住宅着工戸数は85万9529戸で、前年に比べて0.4%増えた。貸家と分譲住宅がけん引して2年連続の増加となったが、過去10年間で最も少なかった持家の低迷が響いてコロナ禍前の90万戸台には届かなかった。」(『建設通信新聞』2023.02.01)
●「住宅に使う国産集成材の値下がりが止まらない。2月時点の流通価格は2022年前半の過去最高値に比べて4割安く、1年8カ月ぶりの安値に沈む。住宅着工が落ち込んでいるため、21年の木材不足を受けて商社などが積み上げた在庫の消化が遅い。欧州産の原料価格も下落基調にあり、値下がりは今後も続く可能性がある。」(『日本経済新聞』2023.02.11)
●「国土交通省は10日、建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度に関する検討会の第3回会合を開き、改正建築物省エネ法に基づく省エネ性能の表示ルールを大筋で取りまとめた。表示項目や方法を示すとともに、告示やガイドラインで定める事項を整理した。6月の告示公布、ガイドライン公表を予定する。2024年4月から制度を施行する。」(『建設通信新聞』2023.02.14)