情勢の特徴 - 2023年2月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は所管各分野のデータ連携基盤となる『国土交通データプラットフォーム(DPF)』の機能強化に向け、さまざまなデータを重ね合わせ一覧表示するデジタル地図化を進める方向性を打ち出した。各データを連携・統合しつつ、視覚化機能を充実させ、利活用の幅を広げる狙いがある。中小建設会社や地方自治体にもDXの機運を根付かせるにはデータの共通化、標準化の観点が必要との外部意見も出ており、近いうちに省全体のDXアクションプランに位置付ける方針だ。」(『建設工業新聞』2023.02.17)
●「岸田政権が看板政策の一つに掲げる『デジタル田園都市国家構想』。同構想ではデジタルの力を活用し、地方が抱える課題を解決するなど、これまで推進してきた地方創生の取り組みを一気に加速・深化させる狙いがある。…政府は昨年12月、地方創生に関する政策の方向性を示してきた『まち・ひと・しごと創生総合戦略』を抜本的に見直し、『デジタル田園都市国家構想総合戦略』(2023~27年)として打ち出した。総合戦略に盛り込まれた建設関係の施策を見ると、魅力的な地域づくりに向けた取り組みが目立つ。その一つがインフラ分野のDXだ。インフラ関係の各種手続きの効率化や、国土交通プラットフォームを活用した情報共有、現場作業の遠隔化・自動化・自律化などで生産性向上を目指す。建築分野のBIMと3D都市モデル『プロジェクト・プラトー』、不動産IDの連携は重要施策分野に位置付けられている。地域公共交通の維持に向けて、MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)や自動運転の活用拡大なども後押しする。このほか、デジタル実装の前提となるインフラの整備や人材育成。確保など基盤作りは国が強力に推進する。」(『建設工業新聞』2023.02.21)
●「公共工事の低入札価格調査制度の運用を巡り、いくつかの都道府県でダンピング受注の抑止効果に疑問符が付く状況となっていることが分かった。国土交通省が2021年度の調査実績をアンケートしたところ、実際に調査が多く行われているにもかかわらず、排除されるケースがほとんどない団体が複数あった。応札価格が低くても調査をかいくぐられている可能性がある。国交省は低入調査の実効性が確保されているかどうか改めて各団体に注意喚起し、必要に応じ改善対応を呼び掛けていく方針だ。」(『建設工業新聞』2023.02.24)

労働・福祉

●「出入国在留管理庁の集計によると、建設分野で就労する特定技能外国人は2022年12月末時点で1万2776人だった。うち熟練した技能を持つ職長レベルの人材が対象となる『特定技能2号』には8人が認定されている。特定技能1号の在留者数は建設分野が全体の9.8%を占める。昨年6月末からの半年間で4276人増加。昨年8月の業務区分の再編・統合で技能実習からの移行がスムーズになり、より多くの認定を後押しした可能性がある。昨年12月からは建設技能人材機構(JAC)が新区分に基づく認定試験も開始しており、試験合格者も今後増えてきそうだ。職種別の在留者数は新区分の『土木』が3177人、『建築』が1354人、『ライフライン・設備』が305人。それ以外は旧区分での在留資格となっている。国籍・地域別ではベトナムが8847人と最多。次いでフィリピン、インドネシア、中国、カンボジア、ミャンマー、タイ、ネパールの順だった。圧倒的に男性が多いものの、女性の技能者19人も含まれる。特定技能2号の職種別(旧区分含む)内訳は▽土木=5人▽建築=1人▽コンクリート圧送=1人▽内装仕上げ=1人。国籍は中国が6人、ベトナムが2人。いずれも保有資格や現場で職長として活躍している実績などを踏まえ1号からの移行が認められた。JACは特定技能2号の試験内容を検討中。23年度の早い段階から実施を目指す。」(『建設工業新聞』2023.02.21)
●「政府は、建設職人基本法に基づいて策定する職人基本計画の変更案をまとめた。建設工事の安全衛生経費が下請負人まで確実に支払われるようにするための実効性ある施策として、安全衛生対策項目の確認表と標準見積書の作成・普及に政府が取り組むことを新たに位置付ける。建設業の労働災害で最も多い墜落・転落災害の防止対策充実・強化も必要事項に追加する。早期の閣議決定を目指す。…建設職人基本法は、政府が少なくとも5年ごとに検討し、必要に応じて基本計画を変更すると規定している。現計画の策定から2022年6月で5年が経過し、状況の変化に対応する必要があるため、与党の国会議員で組織する日本建設職人社会振興議員連盟の職人基本計画見直し検討会が22年11月に整理した見直しの方向性に沿って、両省が変更案を作成した。変更案に対して一般からの意見を今後募集する。主な見直し内容としては、国交省が事務局を担当した『建設工事における安全衛生経費の確保に関する実務者検討会』が、22年6月に公表した提言を反映する。具体的には、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策に、安全衛生対策項目の確認表と安全衛生経費の内訳明示に向けた標準見積書の作成・普及、発注者や建設業者、国民一般に対して安全衛生経費の必要性・重要性を発信する戦略的広報の実施を新たに位置付ける。国交省は22年11月に立ち上げたワーキンググループで、安全衛生対策項目の確認表と標準見積書の作成作業を進めている。」(『建設通信新聞』2023.02.22)

建設産業・経営

●「全国建設業協会(全建、奥村太加典会長)の『戦略的広報検討委員会』(委員長・浦江真人東洋大学理工学部建築学科教授)は、SNS(インターネット交流サイト)など新たなツールの活用を柱とする報告書をまとめた。『地域の守り手』として出動する災害・防疫活動の発信では発想の転換を促進。都道府県建設業協会傘下の会員企業に対し、自社の活動を写真や動画に記録しSNSなどで発信することも業務の一環として求めていく。…報告書の柱は▽スマートフォンを使いこなす若者に着目した広報手段▽一般にインパクトのある広報活動を奨励するための表彰制度▽災害・防疫対応に当たる地域建設業の効果的な広報発信―の三つ。若者に着目した広報手段ではスマホで閲覧できる動画投稿サイト・ユーチューブやツイッターなどSNSの活用を拡大。先行する都道府県協会や会員企業、他団体の事例も参考に検討を本格化する。表彰制度に関しては、毎年7月に都内で開催している『建設業社会貢献活動推進月間中央行事』で表彰する社会貢献活動の項目を拡充。従来の災害復旧支援や地域活性化などに加え『広報功労者表彰(仮)』を新設する。併せて『その他』としている社会貢献活動項目の一つを『社会貢献・SDGs(持続可能な開発目標)功労者表彰(仮)』に見直す。いずれも7月26日に都内で予定する23年度建設業社会貢献活動推進月間中央行事で具体化する。」(『建設工業新聞』2023.02.16)
●「建設業情報管理センター(CIIC、上田健理事長)は、約4.7万社の企業データを集計した『建設業の経営分析(2021年度)』をまとめた。自己資本比率が過去最高を更新するなど経営の健全性や生産性に関する指標の改善傾向は継続。ただし総資本経常利益率など収益性に関する指標は軒並み悪化しており。資材価格高騰や政府建設投資額の減少などが影響した可能性を指摘している。経営分析はCIICに経営状況分析を申請した企業の財務諸表を用いて実施。21年4月~22年3月に決算期を迎えた企業を調査対象に計26指標の動向を分析している。資本金5億円以上などの大企業は除外しており、中小建設企業分析に特化した基礎資料と位置付けている。収益性の指標となる総資本経常利益率は前年度比0.65ポイント減の5.02%となり、6年ぶりに悪化した。特に売上高5000万円未満の小規模事業者が2.09ポイント減の0.40%と減少幅が大きかった。地域別では全ブロックで前年度を下回った。」(『建設工業新聞』2023.02.22)
●「大手ゼネコンの不動産開発投資の稼ぐ力が向上している。清水建設がこのほど、私募不動産投資信託(REIT)を組成したほか、鹿島は銀座などでの高級物件開発に乗り出した。長期化する資材高などで主力の建設事業の収益悪化が鮮明になる中、粗利益率で2割を超える非建設事業を拡大。安定した利益成長を目指せる体質づくりを進める。…不動産投資を強める背景には建設事業の稼ぐ力の低下がある。東日本大震災の復興需要や東京五輪特需など好採算の工事が終息し、価格競争が激しかった際に受注した低採算の工事も増加した。そこに鉄筋やセメントなどの資材高が直撃。4社の今期の完成工事総利益は新型コロナウイルス禍前の19年3月期比では2割以上低い。このため連結全体の純利益も低迷する。鹿島は19年3月期比で4%減で済むが、大林組と大成建は4割前後減り、清水建はほぼ半減する。各社は安定成長の見込める事業を模索してきた。洋上風力などの再生可能エネルギー事業やインフラ運営などのPFI(民間資金を活用した社会資本整備)事業も手掛けているが、これらはまだ収益貢献に時間を要している。一方、不動産開発事業は『建築のノウハウが活用できるほか、施工受注の相乗効果が高い』(大和証券の寺岡秀明氏)こともあり、各社が投資を積極化している。」(『日本経済新聞』2023.02.25)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●公営住宅の改革を求めるシンポジウム(主催・全国公営住宅協議会)が19日、東京都内で行われた。集会では、国民の住まいを守る全国連絡会(住まい連)の坂庭国晴代表幹事が「公営住宅の空き家が10年間で倍増している。東京都で1万9千戸から3万8千戸に増えたのをはじめ、愛知県、大阪府、京都府も倍近い実態にある」と指摘した。それにもかかわらず東京都公営住宅協議会の調査によると、2021年5月募集の都営住宅の応募倍率は世田谷区下馬359倍、目黒区目黒281倍、荒川区町屋265倍、練馬区豊玉中263倍など超高倍率になっている。古田美光・大阪府公営住宅協議会会長は「大阪府は府営住宅を7万7千戸(2011年度約22万戸)に減らすとしている。15万8千円以上の月額所得があれば収入超過者として追い出すので、高齢・低所得者ばかりになり自治会活動が困難」などと訴えた。参加者からは「名義人が亡くなったときに配偶者などが使用を承継できる制度の対象を拡大するなど改善させた」などの発言もあった。入居収入基準を現行の月額所得15万8千円から20万円にして若い子育て世帯に入居機会を拡大し、コミュニティーの活性化を図るとともに公営住宅の新規建設が求められている。(『しんぶん赤旗』2023.02.21より抜粋。)

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