情勢の特徴 - 2023年3月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「公正取引委員会は1日、適正な価格転嫁の実現に向けて、『2023年中小事業者等取引公正化推進アクションプラン』を公表した。独占禁止法や下請法の執行強化を軸に、取引公正化への取り組みを進める。価格転嫁の円滑化に向けた書面調査を6月にも実施し、特にコスト構造で労務費の割合が高い業種を重点的に調べる。22年に実施した独禁法上の『優越的地位の濫用』に関する緊急調査や事業者団体への自主点検の結果を踏まえて取りまとめた。」(『建設通信新聞』2023.03.02)
●「総務省が3日公表した東京都区部の2月の消費者物価上昇率は生鮮食品を除いて3.3%と前月から1.0ポイント下がった。鈍化は1年1ヵ月ぶり。政府による電気・ガス代の負担軽減策が効いた。エネルギーも除いた伸び率はなお加速しており、インフレの基調がどう変わるかはまだ見通しにくい。」(『日本経済新聞』2023.03.04)
●「財務省が8日発表した1月の国際収支統計(速報)によると、貿易や投資などの海外との取引状況を表す経常収支は1兆9766億円の赤字だった。赤字は22年10月以来、3ヵ月ぶり。比較可能な1985年以降では、14年1月の1兆4561億円の赤字額を超えて過去最大となる。円安や資源高で輸入額が膨らんだ。中国向けの輸出停滞も響いた。経常収支は輸出から輸入を差し引いた貿易収支や、外国との投資のやり取りを示す第1次所得収支、旅行収支を含むサービス収支などで構成する。経常収支の赤字幅は前年同月の3.4倍になった。」(『日本経済新聞』2023.03.08)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は、時間外労働の罰則付き上限規制が2024年4月から建設業に適用されることを踏まえ、24年度から月単位での週休2日を目指す方針を明確に打ち出した。その実現に向け、1年前の23年度から週休2日を標準とした監督・検査対応を行うなど、五つの施策をパッケージとして展開する。月単位での週休2日確保に要する新たな経費補正措置は23年度に検討する。直轄土木工事・業務に適用する積算基準など改定内容の発表に併せて、2月28日に明らかにした。施策は、▽週休2日を標準とした取り組みへの移行▽工期設定のさらなる適正化▽柔軟な休日の設定▽経費補正の修正▽他の公共発注者と連携した一斉閉所の取り組み拡大――の五つ。連動して取り組むことで『休日の質の向上』を実現し、24年度から月単位での週休2日確保を目指す。」(『建設通信新聞』2023.03.01)
●「請負契約の適正化や重層下請構造への対応を議論している国土交通省の『持続可能な建設業に向けた環境整備検討会』は、2022年度内を目指す取りまとめで、建設業が直面する課題解決の方向性に、『受発注者間の適切な協議プロセス確保』『優良企業が伸びることができる仕組みづくり』など五つを位置付ける見通しだ。1日の第8回会合に提示した取りまとめの骨子案から明らかになった。五つの方向性の実現に向けた具体策も骨子案で示している。資材価格が高騰する中、公共工事はスライド条項で価格転嫁できる一方、民間工事は発注者との間で請負代金額変更の協議入りさえ困難との声が建設業界から上がっている。中央建設業審議会が作成・勧告する民間建設工事標準請負契約約款が利用されていなかったり、利用されても第31条(価格変動に伴う請負代金額の変更を求める条項)が削除されていることが主な理由だ。この課題解決に向けては、請負契約の透明性を高める取り組みなどを通じて受発注者間の適切な協議プロセスを確保し、建設生産プロセス全体での適切なリスク分担と価格変動への対応を目指すことを方向性に位置付ける。」(『建設通信新聞』2023.03.02)
●「国土交通省は災害復旧事業の実施に当たってCM(コンストラクションマネジメント)方式などの普及を進めるため、地方自治体が現時点で抱えている課題を調査した。結果によると全体の6割以上の自治体が『民間支援を活用したいが、できないと思う』と回答。理由としては予算確保の問題や、受け入れ体制の準備不足などが挙がった。同省は結果を今後の支援策の充実に生かす。」(『建設工業新聞』2023.03.02)
●「国土交通省は3日、公共工事品質確保促進法(品確法)の運用指針に基づく業務の2022年度調査結果を発表した。品確法で発注者の責務に位置付けられている業務のダンピング(過度な安値受注)対策は、政令市を除く市区町村で未導入が前年度に比べて50団体減った。市区町村における未導入の減少数は過去最大で、導入が着実に進んでいる。設計変更を未実施の市区町村も減少するなど、全体的に取り組みが改善している。」(『建設通信新聞』2023.03.06)

労働・福祉

●「全国建設労働組合総連合東京都連合会(菅原良和執行委員長)が、2023年度の賃金要求内容を検討するために実施した組合員アンケートによると、月収が50万円以下の建設労働者は全体の約8割を占めた。同連合会は東京都内において、一人の収入で家族が世間一般的な生活を行うためには、月収60万円は必要と主張。月20日程度の稼働を念頭に、日額5000円以下の賃上げを求めていく。」(『建設通信新聞』2023.03.02)
●「国土交通省の『持続可能な建設業に向けた環境整備検討会』は、1日に開いた第8回会合で、論点となっている『受注者による不当廉売の制限』などを制度化することにより、公共工事設計労務単価相当の適正な賃金が技能者に行き渡ることを示すイメージを明らかにした。労務費を圧縮できなくすることで、施工の生産性や品質で競争する環境の整備を目指すとしている。建設業法第19条の3(不当に低い請負代金の禁止)にある『通常必要と認められる原価』の基準について、公共工事設計労務単価などを基にした標準労務費を中央建設業審議会が新たに作成・勧告する。併せて、不当廉売を制限する措置を導入し、落札率などを勘案した上で標準労務費を一定程度下回った取引に対して、許可行政庁が注意や勧告を実施可能にする。材工分離した標準見積書や請負代金内訳書の使用を推進し、労務費の見える化も行う。また、M&A(企業の合併・買収)の契約で用いられる『表明保証』を参考に、不当廉売を実施していないことと、技能者に対して公共工事設計労務単価相当の適正な賃金を支払うことの2点を受注者に対して契約時に誓約させる取り組みを制度化する。これらの措置により、労務費を圧縮した安値競争に歯止めを掛ける。下請け企業は公共工事設計労務単価相当の労務費を受け取ることができ、建設キャリアアップシステム(CCUS)のレベルに応じた賃金を技能者に支払うことが可能になるとみる。」(『建設通信新聞』2023.03.03)
●「建設キャリアアップシステム(CCUS)の能力評価で判定された技能レベルを独自の手当に反映して技能者に支給する動きが、元請け企業に広がっている。レベルが上がるほど支給される手当が増え、技能者の処遇改善につながることから、旗振り役の国土交通省は優良事例の水平展開を引き続き進める方針だ。CCUS登録技能者を対象に、元請け企業が建設業退職金共済制度の掛け金を負担する取り組みも広がりを見せている。…国交省の調べによると、能力評価で判定された技能レベルを反映し、カードの色に応じた手当を技能者に支給しているのは、西松建設、村本建設、奥村組、新谷建設。青木あすなろ建設、鴻池組、東急建設、東洋建設、ヤマウラは、手当への技能レベル反映を検討するとしている。国交省は、1日から直轄工事で適用している23年度公共工事設計労務単価に、下請け企業から支払われる手当と元請け企業から技能者に直接支払われる手当の両方を反映済み。一方、CCUSの登録技能者を対象に建退共の掛け金を負担しているのは、鹿島、清水建設、竹中工務店、三井住友建設と矢作建設工業は検討予定とした。これらに該当しない独自の取り組みとして、五洋建設が自社の労務費補正制度で出勤確認にCCUSの履歴を利用可能にしている。このほか、各社の優良職長制度でCCUS登録を要件にしているケースがある。CCUS活用の対応を検討中とする元請け企業も一定数いるため、技能レベルに応じた独自手当支給などの取り組みは今後さらに広がっていきそうだ。」(『建設通信新聞』2023.03.10)
●「長野県松本市は、週休2日工事の本格導入に向け市内企業に実施したアンケート結果を公表した。工事現場の週休2日制が必要との回答が59%となった一方、土日を休日とする完全週休2日制または週休2日制を達成している企業は33%にとどまった。若者を雇用するため、週休2日が必須条件とする意見も多数あった。…週休2日工事を実施する上で発注者に求める点は、『余裕を持った工期設定』が101件で最も多く、工事費のアップ(83件)、発注時期の平準化(64件)、業界全体の意識改革(54件)と続く。個別意見では、『新卒・若年者を雇用する場合にも週休2日は当たり前の条件なので、建設業の発展のためにも緊急課題である』『市発注工事が週休2日になれば会社としても完全週休2日制に移行できる』など、市に対して積極的な施策展開を求める意見が多数寄せられた。『特に建築業界は日曜日も働きている業者が多くいる。業界全体の意識改革がない限り完全実施は難しい』との指摘もあった。」(『建設通信新聞』2023.03.10)
●「建設キャリアアップシステム(CCUS)の技能者登録を条件に、元請のゼネコンが民間工事を含めて建設業退職金共済(建退共)制度の掛け金を金額負担する動きが広まっている。国土交通省が日本建設業連合会(日建連)会員企業を対象に調査したところ、鹿島と清水建設、竹中工務店が全額負担に取り組み、複数社が検討している。CCUSのレベル別に手当てを支給する動きも拡大しており、自社現場の担い手確保などを目的としたCCUSの積極的な活用例が目立っている。」(『建設工業新聞』2023.03.10)

建設産業・経営

●「最終段階の議論が進む国土交通省の有識者会議『持続可能な建設業に向けた環境整備検討会』で、民間工事を含めて『発注者の責任』を求めるかどうかという論点が浮上している。民間建設工事標準請負契約約款(民間約款)の原則的利用など、検討会が提示する多くの施策案が効果を上げていくには『発注者の理解や協力が必要』との認識で委員らが一致している。年度末に取りまとめる報告書の中で、同省などに何らかの対応を働き掛けることになりそうだ。」(『建設工業新聞』2023.03.03)
●「木材や鋼材など建設資材のメーカーや流通の現場で在庫がだぶついている。都心部の再開発ビルなどの需要は堅調な一方、中小ビルや住宅の建設が停滞して出荷が振るわないためだ。需要減少を受けて建設資材メーカーは生産調整に取り組むが、出荷が進まないため、在庫が減らない。高止まりしてきた資材価格も一部で弱含み始めた。」(『日本経済新聞』2023.03.09)
●「国土交通省は、建設キャリアアップシステムに登録・蓄積されている事業者情報や建設技能者の能力評価を活用し、専門工事企業の施工能力などを見える化する制度で、コンクリート圧送とエクステリアの2職種の能力評価基準を10日付で追加認定した。基準を作成した団体が各企業の申請に基づいて能力評価を順次実施する。今回の追加で認定済みは11職種となった。」(『建設通信新聞』2023.03.14)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「政府は原則40年、最長60年と定める原子力発電所の長期利用に道を開く。28日、原子力規制委員会による安全審査で停止していた期間などについて延長を認める法案を閣議決定した。電力の安定供給と脱炭素化のためには原発のさらなる活用が必要だと判断した。」(『日本経済新聞』2023.03.01)
●東京電力福島第1原発事故で、避難指示が出ていなかった福島県いわき市に居住していた住民1339人が東電と国に約13億6000万円の損害賠償と原状回復などを求めた「いわき市民訴訟」(伊東達也原告団長)の控訴審判決が10日、仙台高裁であった。小林久起裁判長は、国の責任を認めず、東電だけに計3億2660万円の支払いを命じた。2年前の一審判決では国の責任を認めていた。同種の集団訴訟で国の責任を認めなかった昨年6月17日の最高裁判決後、初の高裁判決だが、最高裁判決に従うものになった。小林裁判長は、国の機関が地震予測「長期評価」(2002年7月)を公表した翌年の03年から事故の発生まで8年2カ月の間に、国が東電に規制権限を行使しなかったのは「違法な不作為」であり、「極めて重大な義務違反」と繰り返し述べた。更に規制権限を行使していれば、防潮堤の設置や建屋の水密化で事故が避けられた可能性は「相当程度高いものだった」と認めた。その上で小林裁判長は、津波対策には「幅のある可能性があり、内容によっては、必ず重大事故を防げたはずだと断定できない」と判断。国の規制権限の不行使によって「違法に損害を加えたと評価できない」と、国の責任を否定した。(『しんぶん赤旗』2023.03.11より抜粋。)

その他