情勢の特徴 - 2023年3月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

行政・公共事業・民営化

●民営化された高速道路会社に維持・修繕などで「コスト縮減努力」を進めさせるため、高速道路を保有する「日本高速道路保有・債務返済機構」が道路会社のコスト削減に助成金を出していることが23日、本紙の取材でわかった。点検・補修の後回しが原因だった笹子トンネル事故(2012年)の背景に、この奨励策がなかったか問われる。…高速道路で新設や改築、修繕をする際、機構と会社は協定を結ぶ。協定で決めた額より工事費が低く抑えられた場合、会社の経営努力で縮減した額の半分が助成される。(『しんぶん赤旗』2023.03.24より抜粋。)
●「国土交通省は24日、公共工事入札契約適正化法(入契法)に基づく入契調査の2022年度結果を発表した。工期設定で週休2日など公共工事従事者の休日を考慮しているのは、国が7割、特殊法人等と都道府県が9割、政令市が10割だったのに対し、市区町村が5割弱にとどまった。国交省は市区町村の取り組みが十分に進展していないことを問題視し、調査結果を踏まえ、さらなる適正化を今後要請する方針だ。」(『建設通信新聞』2023.03.27)
●「国土交通省は民間工事の発注者から直近の取引実態を聴取するモニタリング調査の結果を公表した。大手企業の発注・契約担当者を対象に、適正な請負代金や工期を見込んだ契約締結、契約変更の実施状況を確認。物価などの変動に基づく契約変更条項がないケースが26%、工期設定で長時間労働の是正や週休2日を考慮していないケースが24%あるなど、改善が必要な実態がいくつか明らかになった。国交省は来年度以降も調査を継続し、適切な対応が現場レベルで浸透するよう働き掛けていく考えだ。」(『建設工業新聞』2023.03.28)
●「国土交通省の『持続可能な建設業に向けた環境整備検討会』は29日、最終会合を開き、提言をまとめた。建設業は今後、『発注者を含む建設生産プロセス全体での信頼関係とパートナーシップの構築による適切なリスク分担と価格変動への対応』『施工の品質などで競う新たな競争環境の確保による建設業全体のさらなる持続的発展』の2点を目指すべきとしている。具体策には23項目を列挙した。国交省は中央建設業審議会の場で4月以降に制度化などを議論する方針だ。具体策は、▽請負契約適正化▽建設現場における責任の所在や役割の明確化▽施工に関する品質の確保▽賃金行き渡り――の四つの方向性に沿って示している。」(『建設通信新聞』2023.03.30)

労働・福祉

●「岸田文雄首相は15日、首相官邸で政府と経済界、労働団体の代表者による『政労使』の会議に出席した。最低賃金の全国加重平均を2022年の961円から23年に1000円へ上げる目標を示した。非正規雇用も含めた幅広い賃上げを訴えた。『今年は1000円を達成することを含め最低賃金審議会で明確な根拠のもと、しっかり議論いただきたい』と述べた。地域間格差の是正も必要だと強調した。」(『日本経済新聞』2023.03.16)
●「厚生労働省が16日にまとめた2022年(1-12月)労働災害発生状況(速報、3月7日時点)によると、建設業での死亡者数は、前年同期比(前年同時点比)3.5%減(10人減)の273人と、2年ぶりに減った。近年の確定値までの推移から、5月にまとめる22年の建設業死亡者数の確定値は280人弱程度と推計され、21年の確定値288人は下回る模様だ。…建設業の業種別死亡者数は、土木が105人、建築が108人、そのほかが60人。都道府県別では東京が25人と最も多く、北海道22人、茨城、静岡、愛知、大阪の4府県が各12人、福島10人と7都道府県が2桁。事故別では41.3%を占める113人が『墜落・転落』で最も多い。」(『建設通信新聞』2023.03.17)
●「建設キャリアアップシステム(CCUS)のカードをタッチした技能者に対し、元請けの費用負担で飲料を無償提供する『CCUS応援自販機』の設置現場が広がっている。未設置の現場に比べて就業履歴蓄積のタッチ率が高く、現場内のコミュニケーションも活性化するなどの導入効果が確認された。CCUSを運営する建設業振興基金は、カードタッチの習慣化が期待できる取り組みと受け止めており、元請けに引き続き周知していく考えだ。」(『建設通信新聞』2023.03.20)
●「都道府県発注工事の2021年度完了案件のうち週休2日を実際に達成した割合が全国平均で約3割にとどまることが、国土交通省の調査で分かった。週休2日を前提とした工事発注の割合を示す『公告ベース』の数値とは大きな隔たりがあり、現場の実態として休暇取得のための現場閉所などができていない可能性がある。国交省は受注者と意思疎通を取りながら、発注者指定型モデル工事の拡大や工期設定の適正化などに取り組む必要性を訴える。」(『建設工事新聞』2023.03.23)
●「住宅の建設や修繕の担い手である大工が減っている。2022年末公表の国勢調査によると、20年時点で30万人弱と過去20年で半減した。賃金水準などの待遇改善が遅々として進まず、若い世代が減り、高齢化が一段と進んでいる。新築建設では、すでに不具合の増加が一部で指摘されているほか、6000万戸超ある既存の住宅の修繕の停滞も懸念される。国勢調査によると、大工の人数は20年時点で29万7900人。40年前の1980年と比べると約3分の1の水準だ。建設業の労働環境に詳しい芝浦工業大学の蟹沢宏剛教授は『建設・土木作業員全体でも人数は減っているが、減り方はピーク期の300万人超から200万人弱へとおよそ3分の2の減少だ。大工の人数の落込みは著しい』と話す。ほかの業種より高齢化も際立つ。20年時点で大工の約60%が50歳以上で、うち30%超は65歳以上だ。一方、30歳未満は7.2%にとどまる。『このままなら、35年前後に約15万人となり、40年代前半には10万人を切る水準まで減る』(蟹沢氏)若い人材が入ってこない一因は、待遇改善が遅々として進んでいないことだ。建設職人を中心に構成する全国建設労働組合総連合(全建総連)の調査では、大工の年収は最新の21年で、雇用される労働者は約364万円、『一人親方』と呼ばれる個人事業主は約424万円にとどまる。いずれも電気工や鉄筋工など、ほかの分野を含む平均年収を下回っている。」(『日本経済新聞』2023.03.26)
●「日本建設業連合会(宮本洋一会長)は24日の理事会で、『2023年度時間外労働削減取り組み方針』を決定した。24年4月から始まる上限規制に対応するための『試金石となる重要な1年』と位置付け、23年度に特化した新たな方針を作った。四半期ごとのきめ細かな実態把握や、強化月間の設定による集中的な意識啓発活動などを新たに展開する。1年前倒しでの上限規制特例の全会員達成を目指し、宮本会長名による各社代表宛ての通知も同日付で発出した。」(『建設通信新聞』2023.03.27)
●「日本建設業連合会(日建連、宮本洋一会長)は2023年度、会員企業の時間外労働削減の取り組みを強力に後押しする。建設業に時間外労働規制が適用される24年4月まで残り1年。条件付きで原則の上限時間を超えて働くことが認められる特例措置の順守を1年前倒しし、23年4月までに達成する独自目標を設定。発注者向け説明資料として、余裕のある工期設定や4週8閉所実現などの理解や協力を求めるリーフレットを作るなど、さまざまな施策を展開していく。」(『建設工業新聞』2023.03.27)
●「国家公務員の働き方改革を検討する人事院の研究会は27日、最終報告書をまとめた。勤務終了後から開始までに一定の休息時間を確保する『勤務間インターバル』を原則11時間設けるよう求めた。希望者に『週休3日』を認めることも提唱した。実現には国会改革が不可避となる。…人事院は報告書を踏まえ2023年度内にも官僚の終業から始業までの休息時間の実態を調べる。働き方の改善策を各省庁に求め、数年以内に新たな制度の導入を検討する。研究会は午後10時以降の超過勤務命令の制限や翌日の勤務を始める時刻を遅らせるなどの案を例示した。」(『日本経済新聞』2023.03.28)

建設産業・経営

●「大成建設は16日、札幌市で建設中の複合ビルで、鉄骨の施工精度とコンクリートの厚さが発注者との契約に基づく規定を満たない施工不良があったと発表した。品質管理の担当社員が発注者側に虚偽の申告をしていた。建築基準法を満たさない恐れがあるため解体して建て直す。同社は同日、担当役員2人が31日付で引責辞任することも発表した。」(『日本経済新聞』2023.03.17)
●「日本建設業連合会(宮本洋一会長)は、『下請取引適正化と適正な受注活動の徹底に向けた自主行動計画』を改定した。国土交通省からの要請を受けて2017年3月に同計画を策定して以降、3回目の改定となる今回は、下請け企業から請負代金や工期の変更協議要請があった場合に、適切に協議に応じることなどを追記した。」(『建設通信新聞』2023.03.29)
●「斉藤鉄夫国土交通相と建設業主要4団体が29日に行った意見交換会では、建設業界の賃上げや働き方改革などを巡って意見が交わされた。技能労働者の賃金水準を2023年に『おおむね5%』引き上げる官民共通の目標設定には、各団体ともに厳しさをにじませながらも賛同。若年層の担い手確保には4週8閉所の実現が必要との認識で官民が共通するが、困難な課題を指摘する声も根深い。…賃上げ目標を巡っては、公共工事設計労務単価の引き上げが実質的な賃金上昇に結び付く好循環を堅持することで認識が一致。宮本日建連会長は『(適切な労務費が)技能者の皆さんにしっかり行き渡るよう、元請として1次下請はもちろん、2次以下の下請の皆さんにもお願いしていく』と話した。…当日まとまった『持続可能な建設業に向けた環境整備検討会』の提言への期待感は各団体ともに大きく、宮本日建連会長は受発注者のパートナーシップを構築する方向で今後の議論を主導するよう国交省に要請。奥村全建会長は公正取引委員会が違反行為の実態調査や取り締まりを強化していることを背景に『(受注者との協議に向け)声を掛けてくれる民間発注者が増えた』と最近の変化を口にし、『この流れをさらに進めてもらえれば価格転嫁が進む』と話した。建設キャリアアップシステム(CCUS)を巡って、斉藤国交相はレベル別の賃金目安を夏ごろに公表し、それに応じた賃金上昇を促す方針を説明。さらに登録者数の伸びに比べて能力評価(レベル判定)の実施状況が『道半ば』との認識を示し、『専門工事業団体を中心に会員企業などへの積極的な広報など一層の協力をお願いする』と述べた。」(『建設工業新聞』2023.03.31)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「大地震の際に建物を大きく揺らす長周期地震動で影響を受けるタワーマンションを巡り、耐震診断や改修を促す国の補助制度が利用されていない。国は南海トラフ巨大地震の対策地域で設計基準を2017年4月から強化したが、『旧基準』のタワマンは大阪市や神戸市などに約150棟ある。専門家は『被害を抑えるための対策につながる』と耐震診断の必要性を指摘する。…対策が進まない理由は住民の合意形成の難しさにある。さくら事務所(東京・渋谷)のマンション管理コンサルタント土屋輝之氏は『投機目的の所有者も多い』と分析。補助制度の認知度も課題で大阪市のタワマン管理組合の防災委員は『制度を知らない』と明かす。費用の大きさもある。東日本大震災後、大阪府咲洲庁舎には制振装置などに約40億円が投じられた。改修工事は最大数十億円の負担が避けられない。別の不動産大手は『改修にかかる費用と補助金に乖離(かいり)がある』と指摘する。」(『日本経済新聞』2023.03.19)
●「総務省は24日、京都市が導入を目指す空き家への課税に松本剛明総務相が同意したと発表した。空き家などの所有者は現在の固定資産税に加え、同税の半額程度の負担を新たに迫られる。子育て世帯への住宅供給が不足する京都市で新税導入が人口流出を防ぐ手立てになるのか注目を集める。」(『日本経済新聞』2023.03.25)
●「環境省は日本海溝・千島海溝沿いで想定されるマグニチュード(M)9級の巨大地震に伴う住宅がれきなどの災害ゴミは最大で2717万トンに達すると推計した。処理完了に3年かかった東日本大震災の約2千万トンを上回る。だが処理計画の策定を終えたのは関係市町村の50%にとどまっており、処理が滞れば復興の遅れに直結する。被害の少ない地域で処理する広域連携も含めて、可能な限りの期間短縮を目指す。」(『日本経済新聞』2023.03.27)

その他