情勢の特徴 - 2023年4月前半
●「企業倒産が増えている。東京商工リサーチが10日発表した2022年度の全国倒産件数は前の年度比15%増の6880件と3年ぶりに増えた。新型コロナウイルス禍を受けた実質無利子・無担保の『ゼロゼロ融資』の返済が本格化し、再建を断念するケースが増えた。物価高や人手不足も追い打ちとなり、3月単月では前年同月比4割増と異例の伸びを示した。歴史的低水準に抑えられてきた倒産は転換期を迎えている。」(『日本経済新聞』2023.04.11)
●「インフラメンテナンスの効率化や高度化を後押しする新技術の導入が地方自治体で思うように広がっていない。国土交通省の2022年度調査によると、約9割の自治体が新技術を導入しようとする意識を持つ一方、実際に導入事例があるのは約3割にとどまった。背景にはメンテナンスに充てる予算や技術者の不足があると考えられる。特に人口5万人未満かつ土木技術者数5人以下・土木費年間10億円以下の小規模市町村は導入が著しく遅れている。」(『建設工業新聞』2023.04.11)
●「建設産業人材確保・育成推進協議会(人材協)は、2023年度から人材育成の新たな取り組みを始める。建設キャリアアップシステム(CCUS)の能力評価制度の利用を進めるため、評価基準がまだない分野の基準作成を支援する。職業訓練校が実施する技能研修の充実に向けて、教育訓練カリキュラムの開発なども助成する。併せて、若年層の入職促進の取り組み強化へ、人材協に産学官のタスクフォース(TF)を5月にも新設する。」(『建設通信新聞』2023.04.05)
●「政府の有識者会議は10日、建設分野などで外国人の受け入れに活用されている技能実習制度と特定技能制度の在り方について、今春にまとめる中間報告書のためのたたき台を公表した。制度目的と運用実態が乖離(かいり)し、人権侵害が生じているとの指摘もある技能実習制度は廃止し、特定技能制度とは別に、人材確保・育成を目的とする新たな制度の創設を検討すべきとしている。」(『建設通信新聞』2023.04.11)
●「厚生労働省がまとめた1月の毎月勤労統計調査の結果(確報値)によると、建設業の就業者に支払われた現金給与総額(1人当たり平均)は前年同月比0.7%減の36万3215円だった。常用雇用労働者総数は、1.1%増の273.9万人。月間総実労働時間が0.9%減の148.0時間となった。5人以上が働く事務所を対象に調査した。建設業の就業者に支払われた1人当たりの平均給与総額のうち、固定給の「所定内給与」は0.1%減の32万0490円。残業手当など『所定外給与』は7.0%減の2万4116円、賞与に当たる『特別に支払われた給与』は1.5%減の1万8609円だった。建設業の常用雇用労働者の入職率(新たに就職した人の割合)は0.15ポイント下回る0.88%。離職率は0.05ポイント低い1.06%になった。建設業の月間実労働時間を見ると、総実労働時間のうち、所定内が0.9%減の135.2時間、所定外が0.8%減の12.8時間だった。出勤日数は0.2日少ない18.0日となった。」(『建設工業新聞』2023.04.11)
●「日本商工会議所、東京商工会議所が実施した『最低賃金および中小企業の賃金・雇用に関する調査』の結果によると、建設業で『人手が不足している』と回答した企業は約8割に上った。全産業合計の約6割と比べても高水準で、業種別では最も高くなっている。また、2023年度に賃上げの実施を予定する企業は全体で約6割に上り、引き上げ率を2%以上とする企業が約6割に達している。調査は全国の中小企業6013社を対象に2月に実施し、3308社から回答を得た。(回答率55.0%)。建設業は536社が回答した。『人手が不足している』と回答した企業は前年同期比3.6ポイント増の64.3%だった。業種別では建設業が78.2%と最も高かった。次いで、情報通信・情報サービス業、運輸業、介護・看護業、宿泊・飲食業などとなっている。」(『建設通信新聞』2023.04.12)
●労働運動総合研究所(労働総研)は、「最低賃金が全国一律1500円になったら生活はどう変化し、経済はどう変わるか」と題する報告を発表した。106.6万人分の新たな雇用が生まれ、国内総生産(GDP)は10.5兆円(1.9%)上昇し、税収は2兆円増加するとの経済効果を試算している。…全労連加盟の地域組織が全国で協力したこの調査によると、生計費に地域間格差はない▽普通の暮らしをするために必要な費用は、月額24万~26万円ほど▽時給換算で1600~1700円が必要―などが明らかになった。最低生計費調査と「若者の仕事と暮らしに関するアンケート」(労働総研調査、18~19年)を合わせ、世帯類型と年収の関係を調べると、若者が親からの独立を促進されるボーダーは「年収300万円」で、全国一律1500円の水準が必要だと指摘。30代夫婦と子ども2人の4世帯の最低生計費は世帯年収550万~600万円(税・社会保険料込み)で、最賃1500円がほぼ相当するとしている。報告は、最低賃金引き上げこそ若者の自立や少子化問題の切り札だと強調している。(『しんぶん赤旗』2023.04.13より抜粋。)
●「建設工事の現場レベルで法定福利費を内訳明示した標準見積書の活用が浸透していない。国土交通省が元請各社の支店や現場所長に取引実態を直接ヒアリングした2022年度のモニタリング調査で、下請に標準見積書の使用を働き掛けている元請は15%にとどまった。企業単位を対象とする下請取引等実態調査の数値(22年度69.3%)、企業規模が比較的大きな元請が対象だった前年度のモニタリング調査の数値(37%)をいずれも下回る。国交省は調査対象企業に改善を求める文書を送った。」(『建設工業新聞』2023.04.07)
●「民間信用調査会社の東京商工リサーチが10日発表した2022年度(22年4月~23年3月)の建設業倒産件数(負債1000万円以上)は前年度比15.2%増の1274件となり、3年ぶりに増加した。…同社は直面する建設資材の歴史的な高騰や労務費など工事コストの上昇が影響し、主に下請の立場で価格転嫁が難しい中小・零細企業の経営を圧迫したと分析。コロナ禍で資金繰りの緩和に大きな効果があった無利子・無担保融資の返済や経済活動の本格的な再開に伴う新たな資金需要への対応も必要となる中、自助努力が限界に達した企業を中心に倒産件数のさらなる増加を懸念している。」(『建設工業新聞』2023.04.11)
●「ドイツで15日、国内最後の原子力発電所3基が稼働を終える。当初は2022年末の停止を目指していたが、ウクライナ危機に伴うエネルギー不安からショルツ政権は3ヵ月半の運転延長を認めた。電力事業者は原発を電力網から切り離し、最大15年ほどかかる長期の廃炉作業に移る。…ショルツ政権は廃炉作業と同時に、風力など再生可能エネルギーによる発電を拡大する。30年には電力の8割を再エネで賄う計画で、32年までに国土面積の2%を風力発電に充てるなど各州に用地取得も義務付ける。」(『日本経済新聞』2023.04.15)