情勢の特徴 - 2023年4月後半
●「東京商工リサーチが19日発表した2022年度の首都圏1都3県の倒産件数(負債額1000万円以上)は、前年度比14%増の2189件と3年ぶりに増加に転じた。新型コロナウイルス禍を受けた資金繰り支援策の効果が薄まり、物価高や人手不足も重なって経営環境を圧迫した。倒産件数が2ケタ増となるのはリーマン・ショック以来14年ぶりという。都県別では東京が1227件、神奈川が430件、埼玉が297件、千葉が235件といずれも前年度を上回った。負債総額は3.3倍の1兆5926億円。自動車部品大手マレリホールディングスの負債額1兆1330億円が全体を押し上げた。産業別の倒産件数では『サービス業他』が18%増の700件と最多で、『建設業』が13%増の364件と続いた。倒産原因は『新型コロナ』が大幅に増え、業績回復の遅れが目立つ。賃上げや採用難が影響する『人手不足』関連の倒産も増えている。」(『日本経済新聞』2023.04.20)
●「中央建設業審議会(中建審、大久保哲夫会長)の総会が18日に東京都内で開かれ、先月公表された有識者会議『持続可能な建設業に向けた環境整備検討会』の提言をベースとした法制度の整備・改正に向けた議論が本格スタートした。中建審と社会資本整備審議会(社整審)産業分科会建設部会に設置する合同の基本問題小委員会で5月から詳細検討に入り、8月をめどに制度設計の大枠を固める。建設業法の改正が必要な事項などが含まれる提言の内容を法制度にどう落とし込むか、今後の議論の推移に注目が集まる。」(『建設工業新聞』2023.04.19)
●「国土交通省と厚生労働省は、時間外労働の罰則付き上限規制が建設業に適用されるまで1年を切ったことを受け、2023年度に連携を強化する。集団的手法と個別的手法の両面で発注者と元請けに対する取り組みを共同で展開し、建設業法と労働基準法を周知するとともに、順守に向けた対応の改善を一層働きかける。個別的手法は新たな取り組みで、国交省が建設現場を訪問して実施する調査に厚労省の労働基準監督署が同行する。」(『建設通信新聞』2023.04.18)
●「国土交通省不動産・建設経済局建設業課の山王一郎適正取引推進指導室長はインタビューに応じ、2019年の建設業法改正で追加した第19条の5(著しく短い工期の禁止)について、違反の恐れがある工事を確認したため、元請けに初めて行政指導したことを明らかにした。第19条の5と、24年4月から建設業に適用される時間外労働の罰則付き上限規制は『リンクしていて、別物ではない』と指摘。上限規制適用まで1年を切ったことを踏まえ、新たなモニタリング調査などを通じて適正工期確保の必要性を受発注者に訴えていくとしている。対象の事案は、工期12ヵ月、契約金額20億円程度の民間発注による新築工事で、『当初工程は4週6休としていたが、着工4ヵ月後から4週4休に変更し、11ヵ月後には4週ゼロ休と超過勤務による対応を元請けが下請けに求めていた』ことが調査によって判明した。『元請けが下請けに工期のしわ寄せを行っていると認められる』ことから、第19条の5に違反する恐れがあると判断し、行政指導の一種である『注意喚起』の文書を元請けに通知した。」(『建設通信新聞』2023.04.18)
●「厚生労働省は21日、『個人事業者等に対する安全衛生対策のあり方に関する検討会』(座長・土橋律東大大学院工学系研究科教授)を開き、これまでの議論を整理するとともに、引き続き検討する論点をまとめた。論点では前回までの議論を踏まえた修正案を示し、建設業での一人親方など個人事業者の業務上災害の報告対象案としていた『死亡災害と重度な負傷を伴う事故』の『重度』は、『休業1ヵ月以上』との案を初めて示した。報告主体として前回検討会で示した『災害発生場所(事業場など)を管理する事業者』に義務を課すことについては、新たに『遅滞なく』報告を求めるとした。ただ、『罰則なしの義務規定』とする考えを提示した。」(『建設通信新聞』2023.04.24)
●「外国人労働者の受け入れのあり方を議論する政府の有識者会議は28日、技能実習制度の廃止を盛り込んだ中間報告書をまとめた。人材育成だけでなく労働力の確保にも配慮した新制度を創設する。原則禁止してきた転職を容認する範囲や受け入れ人数の上限といった詳細を秋までに詰める。」(『日本経済新聞』2023.04.29)
●「公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)が建設産業の働き方改革の促進などを目的に改正(2019年6月施行)されてから4年がたとうとしている。休日などを考慮した適正な工期設定や、施工時期の平準化に向けた債務負担行為や繰越明許費の活用などを発注者の責務として明確に規定した改正内容が、東京都内の自治体で浸透し実践されているのか。日刊建設工業新聞社は23年度の当初予算で、投資的経費を300億円以上計上した都内8区を対象にアンケートを実施。時間外労働の是正に向けた各種施策の現状を聴取した。調査対象は▽足立▽江戸川▽大田▽品川▽世田谷▽中央▽中野▽港―の8区。施工時期の平準化策の一つとして、受注者が余裕をもって工事に従事できるよう、『前倒し発注』を実施しているのは、大田、品川、世田谷、中央、港の5区。年度末に集中する工事完了時期を分散するため、債務負担行為を活用するのは中央、中野など4区だった。中でも江戸川区は平準化の進捗(しんちょく)度合いを示す『平準化率』を事前に試算し管理。場合によっては『発注計画を見直す』といった改善策を講じるなど、きめ細かな対応を取る。」(『建設工業新聞』2023.04.25)
●「日本建設業連合会(宮本洋一会長)がまとめた2022年度の法人会員受注調査結果によると、総計は前年度比9.9%増の16兆9146億円となり、過去10年間で最高水準に達した。通年で好調が続いた民間受注は、18年度に次ぐ過去2番目の規模で着地。年度前半に伸び悩んでいた官公庁受注は、後半に大型案件が積み重なって巻き返した。結果として官民を合わせて国内計も過去最高額を記録した。受注額の高まりに、昨今の資材価格高騰や労務費の上昇がどの程度影響しているかは不明で、工事量自体の増加の程度は統計からは読み取れない。ただ、会員企業からは『23年度も案件はたくさんある』といった声が聞こえており、建設市場は引き続き活況と言えそうだ。」(『建設通信新聞』2023.04.28)
●「国土交通省は中古住宅の市場活性化に乗り出す。住宅の担保価値に立地の良さや省エネ改修などを反映する評価モデルを作り、中古物件でも住宅ローンを借りやすくする。築年数を主な評価基準にしていた現状の見直しを促し、米欧に比べ新築に偏る日本の住宅市場の課題を解決する。」(『日本経済新聞』2023.04.20)
●「政府は全世代型社会保障構築会議で、住宅政策を社会保障の重要な課題と位置づけた。住まいは誰にとっても安定した暮らしの基盤だ。住宅政策は公営住宅主体という自治体が多いなか、いち早く社会保障としての住宅政策に取り組む福岡県大牟田市を訪ねた。世界文化遺産の歴史的建造物に三池炭鉱の栄華をしのぶ大牟田市。人口はピーク時の半分の約10万人で、マンションが並ぶ傍らに空き家が点在する。ここで住まいの確保が難しい人に空き家を活用して住宅を提供する居住支援が行われている。主体は福祉や不動産に関連する官民の団体でつくる市居住支援協議会。NPO法人大牟田ライフサポートセンターと市建築住宅課が合同事務局となり、家を借りるのが難しい人と空き家の所有者の間を取り持つ。ライフサポートセンターはケアマネージャーや1級建築士を擁する。取り仕切るのは市職員として住宅政策や福祉政策に携わり『福祉と住宅をつなぐ』という著書のある牧島誠吾事務局長だ。家探しに苦労する人は若者から高齢者まで幅広く、背後に困難な事情が隠れている。低所得や母子世帯、要介護、心身の障害、ドメスティックバイオレンス(DV)、外国人――。多くは支援が必要な状況だ。相談に来た人からまず抱える事情を聞き出す。事情に応じて介護や障害、子育て関係機関が支援態勢を組む。同時に不動産関係者と調整して住宅を用意する。連帯保証人を引き受けたり、DV被害者に空き家を使ったシェルターを提供したりすることもある。入居後は定期的に見守って異変を察知できるようにする。」(『日本経済新聞』2023.04.20)