情勢の特徴 - 2023年5月前半
●学校法人が運営する保育園に地元産などの給食用食材を納入している中小業者が、学校法人からの消費税インボイス登録の確認に対して、「登録しない」と回答したことを理由に、3月末で一方的に取引を打ち切られる事例が発生した。相談を受けた全国商工団体連合会(全商連)は4月14日、事態の是正を求めて、文科省と財務省に要請した。財務省や公正取引委員会などが明示しているQ&Aでは、取引先にインボイス登録事業者にならなければ取引を打ち切るなどと一方的に通告することは独占禁止法に違反する恐れがあるとされている。(『全国商工新聞』2023.05.08より抜粋。)
●「国土交通省は、時間外労働の罰則付き上限規制が2024年4月から建設業に適用されることを踏まえ、23年度から直轄営繕工事で4週8休の週休2日確保を原則化した。原則全ての工事に週休2日促進工事の発注者指定方式を適用し、受注者希望方式では基本的に発注しない。発注者指定方式を原則化するのは、直轄土木工事と同様の対応となっている。」(『建設通信新聞』2023.05.08)
●「3月下旬の『日本経済新聞』に『大工半減』という見出しの記事が掲載された。2020年の国勢調査によると、大工の数は30万人弱で1980年の3分の1にまで減少しており、50歳以上が約60%、65歳以上が約30%を占めているという。特に65歳以上の割合はこの10年、急激に高まっている。記事では、人口減少等により新築住宅需要は減少するが、大工の減少はそれ以上の速度で進むことが指摘されている。実際、新設木造住宅着工戸数は、90年の72万7千戸から20年の46万9千戸へと35.5%減少しているが、大工数は、同じく73万4千人から29万7千人へと約60%減となっている。大工数の減少により、すでに現場での不具合の発生率が上昇していることが指摘されているが、住宅ストックの増加とともに、今後ますます増加が見込まれるリフォーム需要への対応も懸念される。そもそもリフォームとは、既にある住宅の一部を改築、改修する仕事だ。一定程度、規格化されている新設と異なり、住宅ごとに必要な作業が異なる。適切な作業を行うためには、大工として蓄積された知識や経験が不可欠だ。高い技能を有した大工の育成には時間がかかる。現時点でも65歳以上の割合が3割を占めていることから、今後の大工数の減少はますます進むだろう。安心・安全な住まいを確保するために大工の育成は急務だ。」(『全国商工新聞』2023.05.08)
●「建設業の担い手を確保し、時間外労働の上限規制を順守するためには、土日閉所による完全週休2日の実現が大きな鍵の一つとなる。日本建設業連合会(宮本洋一会長)が会員企業を対象に行ったアンケートによると、国土交通省直轄工事(道路・河川)では、土日閉所を基本とした4週8閉所が約6割となり、他発注機関に比べて取り組みが進展していることが分かった。日建連は2024年4月からの規制適用を見据え、今後は既契約を含むすべての工事で、土日閉所による週休2日制工事の導入を基本とするよう、各地方整備局などとの意見交換会で働き掛ける。」(『建設通信新聞』2023.05.10)
●「厚生労働省は、2023年度の安全衛生対策事業のうち、『建設業の一人親方などの安全衛生教育支援事業』を6月から始める予定だ。建設業の一人親方を含む個人事業者などの安全衛生対策強化の検討が進む中、一人親方が入場する建設工事現場の巡回指導に力を入れる。木造家屋建築工事現場などを主な対象として、指導員が安全な作業方法などを助言・指導する。事業では安全衛生の専門家約100人を指導員として委嘱し、現場を巡回して技術指導を実施する。全国で延べ2000現場以上の実施目標を掲げる。指導時間は1現場当たり2時間程度とする。建設業の一人親方などが安心して働けるよう、安全衛生に関する基本的な知識を十分身に付ける機会が得られなかった一人親方などの安全衛生活動を支援することが事業内容。安全衛生教育、工事現場巡回指導のほか、工事現場で一人親方などを管理する元請けなどの事業者にも、一人親方などに対する安全衛生対策を推進する。」(『建設通信新聞』2023.05.10)
●「建設産業人材確保・育成推進協議会(人材協)は、2023年度に創設した二つの助成事業のうち、建設キャリアアップシステム(CCUS)に関する助成金の詳細を決め、建設業団体からの申請受け付けを10日に始めた。6月16日まで募集している。二つの支援メニューを用意し、CCUSを活用した能力評価基準を検討する団体に100万円を上限、策定済みの基準に沿った技能者のレベル判定を促進する団体には30万円を下限として助成する。レベル判定の普及拡大が狙い。」(『建設通信新聞』2023.05.11)
●「政府の『技能実習制度および特定技能制度の在り方に関する有識者会議』の田中明彦座長(国際協力機構〈JICA〉理事長)は、技能実習制度の廃止と、同制度に代わる新制度の創設を求める中間報告書を11日に斎藤健法務相に手渡しした。実態に即した仕組みにするため、人材育成とともに人材確保を目的とする新制度への転換を提案。特定技能制度は引き続き活用する方向だ。新制度から特定技能制度への円滑な移行も実現する。今秋にも最終報告書をまとめる。」(『建設工業新聞』2023.05.15)
●「国土交通省は市区町村を含む全公共発注者を対象に、予定価格の積算時に使用する資材単価の設定方法を調査した。物価資料から引用し資材単価を設定している市区町村約1000団体のうち、約7割は最新情報に基づき全資材の単価を毎月更新していた。物価資料を引用していない市区町村の多くは、都道府県が使用する単価表や積算システムを利用していることも判明。直近の物価情勢を予定価格に反映させる動きを、都道府県から市区町村へと波及させていく必要がありそうだ。」(『建設工業新聞』2023.05.02)
●「国土交通省は建設大手50社の2022年度『建設工事受注動態統計調査』の結果を公表した。受注総額は前年度比9.5%増の16兆5377億円。2年連続の増加となり過去10年で最大だった。うち国内工事は7.8%増の15兆8852億円、海外工事は79.8%増の6525億円だった。工事種別の内訳は建築が8.7%増の11兆2943億円、土木は11.3%増の5兆2434億円だった。国内工事のうち公共機関発注は10.6%増の3兆7045億円で、うち国の機関が14.2%増の2兆5000億円、地方の機関が3.7%増の1兆2045億円。民間発注は6.5%増の11兆6357億円で、製造業や不動産業、金融業、保険業からの受注が増加。特に工場・発電所の受注が好調だった。海外工事の建築は98.6%増の2251億円、土木は71.3%増の4275億円だった。」(『建設工業新聞』2023.05.08)
●「日本建設業連合会(宮本洋一会長)は、適用まで1年を切った時間外労働規制をクリアする上で、大前提となる当初からの適正な工期の確保や、一時中止が生じた場合の適切な契約変更などを国土交通省をはじめとする発注機関に強く働き掛ける。日建連の会員調査結果によると、全体の4割以上を占める現場で当初発注工期が『短すぎた』との回答があったほか、同じく4割超で受注者の責によらない工事一時中止が発生し、そのうちの約4割では十分な工期延長が行われていなかった。また、土日閉所が進展しても、書類作成などに伴う平日の残業の多さがネックとなって規制クリアが難しい現状も判明。平日業務にも焦点を当て、技術者の増員や業務の外注に要する費用を設計変更の対象項目に加えるなど、法令順守を可能にする実態に即した制度運用を求めていく。」(『建設通信新聞』2023.05.10)
●「公共工事の現場で働き方改革が着実に進展している。日本建設業連合会(日建連、宮本洋一会長)が土日閉所を基本とする完全週休2日の取り組み状況を初めて調べた結果、国土交通省が発注した道路・河川工事の6割程度で進んでいることが分かった。休日出勤もカウントされる時間外労働罰則付き上限規制の適用開始まで残り1年弱。日建連は15日から全国9地区で開く国土交通省地方整備局など公共発注機関との意見交換会で、統一土曜閉所の推進などによる完全週休2日工事のさらなる拡大を呼び掛けていく。」(『建設工業新聞』2023.05.10)
●「日本建設業連合会(宮本洋一会長)が、公共工事における資材価格高騰への発注者の対応状況を調べたところ、国土交通省直轄工事(道路・河川)では、9割以上の現場でスライド条項が適用され、適切に価格転嫁されていることが分かった。一方、そのほかの発注機関は、直轄に比べて適用率が低いことも判明した、日建連では、全ての発注機関における適時・適切なスライド適用を訴えていく。日建連の会員調査によると、全体平均のスライド適用率は、全体スライドが79%、単品スライドが67%、インフレスライドが84%となった。このうち直轄(道路・河川)を見ると、全体は93%、単品は90%、インフレは94%に向上する。このほかの発注機関は、いずれも50-80%台となっている。全体、単品、インフレの各スライド条項の適用率はそれぞれ、直轄(港湾・空港)が63%、74%、67%、高速道路会社が73%、64%、74%、機構・事業団が85%、57%、89%、地方自治体が74%、58%、84%だった。」(『建設通信新聞』2023.05.11)
●「政府は分譲マンションの修繕方針などを決める住人集会について出席者の過半数の賛成で決議できるよう法改正を検討する。現在は欠席を反対と見なすため賛成不足で決議できない場合がある。…法相の諮問機関である法制審議会で議論し、2024年度にも区分所有法の改正をめざす。国土交通省によると、ほぼ全てのマンションは建設から30年たつまでに少なくとも1回は大規模修繕をする。築30年以上の分譲マンションは21年末時点で全国に249万戸ある。20年後にはおよそ2.4倍の588万戸になる見通しだ。適切な時期に修繕しないとマンションの価値が落ち所有者離れにつながる。老朽化を放置すれば外壁がはがれるような事故も起きかねない。階段やエレベーターの修理が必要になることもある。修繕決議の要件を緩和して改修を後押しする。」(『日本経済新聞』2023.05.01)
●「国土交通省は4月28日、2022年度の建築着工統計調査報告を公表した。新設住宅着工戸数は前年度比0.6%減の86万0828戸で、2年ぶりに減少した。貸家と分譲住宅は増加したものの、新型コロナウイルス感染症の拡大や資材価格高騰の影響で持ち家が大幅減となり、過去10年で9位の低水準となっている。利用関係別は、持家が11.8%減の24万8132戸で2年ぶりの減少、貸家が5.0%増34万7427戸で2年連続の増加、給与住宅が4.1%増の5720戸で2年ぶりの増加、分譲住宅が4.5%増の25万9549戸で2年連続の増加だった。分譲住宅の内訳は、マンションが10.8%増の11万3900戸で4年ぶりの増加、戸建住宅は0.1%増の14万4321戸で2年連続の増加となっている。国交省は、持家が大幅減になった要因として、オミクロン株の流行で住宅展示場の来場者数が減少したことと、資材価格高騰による住宅取得マインド低下の二つを挙げている。」(『建設通信新聞』2023.05.01)
●「震度6強の地震に見舞われた石川県珠洲市は人口の過半数が65歳以上という『超高齢化』地域だ。自力での移動が難しく、情報が届かない高齢者は生活もままならない。『もう気力がない』。諦めに近い声も聞かれた。県の昨年10月時点のデータでは、同市の住民の約52%が65歳以上。県全体の約30%を大きく上回り、県内市町で最も高齢化が進む。『どこが避難所か分からないし、そもそも遠くて行くのは難しい』。同市正院町地区の女性(88)は5日の地震以降、自宅にとどまった。1月に夫を亡くし、近くに身寄りはいない。防災情報が流れるケーブルテレビには加入せず、家の修理のためのブルーシートを市が配布していることを知らず、友人に届けてもらった。足が不自由だが、頼りにするスーパーの宅配サービスが一時中断。冷凍ご飯でしのいだ。自宅が傾き、家中に物が散乱しているが手を付けられないという。」(『日本経済新聞』2023.05.08)
●「東京電力福島第1原子力発電所事故による帰還困難区域のうち、特定復興再生拠点区域(復興拠点)から外れた地域に家がある住民に帰還意向を尋ねた結果、原発が立地する福島県大熊、双葉両町の対象世帯の23%が帰還を希望していることが10日、内閣府への取材で分かった。政府と両町は調査結果を基に除染や避難指示解除の範囲を検討する。両町の一部では本年度内に除染が始まる見通し。拠点外について、政府は2020年代のうちに希望者全員を帰還させる目標。帰還希望者の住宅や周辺道路などを『特定帰還居住区域』に設定し、除染や避難解除を進める。今国会で、関連する福島復興再生特別措置法改正案の成立を目指している。意向調査は両町と内閣府が共同で昨年8月に始め、今年3月末に締め切った。大熊町では597世帯のうち143世帯(24%)、双葉町では411世帯のうち93世帯(23%)が帰還を希望した。帰還するかどうか直ちに判断できない住民もおり、政府は調査を複数回行う考え。帰還困難区域を抱える他の自治体でも同様の調査をしている。」(『日本経済新聞』2023.05.11)