情勢の特徴 - 2023年5月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「政府は16日、『物価問題に関する関係閣僚会議』を開き、電力大手7社が申請していた家庭向け電気料金の値上げ幅を確定する査定方針を了承した。値上げは6月1日からとなる見通しで、標準的な家庭の電気料金の値上げ幅は14%~42%になる。火力発電に使う燃料の液化天然ガス(LNG)価格の上昇を理由に、東京電力ホールディングスなど7社が経済産業省に値上げを申請していた。東北、中国、四国、北陸、沖縄の電力5社が4月から、東電と北海道電力が6月からの改定を求めていた。値上げするのは家庭向けの規制料金で、経産相の認可を経て実施される。経産省が16日に示した標準的な家庭における電気料金の値上げ率は北海道が21%、東北が24%、東電が14%、北陸が42%、中国が29%、四国が25%、沖縄が38%となる。値上げ幅は北陸が最大で、東電が最小になった。」(『日本経済新聞』2023.05.16)
●「物価高が食品などのモノからサービスに波及する兆しをみせている。4月の消費者物価指数は、生鮮食品とエネルギーを除く総合が前年同月から4.1%上昇し41年7カ月ぶりの水準だった。サービス消費の腰折れを防ぐには物価と賃金を安定して伸ばすことが欠かせない。総務省が19日発表した4月の消費者物価指数(2020年=100)は、変動の大きい生鮮食品を除いた総合指数が前年同月比3.4%上昇した。プラスは20カ月連続で、3カ月ぶりに前月から伸び幅を拡大した。物価の基調を示す、生鮮食品とエネルギーを除いた指数は4.1%上昇した。4.2%だった第2次石油危機後の1981年9月以来の水準となった。生鮮食品を除く食料は9.0%のプラスと、9.1%だった1976年5月以来、46年11カ月ぶりの伸び幅で全体を押し上げた。原材料高騰の影響は続いており、4月は食品各社が一斉値上げに踏み切った。…国内需給で価格が決まりやすいサービスの上昇も目立ち始めた。公共サービスを除く『一般サービス』は前年同月比2.0%上昇した。消費増税の時期を除くと2.0%だった1995年2月以来、28年2カ月ぶりの上昇幅となった。」(『日本経済新聞』2023.05.20)
●「東京海上日動火災保険は築年数が古い住宅を対象に、個人向け火災保険の引き受けを厳しくする。築50年超の一戸建ての審査を代理店に任せず、自社で契約条件を決める運用に、22日までに切り替えた。災害の多発で損保大手の火災保険は2023年3月期決算で13年連続の赤字となった。大手各社は収支改善のために、24年度に火災保険料を1割超引き上げる見通しで、古い住宅に住む消費者の契約条件は一段と厳しくなる。」(『日本経済新聞』2023.05.23)
●「政府が2024年度から取り組む少子化対策の施策と財源案が分かった。施策は児童手当の拡充や保育サービスの充実を柱とする。事業費として年3兆円が必要と見込み、財源は1.1兆円を社会保障の改革、0.9兆円を消費税収などから捻出する。巨額の財源確保には、医寮や介護の大きな見直しが必要になる。…財源は3つの柱で構成する。1つ目は医療や介護の効率を高めて費用を抑える『社会保障改革』によるもので、最終的に0.9兆~1.1兆円を見込む。制度の見直しには時間がかかるため、年1800億円程度の財源捻出につながる改革を5~6年続ける案がある。これとは別に、政府として『既に確保が決まっている』とする予算を活用する。消費税収から0.2兆円、企業が負担する子ども・子育て拠出金で0.2兆円を見込む。歳出の見直しと既存の歳入で手当てできない部分について、企業や個人に追加の負担を求める。26年度にも医療保険料などへ上乗せする『支援金』の制度を設け、0.9兆~1.0兆円を賄う。中小企業などの負担緩和策も検討する。…施策面では、経済的支援の強化に1.5兆円をあてる。児童手当は所得制限をなくす。支給年齢も高校生まで延ばして月1万円を配る。3歳から小学生までの第3子以降は現状から倍増し月3万円とし、0歳から高校生までに対象も広げる案がある。保育サービスなどの拡充に0.8兆~0.9兆円を見込む。」(『日本経済新聞』2023.05.26)

行政・公共事業・民営化

●「与党が今国会への提出を目指している『国土強靭化基本法改正案』の概要が16日、明らかになった。現行の『防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策』後も中長期的に明確な見通しの下で対策を推進するため、同対策の後継計画を含む『国土強靭化実施中期計画』を法制化。政府の国土強靭化推進本部(本部長・岸田文雄首相)の下部に、同計画の策定や『国土強靭化基本計画』の改定に向けて議論する会議体を設ける。」(『建設工業新聞』2023.05.17)
●「危険な『盛り土』対策が本格的に動き出す。被害の恐れがある区域を指定して規制を強化する盛り土規制法が26日に施行。それに先立ち、国土交通省は17日、自治体向けの対応指針を大筋でまとめ、危機性がある土地の所有者らに崩落防止の行政処分を『躊躇(ちゅうちょ)なく』行うことを求めた。事前の規制と迅速な処分を両輪にした安全対策を自治体が厳格に進められるかどうかが、災害発生防止のカギを握る。」(『日本経済新聞』2023.05.18)
●「政令市を除く人口10万人以上の市区で調査基準価格や最低制限価格の算定式水準が不明確な73団体のうち18団体が、2016年以前の古い中央公共工事契約制度運用連絡協議会(中央公契連)モデルに相当する水準を設定し、調査基準価格などを低い価格で算定していることが、国土交通省の調査・分析で分かった。ダンピング(過度な安値受注)対策の取り組みが遅れていることから、国交省は調査に回答しなかった9団体と合わせた計27団体を今後ヒアリングし、最新の22年モデルに近づけるなどの改善を働き掛ける。」(『建設通信新聞』2023.05.18)
●「厚生労働省所管の水道行政を国土交通、環境両省に移管する法律が19日、参院本会議で可決、成立した。施設整備や災害対応業務など水道行政の大部分を国交省に移す。水質基準の策定など一部は環境省に移管する。これに合わせて国交省は『水道整備・管理行政移管準備チーム』を本省に近く設置し、円滑な業務移管に万全を期す。水道法や各省の設置法など20本以上の法改正を『生活衛生等関係行政の機能強化のための関係法律の整備に関する法律』として束ねた。施行日は2024年4月1日。水道行政の移管後、国交省は老朽化対策や耐震化などを含む施設整備や事業経営、災害時の復旧支援、渇水への対応といった業務を担う。水道基盤強化のため基本方針の策定や水道事業の認可などを行う。国交省が所管する他の社会資本との一体的な整備も可能になる。水道の災害復旧支援体制も充実。『公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法』の対策施設に追加し、激甚災害法の適用対象になる。『社会資本整備重点計画法』の対象にも加える。」(『建設工業新聞』2023.05.22)
●「中央建設業審議会(中建審)と社会資本整備審議会(社整審)産業分科会建設部会に設置する合同の基本問題小委員会が22日に開かれ、国土交通省が法制度の整備・改正を通じ短期的に実現を目指す事項を提示した。建設工事の受発注者間・元下間の請負契約にフォーカスし、▽請負契約の透明化による適切なリスク分担▽賃金引き上げ▽働き方改革など―の三つのテーマで議論する。次回会合以降、数カ月後の中間まとめに向けテーマごとに具体的な方策を詰めていく。」(『建設工業新聞』2023.05.23)
●「22日に開かれた中央建設業審議会と社会資本整備審議会の基本問題小委員会で、建設業の持続可能性確保に必要な施策の議論の進め方について、国土交通省が提示した三つの論点のうち『賃金引き上げ』に対し、さまざまな立場の委員から多くの意見が上がった。建設業界の委員からは、建設業が持続可能な産業になるためには処遇改善による担い手の確保が不可欠として、技能者の賃上げに向けた実効性のある施策導入を求める声が相次いだ。『持続可能な建設業に向けた環境整備検討会」が3月にまとめた提言の具体化に向け、実務的な議論を開始した22日の会合で、国交省は喫緊に制度改正などで対応する必要があるとして、8月をめどとする中間取りまとめの論点に▽請負契約の透明化による適切なリスク分担▽賃金引き上げ▽働き方改革など――の3点を提示。主にこの3点に対し、委員20人らが意見を表明した。立場を超えて多くの委員から意見が上がったのが、『労務費を原資とする低価格競争を防止する仕組み』や『適切な労務費が確保され、支払われるための方策』などを対応の方向性とした『賃金引き上げ』の論点。荒木雷太岡山県建設業協会長は『地方の零細土木会社は持たなくなる。黒字廃業が多発している。人が来ないからだ』と地方における建設業の現状を説明した上で、『賃金引き上げのスキームをつくることが一番重要』と話した。岩田正吾建設産業専門団体連合会長も賃金の低さから『若い人が来ない』と訴え、『仕事量で請負価格が変動することが問題。生活が安定しないと間違いなく人は離れていく。標準的な請負価格帯を定める必要がある』と指摘した。小倉範之全国建設労働組合総連合書記次長は『1次や2次の下請け、一人観方を含めた小規模事業者が適正な利益を確保するとともに、そこで雇用されている技能者の処遇が改善されなければ、持続可能な建設産業にはなりえない』と主張した。」(『建設通信新聞』2023.05.24)

労働・福祉

●「政府は16日、新しい資本主義実現会議の第18回会合を開き、三位一体労働市場改革の指針をまとめた。『リスキリング』『職務給の導入』『労働市場の円滑化』の三位一体の労働市場改革を進め、同じ職務でありながら日本企業と外国企業の間に存在する賃金格差の縮小などを目指す。中小・小規模企業の賃上げに向けた環境整備の一環として、労務費の転嫁の在り方に関する指針を年内に定めることも位置付けた。」(『建設通信新聞』2023.05.17)
●「経団連(十倉雅和会長)は、『DX時代の労働安全衛生のあり方に関する提言』をまとめた。建設業で働く一人親方など個人事業者の安全衛生対策を巡り、雇用関係がないため事業者や注文者が直接命令をするのは困難と指摘。個人事業者が自ら安全確保に努めるとともに、事業者らが講じる労働災害防止措置への協力を義務付けるよう求めた。実効性のある労災防止措置を展開するため、個人事業者の災害実態を把握する仕組みの導入を要請した。」(『建設工業新聞』2023.05.18)
●「建設現場でアスベスト(石綿)を含んだ建材を扱い、健康被害を受けたとして元労働者と遺族が起こした集団訴訟は19日、東京高裁で一部の原告と建材メーカー、ノザワ(神戸市)との間で和解が成立した。弁護団によると、2008年以降に全国で起こされた訴訟でメーカーが原告との和解に応じるのは2例目。雇用や契約の関係にない元労働者との和解成立は初めてという。和解条項は、ノザワが石綿を含む建材への警告表示義務を怠ったとして賠償責任を認めた最高裁判決を『厳粛に受け止める』とし、元労働者や遺族の計4人に謝罪した上で解決金を支払う内容。金額は非公表としている。」(『日本経済新聞』2023.05.20)
●「2022年(1-12月)の建設業での労働災害による死亡者数は、2年連続して増え、休業4日以上の死傷者数が2年ぶりに減少したことが、厚生労働省が23日にまとめた22年の労働災害発生状況(確定値)で分かった。新型コロナウイルス感染による労災者数を除いた死亡者数は前年比1.1%増(3人増)の281人となった。2年連絡して増加したものの、4年続けての300人未満は維持した。死傷者数は2.6%減(387人減)の1万4539人だった。」(『建設通信新聞』2023.05.24)
●「厚生労働省は、労働災害統計の死亡災害発生状況には含まれない建設業での『一人親方』の死亡者数が、2022年(1-12月)は前年比15人減の36人だったと明らかにした。労働者扱いとはならない中小事業主や役員、家族従事者も含めた『一人親方など』の22年死亡者数は22人減の72人だった。」(『建設通信新聞』2023.05.24)
●「厚生労働省は23日、2022年度(22年4月~23年3月)の毎月勤労統計調査の結果(確報値)を公表した。建設業の就業者に支払われた現金給与総額(1人当たり平均)は前年度比2.7%増の43万0931円。常用雇用労働者総数は1.9%増の274.2万人、月間総実労働時間が0.6%減の163.8時間になった。5人以上が働く事業所を対象に調査した。建設業の就業者に払われた平均給与総額のうち、固定給の『所定内給与』は1.4%増の32万5788円、残業手当など『所定外給与』は1.7%減の2万5122円。賞与に当たる『特別に支払われた給与』は10.5%増の8万0021円だった。建設業の常用雇用労働者の入職率(新たに就職した人の割合)は0.05ポイント上昇の1.26%。離職率は0.03ポイント高い1.21%となった。建設業の月間実労働時間を見ると、総実労働時間のうち、所定内が0.5%減の150.0時間。所定外が1.1%減の13.8時間だった。出勤日数は0.2日少ない20.0日。」(『建設工業新聞』2023.05.24)
●「在留期間の更新に上限がなく、家族(配偶者、子)が帯同できる特定技能2号の在留資格取得に向けた評価試験が、建設分野で動き出す。建設技能人材機構(JAC)が特定技能2号評価試験を11月に国内で始める。技能検定1級合格に限られていた在留資格取得ルートが、全て整備されることになる。在留期間が通算5年までで家族の帯同は認められていない特定技能1号外国人が評価試験に合格して移行するなど、2022年12月時点で8人にとなっている特定技能2号外国人が今後増えそうだ。」(『建設通信新聞』2023.05.30)

建設産業・経営

●「国土交通省は、2022年度の建設工事受注動態統計調査報告をまとめた。受注高は前年度比9.0%増の116兆5773億円だった。元請け・下請け別、業種別のどちらも増加した。元請けの受注高は、コロナ禍からの本格的な回復を背景に民間工事が1割伸びた。製造業が建築、土木ともにけん引している。内訳は、元請けが8.9%増の76兆6731億円、下請けが9.1%増の39兆9043億円。業種別では、総合工事業が9.3%増の70兆1163億円、職別工事業が15.5%増の18兆3416億円、設備工事業が4.2%増の28兆l195億円となった。元請受注高の発注者別は、公共機関が5.5%増の22兆2623億円、民間などが10.3%増の54兆4108億円だった。」(『建設通信新聞』2023.05.16)
●「主要ゼネコン26社の2023年3月期決算が15日に出そろった。連結売上高は、国内土木や海外工事が順調に進捗(しんちょく)し22社が増収となった。本業のもうけを示す営業利益は資材価格の高騰が響き、低採算工事を抱える企業を中心に利益水準を押し下げ、14社が前期を下回った。24年3月期は19社が増収増益を見込む。各社は働き方改革を実現できる施工体制を意識しつつ、採算重視の受注を徹底する。増収となったのは鹿島、大林組、清水建設、大成建設など22社だった。国内工事の進捗とともに、海外工事の再開も寄与し売り上げ計上が進んだ。…利益確保が厳しい中、営業利益は『国内建築で豊富な手持ちが堅調に推移した』(大林組)など11社が前期を上回った。一方、大型民間建築を中心に『手持ち工事に占める低採算案件の比率が高い』(大手ゼネコン)企業も少なくない。…工事の採算性を示す単体の完成工事総利益(粗利益)率も前期に比べて低調となった。…業績の先行指標となる単体受注高は、豊富な建設需要と国内景気の回復などを背景に18社が前期を上回った。」(『建設工業新聞』2023.05.16)
●「上場ゼネコン大手4社(鹿島、大林組、清水建設、大成建設)の2023年3月期決算が15日に出そろった。全社が増収。各社とも手持ち大型工事の進捗(しんちょく)で売上高を伸ばした。本業のもうけを示す営業利益は『土木事業の利益率改善』(鹿島)や増収効果などで3社が増益となった。業績の先行指標となる単体受注高は、鹿島と大成建設が前期比から大幅増となった。」(『建設工業新聞』2023.05.16)
●「建設資材の価格動向を数値化している経済調査会(森北佳昭理事長)の『建設資材価格指数』が、全国の建築・土木総合で2カ月連続の下落となった。2015年度の全国平均値を『100』とした場合、直近の4月10日時点の調査に基づく指数は前月に比べ0.6ポイント下回る『147.8』となった。建築用木材や型枠用合板の全国的な続落が要因。ただセメントの騰勢が続くなど、資材価格の高止まり傾向は変わらない。」(『建設工業新聞』2023.05.17)
●「国土交通省は、2022年度末時点の建設業許可業者数をまとめた。全国で47万4948者となり、前年度末時点に比べて0.1%減った。21年度末まではピーク(1999年度末)以降で初めて4年連続の増加を記録していたが、5年ぶりに減少へ転じた。経済情勢などに応じて増減する新規許可業者数が低調だったことが影響し、全体として微減になった。99年度末に比べると、21.0%減っている。」(『建設通信新聞』2023.05.25)
●「建設産業専門団体連合会(岩田正吾会長)は、週休2日制や技能者の処遇・評価などに関する2022年度調査の結果をまとめた。24年4月から建設業に適用される時間外労働の罰則付き上限規制について、規制内容を理解していない専門工事業が4割を占めた。適用まで1年を切り、発注者の理解・協力と建設業界を挙げた働き方改革が求められる中、専門工事業への周知不足が浮き彫りになった。」(『建設通信新聞』2023.05.26)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「国土交通省は4月28日、令和4年度計の新設住宅着工戸数を発表した。新設住宅着工戸数(令和4年4月~令和5年3月)は86万828戸で前年度比0.6%の減少。年度ごとに過去10年の着工戸数を見た場合、上から9番目の水準だった。また、新設住宅着工床面積は6865万1053㎡。前年度比で3.5%の減少となった。持家は24万8132戸(同11.8%減)で昨年の増加から再びの減少。同じく過去10年では最も低い水準だった。また今回25万戸を切っているが、これも過去10年では唯一のケースとなっている。貸家は34万7427戸(同5.0%増)で2年連続の増加。同じく過去10年では上から7番目の水準だった。分譲住宅は25万9549戸(同4.5%増)で、2年連続の増加。同じく過去10年では上から3番目の水準だった。この内、マンションは11万3900戸(同10.8%増)で4年ぶりの増加を記録。過去10年では上から4番目の水準だった。一戸建住宅は14万4321戸(同0.1%増)で2年連続の増加。過去10年では上から3番目の水準だった。」(『日本住宅新聞』2023.05.15)
●「次世代エネルギー技術である核融合発電で官民が日本連合を形成する。三菱商事や関西電力、政府系ファンドなど16社が京都大学発スタートアップに計約100億円出資する。設備や人材に資金を投じ、開発力を高める。燃料は海水から採取できるため無尽蔵に近く、脱炭素の切り札として期待されている。オールジャパン体制で先行する海外勢との競争に挑む。出資先は京都フュージョニアリング(東京・千代田)。京大の研究者らが2019年に設立し、核融合の関連技術を持つスタートアップでは国内で最も実績がある。…京都フュージョニアリングは『ジャイロトロン』と呼ばれるプラズマ加熱装置で高い技術力を持つ。核融合反応を促す中核装置で、開発では世界でも先行する。技術力への期待から英国原子力公社から装置を受注した。調達した資金を活用し、核融合炉を安定的に稼働できる技術の確立を目指す。24年にも国内に核融合発電の小規模な実験プラントを設け、ジャイロトロンなどの装置の動作を実証する。…20年代後半から世界で実験炉の建設が本格化する見通し。設備需要の拡大が見込まれるため、追加の資金調達も検討する。三菱商事なども出資を通じ、核融合の知見を蓄える。実用化を後押しし、次世代エネルギーで主導権を得たい考えだ。核融合発電は原子核同士を融合させてエネルギーを取り出す。化石燃料を燃やさず二酸化炭素(CO₂)が発生しない。燃料となる重水素は海水に含まれ、水素と異なり、中性子を1つ持つ。海水を電気分解するなどして取り出す。地球の表面の7割を占める海から大量に採取できる。30年代の商用化に向け、技術開発が進んでいる。」(『日本経済新聞』2023.05.17)
●「首都圏の分譲マンション市場が“薄氷”を踏む状態で推移している。建築費の高騰によって大手デベロッパー各社が用地取得に慎重になった結果、供給戸数が減少し、需要が旺盛な東京都心で販売価格への転嫁が可能になっているという構図だ。デベロッパーは、金利の変動と建築費上昇ペースを両にらみしながらマンションの供給を進めており、小さなきっかけで市場が大きく変化しかねない状況だ。」(『建設通信新聞』2023.05.18)
●「内閣官房は18日、ナショナル・レジリエンス(防災・減災)懇談会を開き、国土強靭化基本計画の素案を示した。素案の検討資料の議論で出た指摘を踏まえて内容を見直した。大規模自然災害後も経済活動を持続できるよう、通信やエネルギーを確保するため、地産地消の再生可能エネルギー活用による自立・分散型の仕組みの導入を進めることを明記した。」(『建設通信新聞』2023.05.19)
●「国土交通、経済産業両省は、2025年度から住宅と建築物で省エネルギー基準適合を全面義務化するに当たり、適合性評価の手法を確立する。住宅は精緻な評価が『標準計算』、簡易な評価が『仕様基準(誘導仕様基準を含む)』の2本柱で評価。設計者などからのニーズを踏まえ、外皮を仕様基準、設備を計算で適合性を判断するルートも新設する。関係省令を改正し、内容を反映する方針。省令は今秋の公布、25年春ごろの施行を予定している。…省エネ基準を巡っては、複数の適合性評価手法が混在している。全面適合義務化に伴い確認対象が拡大するため、設計者や審査側の負担を減らし、評価の実効性を確保するため手法を整理する。現状、住宅では外皮と設備の仕様基準をセットで使用することが想定されている。仕様基準の対象になっていない設備を設置する場合なども勘案し、省令改正によって外皮を仕様基準、設備を計算によって確認するルートを新設する。」(『建設工業新聞』2023.05.25)
●「森ビルは、『東京23区の大規模オフィスビル市場動向調査2023』をまとめた。2027年までの5年平均のオフィス供給量は過去の平均を下回るものの、23年と25年は供給量が突出する見込みだ。23年の延べ10万平方メートル以上の事務所の供給割合は、1986年の調査開始以来初めて80%に達する。同調査は、東京23区内で86年以降に竣工した事務所、延べ1万平方メートル以上のオフィスを対象に需要動向をまとめている。23年の大規模オフィスビル供給量は126万平方メートルで、24年は73万平方メートルと大きく落ち込み、25年は再び136万平方メートルに増加する。26年は72万平方メートル、27年は58万平方メートルを想定している。5年間の平均は年93万平方メートルで、過去の平均(102万平方メートル)を下回る。」(『建設通信新聞』2023.05.26)
●「国土交通省が26日に開いた国土審議会計画部会で、新たな国土形成計画と第6次国土利用計画の原案が取りまとめられた。原案は都道府県などへの意見聴取やパブリックコメントを経て、素案を追記・修正した。国土形成計画では、3大都市圏を結ぶ『日本中央回廊』の核となるリニア中央新幹線の整備を進めるため、国や自治体が連携・協力することを盛り込んだほか、地域生活圏の形成に向けた取り組みを充実した。」(『建設通信新聞』2023.05.29)
●「原子力発電所の運転期間の60年超への延長を盛り込んだGX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法は31日の参院本会議で可決、成立した。既存の原発を可能な限り活用し、電力の安定供給と温暖化ガスの排出削減を目指す。GX電源法は電気事業法や原子炉等規制法、原子力基本法など5本の関連法の改正をひとつに束ねた。2011年3月の東京電力福島第1原発事故後の原子力政策を転換する内容となっている。事故後に日本は『原則40年、最長60年』という運転期間を定めた。その枠組みは維持しながら、安全審査や裁判所の命令など事業者が予想できない理由による停止期間を除くことで事実上、60年超の運転が可能となる。」(『日本経済新聞』2023.05.31)
●「住宅に使う木材の市況が悪化している。東京地区の問屋卸価格は5月に梁(はり)や柱に使う集成材が4月と比べて1割程度下がった。主用途の木造の戸建て向けの販売が振るわないからだ。集成材原料のラミナ(引き板)の価格は海外の製造コストの増加で値上がりしているが、メーカーが今後の商品価格に反映できるかは不透明だ。」(『日本経済新聞』2023.05.31)

その他