情勢の特徴 - 2023年6月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「外国為替市場で円安が加速している。15日は対ドルで今年の最安値を更新し、対ユーロでは15年ぶりの安値を付けた。米連邦準備理事会(FRB)などが金融引き締めに積極的なタカ派色を強める中、日銀の緩和姿勢が際立つためだ。主要先進国・地域以外の通貨に対しても円安が進み、金利差を意識した円独歩安の様相を呈している。対ドルの円相場は15日、一時1ドル=141円台半ばと2022年11月以来7ヵ月ぶりの円安・ドル高水準をつけた。14日夕方時点は1ドル=140円前後。1日で1円以上円安・ドル高が進んだ。円は他の主要通貨に対しても弱含んでいる。対ユーロでは1ユーロ=153円台と08年9月以来、15年ぶりの円安・ユーロ高水準を付けた。対ポンドでは1ポンド=179円台と15年12月以来、7年半ぶりの安値に沈む。海外の主要中銀が、市場の想定を超え金融引き締めに積極的な姿勢を示していることが背景だ。」(『日本経済新聞』2023.06.16)
●「日銀は16日の金融政策決定会合で大規模緩和の維持を決めた。企業が積極的になり始めた値上げや賃上げの持続力を見極めるのになお時間がかかるためだ。半面、人手不足を背景に物価上昇圧力は強まっており、政府の対策を除いた実態ベースでは日米逆転も迫る。緩和修正に向けた環境が整いつつあるとみる市場では、早期の修正観測も出てきた。」(『日本経済新聞』2023.06.17)
●「政府が16日に閣議決定した経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)は労働市場改革を目玉に据えた。成長分野への人材の移動を促し、経済の底上げと賃上げを目指す。改革の実現に不可欠な解雇ルールの見直しには触れなかった。貯蓄から投資を促す『資産運用立国』を掲げたものの具体策は示していない。『新しい資本主義』実行計画の改定版も同日に閣議決定した。骨太の方針と実行計画は岸田文雄政権の経済政策における基本指針となる。今回は硬直的な日本の雇用が成長を鈍らせてきたとの問題意識を反映し、労働市場改革に焦点をあてた。実行計画では現在の日本の雇用について『職務(ジョブ)や要求されるスキルも不明瞭で、評価・賃金の客観性と透明性が十分確保されていない』と指摘した。『転職しにくく、転職しても給料アップにつながりにくい』とも強調した。三位一体の労働市場改革を掲げて①リスキリング(学び直し)②職務給(ジョブ型人事)の導入③労働移動の円滑化――を進めるとした。転職の障壁だった退職所得課税の是正や、自己都合退職でも失業給付を迅速に受けられる仕組みを盛り込んだ。日本では過去の判例などを背景に、会社側が正社員を解雇することは厳しく制限されている。訴訟リスクや社会的評判もあり、企業は解雇の二の足を踏む。これまで長期雇用が守られてきた分、柔軟な労働移動は広がらなかった。一定のルールに基づいた雇用終了を可能とする仕組みを導入できれば、こうした壁も低くなる。月収の数カ月分を渡すことで雇用終了となる『解雇の金銭解決』を法令で整備するよう求める声はあるものの、今回の骨太の方針では具体策に言及しなかった。…実行計画の改定版では分厚い中間層の形成に向けて『貯蓄から投資』へのシフトも打ち出した。昨年は少額投資非課税制度(NISA)の大幅拡充を掲げ、今年は『資産運用立国』の旗を掲げた。証券投資の必要性を感じないと思う人は7割を占め、知識不足で二の足を踏む人も多い。投資経験者の倍増を目指し、NISAの抜本的な拡充や恒久化を中心に据えた。投資に不安を持つ人のため、中立的な立場でアドバイスができる仕組みも創設する。」(『日本経済新聞』2023.06.17)
●「世界経済フォーラム(WEF)が21日発表した2023年の男女平等の度合いを示すジェンダー・ギャップ指数で、日本は146カ国中125位と過去最低になった。政治分野の低さが変わらず、経済分野は女性管理職比率の低さが足を引っ張る。世界全体でも格差はなお残り、WEFはこの差を埋めるにはあと131年必要だと指摘する。」(『日本経済新聞』2023.06.22)
●「インボイス制度の10月の導入にあたり、初めて消費税を納めることになる免税事業者の準備が道半ばだ。約500万の事業者のうち、インボイスを発行できるよう登録したのは1割だった。インボイスは納める消費税額の差し引きに必要になる。混乱を招かない対策が重要になる。…売上高が1000万円以下のため消費税を納めていない500万ほどの免税事業者の対応が特に課題となっている。国税庁によると23年5月末時点でインボイスの発行事業者として登録を済ませたのは66万だった。納税義務がある300万ほどの課税事業者は全体の8割を超える250万程度が登録している。登録はあくまで任意だ。政府は当初、制度開始に間に合わせるには23年3月末までに申請する必要があるとしていた。登録の遅れを受け、期限を9月末までに延ばした。政府は免税事業者の懸念を受け、インボイスの発行を登録した場合も3年間は納税額を売上時に受け取った消費税の2割とする経過措置を設けた。消費税の計算の手間を省ける。それでも免税事業者の登録が進まない要因が5つ浮かんできている。まず免税事業者の取引の6割ほどが一般消費者を対象とする点だ。販売先が個人の場合、消費税を差し引きするケースは少なく、インボイスの発行を求められない。2つ目として売上高5000万円以下の簡易課税事業者にはインボイスがなくても支払った消費税額を控除できる仕組みが整っていることだ。…3つ目は、免税事業者との取引の場合、経過措置として29年9月末まで消費税を一定額差し引けるようにしていることだ。…免税事業者である100万ほどの農業者との取引では条件次第でインボイスなしでも消費税額の差し引きができる制度の存在が4番目の要因だ。最後の理由は、取引先の求めに応じて免税事業者がインボイスを発行できるようにすると、消費税の納税義務が生じ、経費と事務作業の負担が増すことだ。それまで払っていなかった消費税を払いながらも利益を維持するには、商品やサービスの価格に消費税分を上乗せする必要がある。日本商工会議所は『取引先との関係によっては価格転嫁できない事例が出てくる』との懸念を示す。」(『日本経済新聞』2023.06.27)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は各地方整備局などに設置している『建設業法令順守推進本部』の2023年度活動方針を公表した。24年4月に適用する時間外労働の罰則付き上限規制を念頭に置き、関係事業者に自主的な改善を促す取り組みに注力。厚生労働省の都道府県労働局や労働基準監督署と連携し、各地域の建設会社や民間発注者の団体・企業向けの説明会などを開く。元請各社の支店や現場所長を直接訪問してヒアリングする『モニタリング調査』の一環で、労基署が同行する訪問支援にも順次取りかかる。」(『建設工業新聞』2023.06.21)
●「国土交通省は元請各社の支店や現場所長に取引実態を直接ヒアリングする『モニタリング調査』の一環で、個別工事の労務費と法定福利費の確保状況を元下間だけでなく下下間でもチェックした。法定福利費が元下間で適正に計上されていても、1次下請と2次下請の間で少なく計上され、結果として2次以下の下請や技能者へのしわ寄せにつながっているケースなどが散見された。国交省は建設業法の規定を踏まえ、元請には自らの行為だけでなく下請への指導義務も果たす必要があると訴える。」(『建設工業新聞』2023.06.22)
●「国土交通省は29日、中央建設業審議会と社会資本整備審議会の下に設置している基本問題小委員会の2023年度第2回会合を開き、『請負契約の透明化による適切なリスク分担』など三つの論点ごとに、制度改正の方向性と、それに沿った具体策を提案した。急激な資材価格高騰を踏まえて民間工事を念頭に議論している適切なリスク分担は、発注者を含む取引事業者全体のパートナーシップ構築に向け、契約の透明化などを制度的に担保・推進することを方向性としている。」(『建設通信新聞』2023.06.30)
●「中央建設業審議会(中建審)・社会資本整備審議会(社整審)合同の基本問題小委員会の会合が29日に東京都内で開かれ、国土交通省が受注者による廉売行為を制限する際の基準となる『標準労務費』の考え方の検討状況を明らかにした。公共工事設計労務単価相当の賃金の支払いを目指す観点から、標準労務費の水準は『設計労務単価×歩掛かり』相当と想定する。委員からは現場特性や既存の商慣習への配慮、違反行為への対処の実効性確保などで意見があった。」(『建設工業新聞』2023.06.30)

労働・福祉

●「国土交通省は15日、週休2日を確保した労働日数で、公共工事設計労務単価が賃金として行き渡った場合に考えられる技能者の年収について、建設キャリアアップシステム(CCUS)のレベル別に試算した結果を公表した。全国・全分野の平均年収は、ボリュームゾーンの中位で、最高のレベル4が707万円となっている。建設業への入職を検討する若年世代向けに処遇面のキャリアパスとして示した。設計労務単価の行き渡りに向けた制度上の対応は今後、中央建設業審議会と社会資本整備審議会の基本問題小委員会で本格的に議論する。」(『建設通信新聞』2023.06.16)
●「国土交通省は、建設キャリアアップシステム(CCUS)の就業履歴蓄積と能力評価の加速化に向けた施策パッケージをまとめた。CCUSの技能者登録時に能力評価を反映した色付きカードを発行する『ワンストップ申請』を2024年4月をめどに始めるなど、建設業振興基金が運営するCCUSと能力評価の連携を強化する。カードリーダーが設置されていない現場で就業履歴を蓄積できる環境も整備する。」(『建設通信新聞』2023.06.16)
●「国土交通省は、建設キャリアアップシステム(CCUS)に登録された技能者のレベルを判定する能力評価制度で経過措置として設けている経歴証明について、書類の提出期限を5年延長して2029年3月31日に改めた。併せて、過去の経歴を証明できる期間の範囲を24年3月31日までと新たに定めた。これにより、29年3月31日までに能力評価を申請する場合、24年3月31日までの経験を能力評価時に加算できる。」(『建設通信新聞』2023.06.19)
●「ヒューマンリソシアは、建設業界に従事する人材の市場動向を独自に分析した『建設技能者・建設技能工~2030年の未来予測~』を発表した。建設業界で働く技術者と技能工の従事者数を独自に推計するとともに、経済が現状のまま推移する『ベースライン成長』、国などの政策効果が表れる『成長実現』、『ゼロ成長』の3つのシナリオで需要数を算出し、2030年の技術者数と技能工数の需給ギャップを試算した。ベースライン成長シナリオでは30年に建設技術者が約4.5万人、技能工は約17.9万人が不足すると試算している。調査報告書は、厳しい人材不足が続く中、技術者と技能工の確保に向けた人事戦略がより一層重要になると指摘する。」(『建設通信新聞』2023.06.22)
●「日本建設業連合会(宮本洋一会長)は、会員企業による建設キャリアアップシステム(CCUS)の取り組み状況について、2022年度下期(23年3月末時点)のフォローアップ調査結果をまとめた。事業者登録率の22年度コミットメント(最低目標)は68%で、その達成率は事業費割合で67%となり、前回調査(22年9月末時点)から約20ポイント上昇した。全体感を見ると、CCUSの運用開始から4年以上が経過し、日建連会員の現場では、ほとんどでカードリーダー設置など利用環境の整備が完了した。日建連幹部は『日建連クラスでは「普及促進」はほぼ終わった。今後は「利活用」のステージに移る』とし、タッチ数の拡大や色付きカードの普及、能力に応じた技能者・専門工事会社の評価など、本来目的の処遇改善に直結する方策の実行が重要と指摘している。」(『建設通信新聞』2023.06.23)
●「勤労者退職金共済機構の建設業退職金共済事業本部は、近年、建退共から中小企業退職金共済制度(中退共)への移動が急増している実態を明らかにした。担い手確保が年々深刻化する中、入職・定着には年収だけでなく、老後を見据えた退職金も重要な要素。掛け金が日額・一律の建退共から、より手厚くするカスタマイズが可能な中退共に移行することで、魅力を高める企業が増加していることなどが背景にあるとみられる。建設業界の“定番”の建退共自体の魅力向上、さらには厚生労働省が今後本格化する建退共を含む特定業種退職金共済制度(特退共)そのものの在り方検討の行方に注目が集まりそうだ。」(『建設通信新聞』2023.06.26)
●「厚生労働省は26日、建設業での一人親方など個人事業者の業務上災害報告で、報告義務を課す報告主体について、個人事業者の仕事の注文者であり、災害発生場所(事業場など)で業務を行っている者のうち、個人事業者などから見て直近上位の『特定注文者』とする新たな案をまとめた。建設現場では、元請けでなく、一人親方に仕事を注文する1次や2次の下請けの専門工事事業者が『特定注文者』に該当するとみられる。」(『建設通信新聞』2023.06.27)
●「厚生労働省は、2022年の労働災害発生状況(確定値)をまとめた。22年(1-12月)の建設業の労働災害による死亡者数は、2年連続で増加し、休業4日以上の死傷者数が2年ぶりに減少した。新型コロナウイルス感染症による労災者数を除いた死亡者数は前年比1.1%増(3人増)の281人となった。2年連続して増加した一方、4年続けて300人未満は維持。死傷者数は2.6%減(387人減)の1万4539人だった。」(『建設通信新聞』2023.06.30)

建設産業・経営

●「国土交通省の調査によると、都道府県と政令市を合わせた67団体のうち、民間発注者に適正工期の設定を働き掛けているのは、全体の2割だった。建設業に時間外労働の罰則付き上限規制が適用される2024年4月まで残り1年を切ったことから、特に工期が厳しいとされる民間工事の発注者に対し、週休2日確保を含む適正工期設定の働き掛けをより積極的に行う必要があると、国交省は指摘している。」(『建設通信新聞』2023.06.20)
●「中小企業庁は、3月の価格交渉促進月間のフォローアップ調査の結果をまとめた。建設業の回答を見ると、発注企業と価格交渉の協議ができた割合は約6割に上った。コスト上昇分のうち、価格転嫁できた割合を指す価格転嫁率は44.3%で、2022年9月の前回調査から0.5ポイント下がった。要素別では原材料費の転嫁率が最も高く、次いで労務費、エネルギーコストとなっている。アンケートと下請Gメンによるヒアリングを実施し、結果を取りまとめた。アンケートは、中小企業などに発注側の親事業者との直近6カ月の価格交渉や価格転嫁の状況を聞くため、30万社に送付し、1万7292社から回答を得た(回答率5.76%)。下請Gメンは2243社にヒアリングした。価格交渉に応じている発注者を業種別に順位付けしたところ、建設業は27業種中19位で前回調査と同じだった。建設業の価格交渉の状況を見ると、『発注企業に協議を申し入れ応じてもらえた』は48.8%、『発注企業から声かけがあり話し合いが行われた』は10.0%で、約6割で価格交捗ができている。一方、『発注企業から声かけがなく自社からも協議を申し入れていない』は9.7%、『発注企業に協議を申し入れたが応じてもらえなかった』は6.0%、『発注企業から減額のための協議の申し入れがあった』は3.5%となっている。建設業の価格転嫁率は44.3%で、業種別順位は前回と同じ27業種中17位だった。コスト要素別に見ると、原材料費は0.2ポイント増の45.4%、エネルギーコストは3.6ポイント増の35.1%、労務費は2.4ポイント増の40.6%だった。」(『建設通信新聞』2023.06.21)
●「日本建設業連合会(日建連、宮本洋一会長)と全国建設業協会(全建、奥村太加典会長)は7~9月の3ヵ月間、会員企業が施工する現場で4週8閉所の推進期間と位置付ける。会員企業への呼び掛けやポスターの掲示などを通じ集中展開。猛暑が続くと懸念される夏季に現場で働く技能者や技術者の休養の時間を十分に確保できるようにして、熱中症の予防や心身の健康確保に万全を期す。2024年4月に迫る時間外労働の罰則付き上限規制適用も意識し、年間を通じた週休2日の確保に弾みをつける狙いもある。」(『建設工業新聞』2023.06.26)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「東京都は7日に公表した『東京湾第9次改訂港湾計画(中間報告)』で、おおむね10年後(2033~37年)の港湾施設の規模や配置などを定めた。増加する貨物量や船舶の大型化に対応するため、埠頭(ふとう)の新設や再整備に取り組む。首都直下地震や台風、高潮が発生した場合でも港湾機能を維持できるよう施設を強靭化する。日本経済をけん引するインフラとして、世界の荷主から選ばれる国際競争力の高い港を目指す。」(『建設工業新聞』2023.06.27)
●東京電力は27日、福島第1原発事故で出た「アルプス処理水」の海洋放出計画をめぐって、放出のための設備の設置工事が完了し、通水検査などの試運転を終えたことを明らかにした。28~30日に原子力規制庁による使用前検査が実施される予定。この検査を通れば、設備面では放出が可能になるとしている。処理水の処分をめぐって政府と東電は、地元の漁業者に「関係者の理解なしには、いかなる処分も行わない」と約束している。ところが政府は、海洋放出に対して漁業者をはじめ国内外から反対や懸念の声があがるなか、2021年4月に海洋放出の方針を決定。その後、政府は今年夏ごろに放出を開始する方針を一方的に示し、東電は放出の準備を進めてきた。漁業者との約束を覆したり、反対や懸念の声を置き去りにしたりして海洋放出を強行することになれば、大きな禍根を残すことになる。(『しんぶん赤旗』2023.06.28より抜粋。)
●「東京都心の中古マンション価格が足元で1億円を超えている。将来の売却益を狙う海外の投資家の買い意欲が水準を押し上げた。首都圏では多くのエリアで新築時と価格が逆転しており、価格が2.5倍に跳ね上がる物件もある。一般世帯には手の届かない値段になり、住まいとしての役割がかすみ始めている。」(『日本経済新聞』2023.06.29)

その他