情勢の特徴 - 2023年9月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「各府省庁が財務省に提出した2024年度予算の概算要求のうち、国土強靭化関係の防災・減災対策の計上額がまとまった。総額は前年度予算比30.9%増の6兆2101億0百万円。うち公共事業関係費は20.7%増の4兆7903億65百万円。『防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策』4年目分の予算は、編成過程で計上額を決める事項要求とした。」(『建設工業新聞』2023.09.01)
●財務省が1日に発表した法人企業統計によると、2022年度の大企業(資本金10億円以上、金融・保険業含む)の内部留保は511.4兆円と年度調査としては過去最高を更新した。前年度の484.3兆円から27.1兆円(5.6%)の増加だった。一方、大企業における労働者1人あたりの賃金は611.3万円で前年度に比べ3.5%の増加だった。ただ、消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)は3.8%上昇しているため、実質賃金は減少した。(『しんぶん赤旗』2023.09.02より抜粋。)
●民間信用調査会社の東京商工リサーチの「インボイス制度に関するアンケート調査」によると、制度導入後、免税業者に不利益な対応をするとの回答が1割以上にものぼることがわかった。導入まで1カ月を切ったもと、このまま強行すれば混乱が生じるのは必至だ。アンケート調査ではインボイス制度開始後の免税業者との取引について、「取引しない」が8.4%、「取引価格を引き下げる」が3.4%だった。11.8%の企業が免税業者に不利益な対応をすることがうかがえる。…制度導入後も「これまで通り」とする回答は55.4%だった。一方、「検討中」は32.8%で3割を超える企業が対応を決めかねている。(『しんぶん赤旗』2023.09.05より抜粋。)
●「政策で抑え込んできた企業倒産が急増している。東京商工リサーチが8日発表した8月の倒産は760件で、前年同月比の伸び率は新型コロナウイルスの感染拡大後で最大の54%になった。1~8月累計でも37%増えている。実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)や社会保険料の納付猶予など資金繰り支援の特例が切れ、一転して重荷になっている。」(『日本経済新聞』2023.09.09)
●公共事業関係費の国土交通省分は、2023年度当初予算から19%増の6兆2909億円を要求した。概算要求には、新たに「国民保護・総合的な防衛体制の強化等に資する公共インフラ整備」を盛り込んだ。昨年12月、岸田政権が国民の批判を押し切り閣議決定した「安保3文書」(国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画)のうち「国家安全保障戦略」等に基づく。経費は要求額を提示しない事項要求とし、しかも取り組みの具体的な内容は示していない。デュアルユース(民生技術の軍事利用)、滑走路の延長・強化など空港・港湾を軍事にも利用できるようにするものだ。(『しんぶん赤旗』2023.09.14より抜粋。)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は直轄工事を対象に、賃上げ表明企業を総合評価方式の入札で加点する措置の2022年度実績をまとめた。22年4月の加点措置開始から23年3月末までの賃上げ表明者は競争入札参加者の67%に当たる3010社、落札者の75%を占める2029社に上る。22年の暦年単位または22年度の事業年度単位で賃上げを表明した企業のうち、7月までに実績が確認できた暦年表明の367社は全て賃上げ目標を達成したことも分かった。」(『建設工業新聞』2023.09.05)
●「国土交通省の中央建設業審議会(中建審)と社会資本整備審議会(社整審)産業分科会建設部会が合同設置する基本問題小委員会の第5回会合が東京都内で開かれ、法令や運用の改善を提言する『中間取りまとめ』が固まった。テーマは持続可能な建設業の構築。国交省は将来にわたる担い手確保や直面する資材高騰などの課題に対応するため、中間取りまとめを踏まえ建設業法や公共工事入札契約適正化法(入契法)の改正を検討する。2024年通常国会への法案提出を目指す。」(『建設工業新聞』2023.09.11)
●「中央建設業審議会と社会資本整備審議会の基本問題小委員会が、持続可能な建設業に向けた制度的対応の提言を大筋でまとめた8日の2023年度第5回会合で、委員からは国土交通省が今後進める建設業法をはじめとした制度改正の運用などについて意見が上がった。受注者の委員の一人は、技能者への適切な水準の賃金支払い確保に向けた措置で、中建審が勧告する標準労務費を参照した適正な賃金の行き渡り確認に力点を置いて運用するよう求めた。」(『建設通信新聞』2023.09.12)
●「国土交通省は2024年度、持続可能な建設業の実現へ取り組みを強化する。建設資材価格の高騰を踏まえ、元下間の取引適正化に向けた実態調査を充実。価格転嫁につなげる。建設発生土の適正処理も推進。5月に始まったストックヤード事業者登録制度を踏まえ、最終搬出先までの土砂の流れをフォローアップし、適切に制度が運営されているか確認する。加えて、安全衛生経費の支払い状況も調査する方針だ。」(『建設工業新聞』2023.09.14)
●「国土交通省は、公共建築工事の積算に用いる統一基準『公共建築工事標準単価積算基準』を見直す。大部分の工種に採用している材工一式の市場単価について、新たに労務費や材料費といった内訳が『見える化』された単価の設定方法を確立し基準に反映する。適切な予定価格の設定や技能者の処遇改善に向け、同省の審議会が議論している『標準労務費』の考え方を反映させる狙いもある。」(『建設工業新聞』2023.09.15)

労働・福祉

●「厚生労働、国土交通の両省は1日、両省の関連施策をまとめた『建設業の人材確保・育成に向けて(2024年度予算概算要求の概要)』を発表した。両省が持つ建設業に特化した各施策を相互に連携させることで、他産業と比べて高齢化の進展が著しい建設業の担い手の確保・育成を促進する。特に若者や女性の建設業への入職や定着の促進などに重点を置き、担い手の処遇改善、働き方改革、生産性向上を一体として進めていく。」(『建設通信新聞』2023.09.04)
●「自治体が非正規の公務員である『会計年度任用職員』の処遇改善に乗り出している。神戸市は事務職員の年収を2024年度から21年度比で最大5割増の300万円に引き上げる。高知市は正規職員への転換希望者に限り、採用試験の年齢制限を59歳に広げた。民間企業で賃上げが進むなか、スキルを持った人材を処遇改善でつなぎ留める。」(『日本経済新聞』2023.09.05)
●「国土交通省は2022年度に直轄土木工事で実施した週休2日の実績をまとめた。港湾・空港関係を除く集計で、週休2日対象工事として公告した7284件のうち7257件で週休2日に取り組んだ。実施率は99.6%となり前年度から2.2ポイント上昇。全体の4分の3を占める発注者指定方式の現場閉所が押し上げた。国交省は建設現場のさらなる働き方改革の推進に向け、引き続き休日の『量』を追い求める従来方針から月単位で週休2日が確保できる『質の向上』への転換に努めていく。」(『建設工業新聞』2023.09.06)
●「建設キャリアアップシステム(CCUS)の導入や活用に積極的な元請企業を評価する動きが、地方自治体で着実に広がってきている。国土交通省がまとめた最新の調査結果(8月21日時点)によると、都道府県で地元建設業協会の同意が前提になる同省直轄Cランク工事でのCCUS活用モデル工事を実施済みまたは予定しているのは青森、山形を除く45都道府県。2023年度以降、新たに5県が実施表明した。都道府県や市区町村が発注する工事でも同様の動きは増えている。」(『建設工業新聞』2023.09.08)
●「日本建設産業職員労働組合協議会(日建協、木浪周作議長)は14日、2018年から展開している『4週8閉所ステップアップ運動』に関連し、6月の閉所実績を公表した。総閉所数を作業所数で割った『平均閉所数』と、月ごとに異なる土日祝日の日数を補正した『4週8閉所指数』はいずれも6.22閉所。調査開始以来の最高数値となったが、建築は悪化傾向にあることが分かった。…4週8閉所指数は土木が6.65閉所、建築は5.81閉所。発注者の理解が進む官庁主体の土木に比べ、民間比率の高い建築は閉所日数が少ない傾向が続く。0閉所は土木1.9%、建築3%。日建協は『さまざまな要因で閉所にできない作業所もあり、継続的な対策が必要』としている。」(『建設工業新聞』2023.09.15)

建設産業・経営

●「国土交通省による直轄工事の2022年度スライド条項適用状況が明らかになった。工事請負契約書第26条に基づいてスライド変更契約を22年度に結んだ件数は、全体、単品、インフレの三つのスライド条項の合計が速報値で919件だった。21年後半からの急激な資材価格高騰を受けて受注者から請負代金額の増額変更請求が多数あり、件数が前年度の4.2倍に膨らんだ。」(『建設通信新聞』2023.09.07)
●「国土交通省は、建設業の長時間労働是正や賃上げ原資の確保に向け、民間工事を含む建設工事の工期と請負代金のモニタリング体制を強化するため、本省、北海道開発局、8地方整備局を対象に建設業担当部局の2024年度定員増を要求している。関係省庁と今後本格的に詰め、23年内に決定する。受発注者間、元請け・下請け間、下請け・下請け間の各請負契約について、国交省職員が稼働中の現場を訪問して工期と請負代金の設定状況を現場代理人らにヒアリングし、改善すべき点をその場で指摘するとともに、改善点をまとめた文書を会社に通知して是正を促す取り組みの『モニタリング調査』を強化する。建設業の長時間労働是正は、24年4月から適用される時間外労働の上限規制に事業者が対応するだけでなく、担い手の確保に向けても急務。また、技能者の賃金は、公共工事設計労務単価が11年連続で上昇しているものの、全産業平均に比べて依然低い状況にあるため、工期と請負代金の適正化に向けたモニタリング体制を増強する考えだ。22年度のモニタリング調査は149カ所で実施した。定員増によって箇所数を増やし、より多くの調査実施を目指す。モニタリング調査を巡っては、上限規制の適用を踏まえて国交省と厚生労働省が連携を強化し、工期の適正化に特化した調査を23年度に始めた。労働基準監督署が現場に同行し、上限規制の順守に向けた訪問支援を実施している。請負代金の適正化に向け、中小企業庁が配置している下請けGメンと23年度から連携することも見据えている。25年度も建設業担当部局の定員増要求を見据えている。中央建設業審議会と社会資本整備審議会の基本問題小委員会が持続可能な建設業に向けた制度的対応を検討中で、建設業法第19条の3(発注者による不当に低い請負代金の禁止)の違反に関する国交大臣らの勧告対象に民間事業者を追加する方向で議論するなど、指導権限の強化が図られる見込みのためだ。」(『建設通信新聞』2023.09.08)
●「東京都世田谷区の新庁舎竣工がおよそ2年遅れる見通しとなった問題を巡り、世田谷区は8日、工期が確定した第1期工事の違約金として7億7800万円を大成建設に請求すると発表した。区と大成建設は工期延長に伴う業務上の損失などに対する損害賠償についての協議も続けている。…区が設けた工程検証委員会は大成建設側が入札時に提案した全体工程表が『そもそも検討不足であった』と指摘。第2・3期の工期短縮についても協議し、工程見直しで全体工期を2.75~4カ月短縮するとしている。」(『日本経済新聞』2023.09.09)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「防災訓練を実施したり、災害時に住民の避難誘導を担ったりする自主防災組織。関東・山梨では活動範囲の世帯数を全世帯数で割った2022年時点のカバー率が10年前と比べて4県で上昇する一方、4都県で低下した。少子高齢化が進む中、若い世代を巻き込んで活動を維持していく仕組み作りが急がれる。…首都直下地震への備えが喫緊の課題となる東京都。自主防災組織ハンマーズ(東京・墨田)は、地域の建設業で働くメンバーが中心となり14年に結成された。70人を超える会員の多くが工具を扱うプロで、実践的な防災訓練を展開する。毎週末のように地域の小中学校やPTA、町会などの防災訓練で、バールやジャッキを使った救出方法などを指導。家具の転倒防止器具について学べる実験装置を作って体験してもらうなど、楽しみながら学べる工夫をしている。メンバーの村山紀親さんは『子どもへの防災教育も含めた実践的な訓練を続けて自分の命を守る大切さを伝え、地域の防災力を高めていきたい』と話す。」(『日本経済新聞』2023.09.02)
●「豪雨などで被災したのち復旧されずに廃線となるローカル線が増えている。2022年度までの10年間で4路線の約250キロメートルが廃線となり、その前の10年間と比べ5倍に拡大した。全国では被災6路線で全線再開の見通しがたっておらず、沿線自治体は存廃議論への警戒を強めている。災害被害を受け未復旧のまま鉄道事業廃止届が提出された路線を『被災廃線』として集計した。13~22年度ではJR東日本の岩泉線(茂市-岩泉)と大船渡線(気仙沼-盛)、気仙沼線(柳津-気仙沼)、JR北海道の日高線(鵡川-様似る)が該当する。総延長253.4キロで東海道新幹線の東京-浜松駅間に相当する。」(『日本経済新聞』2023.09.04)
●「物価高による工事費の高騰で、市街地再開発の事実費が不足する例が相次いでいる。人口減少で地価が下落傾向にある地方都市では再開発ビルのフロアを売っても事業費を捻出できず、不足分を補助金で賄う例が目立つ。公的資金への依存が強まれば住民の負担は増す。小さく造って段階的に育てる再開発の工夫が求められる。」(『日本経済新聞』2023.09.05)
●「国土交通省が令和5年8月31日に公表した本年7月の新設住宅着工戸数は、6万8151戸だった。前年同月比は6.7%減で、2カ月連続の減少となった。季節調整済年率換算値は77万7600戸(前月比4.1%減)で、2カ月連続の減少だった。利用関係別では、持家は2万689戸、前年同月比は7.8%減で20カ月連続の減少。この内、民間資金による持家は1万8970戸、同比は6.8%減で19カ月連続の減少だった。公的資金による持家は同比が17.4%減で21カ月連続の減少となった。貸家は3万170戸、同比は1.6%増で先月の減少から再びの増加。この内、民間資金による貸家は2万7552戸、同比は2.9%増で先月の減少から再びの増加だった。公的資金による貸家は同比が10.3%減で2カ月連続の減少となった。分譲住宅は1万6979戸。この内、マンションは5797戸、同比は28.0%減で3カ月ぶりの減少だった。一戸建は1万1066戸、同比は11.2%減で9カ月連続の減少となった。」(『日本住宅新聞』2023.09.05)
●「東京都心のオフィスビルの空室率が10年ぶりの高水準に迫っている。在宅勤務の定着やオフィスの集約で都心の空室率は8月まで供給過剰の目安とされる5%を31カ月連続で上回った。賃料が3年前より約3割下がった地域も出てきた。不動産各社は新興企業など新たな借り手を取り込む。日本よりも空室率が高い米主要都市ではオフィスが住宅に転換されている。空室率の高まりは日本でもオフィスをホテルなどに変える動きへの契機になる。」(『日本経済新聞』2023.09.08)
●「建設物価調査会(東京・中央)が11日発表した8月の東京地区の建築費指数は、マンション、オフィスビル、工場、木造住宅の主要4分野でそれぞれ過去最高を更新した。生コンクリートなどの資材や、空調・換気機器の値上がりが押し上げた。同調査会は建物の種類ごとに工事原価を指数化し、毎月公表している。8月の建築費指数(速報値、2015年=100)は、マンション(鉄筋コンクリート造)が124.0と前年同月比6.1%上昇。指数として最も高かった2023年6月(123.2)を上回った。オフィスビル(鉄骨造)は前年同月比5.4%上昇の126.2、工場(同)は同5.6%高い126.0、木造住宅は同2.5%上昇の131.8だった。」(『日本経済新聞』2023.09.12)
●「東京都区部と多摩地域が連携して森林保全に取り組む動きが活発化している。檜原村の森林整備を中央区が支援しているほか、都は庁舎など公共施設での多摩産木材の活用を増やしている。2019年度に都道府県と市区町村へ『森林環境譲与税』の交付が始まったのを機に連携の輪が広がっている。檜原村矢沢地区では19年度から中央区が費用の一部を負担する形で、苗木に栄養を行き渡らせるため雑草を刈る下刈りや間伐、シカよけの柵の設置などの森林整備を進めた。21年度からは同村本宿地区でも間伐や枝打ちをし、森の中に光が差し込むようになった。中央区は21年度に事業費3254万円を負担した。多摩地域の森林荒廃を抑えることは温暖化対策に寄与し、森林のない都区部の住民にも恩恵がある。中央区は檜原村の森林整備を『中央区の森』事業と名付け、区民に森林浴など散策もできるとPRする。」(『日本経済新聞』2023.09.12)

その他

●米国で過4日労働制の導入へ関心や期待が高まっています。米国とカナダの企業が行った実証実験では労働時間の短縮で労働者のストレス軽減や生産性の向上が確認された。世論調査でも約8割が週4日労働制は成功すると回答。連邦議会には前会期に続いて週4日労働制法案が提出されている。米民主党進歩派のサンダース上院議員は4日の「レーバーデー(労働者の日)」に合わせて発表した英紙ガーディアンへの寄稿で「貸下げなしに週4日労働制へ移行する時だ」と訴えた。サンダース氏は、現代では技術革新が進んで生産性が上がっていること、フランスではすでに週35時間労働であり、欧州で週32時間労働を目指す動きがあることを指摘。「週4日労働制への移行は過激な考えではない」と強調した。英国の民間非営利団体「週4日グローバル」は7月下旬、米国とカナダの41企業が2022年あるいは23年に半年間行った週4日労働制の実証実験の結果を発表した。企業側は生産性の向上や離職率の低下などがみられたと回答し、全体として10段階評価で8.7の高評価を付けた。参加したすべての企業が週4日労働制を今後も続ける意向を示している。労働者側も9.0の高評価を付け、95%が週4日労働制の継続を希望した。労働時間の短縮によって約7割が仕事による燃え尽きが減ったとし、5人に2人はストレスが軽減したと答えた。(『しんぶん赤旗』2023.09.07より抜粋。)