情勢の特徴 - 2023年11月後半
●「20日の東京株式市場で日経平均株価は続伸し、一時前週末比268円高の3万3853円まで上げ、バブル経済崩壊後の高値を4カ月半ぶりに上回った。1990年3月以来33年8カ月ぶりの高値。前週末の米株式市場で主要株価指数が上昇し、東京市場でも買いが優勢となった。米長期金利の低下でリスク選好ムードが強まっているほか、堅調な企業業績が株価につながっている。」(『日本経済新聞』2023.11.20)
●「政府が20日に2023年度補正予算案を開会中の臨時国会に提出したことで、23年度の一般会計の公共事業予算規模は、土木分野の『公共事業関係費』が7兆4033億円、船舶建造費なども含む建築分野の『その他施設費』が1兆8909億円で、土木分野と建築分野を合わせた『公共事業費』の総額は9兆2942億円となった。公共事業費のうち、経常部門歳出や出資金分、貸付金分を差し引き、空港燃料税や電波利用料による整備費などの特定財源見合いを加えた『投資部門』で見た公共事業費は、公共事業関係費8兆1941億円に、その他施設費1兆9050億円を足した10兆0991億円となっている。」(『建設通信新聞』2023.11.21)
●「建設物価調査会は、9月1日時点の企業の設備投資マインドに関する調査結果をまとめた。建設投資マインドは旺盛さを維持する一方、資材高騰などの外的要因により投資額を期初計画から減額したり、投資時期を後ろ倒ししたりする傾向は引き続き見られた。調査は資本金1億円以上の4331社を対象に実施し、1003社から回答を得た(回答率23.2%)。9月の建設投資マインド判断DI(建設投資マインドについて『前向き』『やや前向き』と答えた企業の割合から「後ろ向き」「やや後ろ向き」と答えた企業の割合を差し引いた値)は、全産業でプラス3.8となった。非製造業はプラス6.3。業種別では不動産業、建設業、金融・保険業などで積極的な姿勢が見られた。一方、建設投資額判断DI(事業年度当初と比べた建設投資額について「かなり増額」「増額」と答えた企業の割合から「かなり減額・中止・延期」「減額」と答えた企業の割合を差し引いた値)は、全産業でマイナス1.8となり、製造業はマイナス4.9、非製造業はマイナス0.3だった。運輸業、不動産業、サービス業、電気・ガス業を除く業種で減額の意向を示す企業が多かった。また、建設投資時期判断DI(建設投資時期について「かなり前倒し」「前倒し」と答えた企業の割合から「かなり後ろ倒し・中止・延期」「後ろ倒し」と答えた企業の割合を差し引いた値)も全産業でマイナス8.6だった。内訳は製造業がマイナス14.1、非製造業がマイナス6.1。業種別では電気・ガス業を除く全業種でマイナスを示し、投資時期を後ろ倒しにする傾向が強かった。投資マインドは旺盛なものの、資材価格の高騰や建設業の人手不足などにより投資額や投資時期を見直す傾向は今後も続きそうだ。」(『建設通信新聞』2023.11.21)
●「財政制度等審議会(財政審、財務相の諮問機関)は国の2024年度予算編成に向けた建議を20日にまとめた。国内の経済・社会は構造的な変化に直面し、『歴史的な転換点に立っている』と指摘。労働市場の人手不足などを踏まえ、労働生産性の向上が急務とした。社会資本整備については、国の在り方全体を見据えた国土形成に関するグランドデザインを描いていく中で、アウトカム目標を設定し効果的に進める必要があると提言した。」(『建設工業新聞』2023.11.21)
●インボイス制度を考えるフリーランスの会が実施した、消費税のインボイス(適格請求書)制度開始1カ月緊急アンケートでは、回答者の約7割が仕事の継続を不安視しており、事務負担増・消費税分の増税や値引きの実態が明らかになった。インボイス制度は10月に始まり、アンケートは同月20日から31日まで実施。2868件の回答があり、そのうち60.0%が年商1000万円以下の免税事業者で28.5%が会社員だ。インボイス発行事業者登録済み・検討中が合わせて51.0%だが、内訳は「登録しなければ仕事が継続できなさそうだ」と消極的理由を挙げたのが39.5%。登録しないと取引先から「仕事を回せない」(14.1%)、「報酬を値下げする」(12.9%)と言われた例もある。取引や業務の変化(複数回答可)について52.4%の人が「経理事務負担が増えた」、35.7%が「社内外への説明や交渉が負担」、34.5%が「消費税の負担増や値引きで手取りが減る」と答えた。制度の影響と事業・仕事について「見通しは悪い」は55.4%、「廃業・退職・移動(を検討)」は合わせて12.1%と、回答者の67.5%がマイナスの影響を受けている。相談先がないと答えた48.8%の人の74.2%が免税事業者だ。未登録事業者に対する「消費税を着服、ネコババし続けるつもりか」などの誹謗(ひぼう)中傷に加え、一方的な値下げや取引排除の事例が200件以上アンケートに記載されていたことからも、公正取引委員会などによる取り締まりが機能していない実態もあらわになった。(『しんぶん赤旗』2023.11.21より抜粋。)
●「中小企業庁は9月に実施した『価格交渉促進月間』について、フォローアップ調査の結果を28日に公表した。対象27業種のうち、建設業は価格交渉の実施状況が14位、価格転嫁が15位。前回調査(3月時点)では価格交渉19位、価格転嫁17位だったため、いずれも上昇した。価格転嫁率は前回調査よりも0.9ポイント上昇の45.2%だった。価格交渉が行われたものの、全く転嫁できなかった下請企業の割合は11.4%で、全業種平均と同じだった。」(『建設工業新聞』2023.11.29)
●「国土交通省は、全ての直轄工事・業務にウィークリースタンスを適用する。仕事依頼の期間設定や打ち合わせ、業務時間外の連絡に関して、受注者の休日・深夜勤務を避けるための取り組みを進める。2024年4月から適用される時間外労働の上限規制を念頭に、業務で先行して取り組んできたウィークリースタンスを工事にも広げ、就労環境の改善につなげる。ウィークリースタンスは、円滑な業務実施や就労環境の改善に向けて、受発注者間の1週間単位の仕事の進め方を定めたもの。国交省では15年12月に業務の実施要領案を策定し取り組みを始めた。今回、災害対応など緊急案件以外の全工事・業務(港湾を除く)に適用するため、業務の実施要領案を改定するとともに、工事の実施要領案を新たに策定した。発注済みの案件も対象となる。8日付で各地方整備局、北海道開発局、内閣府沖縄総合事務所に各実施要領案を事務連絡した。実施要領案では、▽依頼日・時間や期限▽会議や打ち合わせ▽業務時間外の連絡――の3点について、受注者の土日や深夜の勤務を防ぐ取り組みを定めるとした。各項目で推奨する取り組み例も示している。」(『建設通信新聞』2023.11.16)
●「国土交通省は、2024年4月から時間外労働の上限規制が適用される建設業の働き方改革を実現するため、モデル事業を始める。元請け・下請け間の調整による現場の課題解決に焦点を当て、それを実践する工事を23年度内に選定し、試行的な取り組みで発生する掛かり増し費用など必要経費を支援する。モデル事業で得た課題解決の知見は、24年度にも事例集にまとめ、建設業界全体への普及を図る。」(『建設通信新聞』2023.11.20)
●「国土交通省と全都道府県は、2024年4月に時間外労働の罰則付き上限規制の適用が始まることを踏まえ、24年度から原則すべての発注工事で週休2日を達成できる環境整備に取り組むことを申し合わせた。法定労働時間・休日を考慮した適正な工期の確保や週休2日工事の実施について『確実に取り組む』と認識を一致。市区町村発注工事で週休2日工事を拡大するため、各地域で連携し積極的に働き掛けることも決めた。」(『建設工業新聞』2023.11.22)
●「資材価格高騰などを背景とした円滑な価格転嫁の取り組みに注目が集まる中、都道府県・政令市発注工事のスライド条項適用状況が判明した。国土交通省が都道府県と政令市の計67団体に実施したアンケートによると、2022年度適用件数が前年度に比べて増加した団体は全体の8割を占め、その増加割合は10倍未満が6割で最も多かった。単品スライド、インフレスライドともに増えた団体が多数を占めた。国交省は都道府県と政令市で価格転嫁の対応が進んでいるとみる。」(『建設通信新聞』2023.11.28)
●「国土交通省は、都道府県と政令市を対象に、法定福利費確保に向けた取り組みの実施状況をアンケートした結果をまとめた。請負代金内訳書で受注者に法定福利費を明示させているのは、都道府県9割、政令市8割だった。受注者による法定福利費の適切な計上を確認しているのは、都道府県、政令市ともに法定福利費を明示させている団体の9割となっている。社会保険加入の原資となる法定福利費の適切な確保を目指し、国交省は明示と確認の完全実施に向けた働き掛けを強める。」(『建設通信新聞』2023.11.29)
●「国土交通省は地方自治体で総合評価方式の適切な活用を促すため、受発注者の事務負担の軽減や新規参入の促進につながる工夫を講じている優良事例を周知する。総合評価方式の導入で『実績のある企業に受注が偏る』との懸念があることから、地域企業の災害対応力や若手・女性技術者の登用を評価する方式を導入・試行している自治体がある。総合評価方式による契約が過半を占める自治体は都道府県でも少数にとどまるのが現状で、さらに柔軟で積極的な活用が望まれる。」(『建設工業新聞』2023.11.30)
●「政府の『技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議』は15日、今秋にまとめる最終報告書の第3回たたき台修正案を公表した。技能実習制度に代わって創設する外国人受け入れの新制度で容認する『本人の意向による転籍』について、制度運用開始から当分の間、通常の転籍要件により制限を大きくする激変緩和措置を設けることを新たに打ち出した。新制度の名称を『育成就労』とする案も明らかにした。」(『建設通信新聞』2023.11.16)
●全建総連は17日、東京・日比谷野外音楽堂で、「物価高騰から仕事と暮らしを守れ!賃金・単価引き上げ、予算要求中央総決起大会」を開き、雨のなか44県連・組合から1842人が参加した。集会後、東京駅周辺へ向けてデモ行進した。あいさつした中西孝司委員長は、「物価高騰で実質賃金は18カ月連続でマイナスとなり非常に厳しい状況だ。国民生活を守る施策が必要不可欠だ」と強調。「持続可能な建設産業にむけ、処遇改善、担い手確保のための請願署名に全力で取り組む」と訴えた。「建設国保の現行補助水準の確保に取り組む。物価高騰から仕事と暮らしを守るため、消費税のインボイス(適格請求書)制度についてはしっかり見直しすべきだ」と強調した。基調報告で勝野圭司書記長は、「防衛費増額などのため、社会関係予算の抑制が厳しくなっている」と指摘。「保険証の交付存続を求めるとともに、国民医療の拡充、現行補助制度の堅持の取り組みがいっそう重要になっている」と述べた。(『しんぶん赤旗』2023.11.18より抜粋。)
●「厚生労働省は20日の審議会で、業務委託を受けるフリーランスがどの業種でも労災保険に加入できるようにする方針案を示した。保険料率は0.3%にする。個人負担で月に数百円~数千円の保険料を支払えば、就労中にケガなどをしたときに労災給付を受けられるようになる。2024年秋までの施行をめざす。フリーランスは企業などに属さず個人で仕事を請け負って働く人を指す。今の制度では労災保険に入れる業種を一部に絞っており、フリーランスの加入者は70万人ほどにとどまる。今回の改正で、事業者などから委託を受けていれば労災保険に入れるようになるため、加入者が大きく広がる可能性がある。現行のフリーランスの労災保険料は、1日あたりの賃金に365日分をかけた上で、原則0.3%の保険料率を乗じて算出する。新たな制度でもこの計算方法を踏襲する。」(『日本経済新聞』2023.11.21)
●「国土交通省は、適切な労務費などの確保と賃金行き渡りの担保を実現するための措置として、中央建設業審議会・社会資本整備審議会の基本問題小委員会が中間取りまとめで打ち出した標準労務費の検討に向け、必要なデータの調査・分析に取り掛かる。歩掛かりを基に算出すべきとしていることを踏まえ、多数の規格が存在する直轄工事の歩掛かりから、標準労務費の検討材料となる標準的な規格を工種ごとに整理する。標準労務費が法的に位置付けられ次第、中建審で検討に入れるよう事前準備を進めることが狙い。」(『建設通信新聞』2023.11.21)
●「外国人労働者受け入れのあり方を巡る政府の有識者会議は24日、非熟練労働者の受け入れ資格である技能実習制度に代わる新制度の最終報告書案を示した。1年超の就労などを条件に転職を認める。人権保護に配慮しつつ労働力として受け入れる点を明確にする。最終報告案が示した新制度では自由意思に基づく転職は原則①就労から1年超②一定の日本語・技能能力を持つ――の要件を満たした場合に同一業種内で可能となる。現行の技能実習制度は人材育成による国際貢献を目的としており、人権侵害がある場合などを除き転職を認めていない。受け入れ企業や地方自治体などから『1年は育成に十分な期間ではない』などの声があるのを踏まえ、新制度の開始にあたり経過措置を講じる。『当分の間』は業種ごとに転職が可能になる期間を延ばせる規定を設ける。新制度は人材育成に加え、地方などでの人材確保を目的に据える。現行の技能実習制度は人手不足に対応するため労働力として活用される事例がある。国際貢献という目的と実態が乖離(かいり)しているとの指摘が出ていた。3年間を育成期間と位置づけ、その後はより高度な技能を有する『特定技能1号』への移行を目指してもらう。外国人労働者のキャリアの道筋を明確にすることで、受け入れ環境を整える。」(『日本経済新聞』2023.11.24)
●「勤労者退職金共済機構の建設業退職金共済事業本部(建退共本部、大澤一夫本部長)は、建設業退職金共済(建退共)制度の事務手続きを合理化する。電子申請で掛け金納付している共済契約者を対象に、2024年度から建設業許可番号や法人番号を基に住所や名称の変更といった情報を自動更新する『ワンストップサービス』を導入。これに対応して建退共約款を見直し、ワンストップサービスに関する手続きの規定を盛り込む。」(『建設工業新聞』2023.11.27)
●「全国鉄筋工事業協会(岩田正吾会長)は17日、鹿児島市の城山ホテル鹿児島で2023年度秋季定例会(雇用改善推進会議)を開いた。岩田会長は、検討が進む建設業法改正のポイントを『(専門工事業者が)安い価格で仕事をすることを制限するもの』と説明した上で、『人を確保し育てるのにはコストと時間がかかる。それをしている優秀な企業ほど大変な思いをしている。適正価格を示し、元請け企業と交渉してほしい』と要請した。一方で『職人の賃上げをお願いしたい。スパイラルアップで設計労務単価も上がっていく。業界のリーダーシップは鉄筋が執るという思いで頑張り、職人が働きたい、入りたい業界を目指していこう』と呼び掛けた。」(『建設通信新聞』2023.11.21)
●「国内の大手建設会社などで構成する海外建設協会(東京・中央)は22日、会員企業51社の2023年4~9月の海外工事受注額(速報)が前年同期比6%増の1兆1427億円だったと発表した。2年連続で前年同期を上回り、過去最高となった。地域別では北米と欧州、東欧が受注額を伸ばし、中でも北米が52%増の4625億円と好調だった。それぞれ1000億円規模の港湾や病院の工事があった。受注額全体の半分近くを占めるアジアは12%減の5446億円だった。」(『日本経済新聞』2023.11.23)
●「首都圏を中心に増える老朽マンションの再生が社会的な課題となっている。建て替え予定の分譲マンションに借り主が居座り工事できないケースがあり、決議に基づいて6カ月後の立ち退きを請求できるようにする。政府は決議要件緩和などと合わせた制度案を近く示し、2024年の通常国会への区分所有法改正案の提出をめざす。」(『日本経済新聞』2023.11.20)
●「法相の諮問機関の法制審議会は21日、分譲マンションや団地を建て替える決議の要件を緩和する区分所有法の改正素案を示した。高度経済成長期に建てられた集合住宅は建物と住民の『老い』が急速に進む。狙い通り再生を促すには、建て替え費用の負担を抑える仕組み作りも欠かせない。法制審は同日の会合で、建物に客観的な問題がある場合に建て替え決議の要件を緩和する案を提示した。①耐震性②防火性③外壁④給排水設備⑤バリアフリー――のいずれかに当てはまることが前提となる。マンションの建て替え決議は要件を『所在不明者を除く4分の3の賛成』に引き下げる。現行法は所有者全員の5分の4の賛成が必要で、所在不明者は反対票に数えるため合意が難しかった。1つの敷地内に複数の建物が建つ『団地』の建て替えについても決議要件に緩和する。国土交通省によると団地は全国に3000ほどあり、全人口の1割程度が居住する。団地を建て替える場合は団地全体と各棟の決議の両方が必要になる。政府は素案をもとに議論を進め、2024年の通常国会に区分所有法の改正案を提出する見通しだ。」(『日本経済新聞』2023.11.22)