情勢の特徴 - 2024年1月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「2023年の小規模企業の倒産数は8292件と前年比36%増え、倒産全体の9割超を占めた。新型コロナウイルス禍の政府の資金繰り支援で生き残ってきたが、物価高や人手不足で経営が維持できなくなったケースが目立つ。デジタル化の遅れも足を引っ張る。政府は支援の柱を資金繰りから事業再生に移す方針。企業の新陳代謝が規模の大きな企業に移るかが焦点になる。東京商工リサーチが15日発表した23年の倒産月報によると、1年間の倒産(負債額1000万円以上)は前年比35%増の、8690件だった。全体の95%を従業員20人未満の小規模企業が占めた。従業員20人以上の企業の倒産は前年比21%増の398件だった。背景にあるのは物価高と人事不足のダブルパンチだ。経営規模が小さいと、交渉力が弱く取引先への価格転嫁を要請しにくい。賃上げの原資にも乏しい。人を集められずに十分なサービスや商品を提供できない悪循環につながっている。倒産を資本金別でみると、100万円未満が45%増の500件と増加率が最も高かった。…物価高を直接的な原因とする倒産は645件と前年比2.2倍になった。名古屋市や岐阜市で焼肉店を展開していた『せいご』(名古屋市)は23年11月、名古屋地裁から破産開始の決定を受けた。コロナ禍後の客足は回復傾向にあったものの、原材料の値上がりが痛手となった。債務の返済負担も大きい。新型コロナウイルス禍によって売り上げが減少した個人事業者や中小企業向けに20年春に始まった実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)は、元本の据え置き期間を3年とした企業が多く、23年から返済が本格化した。物価高や人件費負担の増加で資金繰りが悪化するなか、ゼロゼロ融資の返済が重なり、経営が立ち行かなくなる企業が日立つ。4月には民間金融機関で借り入れた約5万1000社で返済が始まる。とはいえ、倒産件数は歴史的には低水準だ。コロナ禍前の倒産は年8000件台で推移していたが、ゼロゼロ融資などの支援により21~22年は年6000件台まで減った。それ以前となると6000件台は1990年までさかのぼる必要がある。23年は倒産をコロナ融資で抑え込んだ反動が出たことになる。ただ、今後については倒産は増えるとの見方が多い。東京商工リサーチ情報本部長の友田信男氏は『物価高や人手不足、過剰債務の問題もあって24年の倒産は1万件を超える可能性がある』と指摘する。」(『日本経済新聞』2024.01.16)
●「政府は16日の臨時閣議で2024年度予算案の規模を一般会計で112兆5717億円に変更した。23年末に決定していた総額から5000億円の増加となった。能登半島地震に伴い一般予備費を5000億円から1兆円に倍増させ、復旧や復興へ機動的に拠出できるようにする。年末に決めた当初予算案を、自然災害への対応など政策判断で上積みして変更するのは事実上初めてとなる。岸田文雄首相は『最もスピード感のある対応だ』と強調していた。26日に召集する通常国会で変更後の予算案を審議する。予備費は自然災害といった不測の事態に備え、使途を事前に定めずに毎年度の予算に計上する。国会の議決を経ず、閣議だけで使い道を決められる。機動的な財政支出ができる。新型コロナウイルス禍前までは一般予備費5000億円を用意するのが通常だった。被災地で復旧や復興が進み、24年度も財政需要が生じると見込む。24年度予算の予備費を増やして4月以降の拠出に備える。」(『日本経済新聞』2024.01.17)
●総務省が19日発表した2023年平均の全国消費者物価指数(20年=100)は、価格変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が105.2と前年比3.1%上昇し、第2次石油危機の影響が残っていた1982年の3.1%以来、41年ぶりの高い伸びとなった。2年連続で上昇し、22年平均の2.3%から上昇率が加速した。調査対象の522品目のうち、価格が上昇したのは455品目と9割近くを占めた。原材料価格や物流費が高騰した影響で、生鮮食品を除く食料が8.2%上昇。洗濯用洗剤などを含む家具・家事用品も7.9%上昇した。生活実感に近い生鮮食品を含む総合指数は3.2%、生鮮食品とエネルギーを除く総合指数は4.0%それぞれ上昇した。(『しんぶん赤旗』2024.01.20より抜粋。)
●「公正取引委員会と中小企業庁は、下請法連反が多く認められる総合工事業など27業種の事業団体に要請した傘下企業の法順守の自主点検の結果を公表した。コスト上昇分の価格転嫁について、総合工事業が発注者の立場でおおむね受け入れている割合は約8割だった。下請法で禁止する買いたたきなどを防ぐための社内体制は半数以上の企業で構築されていなかった。自主点検では受発注者それぞれの立場での価格転嫁の状況、法順守のための社内管理体制の構築、取引適正化に向けた取り組みなどを確認した。総合工事業の回答割合は15.1%だった。総合工事業の回答を見ると、労務費や原材料費、エネルギーコストの上昇分の価格転嫁を発注者の立場として受け入れているかについては『おおむね受け入れている』が79.8%に上った。『一部受け入れている』は16.9%、『ほとんど受け入れていない』は3.3%だった。受注者の立場で価格転嫁ができているかどうかは『おおむねできている』が46.4%、『一部できている』が42.3%、『ほとんどできていない』が11.3%だった。コスト上昇分の価格転嫁の必要性について取引先と協議せずに取引価格を据え置いた企業の割合は18.1%に上った。取引先から取引価格の引き上げを求められたが、価格転嫁をしない理由を回答せずに取引価格を据え置いた企業も5.4%いた。買いたたきや減額、支払い遅延をしないための社内管理体制については『構築していない』が52.0%と最多だった。『社内規定やマニュアルの整備』は14.8%、『研修の実施』は33.2%となっている。」(『建設通信新聞』2024.01.23)
●「日銀は23日に開いた金融政策決定会合で現在の金融緩和策の維持を決めた。植田和男総裁は同日の記者会見で、2%の物価安定目標実現の『確度は少しずつ高まっている』と述べた。企業の賃上げ機運が高まり、賃金と物価の好循環の持続力に自信を深めつつある。」(『日本経済新聞』2024.01.24)
●「政府が26日招集の通常国会に2024年度予算案を提出したことで、一般会計の『公共事業費』は、土木分野の『公共事業関係費』が6兆0827億円、船舶建造費なども含む建築分野の『その他施設費』が1兆0325億円で、土木分野と建築分野を合わせた『公共事業費』の総額が7兆1152億円となることが分かった。また、23年度補正予算の公共事業費は、公共事業関係費1兆9939億円、その他施設費9173億円の計2兆9122億円となっていることから、いわゆる『16カ月予算』でみた公共事業費は、公共事業関係費の8兆0766億円、その他施設費の1兆9498億円を合わせた10兆0264億円になる。」(『建設通信新聞』2024.01.30)
●「ドイツの2023年の名目GDP(国内総生産)が4.4兆ドルとなり、日本のGDPが世界4位に転落することが濃厚になった。ドイツ経済は低迷しているが、外国為替が円安になり日本のGDPがドル建てで目減りする。00年にはドイツの2.5倍あった日本のGDPが逆転されるのは、金融緩和下で生産性の向上が滞ったことを映す。30日のドイツ連邦統計庁の発表によると、23年の名目GDPは前年比6.3%増の4兆1211億ユーロだった。23年の為替の平均レートではおよそ4兆4500億ドルとなる。日本が23年通年のドル建てでドイツに並ぶには、2月公表の23年10~12月期が約190兆円に達する必要がある。前年同期比で3割増にあたり、ハードルは高い。日本のGDPは2010年に中国に抜かれ、世界2位から3位に後退した。当時の逆転は実質で年10%の成長をしていた中国の伸びによるものだ。今回の日独の逆転はともに低成長に陥るなかで起きる。ドイツはウクライナ危機に伴う高インフレと欧州中央銀行(ECB)による急激な利上げで23年は実質0.1%のマイナス成長だ。ドイツ経済諮問委員会によると経済の実力を示す潜在成長率で22年は0.4%で、0.5%だった日本を下回る。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの土田陽介氏は、物価高と22年比での対ドルのユーロ高がドイツのGDPを押し上げたと分析する。ユーロの相場と日独の名目GDPに占める物価要因が一定だと仮定すると、1ドル=132円なら日独は同水準だったとみる。日独の逆転を招いた円安は、日本経済が成長力の底上げを怠ってきたためでもある。この20年あまり金融緩和や財政出動による需要喚起に走り、産業構造の新陳代謝などは遅れてきた。その間、欧米の主要国は生産性を高めた。」(『日本経済新聞』2024.01.31)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は23日、能登半島地震で被災した能越自動車道の石川県管理区間などについて、権限代行による復旧工事の実施を決めた。石川県からの要請を踏まえ、被災したインフラの本格的な復旧に着手する。同日に工事開始を告示した。権限代行で復旧工事をするのは、能越道石川県管理区間(七尾市赤浦町~穴水町字此木の延長約38.2キロ)、国道249号沿岸部(珠洲市若山町宇都山~輪島市門前町浦上の延長約52.9キロ)と関連の土砂災害対策(珠洲市仁江町、清水町)、河原田川の河川・砂防事業(輪島市熊野町、市ノ瀬町)。能越道石川県管理区間は盛り土部の崩落や橋梁の損傷、国道249号沿岸部は道路の大規模な崩落やトンネル、橋梁の損傷などが発生したため、交通確保に向けた復旧工事を始める。ともに施工者は未定。現在は日本建設業連合会との災害協定に基づき、道路啓開が進んでいる。国道249号沿岸部の関連土砂災害対策は大規模な斜面崩壊により土砂や流木が堆積していることから、緊急的な地すべり対策工事を実施する。まだ現地に入れていないため、現在は応急対策の検討を進めている。河原田川の河川・砂防事業は、鹿島が担当する応急対策を国が引き継ぎ、河道内に堆積した土砂の除去や護岸整備、法面保護、水路工などに取り組む。当面の安全対策は出水期までに完了させる。熊野町地点は本川が土砂や倒木で埋塞(まいそく)しているため、仮廻し水路の建設に向けた掘削作業を進めている。市ノ瀬町地点は土砂流出を防ぐ大型の土のうを設置している。」(『建設通信新聞』2024.01.24)
●「国土交通省は22日、『スモールコンセッションの推進方策に関する検討会』の第2回を開き、スモールコンセッションの推進に向けた施策案を示した。事業手続きを簡素化するため、通常のPFI事業に必要な基本構想や基本計画について、既存の上位計画や関連計画の活用によって代替できるように検討していく。手続きの簡素化ではVFM(バリュー・フォー・マネー)を簡易収支比較や定性的評価で代替することも検討する。事業実施にかかる業務負担の軽減や検討期間の短縮につなげる。円滑な事業導入を後押しするため、自治体向けのガイドラインを策定し、公募や選定までの一連のプロセスなどを示す。参考となる取り組みをまとめた事例集も作成する。案件形成の支援では、専門家による自治体への伴走支援を実施する。自治体による先導的な官民連携事業の導入検討調査に対する補助も行う。自治体と民間事業者をつなぐマッチングサービスの提供も検討する。サービスでは双方のニーズとシーズを公開することや相談・仲介機能などを設けることを想定する。施策案にはこのほか、前回会合で打ち出した自治体や民間、金融機関、学識者などによる『スモールコンセッション推進会議(仮称)』の設立なども盛り込んだ。」(『建設通信新聞』2024.01.26)
●「通常国会が26日、開会した。政府は58本の法案を2月上旬から順次提出する。国土交通省関係は、セットで提出する建設業法と入札契約適正化法(入契法)の改正案など6本。建設業法と入契法の一体改正により、担い手確保の取り組みを加速し、持続可能な建設業の実現を目指す。法務省関係では、技能実習に代わる新たな在留資格として育成就労を創設するための技能実習法改正案を提出する。2024年度予算案は26日に提出した。23年度内の成立に向け、与党は予算案を最優先に審議する考えだ。会期は6月23日までの150日間。」(『建設通信新聞』2024.01.29)

労働・福祉

●「建設業での労働災害(新型コロナウイルス感染による労災者数を除く)による2023年(1-12月)の死亡者数は、22年の281人(確定値)を大きく下回り、過去最少となる可能性が高いことが分かった。3年ぶりに死亡者数が減少し、過去最少だった20年確定値の256人を30人以上下回るとみられる。また、死傷者数は過去最少の22年の1万4539人とほぼ同じか若干上回ると推計される。」(『建設通信新聞』2024.01.19)
●「厚生労働省は17日、危険場所への立ち入り禁止、特定の場所での喫煙禁止、事故発生場所からの退避など、事業者が実施する危険性防止措置の対象範囲を、『労働者』から建設業での一人親方をはじめとした個人事業者など『作業に従事する者』に広げる労働安全衛生規則など改正省令案概要をまとめた。今後、必要な手続きを経て3月下旬に公布し、約1年の周知期間を経て、2025年4月1日に施行する。」(『建設通信新聞』2024.01.19)
●「東京都心の大規模再開発の工事現場に生コンクリートを供給するメーカーが、工場からの出荷調整に苦慮している。輸送するミキサー車の乗り手が足りないからだ。運転手の長時間労働が規制される2024年度以降は運べない案件が増える――。生コン業界の緊張が高まってきた。都心などの工事現場に供給する生コンメーカーで構成する東京地区生コンクリート協同組合(東京・中央)の事務所で2023年12月、ファクスを眺める出荷調整担当者の表情はさえなかった。東京協組はゼネコンからの出荷要請を受け、組合員の生コン各社に出荷を振り分ける。例えばある案件では生コンを打ち込む日が10日ほどあり、ゼネコンの希望日時やミキサー車台数に応じられるかを計17工場にファクスで問い合わせる。しかしファクス返信の出荷日の欄には最近、対応不可を意味するバツ印が目立つという。生コンメーカーからは『希望の6台は無理だが、3台なら対応する』といった回答が少なくない。生コンは工場から1時間半以内に工事現場に届けるという原則があって遠方からの応援出荷も容易ではなく、限られた返答でやりくりに努める。生コン会社は自社でミキサー車を保有せず、運輸会社と契約するケースが多い。新型コロナウイルス禍に伴う工事中断などで生コン出荷の頻度が減り、運輸会社に仕事を回せなくなった。『仕事の減った運輸会社では大型免許を持った運転手が清掃や宅配など別業界へ移ってしまった』(東京協組の担当者) コロナ禍が落ち着き都心の工事は戻ってきた。全国で生コン出荷が低迷するが、都心の大型プロジェクトが集まる東京協組では23年10~12月の出荷量が前年同期を1割ほど上回った。しかし運転手が戻らず、都内の生コン工場の責任者は『秋口ごろから急な出荷要請は断らざるを得ないケースも増えている』と明かす。」(『日本経済新聞』2024.01.20)
●「建設キャリアアップシステム(CCUS)の能力評価(レベル判定)制度の浸透が急がれる中、能力評価に有効な就業履歴を蓄積する適正な運用が多くの現場で行われていない可能性が持ち上がっている。建設業振興基金(振興基金、谷脇暁理事長)が一部都道府県内の公共工事で運用実態を抽出調査したところ、適正に運用する現場は半分に満たなかった。CCUS上で『施工体制登録』『施工体制技能者(作業員名簿)登録』を設定していないのが要因と考えられる。振興基金は公共発注のモデル工事で適正運用を担保する加点基準や実施方法を採用するなど、発注者側からの後押しも必要とみる。」(『建設工業新聞』2024.01.22)
●「民間シンクタンクの試算によると、個人消費を左右する実質賃金をプラスにするには2024年に3.6%の賃上げが必要になる見通しだ。中小企業が価格転嫁しやすい環境を整え、賃上げの波を広げることが欠かせない。日本経済が酔価物価上昇と賃金の好循環を築けるかの分水嶺となる。…賃上げ率はバブル崩壊などの影響で2000年代以降は22年まで1%台~2%台前半の低水準だった。2年連続で3.5%を超えればおよそ30年ぶりだ。24年の賃上げを決める春季労使交渉は24日の経団連労使フォーラムから本格的に始まる。政府は22日、政労使会議を開き、23年を超える水準の賃上げをめざすと確認した。米欧の実質賃金がプラスになるなか、日本の出遅れは目立つ。要因の一つは国内の雇用者数の7割を占める中小企業で賃上げが後手に回っているためだ。厚生労働省の23年の賃金実態調査によると、5000人以上の企業では68.4%が基本給を底上げするベースアップ(ベア)を実施した一方、300人未満では45.9%にとどまった。従業員100人以上の企業を業種別にみると医療・福祉や教育、宿泊・飲食サービスが2割台で低かった。電気や運輸は60%を超えた。運輸業は24年度から残業時間の上限規制が適用されるため、人手確保に向けて賃上げに動く。中小の賃上げが鈍いのは労務費などの価格転嫁が十分に進まないためだ。中小企業庁の調査では23年9月時点でコスト上昇分をどれだけ転嫁できたかを示す比率は同3月から1.9ポイント減の45.7%だった。」(『日本経済新聞』2024.01.23)
●「全国中小建設業協会(土志田領司会長)は、人材確保・育成対策などに関する2023年度実態調査結果をまとめた。働き方改革に関連し、時間外労働時間を聞いたところ、9割は月30時間未満だった。週休2日の取り組みも、8割が推進していることが分かった。アンケートは、全中建会員団体の傘下企業2330社を対象に23年8月から10月にかけて実施し、920社から有効回答を得た(回答率39.5%)。月当たりの時間外労働の実態によると、10時間未満が40%と最多を占め、次いで10時間以上20時間未満の31%、20時間以上30時間未満の19%、30時間以上の10%の順となった。残業の発生原因は、『煩雑な書類作成』と『人手不足』の二つが突出しており、『自然条件』『適正な工期の発注ではない』『設計内容の不備』も比較的多かった。週休2日は、既に取り組んでいるが53%、実現に向けて取り組んでいるが27%、検討中が17%を占めた。取り組めないは、3%とごくわずかだった。週休2日が難しい場合の理由としては、『繰り越しができない工事で納期に間に合わせるため』『週休2日には無理のある工期設定』『職人不足で土日に作業せざるを得ない』などが挙がっている。週休2日の実現には、労務費の上昇や歩掛かりの見直し、発注者の理解と意識改革などを求める意見が寄せられている。」(『建設通信新聞』2024.01.23)
●「厚生労働省は、2023年毎月勤労統計調査の特別調査結果をまとめた。建設業の『決まって支給する現金給与額』は前年比2.0%増の27万4365円、『特別に支払われた現金給与額』は3.6%減の29万7292円。いずれも全産業で最も高かった。1日の実労働時間は0.1時間増の7.4時間で、出勤日数は0.3日増の21.2日。どちらも全産業で最長だった。」(『建設工業新聞』2024.01.23)
●「厚生労働省は24日、2023年の賃金構造基本統計調査の速報値を公表した。一般労働者の平均賃金は月31万8300円で、22年に続いて過去最高を更新した。前年から2.1%増え、伸び率は1994年の2.6%増以来29年ぶりの高い水準となった。厚労省が速報値を公表したのは初めて。従業員5人以上の民間企業と10人以上の公共事業所から7万8623カ所を無作為で調査し、速報ではこのうち10人以上の民間企業について分析した。対象者は正社員などフルタイムで働く人で、賃金は残業代などを含まない所定内給与を指す。平均賃金の伸びは16年以降、前年比で0%台の微増にとどまる状況が続いていた。21年には新型コロナウイルス禍の影響で0.1%減少した。22年に1.4%のプラスに転じ、23年はさらに大幅な伸びとなった。物価高が賃金の伸びを後押ししている。物価の変動を指す消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)は23年平均で3.1%上昇した。ただ、今回の平均賃金の増加幅は物価の伸びには追いついていない。働く人は賃上げの恩恵を十分に得られていない。」(『日本経済新聞』2024.01.25)
●「人手不足の業種で外国人材が働く『特定技能』の対象をめぐり、関係省庁が『自動車運送業』や『林業』など4分野を追加する方向で調整に入った。追加が実現すれば2019年の制度創設以来初めてで、現在の製造業など12分野から働く場が広がる。数万人規模の新規就労が見込まれ、人材確保につなげる狙いがある。」(『日本経済新聞』2024.01.27)
●「厚生労働省が26日にまとめた2023年10月末時点の外国人雇用状況によると、建設業の外国人労働者数は前年同月末比24.1%増の14万4981人となった。2年続けての増加となり、今回データを公表している19-23年(5年)の中では最も多い労働者数になっている。産業別の対前年増加率では建設業が最も伸びた。また、建設業で外国人を雇用している事業所数は、11.6%増の3万9415カ所だった。事業所数の伸び率も建設業が産業別で最も高く、担い手確保を外国人労働者に頼っている状況が浮かび上がる。」(『建設通信新聞』2024.01.29)
●「日本建設産業職員労働組合協議会(日建協、木浪周作議長)は29日、2023年11月に実施した『4週8閉所ステップアップ運動』の結果を発表した。月によって土日・祝日の数が異なる点を補正した4週8閉所指数は、前年同期より0.32ポイント上昇して4週『5.59閉所』となった。時間外労働の上限規制適用まで残り半年となるタイミングで、これまで頭打ち感のあった建築部門が特に大きく改善した。全体の閉所日分布を見ると、10閉所が初の最多となり17.9%を占めた。」(『建設通信新聞』2024.01.30)
●「技能実習に代わる外国人受け入れの新制度『育成就労』の創設に向けた政府の方針案が明らかになった。新制度で新たに認める本人意向の『転籍』の制限期間は、一般の労働者と同等に近い権利を保護し制度の魅力向上につなげるため『1年』とする方向を示した。一方、激変緩和の観点から、個々の産業分野によっては当面は『1~2年』の範囲内で設定することを認める。転籍前の受け入れ企業が支出した初期費用などについて、正当な補償を受けられるようにするための仕組みも検討する。」(『建設工業新聞』2024.01.30)

建設産業・経営

●「東京商工リサーチは15日、2023年(1-12月)建設業倒産(負債額1000万円以上)が、前年比41%増の1693件に上ったと発表した。負債総額も54%増の1843億1000万円と増加した。件数、負債総額とも2年連続で前年を上回った。件数の1600件台は16年以来7年ぶり。」(『建設通信新聞』2024.01.17)
●「日本アスファルト合材協会(今泉保彦会長)が会員企業を対象にまとめた2023年度第3四半期(23年4-12月累計)のアスファルト合材製造数量(速報値)は、前年同期比5.2%減の2579万0235トンとなり、過去最低を更新した。単月の推移を見ると、0.1%増と横ばいだった7月以外は、ずらりとマイナスが並ぶ厳しい状況が続いている。このままのペースで行くと、過去最低だった22年度をさらに200万トンほど下回り、通期での3500万トン割れが現実のものとなる可能性が高い。」(『建設通信新聞』2024.01.19)
●「全国中小建設業協会(全中建、土志田領司会長)は会員企業を対象に、新・担い手3法に基づき発注手続きが適切に行われているか調べた。国や都道府県、市町村といった発注機関別に適正な予定価格が設定されているか確認した結果、適正でないと答えた割合は都道府県で5割超、市町村で6割超を占めた。4月に時間外労働上限規制の適用が迫る中、工期設定が適正でないと答えた都道府県や市町村の割合も予定価格と同水準だった。」(『建設工業新聞』2024.01.23)
●「2023年1-12月に休廃業・解激した『建設業』は、全国で7628社で前年を10.0%上回ったことが帝国データバンクの調べで分かった。全産業で最も多く、過去5年で最多だった。業種別では『はつり・解体工事』が78件で59.2%増えて全体の中でも4番目に増加率が高く、減少率は『一般土木建築工事』が11.0%減(65件)、『左官工事』が8.0%減(126件)と低かった。」(『建設通信新聞』2024.01.25)
●「日刊建設通信新聞社は、主要建設会社を対象に設備投資に関するアンケートを実施した。2023年度の設備投資見込み額では、100億円以上の設備投資を計画している会社が9社あった。トップは、清水建設の580億円(前年度比48.7%増)。次いで、戸田建設の473億円(57.6%増)、西松建設の287億1000万円(6.9%減)、鹿島の270億円(6.6%減)、大林組の250億円(11.4%増)、五洋建設の159億円(108.1%増)、大成建設の111億円(20.0%減)、長谷工コーポレーションの110億円(38.3%減)、鉄建建設の102億1200万円(104.2%増)となっている。…23年度の主な設備投資予定(複数回答)では、ソフト・システム開発が19社と最も多かった。その後は、工事用機械の購入、社屋・施設の建設・改修、土地・不動産・建物(賃貸用)の取得、工事用機械の維持更新、工具・器具(実験用・計測用など)・備品の購入、土地・不動産・建物(事業用)の取得、CN対応の順となっている。その他として、作業船建造、消波ブロック型枠関連、研究用機械装置が挙げられている。」(『建設通信新聞』2024.01.29)
●「日本建設業連合会(宮本洋一会長)は、法人会員93社を対象とした2023年度第3四半期(4-12月累計)の受注調査結果をまとめた。受注総額は前年同期比6.0%増の12兆1558億円、国内計は7.7%増の11兆7779億円となり、ともに過去20年間で最高額に達した。第3四半期で総額が12兆円台に乗るのは20年間で初めて。1件数千億円規模の超ビッグプロジェクトを含め、民間部門で大型案件が多く積み上がっているほか、官公庁部門も堅調に推移している。」(『建設通信新聞』2024.01.29)
●「日本型枠工事業協会(三野輪賢二会長)は1月10日、国土交通省が2022年6月に公表した『CCUS(建設キャリアアップシステム)のレベル別年収』に対応した、『モデル型枠単価』を作成したと発表した。作成したモデル型枠単価は東京価格。三野輪会長は今回公表した単価について、『あくまで架空の建物の架空の単価。目安として理解してもらうことが大事』と強調する。ただ目安ながら、これまで慣習だった材工一式計上の施工単価を分解し、型枠工事企業の収益源泉の状況が類推できる歩掛かりなどの費目についても明示しているのが最大の特徴だ。」(『建設通信新聞』2024.01.31)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「マンションやオフィスビルの建築コストが膨らんでいる。民間調査機関の建設物価調査会(東京・中央)によると、東京の2023年12月の工事原価は前年同月を5~6%上回り、それぞれ過去最高を更新した。資材高に加え、人手不足による人件費の上昇が響く。新築マンション価格やオフィス賃料を押し上げる可能性がある。」(『日本経済新聞』2024.01.16)
●「岸田文雄首相は14日、能登半島地震の被災地である石川県を視察した。同日行われた馳浩県知事の要望を受け、被害が大きかった道路と、二次被害を防ぐ砂防事業について、インフラを管理する地方自治体に代わって国が権限代行などを実施し、本復旧までを行う考えを表明した。漁港や海岸などでも権限代行に必要な手続きを進めるとした。」(『建設通信新聞』2024.01.16)
●「能登半島地震の発生を受け、日本建設業連合会と3県(石川県、富山県、新潟県)の建設業協会が、降雪・積雪や低温などの厳しい作業環境で、昼夜を問わず、半島内の道路啓開に奮闘している。主要幹線道路の進捗(しんちょく)率は、地震発生から2週間が経過した15日午前7時時点で総延長(約300キロ)の約9割に達した。地域の守り手である建設業の協力を得て、半島内の幹線道路を管理する石川県と、県に代わって一部区間を対応している国土交通省などは、早期の孤立地区解消と被害の全容把握に向け、まずは道路啓開に全力を挙げる。」(『建設通信新聞』2024.01.16)
●「能登半島地震の発生から15日で2週間を迎えた。被害の大きかった沿岸部を中心に多くの孤立集落が点在する中、救援・救助ルートを速やかに確保するため、国や自治体、建設業界は発生直後から総力を結集し24時間態勢で『くしの歯』状の道路啓開作業を展開。半島を走る国道249号など主要幹線道路(総延長約300キロ)を対象に、同日午前7時時点で約9割の緊急復旧工事を完了した。くしの歯作戦では大型重機などの資機材搬入で自衛隊の船も活用し、内陸・海側の両方から並行して工事を進めている。」(『建設工業新聞』2024.01.16)
●「法務省の法制審議会区分所有法制部会は16日、区分所有法制の改正に関する要綱案をまとめた。2月中旬の法制審総会で決定し、小泉龍司法務相に答申する。政府は26日に召集する通常国会への改正案提出を目指す。要綱案では▽区分所有建物の管理▽区分所有建物の再生▽団地の管理・再生▽被災区分所有建物の再生――の4点を円滑化する方策をまとめた。」(『建設通信新聞』2024.01.19)
●「能登半島地震では建設資材の生産・供給施設も多く被災した。今後の復旧工事の本格化を見据え、被災施設の早期の稼働再開が求められるが、最も懸念されているのは資材の円滑な輸送手段の確保だ。被災施設が半島内に集中し、それ以外の近隣地域では軽微なことから、資材の『供給力』そのものには支障がないとの見方がある。ただ、資材輸送の中継地となる港湾が使用困難となっているケースがあり、道路も寸断箇所があり渋滞も激しい。資材供給のボトルネックの解消が急がれる。」(『建設工業新聞』2024.01.19)
●「石川県は23日、能登半島地震の被災者向けに応急的な住まい約1万5000戸を3月末までに確保すると発表した。提供を開始している賃貸型の応急住宅(みなし仮設)約3800戸に加え、プレハブ型の仮設住宅を3000戸建設し、県内外の公営住宅は8800戸の確保にめどがたった。地震による被害で居住できなくなった住宅は多く、県は応急的な住まいの需要が9000戸以上と推計している。応急住宅の確保により、避難所生活の早期解消を目指す。珠洲市や輪島市などでプレハブ型の仮設住宅の建設を始めている。3月まで毎月1000戸着工し、3月末には1300戸が入居できるようにする。石川県によると、全都道府県から公営住宅提供の申し入れがあり、県外で約8000戸を確保した。現時点で145戸の入居が決まったという。…県はインフラの復旧や事業再建を進めながら、4月以降は木造戸建て風や長屋風などデザイン性の高い仮設住宅も着工していくという。」(『日本経済新聞』2024.01.24)
●「能登半島地震の復興が動き出す。多くの被災者がなお避難所暮らしを強いられる中、政府は生活再建やインフラ復旧の政策をまとめる。過去の災害では巨額の公費が地域再生に直結しなかった例もある。人口減時代の地震大国・日本で復興のあり方を探る。政府の能登半島地震支援のパッケージが25日、公表される。①生活再建②生業再建③災害復旧――柱となる見通しだ。被害の全容は不明だが、野村総合研究所の木内登英氏は23日までの状況をもとに暫定的な被害額を2兆625億円と推計した。単純比較できないが東日本大震災(16.9兆円)や阪神大震災(9.6兆円)の政府試算に次ぐ規模となる。過去の震災で国は巨額予算で復興を後押しした。だが、すべてが有効活用されたとは言い難い。東日本大震災後に計4600億円以上を投じた『土地区画整理事業』。津波被災の土地をかさ上げして整備したが、大規模工事に時間がかかり多くの人が故郷を離れた。国土交通省の調べでは、21市町村で28%に当たる282ヘクタール、東京ドーム60個分の土地が未利用。住民ニーズと施策のズレが浮き彫りになった。『元通り』にした地域も人口減が止まらない。阪神大震災の神戸市長田区の人口集中地区は2010~20年で約7%減少。東日本大震災の宮城県気仙沼市は71%も減った。」(『日本経済新聞』2024.01.25)
●「新築マンションの価格高騰に拍車がかかっている。不動産経済研究所(東京・新宿)が25日発表した2023年の平均価格は、東京23区が前年比39.4%上昇の1億1483万円と、データを遡れる1974年以降で初めて1億円を突破した。用地取得費や建築コストが上昇し、販売価格が上がっている。野村不動産など大手デベロッパー各社は高価格でも販売が見込める都市部に供給をシフトする。首都圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)の平均価格は28.8%上昇し、8101万円だった。発売戸数は前年比9.1%滅の2万6886戸と1992年以来の水準に落ち込んだ。東京23区の直近5年間の上昇幅は60.8%に達する。神奈川県の11.2%、埼玉県の13.1%と比べ上昇幅が際立つ。発売初月の契約率は東京23区が71%と、好調の目安である70%を2年ぶりに上回った。神奈川県(68.5%)や埼玉県(61%)は前年を下回った。不動産経済研究所の松田忠司上席主任研究員は『価格高騰を受けて、売り出しから完売までの期間が長期化するなど、需要に一服感がみられる地域も出ている』と説明する。」(『日本経済新聞』2024.01.26)
●「政府は能登半島地震で被災したインフラストックなどの損害額について、最大約2.6兆円に上るとの推計結果を公表した。内訳は住宅やビルなど建築物が最大1.3兆円、道路や港湾施設など社会資本も最大1.3兆円。被災し機能が低下・停止したストックにより、地域住民の生活だけでなく、生産や物流、観光などを通じて、経済への幅広い影響が出ていると見られる。能登半島地震による経済影響を分析する一環で推計した。被災市町村ごとの震度や被害状況に応じて、過去の大地震での損壊率を参照にしながら、ストックの損害額を暫定的に試算した。推計によると建築物の損害額が0.6兆~1.3兆円。うち住宅は0.4兆~0.9兆円、非住宅は0.2兆~0.4兆円とした。社会資本の損害額は0.5兆~1.3兆円という。」(『建設工業新聞』2024.01.29)

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