情勢の特徴 - 2024年3月前半
●「食品価格の上昇が家計を圧迫している。総務省によると2人以上の世帯で消費支出に占める食費の割合(エンゲル係数)は2023年に27.8%に達し、いまの基準で遡れる00年以降で最高だった。賃金上昇を上回る物価高は消費に影を落としており、マイナス金利政策の解除を視野に入れる日銀も動向を慎重に見極める。エンゲル係数の上昇は、家計で食費の割合が高まり、それ以外にお金を回しにくくなっていることを示す。新型コロナウイルス禍に見舞われた20年にもエンゲル係数が上昇したが、このときは旅行などの支出が大幅に減ったことが要因だった。その後、行動制限の緩和でエンゲル係数は低下に転じたが、23年に再び大きく上昇した。足元では食品価格の上昇が目立つ。24年1月の消費者物価指数(CPI、総合)の上昇率は前年同月比2.2%と、ピークだった23年1月(4.3%)と比べ落ち着きつつある。一方、食料価格の上昇率は5.7%と23年9月のピーク(9.0%)から下がったもののなお高水準が続き、家計の重荷になっている。円安も食卓に影を落とす。23年通年(平均)の円相場は1ドル=140円台で、22年(131円台)より円安が進んだ。円安は輸入価格を押し上げ、食品価格全体の上昇につながった。農林水産省によると日本の食料自給率(カロリーベース)は22年度の概算値で38%にとどまる。輸入に頼る割合が高いことも、円安の影響を増幅している。」(『日本経済新聞』2024.03.03)
●「日経平均株価が4日、史上初めて4万円の大台に乗せた。今年の上昇率は20%と世界のなかで突出する。各国と比べて通貨安や低金利、脱デフレなど好条件がそろう。企業収益見通しの改善度合いが欧米に比べて高く、海外マネーの流入につながっている。4日の東京株式市場で日経平均は続伸し史上最高値を更新した。終値は前週末比198円41銭(0.5%)高の4万0109円23銭。今年の上昇率は20%と、米ダウ工業株30種平均(4%)などを上回る。20カ国・地域(G20)のなかでトルコ(22%)に次ぐ2位だ。海外投資家の買いは1月から再加速し、今年2.6兆円を買い越した。…東証株価指数(TOPIX)を構成する企業の2024年の1株当たり純利益の市場予想は、22年末から4%程切り上がった。円安や企業の値上げによる収益改善を確認し予想引き上げが進む。対照的に欧米主要企業の予想1株利益は同期間に4~5%低下している。米国は巨大テック企業を除くと、金利負担などが重荷で業績が伸び悩み気味だ。欧州や中国は景気の減速が厳しい。」(『日本経済新聞』2024.03.05)
●「中小企業の『賃上げ余力』が高まっている。企業の利益などが賃金に回る割合を示す労働分配率は足元で70%前後と1992年以来の低水準が続く。経常利益など企業の稼ぐ力が伸びて分配率を下押しした。賃上げ機運の中小への波及が期待できる一方で、経営体力が弱い零細企業の生産性を向上できるかが残る課題になる。労働分配率は経常利益や人件費、減価償却費、支払利息などの合計を分母におき、人件費を分子にして計算する。企業が生んだ付加価値のうち、給料などで従業員にどれだけ分配したかを示す。財務省が4日に発表した2023年10~12月期の法人企業統計をもとに試算すると、中小企業の労働分配率は直近4四半期の移動平均で70.7%と、前年同期から1.4ポイント低下した。財務省は資本金1000万円以上~1億円未満の企業を中小企業と定義する。経常利益は前年同期比で4四半期ぶりに減った。運輸・郵便業が全規模で38.5%減だったことや円安によるコスト増などが響いたとみられる。このため中小の分配率は7~9月期からは0.4ポイント上昇した。それでも92年7~9月期の69.9%以来の低水準が3四半期連続で続く。中小企業の分配率の内訳をみると、分母に入る経常利益は新型コロナウイルス禍前の4年前に比べ13.6%伸びた。一方で分子の人件費は同期間に3.1%の伸びにとどまっており、企業に賃上げ余力が生まれている。」(『日本経済新聞』2024.03.05)
●「公正取引委員会は7日、日産自動車に対し下請け企業との取引で不当な減額を行っていたとして再発防止を求める勧告を出した。継続的な賃上げを妨げかねない企業間の不適切な取引にメスを入れた。成長と分配の好循環の実現は中小企業の賃上げがカギを握る。原材料費や人件費の上昇を価格に上乗せする価格転嫁の促進は欠かせない。公取委によると日産は完成車部品の製造委託先36社に、発注時に決めた金額から『割戻金』として一部を差し引いた代金を支払っていた。減額は2021年1月~23年4月に約30億円にのぼり、下請法違反にあたる。日産は全額を下請け企業に支払った。日産の調達担当が原価低減を目的に長年続けてきたという。自動車業界では代金減額で04年以降に計14件の勧告があり、部品メーカーのほかマツダも勧告を受けた。公取委は『氷山の一角』とみて日本自動車工業会に会員企業が法令順守を徹底するよう求める。勧告を受けて、日産は『再発防止策を徹底する』とコメントした。日産の事案は政府が旗を振る賃上げとも密接に関わる。公取委の片桐一幸取引部長は7日の記者会見で『中小企業の賃上げ実現へ価格転嫁が強く求められる中で、サプライチェーンの頂点に立つ企巣が達反を行ってきたことは非常に遺憾だ』と語った。価格転嫁に応じるどころか、下請け企業にコストを押しつけた構図を強く批判した。」(『日本経済新聞』2024.03.08)
●内閣府は8日、「国民生活に関する世論調査」の結果を発表した。所得・収入について「満足」「まあ満足」と答えた人は合わせて31.4%で、2022年の前回調査と比べて3.5ポイント減だった。…「不満」「やや不満」は合わせて前回調査比3.2ポイント増の68.0%で過去最高。内閣府は、国民生活に物価高が直撃したことなどが背景にあるとみている。生活全体の満足度も「満足」「まあ満足」合わせて49.0%で過去最低。22年調査と比べて生活の向上感に関しては「低下している」が3.3ポイント増の35.9%、「向上している」は0.7ポイント増の5.4%だった。今後政府が力を入れるべきことを複数回答で尋ねたところ、68.1%の「物価対策」が最も多く、「景気対策」(64.4%)、「医学・年金等の社会保障整備」(62.8%)、「高齢社会対策」(50.8%)と続いた。「防衛・安全保障」は34.3%だった。(『しんぶん赤旗』2024.03.09より抜粋。)
●「人手不足の深刻な建設業界で、労働者の長時間労働を是正するための規制が強まる。国土交通省は労働環境の悪化を招くような、短すぎる工事期間での受注を禁じる。違反した事業者には指導・監督を通じて改善を求める。賃金が上がりやすい仕組みも整え、人材確保につなげる。建設業界では資材高騰や人手不足で工事が遅れる問題が生じている。リクルートワークス研究所は建設職種で40年に65.7万人の労働力が不足すると推定する。国交省は建設業法などを改正し、建設業者やその下請けといった立場の弱い受注側が働きやすい環境をつくる。今国会で関連法改正案の成立をめざす。受注側が本来必要な工期よりも著しく短い期間で工事契約を請け負う『工期ダンピング』を禁止する。建設業者は顧客の要望に応えたり、他社との競争に勝ち抜いたりするため、短い工期でも無理して受注することがある。現行法ではデベロッパーなど発注側のみ規制しているが十分機能していなかった。国交省によると短工期に対応するために建設業者の4割が休日や早朝出勤、残業を強いられている。同省は理由もなく週休2日が確保できなければ工期ダンピングに該当する懸念があるとみて監視を強化する。」(『日本経済新聞』2024.03.01)
●「建設工事の下請代金の支払いで用いられる約束手形について、国土交通省は支払いサイト(期間)が60日を超える長期手形の交付を建設業法に違反の恐れがある行為として取り締まり対象とする方向だ。公正取引委員会が11月にも下請法で指導対象とする『割引困難な手形』のサイトの基準を『60日超』に変更すると決定。これを下請法の対象業種から除外されている建設工事の下請負でも踏襲し、元下間に適用する『建設業法令順守ガイドライン』に反映させる予定だ。」(『建設工業新聞』2024.03.05)
●「経済産業省中小企業庁は、『官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律』(官公需法)に基づく2024年度の『国などの契約の基本方針』の策定方針を固めた。国や独立行政法人などが中小企業・小規模事業者に発注する24年度の契約目標率は61.0%と、4年続けて同じ目標率とする。スタートアップ(新興企業)を含む創業10年未満の新規中小企業の契約目標率も、引き続き3%以上にする。官公需での価格転嫁を進めるため、物価や労務費の上昇への対応を強化する内容を新たに記載する。契約の基本方針は、4月中下旬の閣議決定を目指す。」(『建設通信新聞』2024.03.08)
●「政府は8日の閣議で、建設業法と入札契約適正化法(入契法)の改正案を決定した。持続可能な建設業の実現を目指し、適正な労務費確保と下請けへの行き渡りに向けた措置の新設、資材価格高騰を想定した請負代金変更協議のルール整備、働き方改革と生産性向上を推進する規定の追加を行う。公布から3カ月後、6カ月後、1年6カ月後の3段階で順次施行する。今通常国会での成立を目指す。国土交通省が、中央建設業審議会・社会資本整備審議会基本問題小委員会の議論を踏まえてまとめた。『労働者の処遇改善』『資材高騰に伴う労務費へのしわ寄せ防止』『働き方改革と生産性向上』の三つの観点で、両法を改正する。目玉は労働者の処遇改善に向けた措置。具体的には、中建審が労務費の基準となる標準労務費を作成・勧告する。加えて、標準労務費を下回る『著しく低い労務費等』で、建設業者が見積もりを提出することと、発注者や元請けなどの注文者が見積もり依頼することの両方を新たに禁止する。これに違反した場合、注文者のうち発注者(民間事業者含む)は国土交通大臣らが勧告・公表し、建設業者(注文者、受注者)は現行法の規定に基づいて指導監督する。さらに、現行法で注文者を対象としている『不当に低い請負代金の禁止』を建設業者にも導入する。また、労働者の処遇確保を建設業者の努力義務にして、国はその取り組み状況を調査・公表する。これらの措置でダンピング(過度な安値受注)と、注文者による買いたたきの両方を防ぎ、賃金の原資である労務費を削れない環境を整備する。」(『建設通信新聞』2024.03.11)
●「非正規の働き方をあえて選ぶ人が増えている。25~34歳のうち、都合の良い時間に働きたいとして非正規になった人は2023年に73万人と、10年前より14万人増えた。『正規の職がない』ことを理由にした非正規は半減した。正社員にこだわらない働き方にあった処遇や、社会保障の制度設計が必要になっている。…総務省は労働力調査で非正規社員の数と、その理由をまとめている。23年の調査で非正規として働く25~34歳は237万人で、13年に比べ64万人減った。このうち『正社員の仕事がない』と答えたのは30万人と、54万人減少した。非正規で働く理由を回答した人の比率では23年に13.1%と、半分以下になった。一方、理由として増えたのが『自分の都合の良い時間に働きたい』との回答だ。23年で31.9%と、13年と比べて10.6ポイント上がった。…全ての世代でみても、正社員になれず、やむを得ず非正規となった人は減ってきている。23年は196万人と、13年より145万人少なかった。東日本大震災以降、景気は回復局面となり、14年からは完全失業率が4%を下回る。求職者に対する求人数を示す有効求人倍率も1倍を超える。仕事を選ばなければ職に就ける『完全雇用』に近く、雇用環境の改善が『仕方なく非正規』となる人を減らす要因になった可能性がある。政策面でも正社員への移行を促す動きがあった。厚生労働省は正社員への転換を進める事業主に助成金を出した。13年度から22年度までに78万人強の正社員への転換を後押ししたとみている。非正規社員は総数では23年に2124万人と、13年に比べて218万人増加した。高齢者で働き続ける人が増えたためだ。65歳以上で『都合の良い時間に働きたい』という人は145万人と89万人増えている。正社員としてのキャリアを終えたあと、年金をもらいながら無理なく働こうとするお年寄りの姿が浮かぶ。65歳以上では『専門的な技能等を生かせる』として非正規で働く人も23年に52万人に達し、13年の2倍強になった。非正規の仕事が、体力が落ちても正社員として培った技能を生かしたい人の受け皿になっている。課題になるのは介護・育児のために非正規を選ぶ人の処遇や、正社員を前提とした社会保障制度の見直しだ。非正規として働く割合は男性の2割に対し女性は5割以上に達する。女性の正規雇用の比率は出産などが多い30代から急下降し『L字カーブ』のグラフになる。結婚や出産を機に家事・育児などとの両立ができず退職する女性が多いためだ。非正規の雇用は不安定で、厚労省の調査によると1時間あたり給与は正社員の7割にとどまる。収入が少ないと年金保険料として納める額も低くなり、十分でない年金生活に陥る恐れがある。非正規では、一定の所得を超えると税や社会保険料負担が生じる『年収の壁』の問題で働く時間を抑えている人もいる。育児や介護のために非正規を選ぶ人も多い。仕方なく非正規奄選んだとは位置づけられない層だが、厚労省の担当者は育児や介護と両立できるなら正社員として働きたい人が一定数いるとみている。」(『日本経済新聞』2024.03.04)
●「国土交通省は建設技能者の賃金実態をICTの活用などで簡易に確認できる仕組みの検討に乗り出す。2023年度補正予算に基づく取り組みとして、検討業務の委託先選定に向けたプロポーザル手続きを始めた。中央建設業審議会(中建審)と社会資本整備審議会(社整審)合同の基本問題小委員会が23年9月にまとめた中間取りまとめを踏まえ、適正な賃金が技能者に行き渡っているかどうか『見える化』する手段の具体化を目指す。23年度補正予算で関連費用3億2000万円を配分した『建設業の担い手確保に向けた賃上げの実現』に関する施策の一つ。賃金の支払い状況や技能者の能力・資格、経験に関する情報をオンラインで関係者が共有し確認できるシステムの構築に取り組む。民間委託する検討業務では、▽オンラインで提出きれた賃金台帳などの書類から必要な情報を取得する方法▽オンラインで提出・取得された作業員名簿や建設キャリアアップシステム(CCUS)の技能者情報などのデータから能力・資格や経験年数などに関する情報を取得する方法―の2通りで確認環境の構築を検討。各情報を統合した上で、技能者の名前などをキーとして個人単位で情報を整理する。こうした手法で把握した賃金実態の適切さを、発注者が別途指定する予定の適切な賃金水準と比較することで確認する方法も検討する。技能者個人が特定されないような確認結果の集計方法や、関係者間で情報共有する際の在り方も併せて考える。」(『建設工業新聞』2024.03.04)
●「政府は外国人労働者の在留資格『特定技能』の受け入れ計画について、2024年度から5年間の上限を80万人超に設定する方針だ。現行の上限の2倍以上に拡大する。人手不足が顕著な製造業や建設業、農業などの分野を中心に即戦力を確保する。特定技能の在留資格は国内の深刻な人手不足に対応するため19年に始まった。一定の専門技能と日本語能力を持つ外国人を受け入れる。同資格で在留する外国人は23年11月末時点でおよそ20万人に上る。受け入れ上限の『80万人』は、事業者などが賃上げや働き方改革などの人材確保策を講じてもまかなえきれない不足分を算出した。19年時点では24年3月末まで5年間の上限を34万5000人と定めていた。上限は分野ごとに設けられ、超えそうな場合は所管省庁が受け入れを止めることがある。」(『日本経済新聞』2024.03.05)
●「厚生労働省の速報(1月11日時点)によると、2023年に熱中症で死傷した建設業就業者は前年比23人増の202人だった。気象庁の統計では1898年以降の開始以降、昨年が夏季(6~8月)の国内平均気温として最も高かった。その影響もあり3年ぶりに200人を上回ったとみられている。ただ死亡者数は3人減の11人と減少。官民挙げたさまざまな対策が効果を上げているともいえそうだ。23年に全業種の職場で熱中症によって死傷した人の数は計1045人。前年比218人増となり、19年以降の直近5年では初めて1000人を上回った。一方、全業種の死亡者数は2人減の28人。2年ぶりに30人を割り込むなど、建設業と同様に改善している。」(『建設工業新聞』2024.03.07)
●「全国建設労働組合総連合東京都連合会は、2024年度の要求賃金内容を決定した。建設労働者の標準賃金を『日額2万9000円(8時間労働、建設キャリアアップシステム・レベル2)、月額60万円、年収720万円(諸経費・法定福利費は別枠)』とした上で、当面の要求として日額5000円以上、最低でも物価高騰に対応した5%の賃金引き上げを働き掛ける。働き方改革に伴う週休2日でも現状の収入を減らさないことを含め、野丁場系では新公共工事設計労務単価相当の賃金確保を目指す。」(『建設通信新聞』2024.03.08)
●「全国建設労働組合総連合東京都連合会(山本享執行委員長)が、2024年度の賃金要求内容を検討するために実施した組合員アンケートによると、月収が50万円以下の建設労働者は全体の75.4%を占めた。全建総連東京都連は、都内で1人の収入で家族が世間一般的な生活を送るためには、月収60万円程度が必要と主張しており、アンケートでも6万-10万円の月収アップが必要とする回答が最多を占めた。日額ベースでは、5000円以上の賃上げを求めていく。」(『建設通信新聞』2024.03.11)
●「勤労者退職金共済機構の建設業退職金共済事業本部(建退共本部、大澤一夫本部長)は、技能労働者の能力や経験に基づいて建設業退職金共済(建退共)制度からの退職金を増やす仕組みの検討を厚生労働省に求める。能力や経験に見合う処遇の付与に役立つ建設キャリアアップシステム(CCUS)の機能や連携の効果を生かしたい考え。2024年度は建退共の電子化とCCUSの連携に一段と力を入れる。」(『建設工業新聞』2024.03.13)
●「2024年の春季労使交渉は、大手企業が歴史的な高水準の回答を出した。日本企業はバブル崩壊後の『失われた30年』の間、賃金を抑制し続けてきた。人手不足などを背景に局面が変わり、利益の配分先は従業員に向かう。構造改革や生産性向上の取り組みを続け、賃上げ力を持続できるかが成長を左右する。日本の賃金は約30年間にわたって伸び悩み、世界に大きく水をあけられた。経済協力開発機構(OECD)によると物価の違いを反映した実質的な平均賃金で、日本は22年の額が00年とほぼ変わらなかった一方、米国は27%、英国は20%、ドイツも15%上昇した。日本の賃金はOECD加盟国38カ国中、25位に低迷する。日本の賃金が増えなかった背景には株主への分配と手元資金の積み上げがある。法人企業統計によると金融・保険を除く全産業の23年3月期の経常利益は95兆円と、1991年3月期の2.5倍に増え、稼ぐ力はバブル期を上回る。一方、人件費は214兆円と伸び率は3割にとどまった。代わりに増えたのが配当金で32兆円と91年3月期の7.7倍となった。日本企業は積極的な設備投資や人的投資も控えていた。企業の内部留保(利益剰余金)は2023年3月期時点で554兆円と過去15年間で2倍に膨らんだ。企業がため込んだ内部留保を人件費に回すようになったきっかけが、物価高と慢性的な人手不足だ。足元の有効求人倍率は1.3倍前後で推移し、建設や物流、外食や小売りなど幅広い業種で人手が足りない。帝国データバンクによると人手不足に起因する倒産は23年に260件と前年を9割弱上回った。」(『日本経済新聞』2024.03.14)
●「労働政策研究・研修機構(JILPT)は、経済がゼロ成長で推移し、女性などの労働参加が進まない場合、就業者数が2040年に5768万人になるとの推計をまとめた。22年比で956万人の減少となり、少子高齢化が進む中で働く人の数も大きく落ち込む恐れがある。このうち『鉱業・建設業』の就業者数は、22年の477万人から121万人減の356万人になると推計している。推計は、1人当たりの実質経済成長率、女性や高齢者の労働参加などの見通しを前提に、三つのシナリオを設定して推計した。『鉱業・建設業』の就業者数は、22年の477万人から、成長率がおおむね1%台後半で推移し、女性や高齢者の労働市場への参加が大きく進んだ場合の『成長実現・労働参加進展』で、30年に22年比39万人減の438万人、40年に83万人減の394万人と推計した。三つのシナリオの中で最もよいシナリオでも、40年は22年比17.5%減となる。経済成長と女性や高齢者の労働市場参加が一定程度進む『成長率ベースライン・労働参加漸進』では、30年に22年比41万人減の436万人、40年に88万人減の389万人となった。」(『建設通信新聞』2024.03.14)
●「政府は15日、技能実習に代わる新制度『育成就労』を新設する法案などを閣議決定した。近く今国会へ提出し、成立すれば2027年までの施行を目指す。現制度では原則認めていない本人意向の転職を1~2年の就労後にできるようにする。技能実習法と出入国管理法などの改正を予定する。人材育成とともに人材確保を目的とする新たな在留資格『育成就労』を新設する。施行前までに技能実習の資格で入国した外国人は経過措置として最大3年間までの在留を認める。就労期間は3年間とし、より技能レベルの高い『特定技能』に移行しやすくして長期の就労に道を開く。技能実習は国際貢献のための人材育成を目的に据えており、実習後は帰国することが前提となっていた。技能実習では原則3年間転職を認めていないことから、劣悪な労働環境などに耐えられず失踪する事例も相次いだ。新制度は本人意向の転職を制限できる期間を業種ごとに1~2年の間で設定できるとした。加えて日本語や技能などの条件を満たすことなどが条件となる。外国人労働者の受け入れ窓口となる監理団体も許可基準を厳格にする。名称を『監理支援機関』とし、いまは任意の外部監査人の設置を義務づける。受け入れ企業と密接な関わりを持つ役員の関与を制限し、中立性や独立性の確保をめざす。転職するケースが増えることを見越し、転職仲介業への監督も強める。転職のあっせんに関われるのはハローワークや監理支援機関などに限定し、民間の仲介業者は認めない。不法就労などをさせた場合の法定刑も引き上げる。」(『日本経済新聞』2024.03.15)
●「建設業情報管理センター(CIIC、上田健理事長)は、中小建設会社を中心とした約4.5万社の企業データを集計した『建設業の経営分析(2022年度)』をまとめた。経営の健全性や生産性に関する指標は改善傾向が続いているものの、総資本経常利益率など収益性に関する指標は軒並み悪化。利益率は21年度を境にそれまでの上昇から減少へと反転しており、資材価格高騰の影響が大きいとみられる。」(『建設工業新聞』2024.03.01)
●「建設業技術者センター(CE財団、谷口博昭理事長)は1日、地域建設業の『2024年問題』対応に関する調査研究成果を踏まえた提言を発表した。設計図書の不備や発注時の条件未整備、当初からのタイトな工期設定、大量の工事関係書類などが、現場技術者に長時間労働を強いる要因になっていると改めて指摘。発注図面の不備については『いまだに解決できていないことは発注者の大きな責任。受注者に余分な労働を課す根源であり、そもそも設計図書を不備なまま発注する行為は、発注者としての責任を果たしていない』と断じ、不備の根絶を強く求めた。受注者側には『現場と書類の同時進行』が時間外労働削減の鍵といった助言を投げ掛けた。」(『建設通信新聞』2024.03.04)
●「積水ハウスが7日発表した2024年1月期の連結決算は、純利益が前の期比10%増の2023億円と過去最高だった。米国の戸建て住宅が想定以上に回復し、国内の戸建て住宅は資材価格の高騰分を価格転嫁で補った。都心部に保有するビルの持ち分売却も寄与した。年間配当は前の期より13円多い123円とし、従来予想から5円積み増す。売上高は前の期比6%増の3兆1072億円と創業以来初めて3兆円に達した。営業利益は前の期比4%増の2709億円だった。不動産を仲介する事業の売上高が30%増の2884億円と好調だった。都心に保有するオフィスビルやホテルなどの持ち分の売却が計画通りに進んだことも業績をけん引した。国内の戸建て住宅事業は売上高が1%減の4710億円と従来予想を下回った。市場は縮小傾向にあり、国土交通省がまとめた注文住宅の着工戸数は前年割れが続いている。販売戸数の減少に加えて資材価格の高騰が重荷となったが、前の期に実施した価格転嫁によって営業利益率は維持できたという。」(『日本経済新聞』2024.03.08)
●「岸田文雄首相、斉藤鉄夫国土交通相ら関係閣僚と、建設業主要4団体のトップらが8日に首相官邸で意見交換会を開き、技能労働者の賃金水準で2024年に『5%を十分に上回る』上昇を目指す方向で一致した。岸田首相は、政府として公共工事設計労務単価の引き上げや建設業法などの改正により、建設業界の賃上げと価格転嫁を後押ししていく考えを表明。その上で『(民間企業の)設備投資と公共投資を支える建設業の担い手確保と持続的な発展につなげていきたい』と意欲を語った。」(『建設工業新聞』2024.03.11)
●「経済産業省中小企業庁は8日、取引適正化に向けた取り組み状況をまとめた。『下請Gメン』が全国の中小企業に実施した聞き取り結果では、取引先が『建設業・住宅業』の取引事例が1522件あり、価格転嫁実現など取引適正化が進んだ好事例が3.8%の59件、下請関係法令や関連指針などから見て懸念が認められ、業界が是正に向け努力する必要がある注意事例が23.8%の363件あった。」(『建設通信新聞』2024.03.12)
●「日刊建設工業新聞社が主要ゼネコン35社に実施した人材採用アンケートによると、今春入社予定の新卒採用者数(大卒、高卒などすべてを含む)は前年実績に比べ261人増の4111人となる見通しだ。技術系職員の割合は83%。働き方改革への対応や業務拡大などで採用を増やす傾向だが、採用目標数(33社が設定)に対する充足率が100%以上の企業は7社にとどまり、他産業を含めた人材獲得競争の激化に苦戦している状況がうかがえる。」(『建設工業新聞』2024.03.12)
●「全国建設業協会(奥村太加典会長)は12日、東京・大手町の経団連会館で開いた理事会で2024年度事業計画などを決定し、その後の協議員会に報告した。岸田文雄首相や斉藤鉄夫国土交通相らと建設業4団体との意見交換会で申し合わせた『5%を十分に上回る賃上げ』を目指し、会員企業が抱える技能者の賃上げと下請け契約への反映を明文化した。4月から始まる時間外労働の上限規制を踏まえ、『適正工期見積り運動』や『目指せ!建設現場の土日一斉閉所運動』を推進する。」(『建設通信新聞』2024.03.13)
●「国土交通省は14日、見積金額の内訳として安全衛生経費を明示する標準見積書の作成手順案をまとめた。『個別工事現場分』『個別工事現場の労務者関係分』『店社支出分』の三つを算出し、合算した金額を標準見積書に記載する。個別工事現場の労務者関係分は二つの計算方式(積み上げ計算、率計算)を掲載するなど、安全衛生経費の基本的な算出方法を示している。注文者・下請け間での適切な安全衛生経費の支払いに向け、各専門工事業団体に工種ごとの標準見積書作成を今後依頼する。」(『建設通信新聞』2024.03.15)
●「能登半島地震で被災家屋の解体が進んでいない。公費で始まったのは緊急性が高い一部の建物のみで、対象となる2万棟超の解体終了は2025年秋までかかる見通しだ。事業者の確保や災害廃棄物の処理がハードルとなっている。1日で発生から2カ月。早期の生活再建に向け、円滑な解体の実施が求められている。石川県珠洲市で2月26日、倒壊などによる二次被害が懸念される建物で緊急の解体作業が始まった。住民が見守る中、道路側に傾いた家屋から事業者が家財道具などを運び出した。市は同様に迅速な解体が必要な建物は50棟以上あるとみている。公費解体は全半壊した建物を所有者の申請に基づき、自治体が費用を負担して解体・撤去する。このうち自治体が危険性が高いと判断した建物の緊急解体は2月下旬までに珠洲市のほか、輪島市や能登町で始まった。もっとも着手したのはごく一部にとどまる。29日までに同県内で確認された住宅被害は一部損壊を含め、7万5410棟に上る。県は16市町で公費解体を予定し、計2万2000棟が対象になると推計する。作業終了は計画上でも25年10月までかかる見通しだ。受け付けが順次始まっているものの、被害が大きな市町では申請に原則必要な罹災(りさい)証明書の交付が追いついていない。輪島市の担当者は『退路が寸断して罹災状況を調査できていない場所もある。どれだけの数の解体が必要かは把握できていない』と話す。…事業者の不足も懸念される。解体事業者でつくる石川県構造物解体協会(金沢市)は富山、福井、新潟各県の事業者にも協力を求めた。各市町と今後、業務委託契約を結び、2500人規模の態勢で作業にあたることを目指すという。石川労働局によると、解体工事の作業員を含む『建設躯体(くたい)工有従事者』の有効求人倍率は地震前の23年12月で17.15倍と全職種で最も高かった。石川県内のある解体事業者は『人手だけでなく、宿泊場所を確保する必要もある。採算が取れるかわからない』と不安を漏らす。速やかに作業を進めるために、大量に発生するがれきの処理も課題となる。県は解体に伴い、同県で出るごみの紛7年分にあたる244万トンの災害廃棄物が発生すると予測する。協会は16市町を回り、災害廃棄物の仮置き場の増設も要請した。被災家屋の解体は、屋内に残る家財などを手作業で分類するため通常の解体作業よりも時間がかかる。1軒に14日間ほどかかるケースもあるという。金沢市の解体事業者は『思い出の品が残されている家屋もあるだろう。県が想定する期間で終えられるかは見通せない』と話す。」(『日本経済新聞』2024.03.01)
●「能登半島地震で相次いだ土砂災害が豪雨被害の危険性の高いエリアに集中していたことが専門家の調査で分かった。土砂が流れ込むなどして倒壊した家屋の85%が『土砂災害警戒区域』にあった。土砂災害の恐れが高い地域は、豪雨だけでなく地震の強い揺れにも注意が必要との周知が求められる。」(『日本経済新聞』2024.03.02)
●「国土交通大臣の諮問機関である社会資本整備審議会の道路分科会国土幹線道路部会(部会長・朝倉康夫東工大名誉教授)は5日、能登半島地震を踏まえた広域道路ネットワークの在り方検討を始めた。災害大国の日本では能登半島地震と同様の被害が全国どこでも起こり得るとの認識の下、盛り土の崩落が多数発生したことなどに着目して5、6月にも緊急提言をまとめ、高規格道路に関する必要施策を国土交通省に示す。」(『建設通信新聞』2024.03.06)
●「能登半島地震の被災地で低層木造を中心に建築物の倒壊や損傷の被害が多発していることを受け、国土交通省が具体的な被害状況の原因分析を通じ現行の耐震基準の技術的検証に当たる有識者委員会を立ち上げた。基礎データを収集するため、日本建築学会が現地での建物被害の悉皆(しっかい)調査を今月上旬に本格的に開始する。新耐震建築物の被害状況を踏まえ、現行基準の妥当性を検証することが主な狙い。被災地域は全国平均よりも旧耐震建築物が多く残されており、効果的な耐震対策を打ち出すことも求められる。」(『建設工業新聞』2024.03.08)
●「東日本大震災で津波に襲われた岩手、宮城、福島の被災3県で、住民が高台などに集団移転した跡地の約3割について活用の見通しが立っていないことが日本経済新聞の集計で分かった。自治体が跡地を取得し公有地としたものの私有地が混在し、利用計画を立てにくいことがネックとなっている。被災市町村の多くは跡地を活用し企業誘致やにぎわい拠点の創出などを進め、復興の後押しとする考えだった。未活用の状態が続けば、維持管理費がかさみ足かせになりかねない。負担を軽くしようと、跡地を無償で貸し出す動きも出ている。13年前の津波では東京23区の面積の9割に当たる約561平方キロメートルが浸水した。多くの家屋が流された沿岸部を中心に、再び被災しないよう自治体は高台や内陸部への集団移転を促した。2023年3月末までに計約3万7千戸の移転が完了した。市町村は跡地を『災害危険区域』に指定して居住を制限し、国費を財源として買い取った。同区域は住宅は建てられないものの、工場や店舗、事業所などは設置できる。市町村は税収増につながる企業誘致などを目指し、国も、被災地に進出する企業への補助制度などで支援する姿勢を打ち出した。狙い通りに活用が進むのは仙台市だ。買い取った跡地108ヘクタールのうち、9割を超えるエリアで用途が決まっている。…だが、多くの地域ではなお未活用の土地が残る。日経が国費の事業の対象となった被災3県の26市町村を調査したところ、24市町村で見通しが立っていない土地を抱えていた。面積でみると、買い取った2130ヘクタールのうち東京ドーム123個分の576ヘクタールにあたる。…要因の一つに、広い土地の確保の難しさがある。集団移転事業で国費の対象となるのは原則宅地のみで、店舗だった土地や山林は対象外。こうした私有地が跡地に点在している。16市町村は活用が進まない理由として『まとまった用地を確保しにくく、使い道を検討しにくい』ことを挙げた。国は自治体が私有地の取得をしやすいよう、土地を交換した地権者への税制優遇措置を設けているものの、『地権者が亡くなって相続ができていなかったり、住所不明で連絡が取れなかったりして交渉が進まない』(福島県浪江町)。ある程度の土地を確保できても、産業振興や新たな雇用につなげるのが難しいケースもある。岩手県大槌町では中心部の町方地区に7.7ヘクタールの空き地が残る。同町は跡地に混在する私有地を全て買い取り、産業集積地とする計画を立てているものの『事業者とのマッチングがなかなか進まない』(同町の担当者)。…跡地が空き地のままでは、自治体に維持管理費の負担がかかる。岩手県陸前高田市は未利用地46ヘクタール分の雑草の刈り取りを続ける。地域住民に協力を求めているが、それでも年間1200万円程度の費用が生じる。市の担当者は『毎年かかる費用で将来世代の大きな負担となるため、対策を取らないといけない』と話す。企業誘致が期待しにくいなかで、無償での貸し出しにかじを切る自治体もある。宮城県岩沼市では復興支援の公益社団法人が15年から跡地の一部を借り、羊を放牧する農場を運営している。羊に雑草を食べさせて草刈りの費用を抑えつつ、芋やトマトを栽培する農園を増設。年間3万人が訪れるようになった。…東北大の姥浦道生教授、(都市計画)は『実現可能性の乏しい計画を実現するために多額の公金を投じれば、財政を圧迫する。人口減少が進む地域では、市民農園や園芸場として無料で貸し出すなど、経費を抑えながら住民に還元できる取り組みを広げることも必要だ』と指摘する。」(『日本経済新聞』2024.03.11)
●「東京電力福島第1原子力発電所事故で、故郷を離れることを強いられた避難者らに対する心のケアが続く。発生から13年になる今でも福島県では県内外で2万6千人超が避難生活を送り、相談が後を絶たない。多くの人がストレスを抱える中、息の長い支援をどう続けるか。課題は能登半島地震の被災地にも共通している。…政府は25年度までの5年間を『第2期復興・創生期間』として復興の総仕上げの段階に位置づける。福島県では2月時点でなお2万人超が県外での避難生活を送っている。避難の長期化で、ストレスを抱え込む人も少なくない。福島県が事故後に始めた県民健康調査によると、うつ病や不安障害の可能性があって支援が必要と考えられる人(15歳未満を除く)の比率は21年度に6.1%で、前年度と比べて0.9ポイント増えた。避難者への公的支援の縮小や新型コロナウイルス禍の影響があったとみられ、震災前の調査による国内一般の水準(3.0%)より高い。ふくしま心のケアセンター所長を務める福島県立医科大の前田正治主任教授は『子どもの頃の度重なる転校、避難先でのいじめなどが原因で、ひきこもりやうつ症状が長引くケースがある』と説明。調査では高齢者よりも若い世代にリスクが高い傾向がみられる。心の支援が必要と考えられる人は県内よりも県外の方が割合が高く、前田主任教授は避難先で地域の人らとのコミュニケーションの場が乏しいことが不調につながっているとみる。前田主任教授は『福島の場合、被災地に暮らす人、県外で避難を続ける人の支援に並行して当たらなければならない。従来の災害と比べても支援の担い手が足りない』と課題を指摘する。」(『日本経済新聞』2024.03.11)
●「東京電力福島第1原子力発電所の廃炉作業は正念場を迎えている。東電は1月に2号機からの溶融核燃料(デブリ)の取り出しについて、2023年度中の実施を断念すると表明した。24年10月ごろまでに着手する。政府や東電が41~51年に完了をめざす廃炉の実現は遠のいている。1~3号機の原発建屋内にデブリは計880トンあるとみられている。原子炉内部の金属やコンクリートと一体になっており、その放射線量は極めて高い。取り除かなければ、建屋を解体できず、処理水も発生し続ける。専門家らもアプリの取り出しは『廃炉に向けた作業の本丸』とみる。事故から13年がたっても東電はデブリの現状を詳しく把握しきれていない。それが3回目の延期の最大の要因となった。東電は当初、2号機の格納容器側面から原子炉内部に通じる直径55センチメートルの穴にロボットアームを突っ込み、金属製ブラシでデブリを少しずつ削り取ることを想定していた。ロボットアームの長さ22メートルの高強度ステンレス製で英国企業などが開発した。政府は開発費として78億円を支出した。強い放射線にも耐えられるが、側面の穴が堆積物で塞がれていることが判明し、ロボットアームが使えなくなった。東電は代わりに釣りざお式の装置を投入する方針だ。取り出し装置の変更は原子力規制委員会の審査を必要とする。審査結果次第で4度目の延期の可能性も出てくる。」(『日本経済新聞』2024.03.11)
●「土木学会(田中茂義会長)は14日、首都直下地震が発生した場合、被害規模が最悪のケースで1001兆円に上るとの推計結果を発表した。直接的な建築物や工場などの資産被害に、交通インフラや生産施設などの被害が経済活動に発災後約20年間及ぼす影響を加えた。耐震性強化など防災・減災対策を実行した場合の被害の軽減効果も試算。道路や港湾、漁港、建築物の対策に21兆円以上投じることで被害規模が369兆円縮減できると見込む。」(『建設工業新聞』2024.03.15)