情勢の特徴 - 2024年3月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「高齢化やインフレの影響で、家計の所得に占める税と社会保険料の負担の割合が2023年9月時点で28%と過去最高水準になっている。高齢者に比べ若年層の負担が重く、消費や出生数を下押ししかねない。家計の負担増を補うには賃上げに加え、社会保障の効率化が重要になる。内閣府が公表する国民経済計算から日本経済新聞社が試算した。雇用者報酬や財産所得、政府の給付金などを合算して家計全体の所得を割り出し、税負担と年金や医療などの社会保険料負担の合計を分子とした。企業の所得や負担を含めて算出する『国民負担率』とは違い、家計だけの負担率をはじいた。22年は27.7%と同じ基準で比較できる1994年以降で最も高かった。2023年は1~9月までで28.1%で通年でも最高となる可能性がある。家計部門のデータは所得税など直接税が対象で、消費税や酒税などは含まない。実際は28.1%よりも高い。」(『日本経済新聞』2024.03.19)
●「日銀は19日の金融政策決定会合でマイナス金利政策を含む大規模緩和の解除を決めた。植田和男総裁は同日の記者会見で、『賃金と物価の好循環の強まりが確認されてきた』と17年ぶりの利上げに麟み切った理由を説明した。『当面、緩和的な金融環境が継続すると考えている』とも述べ、追加の利上げを急がない考えも示唆した。2007年2月の利上げを最後に一貫して緩和を続けてきた日銀の金融政策は正常化へ一歩、踏み出すことになる。日銀はマイナス金利の解除と同時に長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の撤廃と上場投資信託(ETF)などリスク資産の新規買い入れの終了も決めた。マイナス0.1%だった政策金利は0~0.1%に引き上げた。日銀がマイナス金利を解除したことで、マイナス金利政策を採用する中央銀行は世界から消えた。日銀は1%を長期金利の上限のめどとしていたが、撤廃後は金利変動を市場に委ねる。これまでと同程度の国債買い入れは継続し、金利急騰時は買い入れ額を機動的に増やす。植田総裁は会見で、賃金と物価の好循環が確認できたことで『2%の物価安定の目標が持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況に至ったと判断した』と説明。『大規模な金融緩和政策はその役割を果たした』とも指摘した。今回の政策変更を受けて『預金金利や貸出金利が大幅に上昇するとはみていない』との認織を表明。今後の金融政策については『普通の短期金利を政策手段にしている他の中央銀行と同じように設定していくことになる』と語った。今後の利上げペースに関して『手元にある見通しを前提にすると、急激な上昇というのは避けられるとみている』と話した。今後、『物価見通しがはっきり上振れる、もしくは中心見通しははっきり動かないまでも上振れリスクが高まる』ときに利上げを検討することになるとの見通しを示した。」(『日本経済新聞』2024.03.20)
●「消費税の仕入税額控除の新方式『適格請求書等保存方式(インボイス制度)』が建設業の元下取引に与える影響について、2023年10月に運用が開始されてから初めての実態調査の結果を建設経済研究所と全建総連がまとめた。免税事業者が課税事業者に転換した後も、上位企業との取引単価が据え置きとなっているのは65%。消費税相当額を転嫁できていないケースが一定数あるとみられる。激変緩和措置が当面講じられることで業界への影響は表面化していないが、今後の税負担の在り方を取引先と継続的に協議していく必要がありそうだ。全建総連単独だった初回を含めて3回目の調査となり、導入後は初めて。制度導入前に免税事業者だった一人親方を対象に23年11、12月にアンケートを実施し2708件の有効回答があった。一戸建てなどの住宅現場で働く一人親方の回答が多いが、ゼネコンの現場の従事者も含まれる。制度導入後の取引先の反応は『特に何も言われていない』が44%で最も多いが、『課税事業者になってほしい』が36%、『課税事業者にならないと今後の取引をしない』が5%、『課税事業者にならないと値引きする』が7%あった。回答者でインボイスの登録番号を『取得した(予定を含む)』のは58%。課税転換した場合の取引単価は35%で上乗せとなっているが、元下間で協議することなく単価を据え置いているケースが半数を超える。免税事業者のままでいた場合の取引価格は『(話し合いの有無にかかわらず)消費税分が値引きとなった』との回答が36%に上った。制度導入を契機に『収入が減るなら廃業する』との意思を示すのは9.1%で、導入前の前回調査(22年9、10月時点)の6.3%から増加。取引先から雇い入れを『収入が増えるなら受け入れる』は12.6%で前回調査の7.3%から増えたが、一人親方を続けるとの意思を示す回答も51.5%で前回調査の45.0%から増えた。」(『建設工業新聞』2024.03.21)
●「建設経済研究所は、2035年度までの建設投資額と、それに維持・修繕額を加えた建設市場全体額の予測結果をまとめた。35年度の建設投資額は、最も慎重なシナリオ(ベースラインケ一ス)で物価変動を含む名目値を66兆4000億-70兆5000億円、物価変動を含まない実質値を53兆9000億-57兆3000億円と予測。ベースラインケースの実質値は、最大値でも22年度見込み額と同水準にとどまるとした。人口減少などの影響で民間建設投資が大幅に減少するとみる。」(『建設通信新聞』2024.03.22)
●「上場企業の2024年3月期の配当と自社株買いを合わせた株主還元総額は約25兆円と、2年連続で過去最高となる見通しだ。業績拡大を受けて株主に積極還元する。東京証券取引所の資本効率の改善要請も背景にある。新しい少額投資非課税制度(NISA)などを通じ個人に恩恵となる。…配当総額は前期比6%増の約15兆9000億円、自社株買いは9%増の約9兆3000億円の見通しで、いずれも過去最高となる。配当は昨年末から360社が上方修正し、約2000億円上振れする。自社株買いは1月以降、約1兆4200億円の取得粋が設定された。上場企業株の約2割を個人が保有する。配当のみで単純計算で約3兆円が家計に入り、国内総生産(GDP)の約0.5%に当たる。企業が株主還元を拡大する要因の1つは、業績の好調だ。円安や値上げの浸透、人流回復により、東証プライム企業の24年3月期の純利益は前期比13%増と3年連続で過去最高となる見通しだ。社数ベースでも4社に1社が最高益を見込む。…もう一つは、東証によるPBR(株価純資産倍率)改革だ。東証はPBR向上を後押しするため、企業に投資家の期待リターンを意識した経営に取り組むよう求めている。企業は資本効率改善に向け自己資本を圧縮する必要があり、株主還元の拡充に動いている。」(『日本経済新聞』2024.03.26)
●「休業や廃業、解散を決めた企業が2023年に約5万社となり、比較できる13年以降で最多となった。物価や人件費が上昇するなか、新型コロナウイルス禍の補助金もなくなり、市場からの退出を選ぶ企業が増えている。失業者の増加を招かないよう円滑な事業譲渡や人員受け入れの取り組みが重要になっている。東京商工リサーチによると、23年の休廃業・解散企業は前年比0.3%増の4万9788社だった。直近で最多だったのは、コロナ感染が広がった20年の4万9698社だった。21年はコロナ補助金や実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)などの公的支援で4万4000社台まで減っていた。22年以降は4万9000社台に戻った。休廃業・解散企業のうち、48%は直前の決算期が赤字だった。赤字企業が占める割合は16年の36%を底に年々上昇している。人件費の削減や補助金の活用で経営を続けてきた企業でも、足元のコスト高に耐えられずに赤字転落する例が増えた。産業別では飲食店やホテルなどのサービス業が1万6286社と全体の33%を占め、建設業が16%、小売業が12%と続いた。いずれも人手のかかる業種だ。人手不足が休廃業・解散の判断につながっている。…黒字でも後継者が見当たらずに店をたたむケースは少なくない。休廃業・解散企業の代表者町年齢別では70代が全体の4割強にのぼる。一方、失業率は低水準だ。2月の完全失業率(季節調整値)は2.6%と低位にとどまる。休廃業や解散が増えても失業率が上がらない理由のひとつに、休廃業や解散する企業の規模の小ささがある。有限会社や個人経営など従業員が少ない企業の休廃業・解散が増えている。」(『日本経済新聞』2024.03.31)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は建設工事で安全衛生対策の関係経費が適切に支払われるよう、元下間の経費負担の実態調査や発注者も視野に入れた広報活動に力を入れる。今国会に提出した建設業法などの改正案で適正な労務費や法定福利費の確保を目指す規制を強化することを念頭に、安全衛生経費も同じような位置付けで適正額の確保が求められることを周知していく考え。労務費や法定福利費とセットで見積書に内訳明示する取り組みを推進し、建設業者らの対応を継続的に追跡調査する。」(『建設工業新聞』2024.03.18)
●「国土交通省は、新たなトラックの『標準的な運賃』を22日に告示・施行した。運賃表を改定し、運賃水準を平均で約8%引き上げた。労務費や燃料費の上昇分を反映させ、適正な価格転嫁を促す。さらに荷待ち・荷役の対価について現行の待機時問料に加え、公共工事設計労務単価を参考に荷役作業ごとの『積み込み料・取り卸し料』の標準的な水準を提示。下請に発注する際の手数料も新たに設定した。運賃表の改定では算定根拠となる原価のうち燃料費を1リットル当たり120円に変更。燃料費が120円を上回る場合は燃料サーチャージを上乗せする。特殊車両割増としてダンプ車やコンクリートミキサー車は大型車の運賃から2割を上乗せする。荷待ち・荷役の対価は、例えば中型車の場合、30分当たり待機時間料が1760円、機械荷役が2180円、手荷役が2100円を運賃に加算する。荷待ち・荷役の時間が合計2時間を超えた場合、割増率を5割とする。下請に発注する際の手数料は『利用運送手数料』として設定し、運賃の10%を別に収受する。」(『建設工業新聞』2024.03.25)
●「国土交通省は、中央建設業審議会が2020年7月に作成・勧告した『工期に関する基準』の改正案をまとめ、27日に開いた中建審の総会に提示した。4月1日から建設業に時間外労働の上限規制が適用されることを踏まえ、受注者が上限規制を順守できる適正な工期の設定に向けて、より実効性を確保する観点から受発注者双方の責務に具体の行動などを追記する内容。委員からおおむね賛同する意見が上がり、中建審として取りまとめを大久保哲夫会長(三井住友トラスト・ホールディングス取締役会長)に一任した。中建審が近く勧告する見通し。」(『建設通信新聞』2024.03.28)
●「総務省は地方自治体の公共事業予算について、2023年4~12月の施行状況をまとめた。22年度からの繰り越し分(6兆0556億円)と23年度予算分(18兆0695億円)を合わせた予算計上額は24兆1251億円。うち契約済み額は16兆9570億円で、契約率は前年同期(22年4~12月)から0.9ポイント低い70.3%となった。支出済み額(7兆1586億円)の割合は0.2ポイント低い29.7%だった。」(『建設工業新聞』2024.03.28)

労働・福祉

●「政府は15日、入管法・技能実習法改正案を閣議決定した。国内外から人権侵害などの問題点が指摘されていた技能実習制度を廃止し、それに代わる新たな外国人受け入れ制度として、人材育成・確保を目的に掲げる育成就労制度を創設する。期間終了後の特定技能制度への移行を前提とし、建設分野を受け入れ対象にする。技能実習制度で原則不可だった本人意向の転籍を認める。施行は公布から3年以内。施行までに技能実習生として入国した外国人向けの経過措置も設ける。今国会での成立を目指す。」(『建設通信新聞』2024.03.18)
●「経済協力開発機構(OECD)のデータから内閣府が各国の最低賃金を比べたところ、日本の低さが顕著となった。2022年の正社員ら一般労働者の賃金中央値に対する最低賃金の比率は日本が45.6%と主要国を下回った。賃上げ機運を維持するには最低賃金による底上げも重要になる。連合が15日発表した24年の春季労使交渉の1次集計で賃上げ率は平均5.28%だった。過去の最終集計と比較すると5.66%だった1991年以来、33年ぶりの高水準となった。賃上げの波が波及するには、最低賃金に近い水準で働くパートタイムなど非正規労働者の動向がカギを握る。最低賃金を上げた際にその水準を下回る労働者の割合は22年度に19.2%と、10年前に比べ10ポイント以上高まった。パートタイム労働者が増加傾向にあるためだ。内閣府の23年末の分析によると、一般労働者の賃金中央値に対する22年の最低賃金の比率は、フランスと韓国が60.9%、英国は58.0%、ドイツは52.6%だった。このデータは国際的に最低賃金の妥当性を確かめるために使われる。欧州連合(EU)は22年10月に『最低賃金指令』を採択し、加盟国が最低賃金を引き上げる際の目安として同水準で60%を目指すと決めた。英国も24年までに賃金中央値の3分の2まで最低賃金を引き上げる方針を掲げた。日本の最低賃金は厚生労働省の審議会などの議論を経て決まる。これまで段階的に上げてきており、12年の38.3%から22年に45.6%まで上昇した。連合は23年12月に公表した最低賃金の中期的な目標として、EU指令を参考に『賃金中央値の6割水準を目指し、段階的に取り組む』と明記した。政府は30年代半ばに全国加重平均で1500円を実現することを目指す。…正規雇用者との比較だけでなく、実額としても日本は国際的に低い。OECDによると22年の1時間当たりの名目最低賃金は月平均でフランスが10.85ユーロ、ドイツが10.52ユーロ、英国が9.35ポンドで、22年のレートで円換算するとそれぞれ1500円前後となる。日本は23年度に全国加重平均で961円から1004円に上げたものの、仏独英に比べて3割以上、低い水準になる。」(『日本経済新聞』2024.03.19)
●「厚生労働省が19日にまとめた2023年(1-12月)の労働災害発生状況(速報、3月7日時点)によると、労働中の新型コロナウイルス感染による労災を除く建設業での死亡者数は、前年同期比(前年同時点比)22.1%減(60人減)の212人と、3年ぶりに減少した。近年の確定値までの推移から、5月をめどにまとめる23年の建設業死亡者数の確定値は215人程度と推計される。22年の281人(確定値)を大きく下回り、過去最少だった20年確定値の256人よりも40人以上下回るとみられ、過去最少を更新する。また、休業4日以上の死傷者数は、前年同時点比0.7%減(94人減)の1万4211人だった。死傷者数も近年の確定値までの推移から、23年の確定値は1万4520-1万4620人程度と見込まれ、過去最少だった22年の1万4539人と同程度になる見通しだ。23年の確定値は1万4000人台が確実となり、20年から4年連続の1万4000人台になる。」(『建設通信新聞』2024.03.21)
●「建設経済研究所は、建設技術者・技能者数の将来推計と需給ギャップをまとめた。5年に1回実施される国勢調査の分析結果から推計するもので、今回は2035年までを二つのケースで予測。20年に比べて、35年の技術者数は『増加またはやや減少』、技能者数は『減少または大幅な減少』と見込んだ。20年比で技能者数は最大3削減るとしている。」(『建設通信新聞』2024.03.21)
●「斉藤鉄夫国土交通相は今国会に提出した建設業法改正案で創設する著しく低い労務費による見積もり・契約を禁止する規定の運用に向けた方向性を明らかにした。適正な労務費の基準となる『標準労務費』の検討に当たって『優先的に検討すべき主要な工種の洗い出し作業を速やかに開始する』と話し、想定する工種の個人的見解として鉄筋や型枠を例示。下請契約を念頭に禁止規定の実効性を確保するため『どのような行為が違反となる可能性があるか、ガイドラインで具体的に示すことで新たなルールの徹底をより効果的に行っていく』との考えも示した。」(『建設工業新聞』2024.03.27)
●「厚生労働省は27日、2023年の賃金構造基本統計調査の概況を公表した。一般労働者の平均賃金は過去最高を更新したが、世代別にみると大企業の35~54歳の賃金が減るなど、若手に重きを置く傾向が目立つ。働き方が多様化し、企業の人的投資のあり方も変わってきている。調査は23年6月の賃金について4万8651事業所の回答を集計した。全体の賃金は31万8300円で前年から2.1%増えた。従業員1000人以上の大企業では平均賃金が34万6000円と前年比0.7%減った。人手不足の業種で非正規雇用による人材の穴埋めが広がったことが影響したという。マイナスとなるのは3年ぶりだ。非正規労働者の増加が平均賃金を押し下げる要因となった。正社員に比べ給与水準はまだ低い。特に製造業は非正規の平均賃金が前年比13.9%のマイナスだった。情報通信や小売りでも非正規の増加に伴い、全体を押し下げる形になっている。女性の非正規就労が増えた結果、全体が下がったとの声もある。男性の賃金を100としたときに女性は71.0と前年調査から1ポイント近く下がり、男女間格差が拡大した。大企業の年代別では35~39歳で2.1%、40~44歳で0.6%、45~49歳で1.3%、50~54歳で1.2%のマイナスだった。一方で若手は伸び、20~24歳は3.0%、25~29歳は1.6%増えた。相対的に人数の少ない若手の人材確保を優先し、新卒らの給与を手厚くしているとみられる。産労総合研究所の調査でも23年4月の新入社員の給与を引き上げた企業割合が68.1%と、前年度から27.1ポイント上がった。日本の労働構造の変化も賃金に反映されている。日本の賃金形態は終身雇用と年功序列の色が濃く、年齢に応じて給与が上がる傾向が強かった。ただ、企業側が若い人材の確保に注力したことで変わってきた。もともと手厚かった中堅社員の給与は若手引き上げのあおりを受けて減った可能性がある。中堅社員は同期でも給与に差が出てくる時期で、賃上げでも濃淡が出やすい。育児後の就労復帰が30代や40代に多いことも中堅社員の給与減に影響したとみられる。足元ではジョブ型など年功制によらない賃金制度づくりが進む。東京大の水町勇一郎教授は中堅社員の賃金減少について『市場評価に近い賃金への漸進的な移行ではないか』と強調する。年齢に応じて単純に給与が上がるのではなく、労働市場の中で人材価値を見たときの評価額が給与に反映されるようになるとみる。」(『日本経済新聞』2024.03.28)
●「国土交通省は、27日に開いた中央建設業審議会の総会に『建設業の働き方改革に向けた施策パッケージ』の概要を示した。時間外労働の上限規制が4月1日から建設業に適用されることを踏まえ、今後実施する施策をまとめたもので、建設Gメンの拡充、公共工事の施工時期平準化(ピークカット)の促進などを盛り込んでいる。施策の詳細を今後詰める。政府が8日に開催した『建設業団体との賃上げ等に関する意見交換会』で、国交省が提示した施策パッケージの骨子案を肉付けした。柱は、▽時間外労働規制の理解促進▽労働時間の縮減(休日の拡大)▽適正な工期設定▽生産性の向上、超過勤務の縮減方策▽実効性の向上――の五つ。具体の取り組みには、週休2日工事の拡大、工期に関する基準の拡充、工事関係書類の削減などを位置付けている。」(『建設通信新聞』2024.03.28)
●「国土交通省は28日に開かれた『建設キャリアアップシステム(CCUS)運営協議会』の総会で、CCUSの利用拡大に向けた3カ年計画の骨子案を示した。登録促進にとどまっていた取り組みの重点を『現場利用』や『処遇改善』に明確に移す。CCUSという業界統一のルールに基づき処遇改善の取り組みを公正に評価する基盤を作り、市場全体で処遇改善に取り組む事業者が公正に評価される環境を創出。CCUSを活用する事業者が競争で不利になることなく受注機会を拡大できるよう、国が率先して取り組む。」(『建設工業新聞』2024.03.29)

建設産業・経営

●「建設業情報管理センター(CIIC、上田健理事長)は地域建設産業の在り方に関する調査研究で、宮城県をモデルにした2023年度の報告書をまとめた。同県の建設投資額は東日本大震災前の水準近くにまで落ち込んでおり、就業者の深刻な高齢化も進んでいる。震災後も地震や台風などによる大規模災害が頻発する中、『地域の守り手』として地元の建設業が存続できるよう入札契約方式の工夫などによる受注機会確保を提言した。」(『建設工業新聞』2024.03.18)
●「全国中小建設業協会(全中建、土志田領司会長)は、2024年度事業計画を決定した。将来にわたる中小建設業の担い手確保に向け、安定的に10年先を見通せる公共事業関係費の確保が必要不可欠と強調。現在は補正予算で計上している国の『防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策』の公共事業関係費について、当初予算で安定的に措置するとともに地方に根付いた中小建設業者の受注機会を確保するよう訴えていく。建設業法や公共工事入札契約適正化法、改正公共工事品質確保促進法の担い手3法改正を想定し、現場の働き方改革や生産性向上、物価高騰分の適正な価格転嫁や労務費の支払いなどを重点的に展開。インフラ整備や災害対応など『社会に貢献する力強い地場産業』としての役割を果たせるよう、さまざまな施策を検討し国土交通省など行政機関に要望する。最優先課題に揚げるのが10年先を見通せる公共事業関係費の確保だ。23年度も全国の会員団体や国交省など発注機関と開く『全国ブロック別意見交換会』などを通じ、国土強靭化5か年加速化対策の公共事業関係費を当初予算で安定的に確保することと、5か年加速化対策の後継となる国土強靭化実施中期計画の早期策定と5か年加速化対策を上回る事業規模の確保を呼び掛ける。適正な予定価格や工期の設定、工事発注・施工時期の平準化なども働き掛ける。」(『建設工業新聞』2024.03.21)
●「日本建設業連合会(日建連、宮本洋一会長)は2024年度事業計画をまとめた。新規12施策を含む計236施策に取り組む。新たな重点方針として来年で策定から10年の節目を迎える『建設業長期ビジョン』の見直しに着手する。4月から適用される時間外労働上限規制に対応した働き方改革も加速。会員の週休2日に向けた新たな計画作りを検討する。民間工事の請負契約を念頭に対等な受発注者関係も構築。余裕ある工期設定や資材高騰に対応した請負代金への適正な価格転嫁を進める。…重点方針は▽時間外労働上限規制に対応した働き方改革の推進▽請負契約の改善による受発注者間の対等な関係の構築▽防災・減災、国土強靭化、インフラ老朽化対策をはじめとした積極的な公共投資の促進▽建設キャリアアップシステム(CCUS)の普及促進や労務賃金の改善など技能者の処遇改善による担い手確保に向けた取り組み推進▽DXの推進を中心とした生産性の向上▽建設業の長期ビジョンのレビューと新ビジョン検討▽戦略的な広報活動の充実による建設業の魅力発信▽コンプライアンスおよび安全確保の徹底―の8項目。建設業の長期ビジョンは『再生と進化に向けて』と題して15年3月に公表。25年度を期限に新規入職者数や年齢層別の賃金水準など目標値を定めている。まず目標値に対するこれまでの成果を把握。その上で次期ビジョンの見直しに着手し、働き方改革や処遇改善、生産性向上などの取り組みを加速する新たな目標項目と目標値の設定を検討する。」(『建設工業新聞』2024.03.25)
●「日本建設業連合会(宮本洋一会長)は、岸田文雄首相や斉藤鉄夫国土交通相らとの意見交換会での申し合わせ事項を踏まえ、技能労働者の賃金水準の引き上げに向けた取り組みを22日の理事会で決議した。同日付で『5%を十分に上回る上昇』に沿う下請契約の締結などを求める会長通知を全会員の代表者宛てに送付した。5%を十分に上回る上昇という目標は、資材高騰や民間建設市場の競争激化などを考慮すると、大変厳しい状況にあると言わざるを得ないとしつつ、公共工事設計労務単価の引き上げと技能労働者のさらなる賃上げという好循環を継続していくため、日建連全体の取り組み方針を理事会の総意として決議した。」(『建設通信新聞』2024.03.25)
●「日本建設業連合会(日建連、宮本洋一会長)は下請取引適正化の自主行動計画を1年ぶりに改定した。労務費や資機材などの工事コスト上昇分が取引価格に転嫁されるよう、『合理的な請負代金と工期の決定』に関し元請が下請に配慮すべき事項を追記。元請は必要に応じ協力会社と協議する場を設ける。コスト上昇の根拠説明を求める場合、建設物価や積算資料のような公表データに基づき提示された価格を尊重する。1週間後に時間外労働上限規制の適用も迫る中、歴史的な物価高に負けない技能者の持続的な賃上げと働き方改革の両立を目指す。」(『建設工業新聞』2024.03.26)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「東京都が全国で初めて打ち出した新築戸建て住宅への太陽光パネル設置義務化に追随する動きが広がってきた。川崎市が都と同じ2025年4月に開始するのに続き、相模原市などが制度設計に乗り出した。国が見送った太陽光義務化を地域主導で取り入れ、脱炭素につなげる。」(『日本経済新聞』2024.03.25)
●「国土交通省は26日、2024年の公示地価を発表した。全用途の全国平均は前年比2.3%上がり、伸び率はバブル期以来33年ぶりの高さだった。株価や賃金に続き土地にも上昇の波が広がり、日本は脱デフレの転機を迎える。先行きの利上げを懸念し、海外マネーには変調の兆しもある。」(『日本経済新聞』2024.03.27)
●「国土交通省は、窓・給湯器の改修を対象に検討している既存住宅の省エネ性能表示について、制度運用の案を示した。販売・賃貸事業者が改修部位の現況を確認、評価し、自らラベル発行することを想定する。現況確認に役立つツールを国が整備し、実務の円滑化につなげる。10月以降のラベル発行を想定する。」(『建設通信新聞』2024.03.28)
●「JR東海は29日、リニア中央新幹線の東京・品川-名古屋間について、最短で2027年としていた開業目標を断念する方針を明らかにした。卜ンネル掘削による川の水量減少などを懸念する静岡県が県内区間の工事に反対している。着工のメドが立たず早期開業は困難と判断した。」(『日本経済新聞』2024.03.30)

その他