情勢の特徴 - 2024年4月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「帝国データバンクは5日、人手不足が原因の倒産件数が2023年度(23年4月~24年3月)に前年度比2.1倍の313件に達したと発表した。集計を始めた13年度以来過去最高件数となった。時間外労働の上限規制が24年4月に始まり、さらなる人手不足が懸念されている。帝国データが倒産(法的整理のみ)となった企業のうち、従業員の離職や採用難などで人手を確保できなかったことが要因となった件数を集計した。特に24年3月の倒産件数が多く、前年同月比2.3倍の49件だった。集計開始以来単月ベースで過去最高件数となった。人手不足で受注量に制限が出ることなどで収益が一段と悪化し、年度末に事業整理を迫られる企業が増えたとみられる。業種別でみると時間外労働の上限規制が4月に始まった建設が前年度比2.3倍の94件、物流が1.8倍の46件と高い伸び率だった。」(『日本経済新聞』2024.04.06)
●「建設経済研究所と経済調査会は10日、建設経済モデルによる2024年度建設投資見通しを発表した。4回目となる今回は、物価変動を含む名目値が前年度見通しとの比較で2.8%増の74兆3500億円、物価変動を含まない実質値が1.5%増の59兆6760億円と予測。前回推計(24年1月)から、名目値、実質値ともに上振れした。建築補修(改装・改修)投資の予想を超える好調さを理由に挙げている。」(『建設通信新聞』2024.04.11)
●「人口減少が進み、一人暮らし世帯が急増する日本の姿が明らかになった。1世帯あたりの平均人数は9年後の2033年に1.99人と初めて2人を下回る。23年の人口は13年連続で減少した。年金や介護など社会保障や生活インフラは先を見据えた改革が求められる。国立社会保障・人口問題研究所(社人研)が12日発表した世帯数の将来推計によると、1世帯あたりの平均人数は20年の2.21人から減少し、50年には1.92人となる。50年には65歳以上の一人暮らしが1083万人と20年比47%増加する。社人研が20年の国勢調査に基づいて、50年までの世帯数を推計した。推計は5年ごとに実施している。前回の19年時点よりもさらに世帯の単身化と高齢化が進む見通しとなった。全体の世帯数は20年に5570万世帯だったが、30年をピークに減少に転じ、50年には5260万世帯となる。一人暮らしの世帯の割合は20年の38%から増加を続け、50年には44%となる。高齢化が進み、50年には65歳以上の一人暮らしが全世帯の21%と、初めて2割を超える。20年時点では737万人で、全世帯の13%だった。50年時点の65歳以上人口のうち、一人暮らしの割合は男性で26%、女性で29%となる。20年時点から9.7ポイント、5.7ポイント上昇し、特に男性で単身化が大きく進む。一人暮らしの高齢者が増える主な要因は、未婚率の上昇だ。20年の国勢調査によると、50歳時点で一度も結婚したことがない人の割合は男性で28%、女性で18%といずれも過去最高だった。背景には女性の社会進出に対応する仕事と育児の両立支援が整っていないことがある。経済的に不安定なため、結婚を望んでいてもかなわないケースも目立つ。社人研の推計では、50年時点では高齢単身世帯に占める未婚者の割合が、女性で30%、男性では60%にのぼる。今後は子どもを持たず、いざというときに頼れる近親者のいない高齢者が急増する可能性が高い。」(『日本経済新聞』2024.04.13)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は地方自治体の入札契約制度の適正化を促す目的で、これまで別々に公表していた工事・業務のダンピング対策や施工時期の平準化、週休2日工事などの実施状況を地図上で『見える化』したデータをウェブ上で簡単に確認できるポータルサイト『入契適正化マップ』を開設した。さまざまな場面での利活用を促し、各自治体の自発的な対応改善や、受注者側の建設業団体との意見交換の活性化を後押しする。」(『建設工業新聞』2024.04.01)
●「財務省は、国が定めた水準以上の賃上げを実施すると表明した応札者を政府調達の総合評価方式で加点する措置について、初年度である2022年度の国全体の実績をまとめた。賃上げを評価項目とする総合評価方式で競争入札を実施した契約のうち、加点を受けた賃上げ表明企業が契約者になった割合は、公共工事等(公共工事、公共工事関連の調査・設計業務など)が件数、金額ともに8割だった。この割合は3割だった物品役務等より圧倒的に高い。」(『建設通信新聞』2024.04.04)
●「国土交通省は時間外労働の罰則付き上限規制の適用や今国会で目指す建設業法改正を踏まえ、建設工事の取引実態の実地調査に当たる『建設Gメン』の活動を本格化する。元請各社の支店や現場所長を直接訪問してヒアリングする『モニタリング調査』に対応する人員体制を2024年度に倍増。業法改正で同調査の法的な位置付けを明確化し、違反が疑われる行為の端緒情報を把握する動きを真正面から展開する。従来以上に『深掘りした調査が可能になる』(不動産・建設経済局建設業課建設業適正取引推進指導室)見通しだ。」(『建設工業新聞』2024.04.04)
●「インフラの整備や維持管理を効率化する国や地方自治体の取り組みが進展していることが、内閣府の経済・財政一体改革推進委員会の点検・検証で分かった。公共施設等総合管理計画を見直したり、費用の見通しを公表したりする自治体が大幅に増加。立地適正化計画を公表した市町村は2023年3月で500団体を超え、コンパクト・プラス・ネットワークを意識した対応が進んでいる。PPP/PFIを推進する動きも目立つ。」(『建設工業新聞』2024.04.04)
●「調査・設計など国土交通省直轄土木業務の発注方式別契約件数で、2005年に成立した公共工事品質確保促進法(品確法)の施行によって適用が始まり、拡大傾向にあった総合評価方式の割合が、22年度に初めて6割に達した。総合評価方式の割合上昇に伴い、価格競争の割合は大幅に低下している。」(『建設通信新聞』2024.04.08)
●「国土交通省は厚生労働省から水道行政の移管を受け、1日に上下水道の一元管理を始めた。下水道や河川、道路で培ったインフラの整備・維持管理のノウハウを生かし、地震対策を含め上下水道施設の機能強化を図る。水道事業の経営効率化に向け、維持管理を民間に委託する官民連携の普及も推し進める。」(『建設工業新聞』2024.04.10)
●「国土交通省は、貨物自動車運送事業法に基づいて3月に改定した『標準的な運賃』や、直轄工事で3月から適用している公共工事設計労務単価での運転手(一般)の単価引き上げを踏まえ、建設資材・副産物のトラック運搬で荷主となる建設企業に対し、運搬契約の適正化を求める文書を建設業団体に通知した。標準的な運賃や設計労務単価を踏まえた適正価格での契約締結、労務費転嫁に向けたトラック事業者との価格交渉時の適切な対応などを要請している。」(『建設通信新聞』2024.04.12)

労働・福祉

●「政府は3月29日、技能者不足の状況などを踏まえ、特定技能外国人の建設分野での受け入れ見込み数を3万4000人から2.4倍の8万人に引き上げた。従来の受け入れ見込み数の対象期間が2023年度で終了することに伴う措置で、新たな受け入れ見込み数は24-28年度の5年間を対象とする。」(『建設通信新聞』2024.04.01)
●「国内最大の公共工事発注自治体である東京都が建設キャリアアップシステム(CCUS)活用工事の導入に踏み切る。対象工事や具体的な方法などは順次、公表する考え。国に次いで工事発注量の多い都の導入によって、自治体でのCCUS活用拡大に大きな弾みとなる。都はこれまで、CCUSについて、普及啓発活動には取り組んできたものの、工事で活用したことはなかった。2月9日時点での都道府県でのCCUSのモデル工事などの導入状況は、47都道府県中43道府県で工事成績評定や総合評価、入札参加資格での加点、カードリーダーなどの費用補助などいずれかの取り組みを実施しており、『検討中』として未導入だったのは都も含め4都県となっていた。これにより未導入は青森、山形、富山の3県となる。」(『建設通信新聞』2024.04.02)
●「日本の働き手が枯渇してきた。今は職に就かず仕事を希望する働き手の『予備軍』は2023年に411万人で15歳以上のうち3.7%にとどまり、割合は20年で半減した。女性や高齢者の就業が進み、人手の確保は限界に近い。企業を支えた労働余力は細り、非効率な事業の見直しを迫られている。現場の人手不足を敏感に映すのが時給の動きだ。労働政策研究・研修機構が毎月勤労統計をもとに集計したパートタイムの時間あたり給与は、23年10~12月期に前年同期比3.8%増だった。新型コロナウイルスの影響があった時期を除くと15年以降で最も高い。一般労働者は1.0%増で、パートの伸びが際立つ。コロナの影響が薄れたことによる景気要因だけではない。より大きいのは、女性や高齢者の労働参加が進み、人材のプールが細ったという構造要因にある。総務省がまとめた労働力調査によると、15歳以上で職に就かず仕事を探していないが、就業を希望する人は23年に233万人と20年前に比べて297万人減った。職探しをしている完全失業者の178万人と合わせた『予備軍』は411万人で15歳以上の人口の3.7%にあたる。03年の8.0%に比べて半分以下の水準だ。予備軍が減ったのは景気回復とともに、女性や高齢者が働く環境整備が進んだためだ。国立社会保障・人口問題研究所によると、15~64歳の生産年齢人口はピークだった1995年に比べ23年は15%減ったが、就業者は20年間で約400万人増えた。足元では結婚や子育てで女性が職を離れ、30代の就業率が下がる『M字カーブ現象』もほぼ解消した。大和総研の田村統久氏は『働き手の減少を女性や高齢者で補うのは限界に近い』と指摘する。英国の経済学者、アーサー・ルイス氏は農村で余った労働力が工業部門に吸収されて成長する中で、ある時点で余剰労働力がなくなる『ルイスの転換点』の考え方を示した。転換点を過ぎれば賃上げの圧力が強まる。日本は1960年代後半に過ぎたと見られているが、女性や高齢者という観点で新たな転換を迎える可能性がある。」(『日本経済新聞』2024.04.07)

建設産業・経営

●「住友林業は2024~27年、米国で毎年1万戸以上のペースで貸賃集合住宅を供給する。23年実績(約8000戸)に比べ25%増やす。米国では物価高や金利上昇を背景に新築戸建てを購入する需要が鈍い。向かい風のなかで成長を持続するため、賃貸住宅を米国事業の柱に育てる。」(『日本経済新聞』2024.04.03)
●「全国生コンクリート工業組合連合会(東京・中央)は2024年度の全国の生コン需要想定を23年度の想定より3.5%少ない6950万立方メートルとした。全体の7割を占める民需は同月2.2%少ない4764万6干立方メートル。公共工事なぜ官公需は同6.1%少ない2185万4千立方メートルとした。全国の工業組合の需要見通しを集計し、毎年3月に公表する。23年3月に示した23年度の需要想定は7200万立方メートルだった。同連合会の斎藤昇一会長は『需要想定の段階で7000万立方メートルを下回るのは24年度が初めて。24年度は運転手の不足などが出荷を下押しする要因になりそう』とみる。」(『日本経済新聞』2024.04.03)
●「国士交通省は、親会社と連結子会社から成る企業グループ内で在籍出向する技術者を出向先企業の現場に特例で配置できる企業集団制度を合理化し、全建設工事を対象に新たな運用を1日に始めた。従来の仕組みを一つのタイプに位置付けるとともに、要件を満たせば適用範囲が広がる新タイプを創設。新タイプは従来設けていた経営事項審査(経審)の要件がなく、親会社、連結子会社ともに建設業を本業とする企業グループ内で技術者を融通しやすくなった。」(『建設通信新聞』2024.04.04)
●「全国建設業協会(奥村太加典会長)は、3月に決めた国土交通省と全建を含む建設業4団体の申し合わせ事項を踏まえ、技能者賃金の5%を十分に上回る上昇と、労働時間規制を踏まえた働き方改革への万全な対応を推進するよう、各都道府県建設業協会長に取り組みを要請する奥村会長名の通知を1日付で送付した。全建の2024年度事業計画に基づき、会員企業の技能者や下請け契約での反映といった取り組みの周知を求めている。全建から今後、新しい周知用ポスターも配布する。働き方改革については、『目指せ週休2日+360時間(2+360=ツープラスサンロクマル)運動』や『適正工期見積り運動』などの引き続きの推進を要請。新たに、日本建設業連合会、全国中小建設業協会、建設産業専門団体連合会との4団体合同で取り組む『目指せ!建設現場土日一斉閉所』運動の展開も呼び掛けた。」(『建設通信新聞』2024.04.05)
●「東京商工リサーチは8日、2023年度建設業倒産状況(負債額1000万円以上)を公表した。件数は前年度比39.4%増の1777件で2年連続で前年度を上回った。近年は08年の4540件をピークに減少の一途をたどり、1000件台の低水準にとどまってきた建設業も、中小・小規模企業を中心に経営環境が悪化しつつある。件数が1700件を超えたのは14年度以来9年ぶり。39.4%増という増加率も、30年間で97年度の28.8%増を上回り過去最大となった。急速に環境悪化が進んだ形。このうち人手不足関連倒産は前年度比1.4倍の145件だった。業種では、総合工事業が39.6%増の733件、職別工事業は42.2%増の656件、設備工事業も34.7%増の388件と、業種を問わず倒産件数が拡大した。」(『建設通信新聞』2024.04.10)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「能登半島地震の発生から3カ月を迎えてもなお、被災地では7干戸以上で断水が続く。最大11万戸から徐々に解消が進んだが、被害が甚大な石川県珠洲市はほぼ全域で水が使えないままだ。下水道の復旧が遅れて排水が難しい地域もある。長期の断水は生活再建の妨げになりかねない。専門家は被害把握や修繕を早める手法の検討を求める。」(『日本経済新聞』2024.04.02)
●「産業インフラである工業用の水道施設の老朽化が進んでいる。経済産業省の試算でおよそ20年後に法定耐用年数の40年を超える水道管が全体の7割ほどに達する。同省は製造時に大量の水を使う半導体工場の国内集積を狙っている。インフラ維持が課題にあがる。総務省の集計によると、2021年度に全国の工業用水道管の法定耐用年数を超えた割合は48.3%だった。市町村など水道事業者による設備の更新や工事計画をふまえて経産省が試算したところ、耐用年数超えは33年に62%、43年に71.1%まで高まる。この10年間、工業用水施設の更新などを目的とした投資額は年500億円程度で推移してきた。このペースでは老朽化に追いつかない。経産省は50年度まで年1000億円規模の更新投資が必要だと見込む。背景には水道事業を担う市町村などの厳しい財政事情がある。工業用水は高度経済成長期の水需要の高まりを受け、1950年代ごろから各地で整備が進んだ。地下水の過剰なくみ上げによる地盤沈下を防ぎ、重要な産業インフラの一角を担ってきた。製造業の国内生産が縮小し、工業用水の需要は減少傾向にある。97年度と比べて2022年度の給水実績は18%減った。全国の設備稼働率は50%程度まで低迷している。稼働率が50%を超える施設は全体の4割ほどにとどまる。各水道事業者の料金収入は減少し、電気科金の高騰や工事単価の上昇などもあって、経営環境は厳しさを増している。価格転嫁も進んでいない。経産省の調査で、これまでに供給先の企業と料金改定した回数が『ゼロ』と回答した事業者はおよそ3割に上った。『1回のみ実施』を含めても全体の半数近くを占める。料金改定できない理由として『企業との関係で困難』をあげたのが全体の3割と最も多い。 料金は事業開始時に水質や地域の需要に応じて水道事業者が設定する。工業用水は上水道と異なって取引先が限られる。水道事業者は企業の撤退を恐れて値上げに踏み出しづらく、経営改善は進みにくい。」(『日本経済新聞』2024.04.03)
●能登半島地震の復旧・復興が急がれるなか、政府が創設した被災地の住宅再建に向けた「地域福祉推進支援臨時特例交付金」(新交付金)は、対象を石川県の6市町に限定している。対象外の自治体・住民から拡大を求める声が相次いでいる。(『しんぶん赤旗』2024.04.06より抜粋。)
●「物価上昇の波がついに国内の家賃にも波及し始めた。消費者物価指数(CPI)で賃貸住宅の家賃を示す指数は2023年に前年比0.1%上昇し、25年ぶりのプラスとなった。都市部などで賃上げや資材高騰で住宅の維持費用が増加していることが背景だ。新規賃貸契約だけでなく、契約更新時に家主が値上げを要請し、借り主も受け入れるケースが増えている。」(『日本経済新聞』2024.04.10)
●「能登半島地震からの復旧・復興を巡り、財務省は『住民の方々の意向を踏まえつつ、集約的な街づくりやインフラ整備の在り方も含めて十分な検討が必要』との見解を示した。被災地の多くが人口減少局面にある中、将来の需要減少や維持管理コストを念頭に置く必要性を強調。今回の震災を踏まえた防災・減災対策の進むべき方向として、液状化リスクの高い区域の土地利用規制強化などのソフト対策をハード整備と一体的に進める必要性も説いた。」(『建設工業新聞』2024.04.10)

その他