情勢の特徴 - 2024年5月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「公正取引委員会は4月30日、手形などを下請け代金の支払い手段とする場合の指導基準(手形期間)を、現在の繊維業90日以内、その他業種120日以内から、業種に関係なく60日以内に変更すると公表した。11月1日から施行し、同日以降、親事業者が下請け代金の支払い手段として、手形期間が60日を超える長期の手形を交付した場合、割引困難な手形に該当する恐れがあるとして、親事業者を指導する。」(『建設通信新聞』2024.05.01)
●「トラック運転手が不足する『2024年問題』が物流業界に協業・再編を促している。日本郵便とセイノーホールディングスが業務提携を、ロジスティード(旧日立物流)はアルプス物流の買収をそれぞれ9日に発表した。物流業界のM&A(合併・買収)件数は10年前に比べ2倍に増えた。…日本郵便とセイノーは25年4月にも長距離の拠点間の共同輸送を始める。合わせて両社以外の荷物も運べる物流システムを構築し、同業他社にも開放する。日本通運やヤマト運輸など大手の参画も目指す。業界大手が長距離の幹線輸送で本格的に手を組むのは異例だ。荷物の大きさやトラックヘの積み方、物流施設の使い方などが各社で異なるためだ。過去には大手同士で共同配送の検証を進めた例もあったが、共通化のコストなどがかさみ頓挫した。難題の多い共同輸送に日本郵便とセイノーが取り組む理由が24年間題だ。これまで事実上制限がなかったトラック運転手の残業時間は、4月から年960時間が上限となった。運転手の高齢化もあり、人手不足は一段と深刻になる。NX総合研究所(東京・千代田)によると25年度には14万人が不足する。インターネット通販の需要が伸び、今後も荷物の量は増える見通しだ。24年度に輸送能力は14%、30年度には34%不足するとみられる。トラック1台あたりの積載率を高め、少ない人手で効率的に長距離輸送する仕組みづくりは喫緊の課題だ。…両社は荷役作業で使うパレットやカゴ、運び方を共通化して、共同輸送をしやすくする。共通ルールを細かく詰めて両社以外の参画企業にも対応してもらう方針だ。協業を越えたM&Aも始まった。人手不足が続くなか、効率的な輸送ルートを組んだり、倉庫などへの自動化投資を進めたりするには、一定の企業規模が必要となる。ロジスティードは9日、電子部品大手のアルプスアルパイン傘下、アルプス物流を1株5774円でTOB(株式公開買い付け)すると発表した。買い付け価格は同日終値(4350円)を33%上回る。TOBを通じてアルプス物流を非公開化する。…24年間題は荷主企業にも影響する。国内メーカーは自社の物流オペレーションを安定させるため、傘下に運送金社を持つケースが多かった。しかし運転手の不足により人件費などの物流コストが上昇、経営の重荷となっている。M&A助言のレコフ(東京・千代田)によると、23年の陸運業界のM&Aは70件だった。30件前後だった14~16年に比べて2倍以上に増えている。」(『日本経済新聞』2024.05.10)
●「政府が10日に開いた経済財政諮問会議(議長・岸田文雄首相)に、価格転嫁や賃上げを巡る中小建設会社などからの意見が報告された。国土交通省が検討中の『標準労務費』の導入に期待し、民間工事でも担保されるとともに、元請・下請間の支払いのチェック機能の整備、リスキング(学び直し)への支援などを求める意見があった。中小企業との懇談結果として新藤義孝経済再生担当相が伝えた。新藤担当相の報告によると、公共調達については、建設業の標準労務費の普及が重要とした上で、最低制限価格が設定されていない場合、価格競争によって十分な賃上げを下請業者が行うのが難しくなっているという指摘があった。民間工事の長期の契約期間中に原材料費が上昇した際に、上昇分を機動的に反映することも課題に挙がった。公共調達の落札者と、その下請業者などの実際の賃金のフォローアップや、国会審議中の建設業法改正案の早期成立を求める意見もあった。」(『建設工業新聞』2024.05.14)
●「個人が新型コロナウイルス禍で積み上がった貯蓄を取り崩している。2023年に3兆~6兆円が支出に回った。生活必需品が値上がりし、消費者が食品や衣料などへの支出にあてた。娯楽などの高額消費に使い、景気を下支えする米国とは対照的だ。日本ではコロナ禍で政府が給付金を支給する一方、家計は消費を控える傾向が強かった。『超過貯蓄』や『コロナ貯蓄』と呼ばれる余裕が一時的に生まれた。第一生命経済研究所の星野卓也氏が内閣府のデータをもとにコロナ禍で積み上がった貯蓄額を試算した。コロナ貯蓄は22年10~12月期の47.9兆円をピークに23年10~12月期に41.9兆円まで減少した。…米国でもコロナ貯蓄が減っているのは日本と同じだ。SMBC日興証券の尾島未輝氏が米商務省のデータをもとに推計したところ、21年には2兆ドル程度あった米コロナ貯蓄は足元で300億ドル程度まで減った。だが日米でその使い道は異なる。米国では旅行や外食などのコロナ禍後の『リベンジ消費』を中心に使われた。尾畠氏は『米国の高所得層では超過貯蓄も追い風にサービス消費が進んだ』と分析する。米国の1~3月期の実質国内総生産(GDP)で個人消費は前期比年率2.5%増えた。一方、日本の使い道は食品などの生活必需品が中心だ。総務省の家計調査では23年の名目消費支出で食料が前年比5.7%、トイレットペーパーなどの家事用消耗品が2.3%増えた。物価高による商品の値上がりで支出を増やしたためとみられる。米国では23年半ばから実質賃金はプラスになる一方、日本でマイナスが続き、家計が防衛的な姿勢を強めている。内閣府が家計調査をもとに世帯別の貯蓄率を調べたところ、コロナ禍後の23年7~9月期までで65歳以上の男性と60歳以上の女性からなる高齢の無職世帯では貯蓄率の低下が目立った。それ以外の勤労世帯では平均年収500万円未満の層で貯蓄率が低下傾向にあった。一方、平均年収1000万円超の層では貯蓄率は依然として高く、足元で上昇傾向だった。物価高の影響を大きく受ける層で取り崩しが進む。」(『日本経済新聞』2024.05.15)

行政・公共事業・民営化

●「内閣府が事業を通じて地域経済や社会により多くのメリットや多様な効果をもたらす『ローカルPFI』の導入拡大へ取り組みを強化している。案件形成の促進へ、地域の産官学金が集いノウハウ取得や官民対話など情報交換を行う『地域プラットフォーム』の設置を支援。VFM(バリュー・フォー・マネー)など財政負担の軽減効果だけでなく、地域のにぎわいや雇用創出といった多様な効果を定量・定性的に評価できる指標の創設を目指す。」(『建設工業新聞』2024.05.09)
●「今国会に議員立法として提出予定の公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)と公共工事入札契約適正化法(入契法)、測量法の一括改正案の条文が明らかになった。建設業や関連業の担い手の処遇改善や働き方改革、地域の業界の維持などを目的に、国と地方自治体の義務規定を大幅に拡充。発注者の立場によらずとも、担い手の中長期的な育成・確保の支援措置などを講じる努力義務を課す。国の新たな権限となる公共発注者への『勧告』は、入契法に基づく毎年度の実態調査(入契調査)を踏まえた行為と位置付ける。」(『建設工業新聞』2024.05.13)
●「国土交通省は13日、公共事業評価手法研究委員会の2024年度第1回会合を開き、道路、河川、港湾など公共事業の事業評価に関する24年度の議論を始めた。事業の継続適否を判断する再評価時に計画当初より事業費が増加するケースを踏まえた『事業費算定の在り方』など3点を24年度の論点に提示。委員会として三つの論点に関する一定の方向性を今夏にも取りまとめる。…事業費の増加要因は、河川・ダム事業で『関連計画の変更(自然災害の激甚化・頻発化を踏まえた対策の追加など)』、道路事業で『地質・土質条件(もろい地質や軟弱地盤など)』、港湾事業で『関連計画の変更(貨物需要の増加やそれに伴う船舶大型化を踏まえた対策の追加など)』が多いとした。また、事業実施中に確認された技術的課題への対応が生じることや、地元・関係機関との協議で対応を追加すること、資材価格などの物価上昇により、事業費が膨らむ場合があるとする。」(『建設通信新聞』2024.05.14)
●「国土交通省は、入札契約適正化法(入契法)に基づき、都道府県・政令市、各省庁、特殊法人などの公共発注者に対し、公共工事の入札・契約適正化と円滑な施工確保を要請する文書を13日付で通知した。2023年12月に結果を発表した23年入契調査で取り組みが不十分だった事項の改善などを要請するもので、4月から建設業に時間外労働の上限規制が適用されたことを踏まえ、週休2日工事や週休2日交代制工事の実施に努めるよう求めた。不動産・建設経済局建設業課長名の文書で、都道府県・政令市向けは総務省自治行政局行政課長、各省庁と特殊法人などに対しては財務省主計局法規課長との連名で通知した。入契法に基づき、財務省財務省主計局法規課長との連名で、各省庁と特殊法人などに円滑な施工確保を要請する文書を通知するのは初めて。円滑な施工確保を要請する文書は従来、都道府県・政令市を対象に政府の補正予算が成立したタイミングで通知していたが、国交省は今後、当初予算が成立して新年度が始まった段階でも通知する考え。」(『建設通信新聞』2024.05.15)

労働・福祉

●「日本建設業連合会(日建連、宮本洋一会長)の調査によると、土木の監理技術者に占める20代の割合が、2012年~22年の10年で倍増していることが分かった。会員企業の積極的な採用活動により、20代の技術者が増加している。日建連は次世代を担う監理技術者を育成するための取り組みを展開する考えだ。日建連の会員企業19社を対象に、12年と22年の土木技術者の年齢構成を比較した。調査結果によると、監理技術者全体に占める20~30歳の比率は12年が12%に対し、22年が23%と11ポイント上昇した。一方、31~40歳は18%(12年比6ポイント低下)、41~50歳は34%(17ポイント低下)といずれも割合を下げた。20~30歳の技術者数は、3930人(12年比116.5%増)と倍増している。一方、ベテランに当たる41~50歳は32.3%減の3391人と大幅に減少。相対的に若手技術者の比率が高まっている。」(『建設工業新聞』2024.05.02)
●「建設産業労働組合懇話会(建設産労懇、会長・木浪周作日本建設産業職員労働組合協議会議長)は7日、6月に一斉展開する『完全週休2日実現統一運動』の共同プレス発表会を都内で開いた。建設産労懇を構成する日建協、全電工労連、情報通信設備建設労働組合連合会、道路建設産業労働組合協議会、基幹労連建設部会、長谷工グループ労働組合の総勢約11万4000人で、建設現場の閉所や組合員の1日でも多い休日取得に取り組む。統一運動は毎年6月と11月に実施している。今回のキャッチフレーズは『週休2日は通過点 進もう 誰もが憧れる建設業へ』。統一ポスターはキャッチフレーズに合わせて4週8閉所をゴールとするのではなく、そのさらに先を見据えて取り組んでいる姿勢を表現した。統一ポスターの職場への掲示や発注者を含めた関係団体、企業への要請活動などを通じて、1人でも多くの組合員が完全週休2日の実現ができるよう機運を高めていく。」(『建設通信新聞』2024.05.08)
●「厚生労働省が9日発表した3月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上の事業所)によると、1人当たりの賃金は物価変動を考慮した実質で前年同月比2.5%減だった。減少は24カ月連続で過去最長だった。給与総額は伸びているものの、物価高に追いつかない状態が続いている。」(『日本経済新聞』2024.05.09)
●全建総連は8日、建設労働者の賃上げや若い担い手確保の環境整備を求める「持続可能な建設業の実現に向けた100万人国会請願署名」の提出集会を国会内で開いた。署名は目標を上回り118万9606人分を集めたと発表された。中西孝司委員長は「昨年10月の大会で署名の取り組み開始を確認し、短い期間で100万人を超えた。国会議員347人から賛同を得た」と強調。今国会で建設業法など「担い手3法」、改正案が審議されるにあたり、「労働時間短縮・休日増、資材高騰に対応した適切な請負単価、工期の確保、労働者の処遇確保を求めていこう」と呼びかけた。(『しんぶん赤旗』2024.05.09より抜粋。)
●「政府は9日、首相官邸で新しい資本主義実現会議(議長・岸田文雄首相)を開き、2025年以降も持続的な賃上げを続けるため、労働市場改革や企業内・同一産業内・異なる産業間の労働移動円滑化といった構造的問題への対応を議論した。論点案として人手不足や産業構造の変化を踏まえ、労働者自ら職務やリスキリングの内容を選択していくジョブ型人事に移行する必要性を強調した。役職定年・定年制を廃止するなどして自社のスタイルに合ったジョブ型人事の導入を企業に検討してもらうため、今夏に『ジョブ型人事指針』を策定、公表することを明らかにした。」(『建設通信新聞』2024.05.10)
●「長時間労働の抑制圧力が強まる中、実際の残業時間と会社に報告した残業時間が異なる『乖離(かいり)申告』の増加傾向が、日本建設産業職員労働組合協議会(日建協、木浪周作議長)が実施した『2023時短アンケート』で浮き彫りになった。乖離があった人の割合は、全体で19.7%を占めた。内外勤別に見ると、内勤の10.7%に対し、外勤は27.6%と2.5倍以上に上った。」(『建設通信新聞』2024.05.10)
●「日本建設産業職員労働組合協議会(日建協、木浪周作議長)が2023年11月に実施した『2023時短アンケート』の中で、転職に関する意識調査を行ったところ、全体の73%が定年まで今の会社で働きたいと回答した。ただ、年齢別に見ると、若いほど転職の意識が高く、20代の約半数が転職を視野に入れながら働いていることが分かった。」(『建設通信新聞』2024.05.15)

建設産業・経営

●「日本建設業連合会(宮本洋一会長)は、今後の公共工事現場を担う土木技術者の確保・定着・育成に向け、国土交通省地方整備局などで行われている若手登用を促す取り組みの運用改善と活用促進を働き掛けるとともに、若手技術者の離職理由に多く挙げられる『転勤・異動』の負担を軽減する方策などを提案する。日建連の会員調査によると、2012年から22年の10年間で、30代の監理技術者の割合は24%から18%へと約3割減少し、40代は51%から34%へと5分の3程度に減った。今後、監理技術者になる20代は、12%から23%に倍増しているものの、転勤・異動や長時間労働などを理由に、離職率が増加傾向にある。20代の平均離職率は、17年に4.4%だったが、22年は6.7%に増加した。貴重な若手技術者を確保するためには、柔軟な人事政策が求められている。」(『建設通信新聞』2024.05.02)
●「建設技能者の高齢化と離職者の増加が進む中、日本建設業連合会(宮本洋一会長)は、まだ標準化に至っていない新技術・新工法の現場実装に向けた要望活動を展開する。特に、他工種に比べて技能者の高齢化が深刻なトンネル工事について、自動化技術を採用する試行工事の早期導入を発注機関に求めていく。全建設業就業者の半数を50歳以上が占め、さらにそのうちの半数以上は60歳以上となっている。高齢化の進展で就業者数の減少が著しい中、新技術・新工法の導入による生産性向上の必要性が高まっている。中でも、多能工の熟練技能者を必要とするトンネル工事は、高齢化による技能者の減少が特に深刻化しており、今後、工事の履行に大きな影響を及ぼすことが懸念されているという。日建連の会員調査によると、トンネル切羽作業員の年齢構成は、40歳以上が全体の76%を占め、このうち50-59歳が33.6%、60歳以上が10.9%となっている。熟練技能者(経験年数平均値+5歳)に限ると、40歳以上は全体の94%に上り、うち50-59歳が45.7%、60歳以上が13.0%を占める。…日建連は、高齢技能者の大量退職に備えた生産性向上が不可欠と指摘。ICT活用工事やBIM/CIM原則導入と同様に、新技術・新工法の導入に当たり、発注者が必要経費を負担する仕組みの検討を働き掛ける方針だ。」(『建設通信新聞』2024.05.07)
●「全国建設業協会(奥村太加典会長)は、『労務費の適切な転換のための価格交渉に関する自主行動計画』を策定した。都道府県建設業協会の会員企業が、元請け・下請けや注文者・発注者のそれぞれの立場から、取り組むべき行動などを定めた。経営トップの関与の下、価格転嫁の受け入れ方針を決定することや、公共工事設計労務単価の改定時など比較的優位なタイミングを活用し、発注者との交渉に臨むことなどを盛り込んでいる。」(『建設通信新聞』2024.05.07)
●「セメントや生コンクリートの需要が低迷している。セメント協会(東京・中央)がまとめた2023年度の国内需要(国内販売量と輸入の合計)は22年度に比べ7.3%減の3457万トンとなり、5年連続のマイナスになった。このうち23年度の減少率が最大だった。生コンクリートの出荷量も5年連続で減少した。資材費高騰や工事現場の人手不足による工期の見直しが相次ぎ、都市部を中心に民間需要が落ち込んだ。セメントの需要のうち大部分を占める国内販売量は23年度に22年度比7.3%減の3456万1848トンとなり、5年連続のマイナスとなった。全国の生コンメーカーなどで組織する全国生コンクリート工業組合連合会(東京・中央)がまとめた23年度の出荷量は7018万1760立法メートルとなり、22年度比5.7%減少した。5年連続のマイナスで、過去最低を更新した。」(『日本経済新聞』2024.05.08)
●「国土交通省は10日、建設業許可業者約47万者のうち約1万2000者を対象とする建設工事受注動態調査の2023年度結果を発表した。受注高は前年度比6.2%減の109兆3751億円で、3年ぶりに減少した。元請け、下請けともに減っている。業種別は総合工事業と職別工事が減った一方、設備工事業が増えた。設備工事業の増加は3年連続で、全体的に減少する中にあって好調を維持している。民間等が発注する建設工事の元請け受注高の減少が全体を押し上げた。」(『建設通信新聞』2024.05.13)
●「清水建設が13日発表した2024年3月期連結決算は営業損益が246億円の赤字(前の期は546億円の黒字)だった。上場以来、通期の営業赤字は初めて。売上高は4%増の2兆55億円だったが、民間工事のコスト高などが響き収益性が低下。純利益は65%減の171億円だった。」(『日本経済新聞』2024.05.14)
●「上場大手ゼネコン4社の2024年3月期決算の合計(連結)は、売上高が8兆円の大台を突破し、直近10年で最高額となった一方、営業利益率と経常利益率が最低となった。純利益率も15年3月期に次ぐ低い水準となる。資材価格の高止まりや労務費の高騰が響いた。大型の建築案件が重荷となる会社もある。各社は採算重視の受注戦略を徹底している。25年3月期は売上高が9兆円を突破する見通しで利益面の改善を目指す。」(『建設通信新聞』2024.05.15)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「総務省が30日発表した2023年10月時点の住宅・土地統計調査によると、国内の住宅総数に占める空き家の割合は過去最高の13.8%だった。18年の前回調査から0.2ポイント上昇した。空き家の数も5年間で50万戸増の899万戸と過去最多になった。空き家のうち賃貸・売却用や別荘などを除いた長期にわたって不在で使用目的がない『放置空き家』の割合は0.3ポイント上昇の5.9%となり、36万戸増の385万戸になった。03年からの20年間で1.8倍に増えた。…全国の空き家のうちマンションやアパートなどの共同住宅は502万3500戸と過半を占めた。共同住宅の総戸数のうち16.7%が空き家という計算になる。内訳を見ると賃貸用が394万1100戸、売却用は12万9000戸だった。使用目的がなく放置されていたり相続後に誰も住んでいなかったりする共同住宅は84万6800戸だった。18年の調査では77万9600戸で、5年間で8.6%増えた。20年前と比べると1.6倍になった。」(『日本経済新聞』2024.05.01)
●「国土交通省は4月30日、2023年度の建築着工統計調査報告を公表した。新設住宅着工戸数は前年度比7.0%減の80万0176戸で2年連続の減少となった。近年では世界的な金融危機の影響を受けた09年度の77万5277戸に次ぐ低水準となった。利用関係別戸数は、持家が11.5%減の21万9622戸で2年連続の減少、貸家が2.0%減の34万0395戸、分譲住宅は9.4%減の23万5041戸でともに3年ぶりの減少となった。分譲住宅はマンションが12.0%減の10万0241戸で前年度の増加から減少に転じ、一戸建て住宅は7.4%減の13万3615戸で3年ぶりの減少となった。」(『建設通信新聞』2024.05.01)
●「森トラストは8日、東京23区内が対象の『オフィスビル供給量調査』の結果を公表した。2023年に供給された延べ1万平方メートル以上の大規模オフィスビルは総延べ約138平方メートル。21年や22年と比べて大きく伸び、過去5年間では20年(約185万平方メートル)に次ぐ水準となった。今後5年間の供給量は各年とも23年を下回る見通しで、空室率も低い状況が続くとみられる。」(『建設工業新聞』2024.05.09)
●「首都圏の戸建て住宅の価格がじわりと上昇している。安定した需要や建築費の上昇などを背景に、首都圏の新築戸建て価格は3カ月連続で上昇した。マンションの高騰を横目に、戸建て市場では新築や中古の選択肢を広げながら吟味する消費者も増えているようだ。不動産調査会社の東京カンテイ(東京・品川)がまとめた新築小規模戸建て住宅(敷地面積50平方メートル以上100平方メートル未満の新築木造一戸建て)の平均希望売り出し価格は、首都圏は前月比0.2%高い5295万円。東京都は6324万円と2.7%下落した一方、神奈川県が4.7%高い4835万円となるなど全体が押し上がった。首都圏全体でみた場合の上昇は3カ月連続。…同社によると、4月の首都圏の中古一戸建て(敷地面積100~300平方メートル)は前月比6.4%高い3851万円。東京都は13.1%高い6249万円。東京23区は9.6%高い1億1169万円と11カ月連続で1億円台を推移している。…年単位でみても、戸建て住宅の価格の上昇がうかがえる。SUUMOリサーチセンター(東京・港)が、新築戸建てを購入・契約した人を対象に購入価格や購入理由などを聞いている調査では、首都圏の平均購入価格は23年に4515万円と22年より109万円増え、調査を開始した14年以降で最高となった。購入した世帯年収も814万円と過去最高となった。世帯主の年代は20代の割合が22年よりも増加。住宅ローン借入額も平均4241万円と過去最高になったという。」(『日本経済新聞』2024.05.11)
●「全建総連は11日、JBN・全国工務店協会とともに運営する全国木造建設事業協会(全木協、大野年司理事長)が能登半島地震の被災地で建設を進めている応急仮設住宅の現場を報道機関などに公開した。建設キャリアアップシステム(CCUS)の現場運用を全建総連が中心となり推進。電源や通信環境を考慮し、カードリーダーに就業履歴を一時的に蓄積する『ロギング機能』を活用した履歴蓄積に取り組んでいる。全木協は石川県の要請を受け、輪島、珠洲両市の7カ所で計551戸の木造仮設住宅の建設を引き受けている。JBN会員のエバーフィールド(熊本市南区、久原英司社長)とタカノホーム(富山市、高野二朗社長)が元請として受注し、地元の工務店などと共同で施工管理を手掛ける。現場の技能者は、厚生労働省の許可に基づき全建総連が行う労働者供給事業で確保し、元請の工務店と雇用契約を結ぶ。現場を公開したのはエバーフィールドが元請となる輪島市鳳至小学校内の団地(29棟・107戸)と同市町野グラウンドゴルフ場内の団地(54棟・198戸)。いずれも3月中旬に着工し、現在は内外装仕上げ工事や瓦屋根ふき工事などが進行中。今月下旬の完成を目指している。市有住宅への転用を想定し、RCのべ夕基礎を採用。メゾネットタイプの2階建て住宅も一部あり、外壁の仕様など団地ごとの特色を持たせた。全建総連は災害対応に備え、平時から仮設住宅を想定した施工研修を実施。一戸建て住宅を専門とする建築大工技能者が多いことから、住戸間の界壁など長屋に特徴的な施工方法の習得に努めている。災害対応が可能な組合員も事前にリスト化し、迅速な体制確保につなげている。」(『建設工業新聞』2024.05.15)

その他