情勢の特徴 - 2024年6月前半
●「外国人受け入れをめぐる出入国在留管理庁の初の意識調査で、若い世代では好意的な人が多いのに対し、高齢層は慎重な考えが根強いことが分かった。年代によって外国人との交流経験に濃淡があり、受け入れ意識に影響している様子がうかがわれる。政府が掲げる共生社会の実現には世代を超えた接点の拡大が求められる。入管庁は外国籍住民を対象にした意識調査を定期的に実施しているが、日本人側の理解や考え方を把握するためにアンケートをするのは初めて。18歳以上で日本国籍をもつ1万人を住民基本台帳から無作為抽出し、23年10~11月に実施。有効回収数は4424人だった。地域社会に外国人が増えることをどう思うか聞いたところ、全体では『好ましい』が28.7%で、『好ましくない』の23.5%をやや上回った。年代による速いは大きい。18~19歳で半数超が肯定的に答えるなど、40代前半までは外国人の増加を前向きに捉える回答が3割を超えた。高齢になるにしたがって『好ましくない』『どちらともいえない』の割合が大きくなり、慎重な見方が根強いことが浮き彫りになった。」(『日本経済新聞』2024.06.05)
●「少子化に歯止めがかからず、厚生労働省が5日発表した2023年の合計特殊出生率は過去最低を更新した。24年は政府が初めて少子化対策に乗り出してから30年の節目を迎えた。これまでに投じた関連予算は累計で66兆円を超えたものの、低下を続ける出生率の反転は見通せない。」(『日本経済新聞』2024.06.06)
●「政府は7日、新しい資本主義実現会議を開き、新しい資本主義のグランドデザインと実行計画の改訂案をまとめた。物価上昇を上回る賃上げの定着を実現するため、価格転嫁の徹底や省力化投資への支援などに力を入れる。建設業の人手不足への対応では、改正建設業法に基づく処遇改善の取り組みを進めることを明記した。6月中にも閣議決定する。賃上げの定着に向けて、価格転嫁と省力化投資を推進する。価格転嫁対策では、内閣官房と公正取引委員会がまとめた労務費転嫁指針をさらに周知するほか、重点業種とする総合工事業などの自主行動計画の策定を促す。…人手不足への対応では、深刻な業種ごとに対策を明記した。建設業は改正建設業法に基づき、標準労務費を下回る『著しく低い労務費等』での工事契約を禁止し違反発注者を国が勧告・公表することや、価格変動時の請負代金の変更方法を請負契約書の法定記載事項とすることなどで価格転嫁の円滑化と処遇改善を図る。労働市場改革については、労働移動を円滑化するため、人手不足の建設・土木業などで団体や企業が整備した民間検定を政府が認定する新たな枠組みを設け、スキルの階層化・標準化を進める。認定された検定を取得するための講座受講は、今秋から職業訓練給付の対象に追加する。ジョブ型人事の導入では先行企業の事例を掲載した指針を今夏にも公表する。フリーランスの取引適正化のため、事業所管省庁が公正取引委員会や中小企業庁と連携して、発注者側の団体に取引慣行適正化を働き掛ける枠組みを10月までに創設する。問題事例の多い業種を10月までに抽出し、2024年度内にこれらの業種に集中調査を実施する。」(『建設通信新聞』2024.06.10)
●「世界経済フォーラム(WEF)は12日、男女平等の実現度合いを示す『ジェンダー・ギャップ指数』を発表した。日本は調査対象の146カ国中118位だった。過去最低だった前年の125位より改善したが、政治と経済はなお低迷する。浮上には非正規などの待遇を改善し、賃金格差を是正することが重要だ。WEFは『経済』『教育』『健康』『政治』の4分野を毎年、分析している。日本は政治の順位が138位から113位に上昇した。女性閣僚の比率が4分の1と前回調査時点の8%より増えたことが評価された。それでも主要7カ国(G7)では最下位で、中国(106位)や韓国(94位)より劣る。衆院議員の女性比率は10%にとどまる。経済分野は120位と前年(123位)とほぼ横ばいだった。指標となる女性管理職比率は17.1%と低い。同一労働での賃金格差や推定所得の差も大きかった。女性の労働意欲を高め雇用者を増やすためにも不合理な賃金格差の解消は必要だ。経済協力開発機構(OECD)の2022年のデータによれば、日本は男性の賃金を100とすると、女性は78.7しか稼いでいない。この格差はOECD平均の2倍近い。」(『日本経済新聞』2024.06.13)
●「建設業法と公共工事入札契約適正化法(入契法)の一括改正案の国会審議が大詰めを迎えている。参院国土交通委員会で4日に参考人の意見陳述と質疑が行われ、招致された3氏とも現場の下請、技能者に近い立場から、国が示す『標準労務費』に基づく適正な労務費、賃金の行き渡りに強い期待を表明。技能者らの賃上げに国民の理解を得る機運づくりや、取引実態の実地調査・指導に当たる『建設Gメン』の体制拡充を国に求めた。同日の参院国交委の理事会で、与野党による質疑を6日に実施し以後の対応を引き続き協議することも決まった。」(『建設工業新聞』2024.06.05)
●「政府提出の改正建設業法・入札契約適正化法(入契法)が、7日の参院本会議で可決、成立した。公布から3カ月後、6カ月後、1年6カ月後の3段階で施行される。法を所管する国土交通省は施行に向け、新しい措置の詳細や運用方法を定めた政省令、ガイドラインなどを整備する。技能者に支払われる賃金の原資である労務費を適正な金額で確保し、技能者を雇用する下請けまで行き渡らせるなど、建設業界の最重要儲題である担い手確保を制度的に推進する内容で、施行によって持続可能な建設業の実現を目指す。」(『建設通信新聞』2024.06.10)
●「厚生労働省は5月31日、2023年(1-12月)の職場での熱中症による死傷災害発生状況(確定値)をまとめた。休業4日以上の死傷者は前年比34%増(279人増)の1106人、死傷者のうち死亡者は3%増(1人増)の31人となった。このうち建設業は、死傷者数が17%増(30人増)の209人、死傷者のうちの死亡者数は14%減(2人減)の12人だった。」(『建設通信新聞』2024.06.03)
●「政府の規制改革推進会議は5月31日、第19回会合を開き、関係府省庁と調整した上で規制改革推進に関する答申をまとめた。政府は答申を踏まえ、6月中にも規制改革実施計画を閣議決定する。厚生労働省は、フリーランスらを保護する観点から、『労働者性の有無』の判断が労働基準監督署で適切に行われるよう、2024年度に必要な措置の検討を始める。国による労働者性の判断が適切に実施されていないことで、労働基準法上の労働者性がある働き方をしているにもかかわらず、名目上は自営業者として扱われ、労基法などに基づく保護を受けられていない者が一部の業種に存在していると指摘。厚労省は適切な判断の実施に向けて必要な措置を講じるべきとし、その例として『自らを労基法上の労働者と考える者から労基関係法令達反に関する相談を受ける窓口を整備する』『自らを労基法上の労働者だと考える者から申告があった際、原則として労働者性の有無の判断を行うことを就業者に対して明確化する』の2点を挙げた。厚労省は必要な措置の検討を24年度に始め、結論がまとまり次第、速やかに措置する。」(『建設通信新聞』2024.06.03)
●「今年3月卒業の高校生の求人倍率が3.98倍となり、厚生労働省の統計開始以来、最も高い結果を記録した。“売り手市場”が続く中、かねてから課題となっていた地域建設企業や元請けの協力会社の採用活動が限界を迎えつつあり、こうした状況を踏まえ、大成建設は、延べ約700社が所属する協力会組織の倉友会を通じた支援を強化している。採用支援の民間サービスを会員企業が割引価格で利用できるようにしたほか、任期制自衛官や外国人などを視野に入れた取り組みにも注力する。」(『建設通信新聞』2024.06.07)
●「厚生労働省の有識者らによる懇談会は11日、厚生年金の適用範囲について議論した。パート労働者らを対象にした適用範囲として、従業員数の規模要件を撤廃すべきだとする意見が多く出た。厚労省は今夏に開く次回会合での取りまとめを目指す。2025年は5年に1度の年金制度改正の年にあたり、厚労省は年末へ向けて厚生年金の適用対象を広げる方向で議論を進めている。現在、週の所定労働時間が30時間未満のパートタイム労働者は、従業員数が101人以上の企業に勤める場合、賃金や労働時間などの要件を満たすと厚生年金が強制適用になる。10月からは51人以上の企業に対象が拡大する。11日の懇談会では企業規模要件の撤廃と、従業員5人以上の個人事業所における飲食や宿泊業などの非適用業種の解消を求める声が多くあがった。」(『日本経済新聞』2024.06.12)
●「技能実習に代わる外国人材の新制度『育成就労』を新設する出入国管理法などの改正法が14日の参院本会議で可決、成立した。与党や日本維新の会、国民民主党などが賛成した。現制度で原則認めていない本人意向の転職ができるようになる。公布後3年以内に施行する。」(『日本経済新聞』2024.06.14)
●「鹿島など4社は、型枠工事の締め付けをアルミ製パイプ1本で可能とする『型枠一本締め工法』を開発した。従来の鋼製パイプ2本を軽量なアルミ製パイプ1本とすることで、歩掛かりの大幅な向上と技能者の負担軽減を実現。同社は『在来工法が普及し始めた1950年代以降、画期的な技術革新がなかった型枠工事で約70年ぶりの新工法だ』としており、自社現場だけでなく、標準化を見据えて普及展開を図る。」(『建設通信新聞』2024.06.03)
●「全国建設業協会は、4日に都内で開いた定時総会と理事会で、今井雅則戸田建設代表取締役会長の全建会長就任を正式決定した。第16代会長となる今井新会長は『歴代会長か築いてきた伝統と実績を踏まえ、47都道府県協会長と一緒になり、地域建設業が一致団結して「地域の守り手」としての社会的使命を果たすとともに、建設業に携わる人たちや建設業を目指す若者が、夢と誇りを持って活躍できる、希望に満ちた憧れの産業となるよう力を尽くす』と所信表明した。」(『建設通信新聞』2024.06.06)
●「積水ハウスが東京都国立市に建設中の分譲マンショシを解体することが7日、分かった。景観が悪化するなど周辺住民から反対の声が上がっており、完成間近のマンションを解体する異例の事態になった。積水ハウスは『事前の検討が不十分なところがあったため、事業を継続せずに解体することにした』と説明している。解体時期や跡地の利用方法などは未定だ。」(『日本経済新聞』2024.06.08)
●「海外建設協会(佐々木正人会長)は、会負52社を集計した2023年度の海外建設受注実績をまとめた。受注総額は、前年度比11.8%増の2兆2907億円で、コロナ禍前の19年度に記録した2兆0570億円を上回り、過去最高水準に達した。ただ、円安や物価上昇の影響を考慮していない数字のため、単純に手放しで喜べるものではないが、現地法人での受注が着実に伸びていることなどから、海外市場は堅調とみている。」(『建設通信新聞』2024.06.11)
●「ゼネコンや設備工事、設計、建設コンサルタントの各社で構成する『防衛施設強靭化推進協会』が発足し、活動を始めた。建設産業の技術力と経験を防衛施設の整備や維持管理、災害などの復旧に生かし、日本の平和と安全に貢献する。施設の整備や強靭化を巡る防衛省との意見交換、提言活動などを行っていく。会長に飛島建設社長の乘京正弘氏が就いた。同氏は『オープンな組織』として活動し、『会員を増やしたい』と話す。」(『建設工業新聞』2024.06.11)
●「政府は5月31日、能登半島地震復旧・復興支援本部を首相官邸で開き、岸田文雄首相は石川県が被災地の復興事業に投じるために創設した『復興基金』に対し、特別交付税から520億円を措置する考えを示した。液状化の被害が目立った新潟、富山両県には、県単独の液状化対策事業について費用の8割を同交付税で手当てする。関係省庁は1日で震災から5カ月を迎えるのを念頭に対応の現状や今後の取り組みを報告した。」(『建設工業新聞』2024.06.03)
●「経済産業省と国土交通省は、中規模非住宅建築物の省エネ基準を見直す。全用途一律で設定している現行の1次エネルギー消費量(BEI)の水準を大規模非住宅建築物と同一にする。住宅トップランナー基準も見直し、2027年度を目標に建て売り・注文戸建て住宅、賃貸アパートで強化外皮基準への適合などを求める。新たな住宅トップランナー基準は25年春ごろ、中規模非住宅建築物の引き上げ基準は26年春ごろにそれぞれ施行する。」(『建設通信新聞』2024.06.04)
●「政府は使用済みの太陽光パネルのリサイクルを義務化する検討に入った。2030年代には耐用年数を迎えるパネルが大量発生する。埋め立て処分を減らして環境への負荷を抑える狙いがある。25年の通常国会にも関連法案を提出する。」(『日本経済新聞』2024.06.12)
●「マンションが完成するまでの期間が長期化している。日本経済新聞の調査によると、首都圏の大規模物件の工期は10年で3割延びた。建設や設備工事関連の人手が不足しており、今後も長期化は続く見通しだ。販売価格の上昇にもつながる。不動産助言会社のトータルブレイン(東京・港)がもつ物件データを基に、総延べ床面積1万平方メートル以上の大規模マンション1097棟(最高階数は60階)の工期を調べた。2010~25年度(24年度以降は完成予定を含む)に1都3県(東京、神奈川、埼玉、千葉)で完成した物件を対象にした。24年度の平均工期は884日と、14年度に比べ3割延びた。1棟当たりの平均延べ床面積も9%増えたが、100平方メートル換算でも3割延びた。『マンションは階数に3カ月を足すのが工期の目安だったが、今は10カ月足すのが常識』(トータルブレインの杉原禎之副社長)になっている。工期が延びた主因は人手不足だ。職人の高齢化もあり、建設業の就業者数は23年に483万人と20年間で約2割減った。24年4月から時間外労働の規制が厳しくなるのを見据えて、建設業界は働き方改革に取り組んできた。週休2日に相当する『4週8休』の導入も加速した。建設業の働き手の総労働時間は、働き方改革の議論が活発化した15年以降、1カ月あたり4%短くなった。エレベーターなどの設置に必要な電気設備の作業員も不足している。日立ビルシステムは4月以降、建設現場の労働時間が減少することにより、同社の新設エレベーターの施工能力は24年度に前年度比6%(300台程度)減ると屈算する。国土交通省によると23年度の建設投資額見通しは13年度比5割弱増えた。建設業界はこの10年間、東日本大震災からの復興や東京五輪・パラリンピック関連など工事需要は強かった。建設会社が利益率の低いマンション工事を後回しにしがちだったことも、工期が長期化する遠因となった。…工期が延びれば総人件費が増え、建設コストも上昇する。その結果、販売価格が上がる。不動産経済研究所(東京・新宿)によると、首都圏の新築マンションの平均価格は23年度に7566方円と、13年度比で51%(2558万円)上昇した。」(『日本経済新聞』2024.06.12)
●「政府は10日、所有者不明土地対策の関係閣僚会議を鮎嘗、所有者不明土地対策の新たな基本方針を決定した。所有者不明マンションの再生を円滑化するため、マンション管理適正化法、マンション建替円滑化法について、次期通常国会に改正案を提出することを盛り込んだ。今国会への提出を見送った区分所有法の改正案も速やかな国会提出を目指すとした。」(『建設通信新聞』2024.06.12)