情勢の特徴 - 2024年6月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「中小企業で業績の改善が伴わないのに人手を確保するための『防衛的な賃上げ』が目立っている。日本商工会議所の調査で6割に上り、収益力の向上による『前向きな賃上げ』を上回る。人材つなぎとめのための苦肉の措置で、賃上げの定着には課題が多い。中小企業の支援を担う日商は20日、東北6県の商工会議所連合会との会合を仙台市内で開いた。仙台商工会議所の藤崎三郎助会頭は、原材料高や人手不足をあげて『次々と押し寄せる困難な課題に的確に対応しなければならない』と苦境を訴えた。日商が5日に公表した賃上げを巡る4~5月の調査で、2024年度に賃上げを実施したか実施予定の中小企業は74.3%だった。その賃上げ企業のうち『防衛的』との回答は59.1%を占め、『前向き』は40.9%にとどまった。従業員20人以下の企業に絞ると『防衛的』が64.1%に達した。日商には『人手不足のなかで賃上げに取り組んでいる』(中国地方の小売業)、『物価高が続くなかで利益を削っており、(今後も)賃上げに応えられるかは不透明だ』(東北地方の製造業)といった声が届いた。業種別にみると時間外労働規制の強化で運転手が不足する『2024年問題』に直面する運輸業は賃上げ企業の72.2%が『防衛的』で、製造業や小売業も60%台だ。建設業や卸売業なども『防衛的』が過半を占めた。業績改善を伴う『前向き』が『防衛的』より多かったのは情報通信・情報サービス業や宿泊・飲食業、金融・保険・不動産業の3業種に限られた。」(『日本経済新聞』2024.06.21)
●「政府が21日に閣議決定した2025年度の予算編成方針が示す『経済財政運営と改革の基本方針2024(骨太の方針)』は、予算編成に公共投資の効率化・重点化を引き続きうたった。検討中の国土強靭化実施中期計画は『24年度の早期』に策定を始めると明記した。リニア中央新幹線の名古屋以西の駅、国立劇場再整備、廃炉を決めた原子力発電所の敷地内建て替えの具体化などの検討を進めることを盛り込んだ。」(『建設工業新聞』2024.06.25)
●「訪日客(インバウンド)が日本経済を支える柱になってきた。2024年1~3月期の訪日客消費は年換算で名目7.2兆円と10年で5倍に拡大した。主要品目の輸出額と比べると自動車に次ぐ規模になった。日本が海外に売り込む品目はモノからサービスにシフトしつつある。国内総生産(GDP)統計で訪日客の消費に相当する『非居住者家計の国内での直接購入』をみると、新型コロナウイルス禍前の19年10~12月期は年換算で4.6兆円だった。23年4~6月期の段階でコロナ禍前の水準を上回った後も拡大が続き、24年に入って7兆円の大台に乗せた。日本経済に占める訪日客消費の存在感は高まる。7.2兆円という規模を日本の品目別輸出額と比べると、23年に17.3兆円だった自動車の半分以下ではあるが、2位の半導体等電子部品(5.5兆円)や3位の鉄鋼(4.5兆円)を上回る。」(『日本経済新聞』2024.06.26)

行政・公共事業・民営化

●「自治体が運営する下水道事業で、およそ8割が施設更新に必要な資金を使用料の収入で捻出できていないことが財務省の調査で分かった。資金の不足は自治体が補塡できる仕組みだが、耐震工事など将来への備えが不十分になる恐れもある。下水道事業は公営企業が担う。住民が支払う使用料の収入で支出を賄うのが原則だが、足りない分は自治体の一般会計からの繰り入れや地方債の発行で補える。近年は物価上昇が進むほか、地震に備えた工事に高い技術で対応する必要性も出ており、老朽化に備え、十分な資金余力の確保が重要になっている。総務省は資金繰りを見える化するため、損益計算書や貸借対照表の作成といった会計制度の導入を求めている。」(『日本経済新聞』2024.06.18)
●「国土交通省の有識者会議は能登半島地震の教訓を踏まえ、今後の道路施策の指針を示す緊急提言をまとめた。高規格道路の早期整備とともに、4車線化や線形改良などハードの機能強化の必要性を強調。災害時の対応体制を強化するため、建設業者をはじめとした民間企業との連携強化も盛り込んだ。」(『建設工業新聞』2024.06.24)
●「国土交通省は直轄工事に着手した後の事業費増額を防ぐため、今後の公共事業評価の方針案をまとめた。建設費の変動といったさまざまなリスクを事業化前に分析・評価し、適切な事業費を設定する考え方を明確にする。事業の開始後もリスクを継続的に評価し、客観性と透明性を確保する。年度内にも各部局共通の技術指針を改定し、今後の当初事業費の検討に適用できるようにする。」(『建設工業新聞』2024.06.25)
●「国土交通省は、入札結果など入札契約適正化法(入契法)で公共発注者に義務付けている入札・契約関係情報公表の方法について、インターネット利用の原則化が適当とする入契法施行令の新たな解釈をまとめた。入契法に基づく不動産・建設経済局建設業課長名の要請文書を26日付で府省庁、都道府県、政令市に通知し、インターネット公表原則化への変更などを求めた。政府を挙げて取り組むアナログ規制見直しの一環。」(『建設通信新聞』2024.06.28)
●「土木学会の研究小委員会(木下誠也委員長)は27日、公共調達の在り方に関する報告書を明らかにした。予定価格(上限価格)と最低制限価格・調査基準価格(下限価格)を巡る問題や競争の実態を踏まえ、実際の下請価格や労務費などの積み上げによって公共工事の価格を決める構造に転換するよう求めた。不調不落が出ない予定価格や、適切な価格を失格にしないダンピング対策の検討なども提案した。」(『建設工業新聞』2024.06.28)

労働・福祉

●「技能実習制度に代わる新たな外国人受け入れ制度として育成就労制度を創設する改正入管法・技能実習法が、14日の参院本会議で可決、成立した。3年間の育成就労期間終了後に特定技能制度へ移行することを前提に、建設分野など人手不足が生じている分野で外国人を受け入れ可能にする。公布から3年以内に施行することになっており、政府は2027年までに新制度の運用を始める。」(『建設通信新聞』2024.06.17)
●「厚生労働省は17日、建設業での一人親方をはじめとした『個人事業者など』に対する安全衛生対策のうち、個人事業者に仕事を注文する注文者(発注者)による安衛対策の対応案を四つの区分で示した。うち、建設業や造船業、製造業での混在作業現場の労働災害防止に向けた統括管理の対象には、元方事業者が統括管理する『一の場所』(1カ所)で混在作業をする場合、個人事業者などを含むことを明確にするとした。建設工事の現場では、労働者、一人親方の分け隔てなく、統括安全管理を実施していることから、現場の実態に労働安全衛生法の条文を合わせる形になるといえる。」(『建設通信新聞』2024.06.18)
●「建設キャリアアップシステム(CCUS)の能力評価を行う専門工事業団体で主に構成する建設技能者能力評価制度推進協議会(事務局・建設産業専門団体連合会、会長・岩田正吾建専連会長)は、下部組織として企画分科会を新設する。初会合を今後開き、元請け団体を含めた建設業界全体で、CCUSに登録された技能者の技能・経験を4段階のレベルで判定する能力評価制度や『専門工事企業の施工能力等の見える化評価制度』の普及促進策などを議論する。」(『建設通信新聞』2024.06.19)
●全建総連東京都連は18日、建設国保の育成・強化を求め、国会議員要請行動に取り組んだ。東京・永田町で開いた集会であいさつした木賀整司副委員長は、建設国保が建設労働者の命綱であるとして、「きょうの大雨にも負けない強い気持ちで建設国保を守るよう要請しよう」と呼びかけた。要請項目は、①国民医療への公費助成拡充②医療費の自然増などを適切に勘案した国保組合国庫補助の現行水準確保③医療保険制度、国民健康保険を守り、建設国保を育成・強化。全建総連本部の松尾慎一郎社会保障対策部長は「岸田政権は、防衛予算を突出して増やしており、社会保障予算は圧迫を受けている。その一方で、自民党政治資金パーティー裏金問題の説明責任を果たさず、政治資金規正法改定案には抜け穴が残されている」と批判。国保組合への国庫補助を大軍拡の犠牲にさせないため、要請行動が重要だと強調した。(『しんぶん赤旗』2024.06.19より抜粋。)
●「勤労者退職金共済機構の建設業退職金共済事業本部は20日、第54回運営委員会・評議員会を都内で開き、2023事業年度決算案などを審議、承認したほか、建退共を取り巻く現況と課題などを報告した。建退共本部は電子申請方式の普及拡大に向けて、新規導入の手間に見合うインセンティブ(優遇措置)の検討に乗り出す方針を発表した。建設業界内からは、現在一律となっている掛け金の複数化へのニーズが根強いという。」(『建設通信新聞』2024.06.21)
●「国土交通省は、建設キャリアアップシステム(CCUS)の現場利用を促す観点から必要な施策を盛り込む『CCUS利用拡大に向けた3カ年計画』案をまとめた。登録技能者・事業者がCCUS活用による処遇改善や業務効率化をメリットとしてこれまで以上に実感できるよう、改正建設業法に基づく取り組みと一体で進める。『技能者を大切にする適正企業』の自主宣言制度を創設し、経営事項審査(経審)で加点するなど宣言企業にインセンティブ(優遇措置)を付与する。」(『建設通信新聞』2024.06.24)
●「建設キャリアアップシステム(CCUS)処遇改善推進協議会は、改正建設業法を踏まえながら、各構成員が協力して一人親方対策に取り組むことを申し合わせた。『規制逃れを目的とした一人親方対策』と『一人親方と建設企業の取引環境適正化』の2本柱で実施。働き方自己診断チェックリストの活用率約5割を目標に掲げ、建設業団体は一人親方が入場する現場での活用を拡大し、国土交通省は一人親方本人に活用を周知する。労務費だけでなく法定福利費も、改正建設業怯に基づく確保・行き渡り策の対象にすることを検討する。」(『建設通信新聞』2024.06.25)
●「日本型枠工事業協会(三野輪賢二会長)は25日、『2023年型枠大工雇用実態調査報告書』を公表した。直近型枠大工業界で顕著だった外国人材の浸透については、20歳から34歳までの年齢階層に占める外国人材の割合が22年調査からほぼ倍増。特にこの年齢層の新規入職者に占める外国人材の割合は『20-24歳』が88%、『25-29歳』が91%、『30-34歳』が90%と9割に上った。また、『15歳から70歳以上まで』の全年齢層の新規入職者に占める外国人材の割合も65%に達しており、外国人材はなくてはならない存在となっている。ただ近年、若年入職者の中で急激に外国人材の割合が高まっていることについて、同協会の後町廣幸専務理事は『日本の型枠大工という業種を選んでもらうため、これまで以上に処遇改善やキャリアパスを明確に進める必要がある』とした上で、『ただ一方で、日本人の若年入職者が減少していることには懸念がある』とした。発言は、外国人材の大半を占める技能実習生の場合、母国に帰国するケースが多く、若年・中堅・ベテランまで各階層ごとに技能の積み重ねができないことも念頭にある。」(『建設通信新聞』2024.06.26)
●「厚生労働省は、2023年の労働災害発生状況(確定値)をまとめた。23年1月から12月の建設業における労働災害による死亡者数は、3年ぶりに減少したほか、休業4日以上の死傷者数が2年連続して減少した。新型コロナウイルス感染による労災者数を除いた死亡者数は、前年比20.6%減(58人減)の223人となっており、3年ぶりに減少するとともに、過去最少だった20年確定値の256人を33人下回り、過去最少を更新した。死傷者数も0.9%減(125人減)の1万4414人と過去最少となっている。」(『建設通信新聞』2024.06.28)

建設産業・経営

●「標準労務費に集まる期待――。建設産業専門団体連合会の岩田正吾会長ら幹部は、13日の通常総会終了後に取材対応し、7日に成立した改正建設業法に対する専門工事業としての受け止めを語った。労務費の基準として中央建設業審議会による標準労務費の作成・勧告が正式に決まったことについて、それぞれの専門工事団体で会長を務める副会長4人全員から歓迎の声が上がった。岩田会長は、一貫して必要性を訴えてきた請負価格の安定化に向け、標準労務費を検討する中建審のワーキンググループ(WG)が『本当の大きな山場だ』と強調した。」(『建設通信新聞』2024.06.17)
●「日本建設業連合会(日建連、宮本洋一会長)の押味至一副会長土木本部長ら土木本部幹部が17日に名古屋市内で会見し、全国9地区で行った国土交通省地方整備局など公共発注機関との2024年度意見交換を総括した。働き方改革や入札契約制度の改善などをテーマに議論。押味本部長らは毎年の要望の成果が表れていると評価した一方、新たな課題として、運輸業界などの働きも加味した働き方改革の展開が必要とも指摘した。」(『建設工業新聞』2024.06.19)
●「日本建設業連合会の宮本洋一会長ら首脳は19日、東京都千代田区の経団連会館で理事会後の記者会見を開いた。今国会で成立した第3次担い手3法について、宮本会長は『改正建設業法で、請負代金などの変更方法を契約書記載事項とすることや、発注者が契約変更協議に応じることなどが規定された。これは資材価格高騰などの価格変動リスクに関して、とりわけ大きな意義がある。これらの仕組みを通じて、発注者も含めた建設プロセス全体での適切なリスク分担や、受発注者間のコミュニケーションの促進がなされ、より良いパートナーシップを構築できるよう最大限の努力をしていく』と強調した。また、『協力会社に対して、われわれは発注者になる。現在、協力会社からは休日や費用の増加など、さまざまな要望が元請けに上がってきている。われわれはサプライチェーン全体を捉え、発注者に価格転嫁を求めていく必要がある』との認識も示した。」(『建設通信新聞』2024.06.20)
●「国土交通省は、2023年度分の建築物リフォーム・リニューアル調査報告をまとめた。建設業許可業者5000者を対象とする同調査に回答した業者の受注総額は13兆2739億円で、前年度に比べて14.9%増えた。住宅、非住宅ともに増加している。内訳は、住宅関係工事が9.0%増の4兆2710億円、非住宅関係工事が17.9%増の9兆0029億円。」(『建設通信新聞』2024.06.20)
●「ビルや住宅に使う建材の在庫が積み上がっている。鉄筋コンクリート(RC)に使う補強材(鉄筋)の在庫は11年ぶりの高水準となった。建設業や物流業に4月から時間外労働の上限規制が導入され人手不足に拍車がかかっている。建築費の高騰もあり工事が進まず、在庫の多さが建材相場の上値を抑えている。主要な建材として使われる鉄鋼で在庫増が顕著だ。鉄鋼メーカーや商社で構成する全国小棒懇談会によると、主にRC造のマンションなどに使う小形棒鋼の国内在庫は直近データの4月末時点で70万5000トンとなり、前年同月末から15.0%増えた。2013年6月末以来、約11年ぶりの多さだ。鉄骨造のビルの柱や梁(はり)に使うH形鋼の在庫も膨らんでいる。…背景にあるのは建材需要の低迷だ。国土交通省の建築着工統計によると、23年度の建築床面積はRC造で2259万㎡と前年度から8.1%減った。鉄骨造も8.7%減となった。工事が進まないため建材の出荷が盛り上がらず、在庫がたまっている。建設物価調査会(東京・中央)の建築費指数によると、RC造のマンションの工事原価は5月に前年同月と比べ7.5%上昇した。鉄骨造のオフィスビルも6.5%高い。鋼材のほか、作業員の人件費高が建設費を押し上げている。4月から建設業や物流業に時間外労働の上限規制が導入され、人手不足が深刻になる『2024年問題』とも呼ばれている。『ゼネコンは工事を請けたくても人手が足りず受注を絞っている』(鋼材メーカー)という。戸建て住宅でも似た構図となっている。木造住宅の壁や屋根などに使う国産針葉樹合板の5月末の在庫は前年同月に比べ12.5%多い。建築費指数では木造住宅の工事原価が5.4%上がった。住宅の価格上昇に伴い購入を手控える消費者が増え、針葉樹合板の販売が振るわないことが在庫増の主因だ。…サッシやドア、カーテンレールなどに使うアルミニウム製品の在庫も増えている。…建材は製造コストが軒並み上昇基調にある。鉄鋼やアルミなどは原料の多くを輸入に頼り、世界的なインフレや外為市場での円安が価格を押し上げている。メーカー各社はコスト高転嫁の価格引き上げを目指しているが、需要が弱く在庫が増える傾向にあるなかで進みにくい状況となっている。」(『日本経済新聞』2024.06.28)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「長期間放置した空き家は周辺の不動産価格を押し下げる。国全体の経済損失は2023年までの5年で3.9兆円に上るとの試算を民間団体がまとめた。周辺住宅の売却や賃貸も難航しかねず、取引の停滞でさらに空き家が増える悪循環の懸念もある。企業や研究機関など15団体が集って空き家問題に取り組む『全国空き家対策コンソーシアム』が試算した。総務省が4月末に公表した23年の住宅・土地統計調査と、東京大学の不動産イノベーション研究センターの研究をもとにした。売却や賃貸といった目的がなく、居住世帯が長期不在の放置空き家は18年から23年の間に約36万戸増えて約385万戸となった。うち7割超が戸建てだった。複数のエリアを検証したところ、放置空き家の周辺半径50メートル以内の地価は下落傾向にあった。庭木の繁茂や害虫・害獣の発生、治安悪化への不安から、入居希望者が減ることが要因とみられる。過去の空き家の立地傾向などから、23年までに増えた戸建ての放置空き家のうち約8割が影響を与えると推計した。地価下落による損失は23年までの5年間で約3.9兆円に上ると試算した。国土交通省の公示地価で、住宅地は24年まで3年連続で上昇した。放置空き家が水面下で上昇幅を抑制した可能性がある。」(『日本経済新聞』2024.06.16)
●「東京都の新築戸建て住宅の販売価格が2025年4月以降に100万円前後値上がりしそうだ。日本経済新聞の調べによると、住宅に太陽光パネルの設置を義務付けた都の条例に対応し、大手住宅メーカーの約8割が価格に転嫁する見通しだ。設置費用の一部は都が支援するが、建築コストの増加が続くなか、消費者の負担増を避ける取り組みも必要になる。都は22年に環境権保条例を改正し、25年4月以降に建築の確認済証を交付される住宅について、大手メーカーなどに太陽光パネルの設置を義務付けた。日経新聞は都内で年間2万平方メートル以上の住宅を供給する義務化の対象候補の50社に今年5月、対応状況や住宅事業への影響についてアンケートを実施。41社から回答を得た。設置義務化による戸建て住宅価格の上昇幅について聞いたところ、『50~100万円未満』の見通しと答えた企業が27.5%と最多だった。『100~150万円未満』が22.5%で、『150~200万円未満(12.5%)』、『200万円以上(7.5%)』も含めると100万円以上の割合は4割を超えた。『変わらない』との回答は17.5%だった。価格の上昇理由(複数回答可)は、『パネルなどの設置費用』が76%で、『建物の構造体強化』が36%で続いた。パネルの設置工事などに伴う『工期長期化で人件費が増える』と答えた企業も全体の1割強にのぼった。…住宅価格の上昇は販売に響く恐れがある。不動産調査会社の東京カンテイ(東京・品川)によると、都内の平均販売価格は4月に5401万円。10年で約980万円上昇した。太陽光パネル設置義務化に伴う価格上昇について、『消費者の購買意欲が追いついてくるのか不安』と回答した企業も複数あった。」(『日本経済新聞』2024.06.16)
●建設政策研究所、国民の住まいを守る全国連絡会(住まい連)など4団体の共催によるシンポジウム「能登半島地震の被災実態と復旧・復興の課題」が15日、東京都新宿区の会場とオンラインで開かれた。住まい連の坂庭国晴代表幹事は「石川県珠洲市などでは、世帯数よりも住宅被害の数が多いことが分かった。蔵や納屋、離れの被害も含まれている」と説明。「県内は木造の戸建てが住宅総棟数の92%で、耐震性が十分ではなかった」と述べた。建設政策研究所の市村昌利専務理事は、応急仮設住宅の整備戸数が十分なのかという疑問もあるとして「みなし仮設住宅の積極的な活用が必要だ」と指摘した。…「能登半島地震被災者共同支援センター」の黒梅明事務局長は、仮設住宅に入居すると「自立」とみなされて食費や光熱水費が自己負担になる問題を指摘。「能登で住み続けられるというのは、基本的人権を守ることだ」と強調し、被災者に自助努力を求める国や自治体の姿勢を批判した。地震発生直後の能登半島で土砂災害の調査をした「関西ブロック生活関連公共事業推進連絡会議」の日朝洋明事務局長は、山間部や海岸などの被災箇所が目立つとして「生活道路や水道などの被害も大きかった。生活の支援と同時に復旧を進めていく必要がある」と述べた。被災地視察の報告をした東京土建一般労働組合の佐藤豊副執行委員長は、全建総連の木造仮設住宅建設事業について説明した。(『しんぶん赤旗』2024.06.16より抜粋。)
●「国土交通省は能登半島地震で発生した建築物の構造被害の原因分析を行う有識者委員会の第2回会合を17日に東京都内で開いた。現地調査の途中経過の報告を踏まえ、建物構造別などで被害原因を分析。転倒・倒壊したRC造やS造の建築物は旧耐震基準の比較的古い建築物と判明しており、基礎の損傷など詳細な調査・分析を引き続き行う。最終的な調査結果を整理しながら、現行の耐震基準の妥当性や、奥能登で『0.9』と設定されている地震地域係数を見直す必要性を含めた制度的対応の方向性を詰める。」(『建設工業新聞』2024.06.19)
●「日本建築学会北陸支部は25日、能登半島地震で被災した石川県輪島市などを調べた結果、1981年より前の旧耐震基準で建てられたとみられる建物では全壊や半壊が5割を超える一方、2000年に強化された現行の基準に基づくとみられる建物では、全半壊が1割未満だったとの暫定調査結果を明らかにした。」(『日本経済新聞』2024.06.26)

その他