情勢の特徴 - 2024年7月前半
●「日銀は3日、新紙幣の発行を始めた。1万円札には日本の資本主義の父と呼ばれる渋沢栄一の肖像が描かれている。1万円札の『顔』が変わるのは、1984年に聖徳太子から福沢諭吉に切り替わって以来、40年ぶりだ。…『改刷』と呼ぶ紙幣のデザインの刷新自体は04年以来20年ぶりとなった。今回の新1万円札は表面に渋沢栄一の肖像を描き、裏面には辰野金吾が設計し『赤レンガ駅舎』として親しまれてきた東京駅の丸の内駅舎をあしらった。新5千円札の肖像は1900年に女子英学塾(現・津田塾大学)を創立するなど、近代的な女子高等教育に尽力した津田梅子を描いた。裏面は古事記や万葉集にも登場する藤の花で彩る。新千円札の肖像には北里柴三郎を採用した。日本の『近代医学の父』として知られ、感染症予防や細菌学の発展に大きく貢献した。裏面は葛飾北斎の代表作『富嶽三十六景』の『神奈川沖浪裏』を取り上げた。新紙幣に描かれる3人とも明治時代に活躍した。」(『日本経済新聞』2024.07.03)
●「財務省は3日、2023年度の国の一般会計の決算概要を発表した。企業の好業績やインフレを背景に税収は72兆761億円と4年連続で過去最高となった。金利ある世界が現実となり利払い費の増加が迫る中、税収の上振れによる財政改善は一時的ともいえる。いまのうちに歳出構造の改革を進めて財政の規律を回復させる必要がある。」(『日本経済新聞』2024.07.04)
●「東京商工リサーチは5日、2024年上期(1~6月)の倒産件数は前年同期比22%増の4931件だったと発表した。14年以来10年ぶりの高水準だ。価格転嫁力が乏しい小規模企業の倒産が目立ち、人手不足を要因とする倒産は上期として過去最多となった。負債総額は前年同期を下回った。政府の資金繰り支援策の終了や市場金利の上昇を受けて、下期にかけて利払い負担が増加し、資金繰り難に陥る企業が増える可能性がある。上期の倒産件数は3年連続で前年同期を上回り、2年連続の4000件台となった。従業員10人未満の企業の倒産は全体の約9割を占めた。特に『5人未満』の企業が3708件と多かった。産業別は、人手不足と資材価格の高騰が響く建設業が21%増の947件、円安による仕入れ費用の増加が深刻な卸売業が38%増の626件と多かった。」(『日本経済新聞』2024.07.06)
●「国土交通省は荷物を載せて運ぶ『パレット』について統一規格を官民で初めて定めた。物流業界ではパレットの統一が進まず、積み替えなどに無駄な時間がかかっている。共通化で作業時間が3割減になるとの試算もある。物流の効率化は産業全体に好影響を与える。」(『日本経済新聞』2024.07.10)
●「国土交通省は、ECI(施工予定技術者事前協議)方式の運用方法を定めた『国土交通省直轄工事における技術提案・交渉方式の運用ガイドライン』を近く改定する。ECI方式適用工事の入札に参加する者の負担軽減に向け、発注者は技術提案テーマの設定時に工期短縮と工費縮減を同時に求めないことを留意点に位置付ける。」(『建設通信新聞』2024.07.02)
●「国土交通省は、2024年度に本格始動する建設Gメンを含む建設業法令順守推進本部の24年度活動方針をまとめた。建設Gメンは、発注者、元請け、下請けの3者に対して『請負代金』『労務費』『工期』の三つを重点化した実地調査を実施する。改正建設業法の施行を見据えて新設措置に関する取引実態を先行的に調べ、不適切な取引が確認されれば改善指導などを行う。実地調査で違反の恐れを把握した場合、建設業許可部局による強制力のある立ち入り検査につなげるなど、取引適正化の実効性を確保する。建設Gメンの活動内容を明確に打ち出すのは初めて。」(『建設通信新聞』2024.07.03)
●「国土交通省は、都道府県と政令市を対象に、猛暑日(WBGT値31以上)を考慮した工期設定の取り組み状況をアンケートした結果をまとめた。天候などの作業不能日に猛暑日を加えて公共工事の工期を設定しているのは、都道府県が61.7%の29団体、政令市が70.0%の14団体だった。国交省は、中央建設業審議会が作成・勧告する『工期に関する基準』を踏まえた適正な工期設定を公共発注者に求めている。」(『建設通信新聞』2024.07.05)
●「土木学会建設マネジメント委員会『公共工事の価格決定構造の転換に関する研究小委員会』(木下誠也委員長)は、労働条件を下げることで競争の優位性を保つ行為を回避し、市場原理に基づいた健全な競争環境の下、施工の安全や品質を確保し、技術者・技能者に適切な対価が支払われる調達の実現などに向けた検討報告書をまとめた。下請け価格、労務賃金などの適切な支払いをルール化した上で、下請け価格や労務費などを積み上げて入札金額が決まる、言い換えれば下流から上流へ価格が決まるという価格決定構造への転換が必要と提言した。」(『建設通信新聞』2024.07.05)
●「東京都財務局は、2023年度の東京都工事契約関係資料(確定値)を公表した。全体の不調発生率は、前年度に比べ2.68ポイント上昇し12.89%となった。建築、土木、道路舗装、設備の全業種で不調発生率が上昇した。」(『建設通信新聞』2024.07.10)
●「国土交通省は、国が定めた水準(大企業3%、中小企業など1.5%)以上の賃上げ実施を表明した応札者を政府調達の総合評価方式で加点する措置について、直轄土木工事の2023年度実績を23年12月末の契約分(速報値)でまとめた。実落札者数のうち、加点を受けた賃上げ表明企業の割合は78.4%だった。集計対象期間が異なることから単純比較はできないが、初年度(22年度)の実績(22年4月1日から23年3月31日までの契約分)より3.5ポイント上昇した。建設業者が積極的に賃上げをしていることが読み取れる。」(『建設通信新聞』2024.07.10)
●「厚生労働省は1日、厚生年金の適用拡大に関する有識者懇談会を開き、取りまとめ案を了承した。パート労働者にかかる企業規模の要件を撤廃するほか、5人以上の個人事業所では全業種を対象に加えるとの内容を盛り込んだ。2025年の年金制度改正に向けて、厚労省は年末までに最終案をまとめる。」(『日本経済新聞』2024.07.02)
●「厚生労働省は2日、建設業での一人親方をはじめとした『個人事業者など』に対する安全衛生対策のうち、有識者検討会報告書で創設を提言した個人事業者などの業務上災害報告制度の骨格をまとめた。労働基準監督署への報告を義務付けるのは『災害発生場所で個人事業者などが労働者と同じ場所で就業する場合に限る』とする案を明らかにした。報告書にはこの案の記載はなかった。労基署への報告主体や報告の時期、内容などは、報告書記載内容と同じになっている。制度の骨格は、同日に開いた労働政策審議会(厚労大臣の諮問機関)安全衛生分科会に『報告制度の論点と対応案』資料として示した。ただ、分科会は報告制度以外の議題での議論に時間を費やしたことから、次回以降の分科会で対応案を説明して議論することになった。」(『建設通信新聞』2024.07.03)
●「政府がめざす経済成長を達成するには2040年に外国人労働者が688万人必要との推計を国際協力機構(JICA)などがまとめた。人材供給の見通しは591万人で97万人が不足する。国際的な人材獲得競争が激化するなか、労働力を確保するには受け入れ環境の整備と来日後のつなぎ留めが重要となる。22年に公表した前回推計は40年時点で42万人が不足するとしていた。今回はアジア各国から来日する労働者数が前回推計よりも減ると見込んだ。為替相場変動の影響は加味しておらず不足人数は膨らむ可能性がある。推計では政府が19年の年金財政検証で示した『成長実現ケース』に基づき、国内総生産(GDP)の年平均1.24%の成長を目標に設定した。機械化や自動化がこれまで以上のペースで進んだとしても30年に419万人、40年に688万人の外国人労働者が必要と算出した。前回推計は674万人としていた。海外からの人材供給の見通じも検討した。アジア各国の成長予測が前回推計時より鈍化し、出国者数は減少すると推測した。この結果、外国人労働者は30年に342万人、40年に591万人と前回推計より減った。必要人数と比べると、30年に77万人、40年に97万人不足する。」(『日本経済新聞』2024.07.04)
●「国士交通省は、賃金の原資となる労務費の適切な確保と下請けへの行き渡りに向けた改正建設業法の新ルールを担保する措置の一つとして、下請けによる技能者への賃金支払い状況を行政が確認する仕組みを検討するため、地方整備局などが発注する直轄工事で賃金支払い状況を確かめる試行を2024年度に始める。確認に必要なデータ・書類、その提出方法・時期などを検証する。検証結果を踏まえて段階的に試行を拡大する方針だ。試行対象工事は今後選定する。」(『建設通信新聞』2024.07.04)
●「日本建設産業職員労働組合協議会(日建協、木浪周作議長)が、4月から6月にかけて、本省を含む全国11カ所で順次実施してきた国土交通省への2024年政策提言活動が全日程を終えた。日建協は時間外労働の上限規制を好機と捉え、適正工期の確保や月単位の週休2日などを働き掛けた。第3次担い手3法の成立も含め、建設業は大きな転換期を迎えているとし、引き続き行政や業界団体などに対する提言活動を展開していく方針だ。24年の政策提言では、▽改正建設業法の適正な運用▽4週8閉所の実現▽民間工事における請負契約の適正化▽さらなる書類の簡素化▽インフラ分野の業務効率化▽労務不足解消▽建設キャリアアップシステム(CCUS)のさらなる普及▽建設産業のさらなる魅力向上▽単身赴任者の帰宅旅費非課税化――の9項目を要請した。」(『建設通信新聞』2024.07.08)
●「厚生労働省の中央最低賃金審議会は10日、2024年度の最低賃金引き上げ額の目安を決める小委員会の第2回会議を開いた。大幅引き上げを求める労働側と、企業の負担増を懸念する使用者の双方が意見を述べる初めての機会だった。零細企業の賃上げ率は拡大する一方、労務費の価格転嫁は十分には進んでいない。連合の仁平章・総合政策推進局長は『物価高のなか、最低賃金引き上げへの期待感はかつてなく高い。歴史的な賃上げを、社会全体に広げることが必要だ』と述べた。連合がまとめた24年春季労使交渉の賃上げ率(ベースアップと定期昇給の合計)は平均5.1%と、1991年以来33年ぶりの高水準だった。現在の最低賃金額が適用された2023年10月から24年5月までの、消費者物価指数(持ち家の家賃相当分を除く総合)の平均上昇率は前年比3.2%に達した。連合は25年までに全都道府県で最低賃金1000円の達成を目指している。現在、最も低い岩手県は893円だ。23年は最低賃金の引き上げ額が平均43円と過去最大だった。基幹労連企画調査部の伊藤彰英部長は『24年は23年以上の大幅な改定を提示すべきだ』と求めた。使用者側として発言した日本商工会議所の大下英和・産業政策第二部長は『賃上げは極めて重要だが、各企業の賃上げと、全企業に例外なく適用されて(違反時に)罰則がある最低賃金の引き上げは意味合いが異なる』と主張した。特に零細企業における労務費負担を懸念しているためだ。最低賃金は03年度から21年連続で引き上げられてきた。特に近年は大幅引き上げが続き、零細企業で影響が大きい。厚労省によると、時給が引き上げ後の金額を下回る労働者の割合(影響率)は、従業員5人以上の事業所全体では23年度に8.1%だったが、従業員30人未満に限定すると21.6%に高まる。中小企業庁が23年10~12月に実施した調査によると、労務費の増加が価格に『すべて反映された』『おおむね反映された』と答えた企業は受注側で30%にとどまった。全国中小企業団体中央会の佐久間一浩・事務局次長は『企業の支払い能力を超えた最低賃金の過度な引き上げによる負担がないよう配慮を』と訴えた。…小委員会は7月中にも目安額をとりまとめる方針だ。23年度の43円を上回る50円程度での攻防になるとみられ、引き上げ額を巡り労使間の駆け引きが続く。」(『日本経済新聞』2024.07.11)
●「全国生コンクリート工業組合連合会(東京・中央)がまとめた5月の全国の生コン出荷量は、前年同月比2.2%減の535万2378立方メートルだった。21カ月連続で前年を下回った。全体の7割を占める民需は0.1%、公共工事など官公需は7.1%、それぞれ減った。」(『日本経済新聞』2024.07.02)
●「東京都中小建設業協会(都中建、渡邊裕之会長)は、東京都の総合評価方式の評価項目について、初めて会員アンケートを実施した。その結果、56.5%が総合評価方式に『満足していない』と答えた。特に『過去の工事成績評定』の評価ウエートの高さに対する不満が多かった。朝倉泰成副会長は、都中建会員の総合評価方式への参加率が低いデータも示しながら、『都の仕事をやめて、市町村の仕事にシフトしようとしているのではないか』と懸念を示した。今後、財務局や建設局との意見交換会でアンケート結果を示しながら改善を求めていく。」(『建設通信新聞』2024.07.08)
●「建設業の経営環境悪化に歯止めがかからない。東京商工リサーチが5日公表した、『2024年上期(1月-6月)建設業倒産(負債額1,000万円以上)』は、件数が前年同期比20.6%増の947件、3年連続で前年同期を上回った。900件台は14年以降10年ぶり、コロナ禍以前の水準に戻った。負債総額も46.6%増の1,022億7,500万円で2年連続で前年同期を上回った。」(『建設通信新聞』2024.07.10)
●「全国建設労働組合総連合(全建総連)はこのほど、4回目となる『住宅の建材・設備の価格高騰・納期遅延の影響に関する工務店アンケート』の結果を公表した。これは物価・建材価格の高騰が組合員の経営・受注環境に影響が出ているかを把握、対策を要望するためのもの。調査では雇用している技能労働者の賃金引上げ状況について質問。過去2年間で『賃金を引き上げた』と回答したのは正規雇用している技能労働者を抱える工務店のうち、46.9%だったことが分かった。調査は今年4月9日~5月31日に掛けて行われ、27都道府県の1081社より回答があった。回答があった工務店の所在地は北海道・東北160社、関東492社、中部84社、近畿137社、中国56社、四国113社、九州・沖縄39社となっている。」(『日本住宅新聞』2024.07.15)
●「能登半島地震の被災地は発生半年で1000人超が体育館などの避難所に残る。2016年の熊本地震の5倍を超え、生活再建の遅れが目立つ。自治体の人手不足によって復興のペースは鈍い。…能登半島地震と16年の熊本地震は最大震度7の揺れが、高齢化の進む地方を襲った。全壊家屋はどちらも約8千棟を記録。災害関連死を含む死者(6月27日時点)は能登が281人と熊本(276人)をやや上回る。一方、発生半年の時点での避難者数には差がある。能登半島地震の直後は約3万4千人が避難所に集まった。徐々に減ったものの、6月27日時点で1038人が体育館や集会施設などの1次避難所に身を寄せる。熊本地震は最大18万人が避難した。県発表の避難者数は発生から5カ月で500人を下回り、半年後の16年10月14日時点で188人に減った。能登半島地震の避難者はホテルや旅館への2次避難を含めると2200人を超え、住まい再建のペースは鈍いといえる。背景には仮設住宅の建設が出遅れたことがある。28日時点で完成した仮設住宅は4966戸。自治体が算出した必要戸数の約75%にとどまる。能登半島特有の急峻(きゅうしゅん)な地形で用地の確保が難航した。自治体の土木部門の人手も足りない。総務省によると、23年の市町村などの土木職員は9万人超と05年から1割強減った。小規模な自治体ほど災害対応に支障が出る。」(『日本経済新聞』2024.07.01)
●「政府は6月28日、能登半島地震の復旧・復興に向けて、2024年度予算の予備費から1396億円の支出を閣議決定した。公共土木施設や公共施設の復旧には867億円を充てる。被災した道路や河川、港湾などの早期復旧のため国や自治体による事業を推進する。」(『建設通信新聞』2024.07.01)
●「マンション管理組合が大規模修繕で借り入れに頼る動きが加速してきた。2000年代の大量供給物件が修繕期に入り、工事費は上昇。近年は修繕積立金を段階的に増やす予定が狂い、資金不足に陥る例もある。日銀の政策修正で歴史的な低金利環境の変化が予測されるなか、返済可能か目配りが欠かせない。住宅金融支援機構が手掛ける『マンション共用部分リフォーム融資』は年々増加。最新の2023年度は約196億円と実績を公表している11年度以来最も多くなった。組合が外壁塗装や給排水管補修など共用部分の工事に使える融資で、金額は10年前の3倍に迫る。特にここ1年の増加が大きい。23年度は前の年度比約4割増を記録した。不動産事情に詳しいさくら事務所(東京・渋谷)の土屋輝之マンション管理コンサルタントは『修繕を必要とする老朽マンション増加が融資増の主因だが、2000年代に大量供給された物件が最初の修繕時期に差し掛かり、工事費上昇に直面した影響も出ているのではないか』とみる。不動産経済研究所(同・新宿)によると、全国の新築マンション供給は2000年代、08年のリーマン・ショック前までは年15万戸前後と23年実績の2倍超の高水準で推移していた。大規模修繕は通常十数年に1回の周期で繰り返す。大量供給された物件の工事が近年集中した可能性がある。一方、資材高などを背景に修繕工事費は上昇している。新型コロナウイルス禍やウクライナ危機などが重なり、鋼材や生コンクリートの価格上昇率は一時、前年比2ケタとなる場面があった。最近は人手不足も深刻で、人件費上昇を求める動きも出ている。…修繕に充てる資金が不足しやすい構図も借金依存に拍車をかける。近年の物件では購入当初の修繕積立金を低く設定し、数年おきに上げる『段階式』が多い。18年度の国土交通省調査では00~09年に完成したマンションは約57%が段階式だ。中には所有者の話し合いが難航し、計画通りに引き上げができない物件も出てきているという。」(『日本経済新聞』2024.07.02)
●「国土交通省は高速道路の空きスペースなどに荷物用の専用レーンを設ける『自動物流道』を東京-大阪間で導入することを検討する。1日に最大3.5万台分のトラック交通量の削減が期待できる。技術や費用で課題はあるものの、今後10年程度での実現を目指すという。自動物流道は小口の荷物を運ぶ専用レーンを設け、カートが無人で走行する。人手不足が先進国で問題となるなか、スイスなど海外でも同様の計画が検討されている。岸田文雄首相は6月のデジタル行財政改革会議で自動物流道について『早期に社会実験に向けた準備に着手し、10年後をめどに先行ルートでの実現を目指す』と言及した。専用レーンは高速道路の中央分離帯、路肩、地下のいずれかに設置する案がある。国交省が2月に有識者による検討会を立ち上げて検討を進めている。国交省は東京-大阪間の設置を最有力とみる。荷動きが活発で、多くの需要が見込める。同省がこのほどまとめた試算では、1日にトラックおよそ1.2万~3.5万台の交通量を削減できる。運転手に換算すると1万~2.5万人に相当する。東京-大阪間では輸送量の多い道路としては新東名高速道路や東名高速道路、新名神高速道路、名神高速道路などがある。今夏にもルートを具体化する。」(『日本経済新聞』2024.07.03)
●「国土交通省と消防庁は5日、能登半島地震で発生した石川県輪島市の大規模火災を踏まえて消防防災体制の在り方を検討してきた有識者会議の報告書を公表した。今後進めるべき対策として、まちづくりに関しては都市構造の不燃化や密集市街地の改善を進めるよう求めた。今回の火災の課題として地震で消防施設が被災した中での発生だったことや水道管の断水で消防水利が確保できなかったことなどを挙げ、今後の対策に▽地元消防本部などの体制強化▽応援部隊の体制強化▽地震火災対策の推進▽まちづくり――の4点を提示した。」(『建設通信新聞』2024.07.08)
●「国土交通省の社会資本整備審議会道路分科会国土幹線道路部会は、能登半島地震を踏まえた今後の道路政策に関する緊急提言をまとめた。復旧・支援活動を支える高規格道路の大規模被災などを課題に挙げ、今回のような災害はどこでも起こり得ると指摘。災害時にも道路ネットワークが機能を発揮できるよう、全国の盛り土の緊急点検や脆弱(ぜいじゃく)箇所の補強など早急な対応を求めている。今回の地震では、主要幹線道路の能越自動車道が被災し震央となった北端部へのアクセスが難しくなるなど、半島の道路ネットワークの脆弱性が浮き彫りとなった。こうした事態を踏まえ、部会では防災の観点から道路ネットワークの在り方を議論。現地の産学官の関係者へのヒアリングも経て、評価点や課題といった教訓とともに今後の道路行政が取り組むべき方向性を提言としてまとめた。評価すべき点には、建設業界の協力により、発災から2週間で主な幹線道路の約9割の緊急復旧が完了したことを挙げた。自衛隊と連携した資機材投入、警察や交通事業者との協調による円滑な交通マネジメントなども成果とした。一方、課題として道路ネットワークの大規模な被災により支援活動が滞った点を指摘。集水地形上に構築された盛り土が崩れ、アクセス路となる高規格道路が被災したことも重要課題に位置付けた。これらの教訓を踏まえて道路行政が取り組む施策に、▽地域安全保障のエッセンシャルネットワークの早期確立▽拠点機能の強化▽データ活用による災害時交通マネジメントの高度化▽災害に備えた体制の強化▽地域の新たな価値の創出につなげる道路空間の活用――の5項目を提言した。」(『建設通信新聞』2024.07.11)