情勢の特徴 - 2024年7月後半
●「東京商工リサーチがまとめた2024年1~6月の首都圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)の倒産件数(負債額1000万円以上)は前年同期比20%増の1514件だった。1500件を超えるのは、2014年(1668件)以来10年ぶり。負債総額は50%減の2669億5900万円だった。前年同期に負債額1000億円を超える超大型倒産があったため、反動で大幅減となった。」(『日本経済新聞』2024.07.20)
●「公正取引委員会と中小企業庁はインフレが進む中で適正な価格転嫁を進めるため、下請法を見直す議論を始めた。22日に有識者による初会合を開き、改正に向けた論点を示した。資源高や円安の悪影響が中小企業に集中するのを抑え、幅広い企業が賃上げできる環境につなげる。大手企業から仕事を請け負う中小企業は力関係が弱く、コスト上昇が反映されない取引価格が強いられがちになる。不合理な取引を是正するため下請法があり、公取委や中企庁は取り締まりを強化している。中小企業の価格転嫁率は2024年3月時点で前回調査の23年9月から0.4ポイント上昇の46.1%と5割に届かなかった。全く転嫁できていない企業はいまだに19.8%あり、下請法の執行をより厳しくする必要が出ている。会議は月1回の頻度で開き、早ければ年内にも改正案をまとめる。東京大学名誉教授の神田秀樹氏が座長を務める。企業経営に詳しい学者や弁護士、経団連や日本商工会議所、全国中小企業団体中央会の代表者ら20人が参加する。大きなテーマが価格転嫁の促進だ。公取委は5月、下請法の運用基準で人件費や原材料、エネルギーのコストが著しく上がっているのに取引価格を据え置けば、同法が禁じる『買いたたき』に該当しうると示した。実際の取引現場では、価格の据え置きこそしないものの、コスト上昇分の一部のみしか転嫁せず、残りの大部分を中小企業に押しつけるといった、ルールをすり抜けるような事例もみられるという。こういった事例を減らすため、会合では下請法をどう見直せばよいか話し合う。」(『日本経済新聞』2024.07.23)
●「政府は国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)が2025年度に初めて黒字になるとの試算をまとめる。企業の好業績や物価高を背景に税収が増え、収支が改善する。29日の経済財政諮問会議で提示する。PBは国債に頼らず税収などで政策の経費をどの程度まかなえているかを示す。内閣府が例年1月と7月の2回、最新のデータに基づき試算して公表する。02年にPB目標を導入してから一度も黒字になったことはない。1月の試算では25年度は1.1兆円の赤字を見込んだ。7月の試算では歳入増のほか社会保障費抑制などの歳出改革で黒字に転じる見込みとなった。黒字額は1兆円未満にとどまる見通しだ。」(『日本経済新聞』2024.07.26)
●「国土交通省は、直轄営繕工事で一部を除いて実施している週休2日促進工事の2023年度週休2日(4週8休)達成状況をまとめた。工期全体(通期)で4週8休を達成した工事の割合は過去最高の98.4%に上り、前年度比で1.3ポイント上昇した。…本省や地方整備局などが発注し、23年度に完成した週休2日促進工事128件(発注者指定方式79件、受注者希望方式49件)のうち126件で4週8休を達成した。残る2件(建築の新築1件、建築の改修等1件)は4週6休でともに受注者希望方式だった。発注区分別の4週8休達成率は、建築が3.0ポイント上昇の97.3%で、電気設備と機械設備が前年度に続いて100%。新築・改修等別では、新築が2.5ポイント低下の95.5%、改修等が4.7ポイント上昇の99.1%となった。新築の達成率低下は新築の工事件数が少なかったことが理由だ。受注者アンケートによると、4週8休を達成できた要因は、『円滑な協議の実施』『適正な工期設定』『工事間調整が適切』『書類の簡素化』の順に多かった。順位は若干異なるが、前年度もこの四つが上位を占めた。…一方、4週8休を達成できなかった2件の受注者は、いずれも『職人の確保が困難だったため』を主因に挙げた。」(『建設通信新聞』2024.07.16)
●「国土交通省は、第3次担い手3法の理解促進に向け、建設業法、入札契約適正化法(入契法)、公共工事品質確保促進法(品確法)の改正内容の受発注者らに対する周知を強化する。公布(6月14日)から1年6カ月以内となっている改正建設業法の完全施行までに、3法の説明会を全国で3回開く方針だ。初弾として、標準労務費に関する規定など9月に予定される最初の施行を前に、全国10カ所で説明会を8月に開く」(『建設通信新聞』2024.07.18)
●「国土交通省は改正公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)を踏まえた公共工事の不調・不落対策の導入を地方自治体に働き掛ける。地域の実情を踏まえた適切な入札参加条件や規模による発注など、『改正法に盛り込まれた事項への対応を促す。都道府県などでは入札等級の緩和や発注ロットの拡大、見積もりを活用した積算といった対策が自治体内の土木工事担当部局で先行しており、建築や機械など担当部局が異なる工事での水平展開に向け自治体内部の垣根を越えた緊密な連携を訴える。」(『建設工業新聞』2024.07.26)
●「政府は、防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策の後継となる国土強靭化実施中期計画の策定作業に取り掛かる。30日に国土強靭化の推進に関する関係府省庁連絡会議を開き、国土強靭化実施中期計画の策定に向けた取り組みを盛り込んだ国土強靭化施策の推進方針を決定した。計画策定に当たり、まずは有識者会議で現行計画の評価作業の内容を整理していく。」(『建設通信新聞』2024.07.31)
●「日本計装工業会(土井義宏会長)は12日、今年度からスタートした『登録計装基幹技能者』の第1回認定講習と、講習修了後初となる試験の結果を公表した。講習は要件を満たした83人が受講し、このうち81人が試験に合格した。試験の合格率は97.6%と非常に高く、同工業会は『受講者が熱心に聴講した結果だ』と評価している。…国土交通大臣は2023年11月、同工業会を登録基幹技能者講習の実施機関として登録。これで計装工事は登録基幹技能者制度に、44番目の職種として追加された。受講修了者は該当する建設業種の主任技術者、一般建設業の専任技術者の要件を満たす者として認められる。講習修了後の試験に合格すれば登録基幹技能者として認められ、経営事項審査の加点対象となる。さらに、建設キャリアアップシステム(CCUS)の登録技能者が、保有資格や就業日数に応じて4段階のレベル判定を受けられる能力評価の対象職種に、計装工事技能者が加わった。国交省が23年12月、同工業会策定の能力評価基準を42番目の職種として認定したからだ。能力評価の最高位であるレベル4には、登録基幹技能者が該当するため、登録計装基幹技能者は申請することでCCUSのゴールドカードを取得できる。」(『建設通信新聞』2024.07.17)
●「出入国在留管理庁の集計によると、建設分野で就労する特定技能外国人は5月末時点で3万0882人だった。うち熟練した技能を持つ職長レベルの人材が対象となる『特定技能2号』には47人が認定されている。全体の在留者数のうち建設分野は1号で12.5%、2号で48.0%を占める。」(『建設工業新聞』2024.07.18)
●「厚生労働省が19日にまとめた2024年上期(1-6月)の労働災害発生状況(速報、7月9日時点)によると、労働中の新型コロナウイルス感染による労災を除き、建設業の死亡者数は、前年同期と比べ14.8%増(13人増)の101人となった。建設業の休業4日以上の死傷者数は5598人で2.3%減(134人減)だった。22年から58人減の23年の死亡者数は過去最少の223人(確定値)で、上期が98人、下期が125人だった。23年上期の速報値は88人だったことから、確定値までに10人増えていた。このため、24年下期が23年下期と同じ状況と仮定した場合、速報値から確定値までに一定程度人数が増えることを踏まえると、24年の死亡者数は、過去最少の23年を上回ってしまうものの、230-260人程度と推計され、6年連続で300人を下回るとみられる。」(『建設通信新聞』2024.07.22)
●「厚生労働省は23日、建設業での一人親方をはじめとした『個人事業者など』に対する安全衛生対策のうち、建設業など重層請負による作業現場で、注文者や元方事業者が関係請負人の労働者や業務委託を受けた個人事業者の安全衛生確保の観点で実施する指導・指示を、ガイドラインなどで示す方針を明らかにした。偽装請負への該当性や、労働基準法での労働者性の有無を判断するための基本的な考え方、留意が必要な内容などを具体的に例示する。」(『建設通信新聞』2024.07.24)
●「中央最低賃金審議会(厚生労働相の諮問機関)の小委員会は24日、2024年度の最低賃金の目安を全国平均で時給1054円にすると決めた。現在の1004円から50円の引き上げで、22年連続での増加となる。上げ幅は23年度の43円を上回って過去最大。物価上昇への対応を重視することで労使双方が折り合った。」(『日本経済新聞』2024.07.25)
●「国土交通省は建設キャリアアップシステム(CCUS)の利用メリットを拡大するため、国が率先して取り組む事項をまとめた『CCUS利用拡大に向けた3か年計画』を策定、公表した。先月開いた『CCUS処遇改善推進協議会』で示した案から大幅な変更はなく、建設業団体などからも一定の合意を得た。『技能者を大切にする適正企業』の自主的宣言制度を年度内に創設するなど、各施策を実行する目標年度を新たに設定。計画の進行状況を少なくとも年1回フォローアップし、必要に応じ内容を見直していく。」(『建設工業新聞』2024.07.25)
●30日午前10時すぎ、東京都千代田区麹町の建設工事現場で、20代の男性作業員が約9メートル落下する事故があった。警視庁麹町署によると、男性は病院に搬送されたが、その後、死亡が確認された。同署によると、鉄骨をクレーンでつり上げていたところ、何らかの理由で十数本が落下。屋上階の床部分の鉄板が複数破損し、屋上にいた男性が10階部分に転落した。施工する清水建設によると、屋上階での作業のために敷き詰めていた『デッキ』と呼ばれる鉄板(7メートル×3.5メートル)が抜けた。その際、床を組む作業中だった1次下請けの作業員が鉄板とともに約9メートル落下したという。(『しんぶん赤旗』2024.07.31より抜粋。)
●「建設物価調査会(白土昌則理事長)の6月時点の調査結果によると、建設資材の価格変動を示す『建設資材物価指数』は建設総合の全国平均値(2015年=100)で前月比0.1ポイント上昇の『137.5』となった。14カ月連続の上昇で過去最高を更新。『電線・ケーブル』や『高力ボルト・PC鋼より線』が製造・輸送コストの増加で値上げが浸透し指数のプラスに寄与した。一方、『一般建築用木材』は住宅需要の低迷を背景に販売店間で受注競争が激化し値崩れを起こしている。」(『建設工業新聞』2024.07.16)
●「全国建設業協会(今井雅則会長)は、地域建設業における生産性向上の取り組み状況などに特化した初の会員アンケート結果をまとめた。時間外労働の上限規制などに対応するための現場支援策として、社内書類の削減・簡素化や受発注者間の情報共有システム(ASP)方式による現場情報共有などが、全建会員の間で盛んに行われていることが分かった。一方、発注者側が求める書類の量を課題として指摘する声も依然多く、発注担当者の意識改革や簡素化ルールの現場レベルでの徹底などが求められている。」(『建設通信新聞』2024.07.18)
●「日本建設業連合会(宮本洋一会長)は、民間発注の建築工事を対象に、4週8閉所・週40時間稼働を原則とする初回見積書の提出に足並みをそろえる『適正工期確保宣言』について、実施要領に基づく初のフォローアップ調査結果をまとめた。2023年10月から24年3月までの調査対象期間内に、初回見積書を提出して契約に至った1154件のうち、8割以上に当たる955件で『真に適切な工期』の確保に成功した。宮本会長は、初めの半年間の結果であり、今後の動向を注視する必要があるとしつつ、『各社がしっかりと取り組んでおり、良い数字が出た』と評した。」(『建設通信新聞』2024.07.22)
●「日本建設業連合会(宮本洋一会長)は、週休二日実現行動計画に基づく、2023年度通期のフォローアップ報告書をまとめた。時間外労働の上限規制適用を前にした猶予期間、最後の1年の実績。4週8閉所以上の達成割合は、土木が着実に向上して7割近くに迫ったほか、ここ数年足踏み状態が続いていた建築も飛躍的に改善して約4割となった。土木、建築を合わせた全体は初めて5割を超えた。」(『建設通信新聞』2024.07.24)
●「日本建設業連合会(宮本洋一会長)は、法人会員113社の回答を集計した2023年度決算(単体)状況調査結果をまとめた。ここ数年の好調な受注環境を背景に、完成工事高の合計は、前年度比8.1%増の17兆4070億円とプラスになったものの、コロナ禍明けに受注した低採算の一部建築大型案件や、この間の資材・労務費高騰が影響、完成工事総利益率が0.7ポイント低下し8.2%、完工総利益も0.8%減の1兆4200億円となるなど、利益の悪化が鮮明となった。売上高の合計は8.1%増の18兆5580億円となり、この5年間で初めて18兆円台に乗った。回答企業のうち84社が増収で、減収は29社だった。10%以上の伸び率となる企業が最多の39社を占めた。一方、完工総利益率は低下し、完工総利益は過去5年間で最低となった。完工総利益率の分布を見ると、8%未満が36社と最多で、次いで8-10%未満が29社だった。10%以上は48社で、利益確保の一つの目安とされる10%のラインを下回った企業の方が多かった。粗利率の低下に伴い、営業利益の合計も2.9%減の6240億円、経常利益も0.8%減の7450億円と苦戦した。純利益は、有価証券や不動産の売却などで、6.1%増の6070億円となんとかプラスを確保した形だ。」(『建設通信新聞』2024.07.26)
●「不動産協会の吉田淳一理事長は29日、東京都千代田区のザ・キャピトルホテル東急で開いた理事会後の懇談会で建築工事費の高騰について触れ、6月に策定した『適正取引の推進に向けた自主行動計画』に沿って価格転嫁に向けた協議の場の設置などを推進する考えを示した。『建設業界はいま、4週8休への対応でさまざまな工夫をしている。その中で発注者側として、しつかりコミュニケーションを取って、ウィンウィンの関係をこれからもしっかり構築し、さまざまな情報を透明化して適切にリスクを分担することが求められる』と述べた。吉田理事長は、建築費高騰の状況について、『人手不足や2024年問題もあり、非常に事業環境が厳しい。事業内容の見直しやプロジェクトの延期も含めてさまざまな対応を考えなければならない。マンション価格は非常に高騰しており、購入可能層がギリギリの状態だ。金利の動向も注視が必要だ。いろいろな工夫を設計者や施工者とともにしなければならない』との見方を示した。自主行動計画は、23年11月に公表された『労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針』を踏まえ、会員の取引適正化を支覆するためにまとめた。施工者側から価格転嫁の要請があれば速やかに協議の場を設けることや、不当に低い請負代金の禁止、指し値発注の禁止、増額要請があった場合の十分な質疑・協議などのほか、原価上昇に伴う増額要請時は『適切なコスト増加分の全額転嫁を目指す』としている。」(『建設通信新聞』2024.07.30)
●「国土交通省は、商業施設やマンションと近隣の空き地を一体開発すれば、開発事業者や空き地の所有者が優遇策を受けられるようにする。容積率の緩和や固定資産税の減免を検討する。全国で急増する空き地を緑地などに転用して有効活用し、市街地や住宅地の活性化につなげる。近年は空き家や空き地が荒廃して、周辺に悪影響を及ぼす事例が各地で起きている。人口減少で住宅の居住者がいなくなったことが主因で、そうした土地の活用を促す。」(『日本経済新聞』2024.07.21)
●「住宅の柱や梁(はり)などに使う輸入木材の在庫が再び増加基調になった。日本木材輸入協会(東京・江東)がまとめた東京地区の6月末時点の在庫量(針葉樹製品、集成材含む)は5カ月連続で前月よりも増えた。国内の住宅向けの需要が振るわず、出荷が進まない。荷動きの鈍さを受け、北米産は価格上昇が一服した。輸入木材の在庫は北米産、欧州産、ロシア産の合計。6月末は10万4770立方メートルと5月末に比べ5%増えた。10万立方メートルを超えるのは2023年4月以来1年2カ月ぶり。直近で在庫が少なかった1月末と比べると3割多い。新型コロナウイルス禍の前は12万立方メートル程度で安定していた。コロナ禍に伴う在宅勤務へのシフトで住宅需要が刺激されると木材需要も増えた。在宅関連需要が一巡したところに物価高による住宅の買い控えも加わって木材需要が急減すると、木材商社などは仕入れを絞り、1月末には8万立方メートルを割り込んだ。足元は仕入れをやや戻したものの出荷が鈍く、再び在庫が増加している局面だ。…国内の住宅向け需要は依然低迷している。国土交通省がまとめた木造住宅の新設着工数は5月に前年同月比4.2%少ない約3万5000戸と低い水準が続く。『調達しやすく割安感がある国産杉材への需要シフトも見られ、輸入木材の引き合いが鈍る要因になっている』との指摘もある。年明けに商社などが契約した輸入木材の入荷は9月頃までは続くとみられ、在庫の拡大は当面続く公算が大きい。」(『日本経済新聞』2024.07.24)
●「石川県と環境省は、能登半島地震の被災地で行っている公費解体の加速対策をまとめた。15日時点で想定を上回る2.3万棟以上から公費解体の申請があった。全国の解体業者に協力を求め、工事の体制を拡充する。解体廃棄物の仮置き場を追加で確保するとともに、海上輸送によって県外の産業廃棄物処理業者やセメント会社などへの広域処理を推進。県と6市町の工程管理会議で情報と進捗を共有する。解体の目標は変更せず、2025年10月の完了を目指す。」(『建設工業新聞』2024.07.24)
●「土木学会(佐々木葉会長)は26日、流域治水の在り方について『流域全体での水収支の見える化』と『多段階における浸水リスクの想定』の二つを柱とする提言を発表した。近年激甚化している水害を踏まえて策定。時系列で浸水シナリオを見える化し、行政や民間企業だけでなく、多くの住民に流域治水への参画を促す。流域治水を俯瞰(ふかん)的に見通せる次世代人材の育成や、観測体制の強化に向けた観測機器の開発なども盛り込んだ。」(『建設工業新聞』2024.07.29)