情勢の特徴 - 2024年8月前半
●「日本株市場から資金が逃げている。5日の東京市場で日経平均株価の下げ幅が4400円を超え、米国株安が世界に波及した『ブラックマンデー』翌日の1987年10月20日を上回り過去最大となった。下落率でも当時に次ぐ過去2番目。米景気が悪化するとの懸念からドル安・円高が進むたびに日本株が下げ幅を拡大する共振がおこり、日本株は年初来の上昇分を帳消しにした。」(『日本経済新聞』2024.08.06)
●「各省庁が8月末までに財務省に提出する2025年度予算概算要求で、国土交通省の基本方針案が明らかになった。公共事業予算は建設資材の価格高騰の影響などを考慮し、労務費も含めて適切な価格転嫁が進むよう促した上で必要な事業量を確保する方針だ。政府の概算要求基準では、賃金や調達価格の上昇を予算編成過程で適切に反映すると明記している。建設業界の賃上げや資材高騰による単価上昇分が、トータルの事業量として目に見える形で反映されるかどうかが焦点となる。」(『建設工業新聞』2024.08.06)
●「円安の中、日本が貿易ではなく海外への投資で稼ぐ構造が定着している。財務省が8日発表した2024年上半期(1~6月)の国際収支統計(速報値)では、投資の収益を示す第1次所得収支の黒字は19兆1969億円と過去最大を更新した。貿易収支は赤字が続いた。」(『日本経済新聞』2024.08.09)
●「国土交通省は道路事業の新規採択時に算出する当初事業費の考え方を見直す。地質調査の結果や現場条件の変化で追加措置が必要になり、計画当初の事業費から増額するケースが相次いでいる。地盤改良費用などの増額が見込まれる項目を確認できるチェックリストを作り、より正確に事業費を算出できるようにする。…国交省によると、2024年4月時点で事業中の直轄国道改築事業428件のうち、97%で当初事業費からの費用増が発生している。増加率の内訳は『0~20%未満』が54%と最多で、『20~50%未満』が20%と続く。当初事業費の倍以上となる『100%以上』に増額した事業も8%あり、当初計画との乖離(かいり)が課題になっている。こうした事業費の増額は、事業開始時点の未確定要素が多い点が背景にある。用地取得後に実施する地質調査で地盤の改良工事が必要なことが判明したり、地元との協議で騒音対策が必要になったりする事例も少なくない。資材価格の上昇といった要素も影響する。国交省は事業費の算出精度を高めるための取り組みを強化していく。過去の事業費増の事例を踏まえたチェックリストを作成。現場の条件や施工方法を確認し、必要な費用が適切に計上されるようにする。例えば土工は軟弱地盤の改良費、橋梁は掘削補助工法などを想定する。最新の労務費や資材単価を踏まえて事業費を算定するようにする。事業化した後も、工事着手前の調査を重点的に実施。調査結果を踏まえ道路機能に支障となるリスクやコストの増加要因を把握し、ルートや構造の見直しなど、柔軟に事業計画を変更できるようにする。」(『建設工業新聞』2024.08.08)
●「内閣府の有識者検討会は、政府の高齢社会対策大綱の改定に向けた報告書をまとめた。高齢者の居住支援の充実や、空き家対策の推進を提言。住み替えのニーズに対応するため、行政と民間事業者をつなぐ中間組織が対応を支援する体制の整備や、空き家の流通促進を目的に再建築許可基準の規制緩和の検討などを求めた。政府は報告書を受け、高齢社会対策大綱を近く改定し、閣議決定する。」(『建設工業新聞』2024.08.08)
●「国土交通省は、第3次担い手3法の一つとして公共工事品質確保促進法(品確法)が改正されたことを受け、同法の基本方針と『発注関係事務の運用に関する指針』(運用指針)を今冬に改定する予定だ。法改正の内容を位置付けるとともに、中央建設業審議会が3月に改定した『工期に関する基準』など建設業を取り巻く直近の動きを反映する考え。改正品確法は6月に施行済みだが、地方自治体を含む各公共発注者が2025年度から改正法に沿った取り組みを本格的に始められるように、自治体らの意見を聞きながら基本方針・運用指針改定案の検討作業を今後進める。」(『建設通信新聞』2024.08.09)
●「日本建設業連合会(日建連、宮本洋一会長)は建設キャリアアップシステム(CCUS)の普及に向け、2024年度の技能者登録率の下限を45%(前年度比4.0ポイント上昇)、事業者登録率の下限を84%(5ポイント上昇)に設定した。目標達成に向けて協力会と現場の双方から推進を働き掛けるとともに、取り組みが低調な会員企業のフォローアップを強化する。『CCUS普及に係る目標達成のための日建連の推進方策(2024)』として目標数値などを盛り込んだ。作業員名簿に記載された技能者に占める技能者登録率は▽24年度=45%▽25年度=49%▽26年度=50%―が下限。施工体系図に記載された事業者に占める事業者登録率は24~26年度が84%を下限とした。」(『建設工業新聞』2024.08.01)
●「日本建設産業職員労働組合協議会(日建協、木浪周作議長)は1日、東京都荒川区のアートホテル日暮里ラングウッドで第101回定期大会を開き、2024年度の活動方針や執行体制など決議した。『Change!次世代に選ばれる建設産業へ』をスローガンに掲げ、産業政策活動と加盟組合支援を2本柱として活動展開し、労働条件・環境のさらなる改善に取り組む。開会に当たり、木浪議長は『ここ数年、建設産業では働き方改革の実現や担い手確保という共通課題に向けて、政労使が一体となって取り組みを進めることで、処遇を含めた労働条件や労働環境は着実に改善している。しかし、所定外労働時間や休日・休暇取得などに目を向けると、他産業に比べて見劣りする面も多く、まだまだ改善の余地がある。時間外労働の上限規制を好機と捉え、今こそ働き方改革を成し遂げることで、次世代に選ばれる建設産業へと変えていかなければならない』と強調した。さらに、『いまだ根強く残る旧態依然とした慣習から脱却し、新しい感性・発想を持って建設産業の在るべき姿、働き方をわれわれ自身が描き、実践していく必要がある』と呼び掛けた。」(『建設通信新聞』2024.08.02)
●「厚生労働省は、全国の労働局や労働基準監督署が、外国人技能実習生が在籍している事業場である実習実施者に対して行った2023年の監督指導、送検などの状況を7月31日にまとめた。労働基準関係法令違反が認められた実習実施者は、監督指導した1万0378事業場の73.3%に当たる7602事業場あった。このうち、技能実習の計画認定件数が多い主な5業種に含まれる建設関係職種の建設業は、1856事業場が監督指導を受け、1500事業場に何らかの違反があった。違反率は80.8%で、5業種の中で最も違反率が高かった。建設業での主な違反内容は、割増賃金の支払い違反が455事業場(24.5%)、健康診断結果について医師などからの意見聴取の違反が386事業場(20.8%)、年次有給休暇違反が346事業場(18.6%)となっていた。全業種では使用する機械などの安全基準違反2447事業場(23.6%)、割増賃金の支払い違反1709事業場(16.5%)、健康診断結果について医師などからの意見聴取の違反が1685事業場(16.2%)だった。重大・悪質な労働基準関係法令達反により送検したのは27件だった。」(『建設通信新聞』2024.08.02)
●「厚生労働省が6日発表した6月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上の事業所)によると、名目賃金から物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月より1.1%増えた。賞与など『特別に支払われた給与』が大きく伸び、2年3カ月ぶりに実質賃金の増減率がプラスに転じた。厚労省の担当者は『6月に夏の賞与を支払う事業所が毎年同月より増えた』と賃金上昇の理由を説明した。その上で、『賞与を前倒しで払ったのか、新たに払う事業所が増えたのかはわからない。7月以降の動きを注視しないといけない』と話した。名目賃金を示す1人あたりの現金給与総額は4.5%増の49万8884円だった。増加は2年6カ月連続。6月の消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)は3.3%上昇したが、名目賃金がそれを上回って伸びた。」(『日本経済新聞』2024.08.06)
●「政府は2日、『過労死等の防止のための対策に関する大綱』の変更を閣議決定した。4月から建設業などにも時間外労働の上限規制を適用したことから、労働基準監督署による監督指導などを通して順守を徹底するとともに、商慣行・勤務環境などを踏まえた取り組みを推進すると明記した。大綱は、過労死防止法に基づき国の対策を定めいている。3年ごとに見直し、厚生労働省がまとめた新たな大綱を閣議決定している。大綱では、建設業を過労死や長時間労働が多くあるとされる重点業種に引き続き位置付けた。建設業の担い手確保、労働者の処遇改善に向けた賃金原資の確保と下請け事業者までの行き渡り、資材価格転嫁円滑化による労務費へのしわ寄せ防止、働き方改革や現場の生産性向上を狙いとした改正建設業法・公共工事入札契約適正化促進法の成立を受け、『改正法に基づく取り組みを推進する』と明記している。」(『建設通信新聞』2024.08.06)
●「民間工事に焦点を当てて工期設定や休日取得の実態を1000社超の建設会社に聴取した国土交通省の調査で、直接雇用する技術者の時間外労働が上限規制の特別条項を超過すると回答した企業が17.2%に達したことが分かった。上限規制適用前の1月1日時点の回答とはいえ、元請を中心とする全国各地の建設会社が現場従事者の働き方改革に苦慮する実態を突き付けた格好だ。一方、工期設定で受注者側の要望が受け入れられるケースが以前より増え、週休2日も取得割合も増えるなど就労環境の改善傾向も読み取れる。」(『建設工業新聞』2024.08.07)
●「厚生労働省はギグワーカーの待遇を改善する。新たに指針をつくって従業員と同じように最低賃金を適用し、有給休暇の取得ができるギグワーカーを認める。法律の運用面から多様な働き方に対応する。人手不足に直面する企業にとっても、組織に所属しないギグワーカーと契約しやすい環境を整える。」(『日本経済新聞』2024.08.14)
●「建設産業専門団体連合会(岩田正吾会長)は1日、東京都新宿区のホテルグランドヒル市ヶ谷で国土交通本省との意見交換会を開いた。建専連は、適正な労務費の確保と下請けへの行き渡りを柱の一つとする改正建設業法の実効性確保に向け、発注者や元請などに対し、技能者の賃金原資となる労務費を犠牲にした低価格競争から質の競争へとマインドを変える指導の実施を求めた。」(『建設通信新聞』2024.08.02)
●「ゼネコンが株価の動向を注視している。週明け5日の東京株式市場は、日経平均株価の下落率が前週末比で1割を超し、終値は前日比4451円28銭(12.4%)安の3万1458円42銭。下げ幅は史上最大を記録した。上場する大手ゼネコン、準大手ゼネコンの中には株価が1割超下落した社があった。一転して6日の東京株式市場の日経平均株価は大幅な反発で始まった。あるゼネコン関係者は『中長期の視点で見たときに一時的なアップダウンはありえる。今回もその一つ』との見方を示す。…6日の東京株式市場は日経平均株価の終値が3217円04銭高の3万4675円46銭で、過去最大の上げ幅となった。それに伴い20社も上昇が目立った。2日の終値を上回った社もあった。株価の変動はめまぐるしいが、『影響は軽微』(ゼネコン関係者)という見方が出ている。」(『建設工業新聞』2024.08.07)
●「建設資材であるセメントや生コンクリートの荷動きが低調だ。セメント協会(東京・中央)がまとめた6月のセメントの国内販売量は前年同月比10.1%減の273万7443トンだった。全国生コンクリート工業組合連合会(全生連、東京・中央)がまとめた6月の生コン出荷量も前年同月比10.3%減の550万5581立方メートルと、ともに2桁マイナスだった。各地の大雨が響いた。雨が降ると生コンの打設が見送られることが多く、生コンのほか、生コンの原料となるセメントの荷動きを鈍らせる。今年6月は、稼働日数が前年同月より少なかったことも影響したという。4月に始まった建設現場での時間外労働規制も大きい。『建設現場の2024年問題が出荷に影響している』(全生連の斎藤昇一会長)。公共事業の減少のほか、民間も資材高騰や人手不足による工事計画の見直しが響いているところに、時間外労働規制でさらに現場作業の進みが遅くなったことが出荷を一段と鈍らせているという。」(『日本経済新聞』2024.08.08)
●「建設経済研究所と経済調査会は7日、2025年度建設投資見通しを発表した。物価変動を含む名目値は前年度見通しに比べて1.8%増の73兆5900億円、物価変動を含まない実質値では1.4%増の58兆8939億円と推計。高止まっている建設コストの影響を受けながらも、政府、民間ともに建設投資が底堅く推移し、微増するとみた。一方で、持ち家の減少が続く新設住宅着工戸数は80万戸割れを予想する。25年度見通しの発表は初めて。」(『建設通信新聞』2024.08.08)
●「大手ゼネコン4社の2024年4~6月期の連結決算が9日、出そろった。大林組、鹿島、大成建設の3社で営業損益が前年同期より改善した。各社では工期が長い大型の建築工事を中心に資材価格の高騰や人件費の上昇で工事損失が相次いできたが、受注時の採算を確保する取り組みが奏功して業績を底上げし始めている。」(『日本経済新聞』2024.08.10)
●「木造住宅の梁(はり)や柱に使う集成材の流通価格が約3年ぶりに上がった。東京地区の流通価格は直近までに比べ4~6%高い。欧州から調達する原料板が値上がりし、国内の木材メーカーがコストを転嫁した。木造住宅の建設が低迷するなかで建築コストに反映されれば、住宅需要を一段と冷やす恐れもある。」(『日本経済新聞』2024.08.03)」
●「大規模修繕したマンションの固定資産税を優遇する制度の利用が進んでいない。老朽マンションの修繕を促す政策として期待が高かったものの、要件の厳しさがハードルになっている。税優遇の期限が迫るなか、国土交通省は制度の延長を要望する構えだ。自治体からは使い勝手の向上など仕組みの見直しを求める声が出ている。税優遇は老朽化したマンションの屋根や床の防水のほか、外壁の塗装といった大規模修繕工事をした場合に、100平方メートル分までの建物部分について翌年度の固定資産税を軽減するもの。軽減割合は6分の1~2分の1の範囲内で、各自治体が条例で定める。対象となるマンションの要件は①築20年以上で10戸以上②長寿命化工事を過去に1回以上適切に実施③工事に必要な積立金を確保している――などとなっている。23年4月~25年3月の間に工事を完了していなければならず、ハードルの高さが指摘されている。国交省によると、23年11月末までに申請件数は10棟にとどまっている。現時点においても利用は大きく増えていないとみられる。23年度税制改正の要望の際は、24年度中に3.9万戸の適用を見込んでいた。国交省の推計では、築40年以上のマンションは22年末時点でおよそ125万戸あり、20年後には3.5倍に膨らむ見通しだ。修繕工事を適切に実施しなければ、外壁がはがれ落ちるといった危険が高まる。…修繕工事が進まない要因として、積立金不足があげられる。国交省の23年度調査では、積立金が不足しているマンションは全国で36.6%に上った。税優遇が適用されるには国が定める基準額になるまで毎月の負担額を引き上げる必要がある。ただ、住民の間で合意に至らず、調整が難航するケースは少なくない。」(『日本経済新聞』2024.08.06)
●「8日午後4時43分ごろ、宮崎県で最大震度6弱を観測する地震があった。震源は日向灘で、震源の深さは約30キロ、地震の規模はマグニチュード(M)7.1と推定される。気象庁は今後1週間以内に大規模地震が発生する可能性が平時より高まっているとして南海トラフ臨時情報の『巨大地震注意』を初めて発表した。臨時情報には防災対応に応じて①警戒②注意③調査終了――の3パターンがある。今回発表されたのは注意で、避難経路の確認など備えを再確認する必要がある。対象は茨城から沖縄までの29都府県707市町村。気象庁は8日に記者会見し、大規模地震が起こる確率について普段より高まっているが『特定の期間中に大規模な地震が必ず発生することを知らせているわけではない』とも強調した。」(『日本経済新聞』2024.08.09)
●「東京都心のマンションの平均価格が1億円を超える日本の住宅価格。しかし国際比較すると景色は様変わりし、『割安』といえる水準だ。経済協力開発機構(OECD)によると、収入と比べた住宅価格で日本は平均を下回る。新築偏重で中古市場が活性化せず、地方を含め空き家が増加。全国的に住宅がだぶついており、価格は国際的に取り残されている状況だ。」(『日本経済新聞』2024.08.13)