情勢の特徴 - 2024年9月後半
●「公正取引委員会は2024年度にも、組織に属さずフリーランスとして働く人を対象に、発注元との取引トラブルを調査する。買いたたきやハラスメントなどの人権侵害について状況を把握し、問題のある業界に是正を求める。フリーランスを守る新法が11月に施行となるのを踏まえ、成長戦略に寄与する多様な働き方の推進につなげる。厚生労働省、中小企業庁と合同でフリーランスの個人や団体に書面でアンケート調査し、指摘が多かった業界に改善を呼びかける。」(『日本経済新聞』2024.09.16)
●「公正取引委員会と経済産業省中小企業庁は19日、下請法(下請代金支払遅延等防止法)の買いたたき規制を強化する方向で検討していく方針を明らかにした。コスト上昇局面で価格転嫁が不十分なケースなどを規制対象にする。下請法適用対象外取引(サプライチェーン全体)での価格転嫁実現と、2026年の約束手形利用廃止に向けては、優越的地位の乱用の考え方を整理し、ガイドラインなどで示す考え。下請法での買いたたきは、通常支払われる対価に比べ著しく低いことを『対価要件』として規制。ただ、労務費や原材料価格など近年のコスト上昇局面や生産量減少の場合での価格据え置き、親事業者が下請け代金を引き上げても、その上げ幅がコストアップに見合わず、下請け事業者の利益を損なっていても、対価を引き下げていないため、規制対象となる対価要件の認定が困難になっているのが現状だ。このため、コストアップに見合わない下請け代金引き上げや協議を伴わない親事業者の一方的な引き上げ(いわゆる指し値)なども、買いたたき規制の運用上の工夫で対応することなどを検討する。また、取引内容と取引当事者の資本金の2区分で定めている下請法適用対象取引での適切な価格転嫁には、下請法適用対象外取引での価格転嫁が必要になるため、サプライチェーン全体での価格転嫁に向け、優越的地位の乱用の考え方を整理し、ガイドラインなどで具体的な事例などと併せて示すことも検討する。」(『建設通信新聞』2024.09.20)
●「企業間の輸送に使うトラック運賃が高騰している。自然災害や猛暑で荷動きが急増した8月に代表的な指標が前年比13%上昇し、最高値をつけた。運転手不足は深刻で、電子商取引(EC)需要の増加などを背景とした2017~18年の『宅配クライシス(危機)』以来の急騰につながっている。物流コストの上昇は食品価格の上昇を通じ家計にも影響を及ぼす。全日本トラック協会(東京・新宿)などによると、輸送仲介システム『WebKIT』の成約運賃指数(2010年4月=100)は8月に140をつけ、最高値となった。同システムは荷主から依頼を受けた運送会社が自社で運び切れないスポット(単発)貨物を登録し、輸送可能な事業者とマッチングしている。運賃相場はトラック需給を反映する。前回の最高値は18年12月の137だった。17年にヤマトホールディングスなど宅配業者の長時間労働が表面化し宅配危機として社会問題になった。運賃値上げの機運が企業間物流にも及んだほか、18年夏の豪雨災害でトラック需要が強まったことも重なり繁忙期の年末まで高値で推移した。…これほど運賃が急騰するのは『異例』との声があがる。日本貨物運送協同組合連合会(東京・新宿)の永嶋功専務理事は『人手不足で輸送キャパシティーが縮小しており、突発的な荷動きの変動に対応しきれなくなっている』と分析する。4月からトラック運転手の残業時間に年960時間の上限規制が導入された。トラックでの輸送能力はこれまで運転手の長時間労働によって維持されてきた面が強く、それができなくなった4月以降は人手不足が運賃相場に強く反映されている。運転手の給与は一般的に歩合給や時間外手当の割合が高く、残業規制がかかれば賃金が減るとの懸念が人材の流出を招いている。物流コンサルティングを手がける船井総研ロジ(東京・中央)の赤峰誠司取締役は『運転手の待遇改善の対応が後手に回っている運送会社が多く、特に他業界への流出が加速している』と指摘する。運転手不足が特に深刻な長距離の輸送で、運賃上昇が顕著になっている。…物流コストの高騰は家計にも影響が及ぶ。食品主要195社を対象とした帝国データバンクの集計によると、24年の値上げ品目は8月30日時点で1万1872品目ある。値上げ要因として『物流費』を挙げた割合は67.9%にのぼる。23年の58.3%から10ポイント近く増え、『原材料高』に次いで2番目に多い。」(『日本経済新聞』2024.09.28)
●「政府がインフラ管理などにデジタル技術を駆使する取り組みに一段と力を入れる。関係省庁は12日、第2期デジタルライフライン全国総合整備実現会議(議長・齋藤健経済産業相)の初会合を開き、デジタル技術を社会実装するための具体策やルールを定めるロードマップ、ガイドラインを来春に策定する方針を確認した。地下インフラの空間情報をデジタル化し、相互共有や業務を自動化するインフラ管理DXなどを進める。同会議は国土交通省などの関係省庁と学識者、企業関係者で構成。政府の『デジタルライフライン全国総合整備計画』は第1期の実現会議が検討し、約10年間を想定した計画として2023年度に決めた。第2期は第1期から取り組むインフラ管理DX、ドローン航路、自動運転サービス支援道、奥能登版デジタルライフラインの四つの運用などを踏まえ、全国展開への対応を整理。各省庁と連携し、フォローアップワーキングや関連検討会で議論する。」(『建設工業新聞』2024.09.17)
●「斉藤鉄夫国土交通相と建設業主要4団体は17日に東京・霞が関の国交省内で意見交換会を開き、技能労働者の処遇改善や建設現場の働き方改革の取り組みを一層強化することを確認した。2024年に『5%を十分に上回る』賃金上昇率を目指すという官民共同の目標達成に向け、各団体は賃上げに踏み切る会員企業の動向などを報告。6月成立の第3次担い手3法の措置内容を踏まえ、国交省による地方自治体や民間発注者への指導に期待する声が挙がった。」(『建設工業新聞』2024.09.18)
●「第3次担い手3法の成立などを踏まえ、国土交通省が中心となって見直し作業を進める公共工事品質確保促進法(品確法)の『基本方針』、同法に基づく『発注関係事務の運用に関する指針(運用指針)』、入札契約適正化法(入契法)に基づく『適正化指針』の改正骨子案が、出そろった。いずれも公共工事・業務で実施すべき取り組みを規定するもので、各発注者が2025年度発注分から本格的に実施できるよう、12月から25年1月ごろまでの間に見直す予定だ。基本方針と適正化指針は閣議決定する。」(『建設通信新聞』2024.09.19)
●「国土交通省は建設工事の取引実態の実地調査に当たる『建設Gメン』の効果的な運用に向け、建設業法違反が疑われる不適正な取引事案をあらかじめ洗い出す調査手法の確立を目指す。建設Gメンとして任命された地方整備局などの担当職員とは別に、その活動をサポートする『補助員』のような役割を設けることを検討。民間への業務委託などを通じた配置を想定する。建設Gメンそのものの人員増強を進める一方、限られたリソースを最大限生かす方策を講じ、違反行為の確実な取り締まりにつなげる。」(『建設工業新聞』2024.09.20)
●「2025年春卒業の高校生の採用選考が16日に始まった。少子高齢化で若手人材の確保が難しくなる中、大卒に加えて高卒も取り込もうとする動きが目立つ。求人倍率は過去最高で、特に工業高校は20倍超に達するなど採用難は深刻だ。各社は賃上げなどで、令和の『金の卵』に自社の魅力をアピールする。…厚生労働省によると、25年春の卒業直後に就職を希望する高校生の求職者数は7月末時点で、前年同期比0.1%減の約12万6000人。これに対し高卒への求人数は4.8%増の約46万5000人で、求人倍率は3.7倍。7月末時点ではバブル期を超える過去最高を記録した。全国工業高等学校長協会によると就職率が6割に上る工業高校では、23年卒の求人倍率は20.6倍と特に高かった。」(『日本経済新聞』2024.09.16)
●「総務省は16日の『敬老の日』にあわせ、65歳以上の高齢者に関する統計を公表した。2023年の65歳以上の就業者数は22年に比べて2万人増の914万人だった。20年連続で増加し、過去最多を更新した。高齢者の就業率は25.2%で、65~69歳に限れば52%と2人に1人が働いている。定年を延長する企業が増加し高齢者が働く環境が整ってきた。高齢者の働き手が人手不足を補う。年齢別の就業率は60~64歳は74%、70~74歳は34%、後期高齢者の75歳以上は11.4%といずれも上昇し、過去最高となった。23年の就業者数のなかの働く高齢者の割合は13.5%だった。就業者の7人に1人を高齢者が占める。」(『日本経済新聞』2024.09.16)
●「帝国データバンク横浜支店が神奈川県内企業約1300社を対象に人手不足の現況(7月)を調査した結果、回答企業の55.2%が『正社員が不足と感じている』と回答したことが分かった。前年同月と比べ1.3ポイント上昇し、過去最高を記録した1月(55.4%)に次ぐ高水準となった。業種別で『建設』は前年同月比で5.5ポイント上昇し71.8%。7割超の建設会社が人手不足に悩んでいる実態が明らかになった。」(『建設工業新聞』2024.09.17)
●「日本建設産業職員労働組合協議会(日建協、木浪周作議長)は17月、6月に実施した『4週8閉所ステップアップ運動』の結果を発表した。月によって土日・祝日の数が異なる点を補正した4週8閉所指数は、前年同期より0.25ポイント上昇して4週『6.47閉所』となり、過去最高値を記録した。時間外労働規制の適用開始後として初の調査結果で、特に土木に比べて低水準だった建築の改善が加速している。」(『建設通信新聞』2024.09.18)
●「民間企業で働く人が2023年の1年間に得た平均給与は前年比0.4%増の460万円だったことが国税庁の民間給与実態統計調査で分かった。3年連続で増加したものの、伸び率は前年の2.7%から鈍化した。『建設業』の平均給与は3.5%増の548万円で14業種中5番目に高かった。」(『建設通信新聞』2024.09.27)
●「東京建設業協会(乘京正弘会長)は、公共・民間を問わず、都内全域で4週8閉所・完全週休2日の実現に取り組む『目指せ!建設現場土日一斉閉所東京キャンペーン』に対する後援依頼に合わせて、民間発注者団体のトップらと直接面会し、土日閉所を前提とした適正な工期での工事発注などに理解を求める要望活動を始めた。初弾として12日、乘京会長と清水琢三副会長が、東京経営者協会の冨田哲郎会長(JR東日本相談役)に趣旨を説明するとともに、会員企業への周知などを要請した。26日には、東京商工会議所も訪問する予定だ。」(『建設通信新聞』2024.09.17)
●「日本建設業連合会(宮本洋一会長)は、建設業全体を俯瞰(ふかん)した中長期的な方向性を示す『新長期ビジョン』の策定作業を本格化する。20日の理事会で、今後の急激な人口減少などを踏まえつつ、積み残された課題や今後予測される課題へ的確に対応するためには、幅広い関係者が共有できる新たな業界ビジョンが必要との趣旨で合意した。2025年3月に中間まとめを行い、6、7月をめどに最終決定して全容を公開する。宮本会長は記者会見で『50年という超長期を一つのめどとして、未来予想図を示す。また、10年後の35年を見据え、具体的に何をすべきか考えていく』と述べた。」(『建設通信新聞』2024.09.24)
●「全国建設業協会(今井雅則会長)は、10月に全国9地区で開く地域懇談会・ブロック会議を前に、47都道府県建設業協会と会員2202社から回答を得た2024年度『発注関係事務の運用状況等に関するアンケート』の結果をまとめた。会員企業分の集計によると、全体の約4割が前年度より受注状況が悪化傾向にあると回答した。一方、約8割が賃上げを実施し、賃上げ率も上昇した。経営環境は厳しいものの、不足度合いが年々増す担い手の確保・定着に向けた処遇改善に、身を切る中小建設業の姿が透けて見える。また、時間外労働の上限規制がスタートした中、残業抑制に大きな効果が期待される書類簡素化は、特に市町村レベルで取り組みが遅れていることなども判明した。」(『建設通信新聞』2024.09.27)
●「建設業の処遇改善に向けた動きが続いている。全国建設業協会(全建、今井雅則会長)の調査によると、回答した会員企業のうち2024年度に賃上げしたのが約8割と、23年度と同水準を維持。上げ幅は『3~6%』が最も多く、3月に全建など建設業4団体と政府が申し合わせた24年度に『5%を十分に上回る』賃金上昇を目指し対応していることが分かった。ただ総合評価方式で賃上げした企業の加点措置に対しては『安定した受注量の確保が見通せない』などを理由に、約6割が不満に感じている現状も浮き彫りとなった。」(『建設工業新聞』2024.09.27)
●「地価上昇が広がっている。国土交通省が17日公表した2024年の基準地価で、地方圏の全用途の平均が地方4大都市を除いても前年から0.2%上昇し、32年ぶりのプラスになった。訪日外国人客を中心とした観光需要の高まりや、半導体の工場新設などが起点となり、地価上昇が各地に波及している。」(『日本経済新聞』2024.09.18)
●「不動産経済研究所(東京・新宿)が19日発表した8月の首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、干葉県)の新築マンションの発売戸数は前年同月比50%減の728戸だった。減少は5カ月連続で8月としては過去最低だ。建築コストが上がる中、採算が見込めるホテルなどが用地取得を優位に進めており、マンション供給は低水準が続く。『供給減少に歯止めがかからない』。不動産経済研究所の松田忠司・上席主任研究員は19日の記者会見で強調した。8月の供給は1973年の統計開始以来、最低だ。2023年の首都圏のマンション供給戸数は前年比9%減の2万6873戸。バブル崩壊直後以凍の低水準でピーク時から7割減った。24年に入って減少は加速しており1~8月の供給は前年同期比22%減となった。供給数の減少は販売価格の上昇を招く。8月の東京23区の平均販売価格は前年比62%増の1億3948万円と、4カ月連続での1億円超えだ。神奈川(5995万円)なども上昇。1~8月の首都圏の平均価格は7819万円となった。供給減の背景には、人手不足に伴う建設の遅れに加え国内外の投資マネーがインバウンド需要に沸くホテルに向かう中、開発用地の争奪戦でマンション勢が苦戦を強いられていることがある。…人手不足や資材価格の上昇も響いた。『10年前、3LDKの建築コストは1戸2000万円だったが、今は3000万円はかかる』とあるデベロッパーの幹部は明かす。…急激な価格上昇でマンション購入を諦める動きが広がる兆しもある。不動産情報サイトを辛がけるLIFULLによると、首都圏のファミリータイプの賃貸需要が増えており、賃料は8月時点で12万7814円と、前年同月から9%上昇した。それでも松田氏は『マンション価格が緩やかに上がるトレンドは変わらないだろう』と指摘した。」(『日本経済新聞』2024.09.20)
●「記録的な豪雨となった石川県能登地方は、元日の地震に続いて土砂災害にみまわれ、各地で再び道路の寸断や断水が起きるなどインフラへの被害が広がった。一部集落が孤立し、復旧は難航している。中山間地域は複雑な地形に加え人口減少などに直面しており、地域の特性に合わせた防災対策の見直しが急務だ。石川県によると、道路の寸断などで人の行き来や物資の流通が難しい孤立集落は一時100カ所を超え、23日午後3時時点でも輪島市、珠洲市、能登町の計56カ所ある。3市町は1月の地震でも孤立が長期化。仮設住宅で暮らす人もいた。…3市町を中心に停電も続いている。電力供給がとまったことによる水道関連施設の停止や水道管の破損による断水も発生。輪島市では3086戸、珠洲市で1744戸が水道が使えない状況だという。断水解消の見通しは立っていない。地震から約9カ月たっても復旧・復興が途上だった能登地方を襲った記録的豪雨は、中山間地の被災リスクを改めて浮き彫りにした。」(『日本経済新聞』2024.09.24)