情勢の特徴 - 2024年11月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●業績回復の遅れや経費の増加などで資金繰りが逼迫し、税や社会保険料の納付が倒産の引き金となる企業が増えている。民間信用調査会社の東京商工リサーチのまとめによると、税・社会保険料の滞納が一因となった倒産は2024年1~10月の累計で155件に達し、これまでで年間最多だった18年の105件を上回った。税・保険料滞納倒産はすでに7月の段階で18年の水準を超えていた。新型コロナウイルス感染拡大の影響による業績不振から抜け出せず、納税に苦慮する企業の姿が反映している。コロナ禍の国税や社会保険料の納付猶予はすでに終了しているが、猶予分はその後の税・社会保険料に上乗せされている。22年以降は円安加速などの影響で物価高が収益を圧迫している。人事不足とされるもとで従業員を確保するために賃上げした企業は、社会保険料負担が重くなっている。(『しんぶん赤旗』2024.11.16より抜粋。)
●「自民、公明、国民民主の3党の政調会長は20日、国会内で会談し、政府が月内にまとめる経済対策の内容などについて合意した。自公両党『年収103万円の壁』の引き上げなど国民民主の政策を受け入れた。少数与党の状況で2024年度補正予算案の成立を優先した。…政府は22日にも経済対策を閣議決定する方針だ。住民税非課税世帯に1世帯あたり3万円を目安に給付し、子育て世帯は子ども1人あたり2万円を加算する。電気・ガス料金の負担軽減策は25年1~3月に再開し、ガソリン補助金は規模を縮小して続ける。価格上限を1リットル185円程度にする。3党合意は所得税の非課税枠103万円を『25年度税制改正の中で議論し引き上げる』と明記した。ガソリン減税は上乗せしている旧暫定税率の廃止を含め『自動車関係諸税全体の見直しに向けて検討し、結論を得る』と記した。」(『日本経済新聞』2024.11.21)
●「上場企業の業績が底堅さを見せている。2024年4~9月期の純利益は約27兆2000億円と前年同期比15%増え、4年連続で最高となった。金利上昇や新しい少額投資非課税制度(NISA)を追い風に金融が好調だった。海運や鉄道なども伸び、自動車や鉄鋼の不振を補った。19日までに24年4~9月期決算を発表した3月期企業1074社(親子上場の子会社など除く)を日本経済新聞が集計した。投資損益が変動し全体への影響が大きいソフトバンクグループ(SBG)を除いたベースでも5%増益だった。けん引したのは利益全体の6割を占める非製造業だ。純利益は36%増と4年連続で増えた。」(『日本経済新聞』2024.11.21)
●「政府が近く閣議決定する2024年度補正予算案のうち、国土交通省分が明らかになった。防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策の最終年度分を中心に、公共事業費は1兆9126億円を計上する。前年度の補正予算に比べて8.3%増となる。前年度補正予算と同様に、資材価格高騰などに対応するための特別枠として国土強靭化緊急対応枠を設定する。能登半島地震などを踏まえて緊急防災枠を新設する。」(『建設通信新聞』2024.11.29)
●「政府は29日、経済対策の裏付けとなる2024年度補正予算案を閣議決定した。一般会計の追加歳出は13兆9433億円だった。新規国債の追加発行は6兆6900億円と、対策の財源はおよそ5割を借金で賄う。24年度の税収は3兆円超上振れする見通しだが、『規模ありき』の総額底上げに追いつかず国債依存から脱却できていない。」(『日本経済新聞』2024.11.30)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は、発注者や元請けが時間外労働の上限規制に抵触するような長時間労働を前提とする短い工期で請負契約を結んだ場合、建設業法違反になるとの解釈を明確化する。『発注者・受注者間における建設業法令順守ガイドライン』と、元請け・下請け間の取引を対象とする『建設業法法令順守ガイドライン』を改正し、建設業法上違反となる行為事例に追加する。19日まで一般からの意見を募集している両ガイドライン改正案に盛り込んだ。発注者または元請けが『建設工事従事者が時間外労働の上限規制に抵触するような長時間労働で施工することを前提とした短い期間を工期とする請負契約を締結した場合』は、建設業法が禁止する著しく短い工期に当たるとする。著しく短い工期の禁止で、建設業法上違反となる行為事例を示すのは初めて。これまでは『建設業法上違反となる恐れがある行為事例』のみを明らかにしていた。12月中旬を予定する改正建設業法第2弾施行関係でも、建設業法上違反となる行為事例を新たに位置付ける。」(『建設通信新聞』2024.11.18)
●「都道府県による入札契約適正化を目的とした市区町村への働き掛けの定量的な効果が、国土交通省のアンケート結果で分かった。働き掛けを実施した都道府県の管内市区町村で、特に週休2日工事を実施する団体数が増えている。首長との対話、担当部局への個別訪問、研修・講習会の開催など複数の方法を組み合わせて働き掛けることにより、入札契約適正化のさらなる進展が期待できるとして、国交省は好事例を参考にした取り組みの強化を都道府県に呼び掛けている。」(『建設通信新聞』2024.11.19)
●「財務省は15日、財政制度等審議会(財務大臣の諮問機関)の財政制度分科会法制・公会計部会を開き、少額随意契約を中心とした国の契約に関する金額基準の見直しを議論した。近年の物価上昇を踏まえた基準額引き上げを求める声と、競争性・透明性確保の観点から慎重に対応すべきとの意見の両方があるため、法令に定められている六つの基準額に対して一般から意見を募集することにした。12月20日まで受け付け、検討の参考にする。」(『建設通信新聞』2024.11.19)
●「国土交通省は、都道府県と政令市へのアンケート結果を基に、週休2日交代制工事の2024年度導入状況をまとめた。導入済みは、都道府県が全体の63.8%に当たる30団体、政令市が60.0%の12団体。前年度に比べて都道府県は11団体、政令市は6団体それぞれ増えた。運用上の課題は、『休日取得確認の手間』が最も多かった。週休2日交代制工事は、対象期間中に技術者や技能者が交代しながら4週8休以上の休日を確保する取り組み。現場を閉所する週休2日工事の実施が困難な工事で行われている。導入を検討しているのは都道府県が2団体減の6団体、政令市が5団体減の2団体、未導入は都道府県が9団体減の11団体、政令市が1団体減の6団体だった。」(『建設通信新聞』2024.11.20)
●「政府が22日決定した総合経済対策では建設業関連施策も多く盛り込まれた。賃上げ環境の整備の一環で、第3次担い手3法の着実な施行と周知徹底を明記。国土交通省が2025年度予算の概算要求で上げたメニューの一部を前倒しする形で、重層下請構造の実態調査や『建設Gメン』の効率的な運用への体制強化に着手する。中央建設業審議会(中建審)のワーキンググループ(WG)で『労務費に関する基準(標準労務費)』の議論が進む中、並行して適正な見積もりの普及方策も内部で検討する。」(『建設工業新聞』2024.11.26)

労働・福祉

●「厚生労働省は、働く時間が増えると社会保険料が発生して手取りが減る『年収の壁』の対策として、労働者側の負担を会社が肩代わりする仕組みを整備する方針だ。各企業の労使合意が前提となる。15日に開いた社会保障審議会(厚労相の諮問機関)年金部会で『106万円の壁』を撤廃する考え方とあわせて示した。負担の急増を抑えて働き控えの発生を防ぎ、人手不足の対策につなげる。年内に最終案をまとめ、2025年の通常国会に関連法案の提出を目指す。早ければ26年度に導入となる。中小企業を中心に慎重な意見もあるため、厚労省は具体化に向け調整を続ける。厚労省は15日の会合で、月8万8000円以上、年収換算で約106万円とするパート労働者の厚生年金適用要件を撤廃する考えをまず示し、多くの委員が賛同した。制度が見直されれば『106万円の壁』はなくなるが、週20時間以上という労働時間要件は残る。このため、就労抑制が生まれるという問題が残っていた。厚生年金の保険料は労使で折半して支払う。厚労省は手取りの急減を避けるため、働き控えが発生する年収層のパート労働者に限って、保険料の労使の負担割合を柔軟に変更できる特例を検討する。例えば、現行制度で『壁』となっている年収106万円では労使の負担割合を1対9とし、年収が上がるごとに2対8、3対7とし、一定水準で本来の5対5に戻す仕組みを想定する。特例を活用する場合も労働者の保険料負担はゼロにはしない。対象者について厚労省は年収106万円~130万円程度のパート労働者と想定する。新しい特例制度は、足元で導入している年収の壁に対する支援策の終了に合わせて実施を目指す。この仕組みは恒久的な制度ではないとする。現時点でいつまで続けるかは示していない。社会保険料の負担見直しは医療保険でも必要になる。主に中小企業が加入する全国健康保険協会(協会けんぼ)についても、同様の制度改正を検討する。」(『日本経済新聞』2024.11.16)
●「石破茂首相26日に首相官邸で開いた政労使会議で高水準の賃上げ実現への協力を求めた。2025年春季労使交渉(春闘)で物価高を上回る賃上げを狙ううえで中小企業や地方への波及が課題となる。首相が掲げる最低賃金の引き上げ時期の前倒しには経済界からの警戒感もある。経済界や労働団体のトップと意見交換する政労使会議の開催は石破政権になって初めてだ。首相は『高水準の賃上げとなった今年の春闘の勢いで大幅な賃上げの協力をお願いする。雇用の7割を占める中小企業や地方に行き渡ることが重要だ』と訴えた。中小・小規模事業者の『労務費の価格転嫁の徹底に一層取り組む』と言明した。首相が公約とする最低賃金を20年代に全国平均1500円に引き上げる目標の達成に向け『官民挙げて環境整備を図りたい』と述べた。来春までに対策をまとめるよう関係閣僚に指示した。…会議に出席した経団連の十倉雅和会長は達成には毎年7%ほどの引き上げが必要だとの見解を示した。『労使の意見も聞きながら進めてほしい』と話した。その後の記者会見でも政府の環境整備について『具体的に見えてきたものはない』と主張した。」(『日本経済新聞』2024.11.27)
●「国土交通省は、一人親方本人を調査対象とする2024年度の『建設業における一人親方の働き方に関する調査』を始めた。6月の建設キャリアアップシステム処遇改善推進協議会で建設業団体と申し合わせた24・25年度の一人親方対策を踏まえ、一人親方の適正な働き方に向けた取り組みの進捗(しんちょく)を把握する。23年度に続く2回目の調査で、12月20日までの回答を求めている。社会保険などの加入状況、現場の労働環境・条件、一人親方になった経緯、希望する就業形態、事業の今後、国の政策について、ウェブアンケートを行う。調査項目は23年度から変更なし。」(『建設通信新聞』2024.11.29)

建設産業・経営

●「埼玉県建設業協会(小川貢三郎会長)は、持続可能な地域建設業に向けた課題点を洗い出すため実施した、会員企業の経営実態調査の結果を明らかにした。約8割が定期昇給やベースアップを実施する一方で、依然として75%の企業が技術社員の人員不足を課題に挙げており、21年以降同様の割合で推移している。経営上の懸念としては、『受注競争激化による収益低下』『受注高減少による経営悪化』を指摘する意見がそれぞれ約3割となった。会員企業404社に調査票を配付し、9月5日までに205社から回答を得た(回収率50.7%)。調査結果によると、定期昇給を実施している企業は79%で21年度以降最も高くなった。ベースアップも『あり』とした企業が77%で、21年35%、22年39%(23年未調査)と比べて大幅に拡大した。一方、技術(技能職も含む)社員の人員不足を課題点とする企業は75%で、21年76%、22年・23年77%と比較してほとんど変化がない。『技術力継承の不安』を挙げる企業も13%と、21年の9%から徐々に増加している。」(『建設通信新聞』2024.11.18)
●「日本建設業連合会、全国建設業協会、日本道路建設業協会の3団体首脳は15日、東京・霞が関の国土交通省を訪れ、第2次石破内閣で新任した中野洋昌国交相に、資材価格や人件費の上昇分を考慮した公共事業予算の増額確保などを要望した。動向が注目される国土強靭化実施中期計画を巡っては、5年間で25兆円という規模感を例示しつつ、2024年度内早期の策定を求めた。」(『建設通信新聞』2024.11.19)
●「日本建設業連合会の宮本洋一会長、押昧至一副会長・土木本部長、蓮輪賢治副会長・建築本部長は21日、東京・大手町の経団連会館で理事会後の記者会見を開いた。ゼネコン各社の2025年3月期中間決算で、建築工事の利益率に改善傾向が見られたことについて、宮本会長は『数字から言えば、価格転嫁が進んできたと推測できるが、全部が全部、相談に乗ってもらって十分な条件になっているという状態にはない。われわれがお願いしている工期も含めた適正な契約は、前進してきたものの、まだまだこれからだと思っている』との見解を示した。」(『建設通信新聞』2024.11.22)
●「積水ハウス、積水化学工業、旭化成ホームズは12月にも住宅部材を共同配送する取り組みを始める。地域ごとに物流拠点を共有し、3社が調達した建材などを一度に運ぶことを想定する。物流や建設業で残業時間の上限規制が適用され人手不足の懸念が増す2024年問題の影響で、住宅の引き渡しに遅延も生じかねない状況にある。競合が協力し効率化を急ぐ。」(『日本経済新聞』2024.11.26)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「都内の駅近マンション価格が急騰している。日本経済新聞の調査によると、東京都で発売された最寄り駅から徒歩5分以内の新築マンションの平均販売価格は2024年1~9月に1億1449万円と10年前の2倍になった。郊外物件との価格差が急拡大している。不動産助言会社のトータルブレイン(東京・港)が持つ物件情報を基に、2010~24年に1都3県(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)で発売された平均床面積30平方メートル以上の新築マンション約55万戸について、最寄り駅からの距離や販売価格を調べた。投資用や定期借地の物件は除いた。都内で発売された駅徒歩5分以内の物件価格は上昇のテンポが速く、1億円超えが常態化している。24年1~9月と10年前の14年年間と比較した価格上昇率は100%(2倍)。同期間で同条件の神奈川県(50%)や埼玉県(25%)を大きく上回る。」(『日本経済新聞』2024.11.19)
●「国土交通省は不特定多数が利用する大規模建築物や災害時の緊急輸送道路に面する建築物など、耐震診断が義務付けられている建築物の耐震化の進捗状況を把握する指標・目標を見直す。緊急輸送道路など避難路沿道の建築物は民間物件のウエートが大きいことから耐震化が停滞しており、2025年以降は都道府県別の指標・目標を併せて設定する方向。地域の実情をきめ細かにフォローすることで地方自治体の主体的で効果的な取り組みを促す。」(『建設工業新聞』2024.11.19)
●「元日の能登半島地震で、避難生活の疲労やストレスに起因する『災害関連死』が22日、235人となり、地震による直接死を上回った。避難所で生活の質が低下したことが背景にある。1995年の阪神大震災や2016年の熊本地震でも指摘された課題だが、対策は途上にある。石川県が新たに災害関連死と認定したのは輪島市6人、穴水町4人、能登町5人の計15人。新潟、富山の両県の6人と合わせた関連死は累計で235人になり、家屋倒壊や火災などによる直接死(227人)を超えた。これまでの死者は計462人になった。熊本地震で熊本、大分両県で認定された222人も上回った。輪島市で11月22日までに年代を公表した関連死35件のうち、80~90代が約8割を占めた。死因は肺炎や心臓病が目立つ。市によると、多くは長期間にわたって停電や断水が続いた避難所での生活で心身にストレスがかかったことが原因という。…大規模災害のたびに避難者の生活環境の過酷さが課題に挙げられ、国は対応を見直した。高齢者など災害弱者を受け入れるための『福祉避難所』の仕組みを整え、11年の東日本大震災後には避難所運営の指針に簡易ベッドの導入を目指すと盛り込んだ。能登半島地震の激震地は高齢化が進む寒冷地。専門家らが当初から関連死の危険性を指摘したが、これまでの災害と同様、環境改善は十分に進まなかった。『避難所の衣食住の質があまりにも低かった』。地震発生直後に珠洲市に支援に入ったNPO法人『YNF』(福岡市)の江崎太郎代表理事は振り返る。一部の避難者は体育館に入りきれず入り口近くに横たわり、弁当が足りず連日乾燥米を食べる人もいた。地震による直接死が2人だった能登町は関連死が44人に達した。町担当者は『トイレや寒さをしのぐストーブが不足していた』と話す。被災地では感染鹿対策が徹底できず、新型コロナウイルスの感染が広がった避難所もあった。」(『日本経済新聞』2024.11.23)
●「政府は従来タイプ以上に省エネ性能が高い住宅の普及を促す。断熱性能が優れ、太陽光パネルなど再生可能エネルギー設備の整った家に1戸あたり160万円を支援する。2025年度から申請を受け付ける。新たに国土交通省と環境省が『グリーントランスフォーメーション(GⅩ)志向型住宅』という超省エネ住宅の区分を設け、補助の対象にする。24年度まではエネルギー消費を大きく減らす『ZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)水準』の住宅を補助の対象にしていた。ZEH水準は従来型の住宅に比べ、エネルギー消費量を20%以上減らしているなどの条件があった。GX志向型では削減量を35%以上に引き上げる。同時に、ZEH水準では必須ではなかった再エネの活用で、消費エネルギーを実質ゼロにすることを求める。GX志向型の住宅はZEH水準よりも性能が高い断熱窓や断熱材、効率のよい給湯器などが必要になる。再エネ活用のために太陽光パネルや蓄電池なども備えなければならない。GX志向型住宅の補助について、居住する世帯の年齢や世帯構成は問わない。個人の注文住宅に加え、分譲住宅や賃貸住宅も補助の対象とする。」(『日本経済新聞』2024.11.29)

その他