情勢の特徴 - 2024年12月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「官公需での価格交渉で『入札により価格決定しているため価格交渉不要』との回答が約6割に上ったことが、経済産業省中小企業庁が11月29日にまとめた9月の価格交渉促進月間フォローアップ調査結果で明らかになった。また、価格転嫁ができた官公需案件の価格転嫁率は55.8%だった。調査は、中小企業などに発注側の親事業者との価格交渉や価格転嫁の状況を聞くもので、発注者が国の機関や自治体の官公需について回答した2431社の状況を分析した。官公需の調査結果を公表したのは今回が初めてとなる。」(『建設通信新聞』2024.12.02)
●「政府は11月29日の臨時閣議で2024年度補正予算案を決定した。同22日決定した総合経済対策の関係経費として総額13兆9310億円を計上。公共事業関係費には総額2.4兆円で、うち防災・減災、国土強靭化対策に1兆4063億円を充てる。開会中の臨時国会に提出し成立を目指す。」(『建設通信新聞』2024.12.02)
●「厚生労働省はパート労働者に社会保険料の負担が発生する『106万円の壁』を2026年10月に撤廃する調整に入った。企業規模による加入要件も27年10月に撤廃して、週20時間以上働く人は原則として社会保険料を納める仕組みに移行する。老後の年金を手厚くするとともに、厚生年金や健康保険の制度の支え手を増やす。与党幹部に政府案を示した。調整を進めたうえで、25年通常国会に年金改革関連法案を提出する。パート労働者は現在、①労働時間が週20時間以上②年収106万円以上③企業規模が51人以上④学生ではない――といった要件をすべて満たすと、厚生年金や健康保険といった社会保険に加入しなければならない。年収106万円以上の賃金要件を26年10月になくすのは最低賃金の見直し時期を踏まえた。最低賃金は毎年10月に見直しており、26年10月までにあと2回上がる見通しだ。仮に25年と26年も、24年と同じ上げ幅になれば、すべての都道府県で週20時間働く人の年収が106万円を超えることになる。壁を撤廃する環境が整う判断した。企業規模の要件は27年10月に撤廃する。パート労働者の社会保険加入は中小企業に配慮して16年10月から501人以上の企業を対象に始まった。規模要件をなくすことで、勤務先に左右されずに手厚い保障を受けられるようになる。29年10月からは5人以上の従業員がいる個人事業所の全業種を厚生年金の加入対象にする。厚労省は一連の改革で200万人が新たに社会保険に加入すると見込む。」(『日本経済新聞』2024.12.06)
●「マンション投資の先行きに不透明さが増している。民間試算の理論値では東京都心の物件に2023年までの10年間、投資していれば2億円超の利益が出た。今もこうした差益狙いの投資が多いが、直近では『見込み違い』が増えている。東京カンテイ(東京・品川)の試算では、港区の六本木一丁目駅(東京メトロ)の70平方メートルの新築マンションを13年に取得して10年間賃貸し、23年に売却した場合、利益は約2億3000万円。年利回りは22.4%だ。実際の投資実績ではなく、売買価格、賃料のデ一夕から算出した理論値で、税やマンション管理費などは考慮に入れていないが、首都圏ではほかにも1億円以上の利益が出た地域が複数あった。今も東京都心マンションの利益にひかれる人は多い。賃貸を考えず自らが住み、いずれ売却して利益を得る狙いの『半投資・半実需』も目立つ。『賃貸より売却を重視する傾向はバブル末期とそっくりだ』(東京カンテイの井出武執行役員)。23年の利益の前提となる13年の取得価格は、アベノミクスが本格化し、価格が急上昇を始める直前の数値。相対的に安値で取得し、価格上昇の恩恵をフルに受けた結果であり、足元では見込み違いが増えている。」(『日本経済新聞』2024.12.10)
●「政府が9日に.2024年度補正予算案を開会中の臨時国会に提出したことで、24年度の一般会計の公共事業予算規模は、受託工事の人件費や公共事業費負担金などを除いた土木分野の『公共事業関係費』が7兆5078億円、船舶建造費なども含む建築分野の『その他施設費』が2兆1149億円で、土木分野と建築分野を合わせた『公共事業費』の総額は9兆6227億円となった。公共事業費のうち、経常部門歳出分や出資金分、貸付金分を差し引き、空港燃料税や電波利用料による整備費などの特定財源見合いを加えた『投資部門』で見た公共事業費は、公共事業関係費8兆3827億円に、その他施設費2兆1287億円を足した10兆4914億円となっている。24年度補正予算案の公共事業費は、公共事業関係費2兆1302億円、その他施設費1兆0827億円の計3兆2130億円。ただ、当初予算の公共事業関係費から15億円、その他施設費も3億円を減額補正していることから、実質の追加額は公共事業関係費2兆1287億円、その他施設費1兆0823億円の計3兆2111億円となる。」(『建設通信新聞』2024.12.10)
●「自民、公明、国民民主の3党は11日、所得税の非課税枠『年収103万円の壁』に関し2025年から引き上げることで合意した。3党の幹事長が25年度税制改正をめぐる合意書を交わした。引き上げ幅については『178万円をめざす』と明記し協議継続を確認した。ガソリン税に上乗せしている旧暫定税率の廃止でも一致した。」(『日本経済新聞』2024.12.12)

行政・公共事業・民営化

●「政府は、第3次担い手3法を踏まえ、入札契約適正化法(入契法)に基づく『公共工事の入札及び契約の適正化を図るための措置に関する指針(適正化指針)』の改正案をまとめた。改正入契法で創設した国による勧告権の詳細を定め、勧告を受けた公共発注者は『直ちに入札・契約適正化の必要な措置を講ずる』とした。国土交通省が2日に開いた中央建設業審議会の総会に示し、大筋で了解された。近く閣議決定する見通し。」(『建設通信新聞』2024.12.03)
●「国土交通省と全都道府県は、2025年度中に全市区町村で週休2日工事が行われるよう連携して働き掛け・助言に取り組むことで合意した。公共工事入札契約適正化法(入契法)に基づく実態調査(入契調査)結果を見ると、22年度の時点で週休2日工事(交代制を含む)を1件でも実施している市区町村は379団体で、全体の22.0%に過ぎなかった。国交省によると、23年度の実績で実施率は『50%を若干超える程度』に高まる見通し。24年度中に管内市区町村の実施率100%を見込む都道府県もあるという。」(『建設工業新聞』2024.12.06)
●「国土交通省は直轄工事の発注標準を見直す。建設工事費デフレーターの値が急激に上昇していることなどを踏まえ、等級区分を設定している全6工種で改定し、14%程度引き上げる。全国企業が対象となる一般土木と建築のA等級は、現行の予定価格7億2000万円以上から8億2000万円以上に変わる。2025年度契約工事から適用する。発注標準の見直しは1999年度以来26年ぶり。」(『建設通信新聞』2024.12.11)

労働・福祉

●「女性の正社員が増えている。2024年上半期の正社員数(1~6月の平均値)は15~64歳で1241万人となり、03年以来21年ぶりに非正規社員の数を上回った。上半期として5年連続で最多を更新した。若い世代で上昇幅が大きかった。医療・介護のほか製造業など人手不足の業種で採用が活発になっている。総務省の労働力調査から各年の上半期の数字を集計した。正社員の比率は前年同期比0.6ポイント上昇の50.5%で非正規の49.5%を上回った。平成バブル期の1990年前後は60%を超えていたが、女性の就業者数全体が少なかったため正社員の人数では今より200万人ほど少なかった。その後、労働者派遣法の改正やバブル崩壊とリーマン危機後の人件費削減で非正規社員へのシフトが進み、14年には44.3%まで落ちた。24年までの10年間で正社員比率は6.2ポイント上がった。正社員が264万人増えた一方で、非正規は11万人減った。正社員が増えている一因は、人手不足のなかで企業が女性の採用を増やしているためだ。この10年間の正社員比率の上昇幅は若い世代ほど大きい。25~34歳が最も大きい11.8ポイントだった。一方で55~64歳は4.0ポイントの上昇にとどまった。この10年間の正社員数の伸びを産業別に見ると、医療・福祉が最大の71万人だった。高齢化で需要が伸びる看護師や介護職員などが増えている。製造業(30万人増)、情報通信業(29万人増)が続いており、人手不足の業界が目立つ。正社員が増えているのは、結婚・出産後も仕事を続ける女性が増えたことも大きい。出生動向基本調査によると、第1子出産後も働き続ける妻は直近で53.8%と、20年間で2倍以上に増えている。育児休業制度の充実や女性の高学歴化などが背景にあるとみられ、女性の就業率が30代で急に下がる現象『M字カーブ』も解消しつつある。」(『日本経済新聞』2024.12.01)
●「2025年度の公的年金の支給額は3年連続で引き上げ改定になる。試算では足元の物価や賃金の上昇に対応して1.9%ほど増える。支給額の伸びを抑える『マクロ経済スライド』が初めて3年連続で発動し、引き上げ率は賃金などの上昇幅より0.3%分目減りする。」(『日本経済新聞』2024.12.01)
●「厚生労働省は、2025年度の雇用保険料率を8年ぶりに引き下げる方針だ。雇用環境が改善していることから、失業手当に使う『失業等給付』の料率を下げる。新型コロナウイルス禍に取り崩した積立金が回復傾向にあることを反映する。」(『日本経済新聞』2024.12.04)
●「日本道路建設業協会(西田義則会長)は、時間外労働や週休2日の実態に関する2023年度の会員企業調査結果をまとめた。時間外労働は、23年度自主目標『年間720時間以内』の達成率が97.9%となり、前年度より1.5ポイント上昇した。週休2日の取り組みも、目標とした『第1・第2・第4土曜日閉所』の平均実施率が3.4ポイント上昇の62.2%となり、着実に進展している。労働者ベースの4週8休以上の割合も80%を超えた。上限規制順守に向けては、公共工事に比べて条件の厳しい民間工事の環境改善が主要課題となっている。」(『建設通信新聞』2024.12.05)
●「全建総連の首都圏5組合(埼玉土建、東京土建、千葉土建、神奈川土建の各一般労働組合、神奈川県建設労働組合連合会)は、第4回『首都圏建設労働組合基本調査』の結果概要をまとめた。『(上位業者との)年齢別賃金・単価の引き上げ交渉の状況』を調べたところ、年齢層が若いほど『交渉して上がった』との回答が多かった。第3次担い手3法で受注者による原価割れ契約が禁止されたことなどが追い風になっているという。同調査はほぼ10年ごとに実施する包括的調査。今回は2023年12月~24年6月にアンケート方式で行った。有効回答は6588人。10月からヒアリング調査も行っている。」(『建設工業新聞』2024.12.11)

建設産業・経営

●「海外建設協会(佐々木正人会長)は、2024年度上期(4-9月累計)の海外建設受注実績の速報値をまとめた。受注総額は、前年同期比13.6%減の9871億4400万円となった。前年同期に北米で1000億円超の大型案件が2件あった反動による減少で、受注額としては堅調に推移している。」(『建設通信新聞』2024.12.02)
●「積水ハウスが米国で職人の育成を始める。日本から現場監督や設計士を派遣し、精度の高い施工技術などを伝授する。トランプ氏の大統領就任が決まり、移民の働き手が多い米建設業界では人材不足が懸念されている。積水ハウスは幅広い業務に対応できる職人を自ら育て、米国市場の開拓に本腰を入れる。」(『日本経済新聞』2024.12.05)
●「全国建設産業団体連合会(石津健光会長)は4日、第29回専門工事業全国会議を開き、担い手確保・育成など4点について、正会員団体に所属する専門工事業から上がった意見を国土交通省に伝達した。賃金支払い実態の調査結果を踏まえて設定することから、賃上げ状況が単価へ反映されるまでにタイムラグがあるなどとして、公共工事設計労務単価の調査方法を抜本的に見直すよう求める声も届けた。」(『建設通信新聞』2024.12.06)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「国土交通省は道の駅とまちづくりを融合させた道の駅『第3ステージ』の実現に向け、支援策を組み合わせた『応援パッケージ』を2025年度に開始する。施設整備を含めた第3ステージに取り組む道の駅に対し、省庁横断で後押しする。公募に当たってはまちづくり目標などを盛り込んだ推進計画の提出を求める方針。公募要領を作成し、月内にも公募を始める。年度内に対象となる道の駅を選定する。3日に『道の駅第3ステージ推進委員会』(座長・石田東生筑波大学名誉教授)の第12回会合を開き、検討状況を明らかにした。『応援パッケージ』の対象は施設整備や改築を伴うリニューアルを行い、第3ステージ施策の推進に取り組む道の駅。要件として道の駅がある地方自治体と道の駅駅長の連名による『第3ステージ推進計画』の提出を求める。同推進計画には▽まちの目標や目指すべき姿とその中での道の駅の役割▽想定する具体的な取り組み▽実現のための連携体制―の三つを盛り込む。支援期間は3年間。」(『建設工業新聞』2024.12.05)
●「物価の変動があまりみられなかった『岩盤品目』の一つである家賃の上昇が鮮明になっている。11月の東京都区部の消費者物価指数(CPI)では、一般的な賃貸住宅の家賃を示す『民営家賃』が前年同月比0.9%プラスと1994年11月以来、30年ぶりの高い上げ幅となった。日銀の利上げでこの傾向が長続きする可能性もある。『ニーズの高いエリアでは空室になったタイミングや更新の際に賃料を強気に設定する動きがある』。不動産調査会社の東京カンテイ(東京・品川)の担当者は家賃の動向をこう分析する。同社によると、東京23区の分譲マンションの10月の募集賃料は1平方メートルあたり4264円だった。5年前と比べて15%ほど上昇している。」(『日本経済新聞』2024.12.07)
●「新築マンション価格が賃金の伸びを上回るペースで上昇し、実需層にとって手が出しにくい存在となっている。投資対象としての人気が根強く、デベロッパーも『億ション』を大量供給する。特に東京都では平均価格が年収の18倍と、実需層を置き去りにするような市場になっている。東京カンテイ(東京・品川)の集計によると、新築マンションの平均価格が平均年収の何倍かを示す『年収倍率』が2023年時点で10.09倍(全国平均)に達した。22年から倍率は0.43ポイント上昇し、全国平均としては06年の調査開始以来はじめて10倍を超えた。23年に分譲された新築マンションの価格(70平方メートル換算)を、平均年収で割って算出した。都道府県別でみると、最も高倍率だったのは東京都の17.78倍だった。平均年収が592万円、マンション価格は1億526万円だった。22年時点では平均年収が578万円、マンション価格が8561万円で倍率は14.81倍だった。年収の伸びを大きく上回るマンション価格の高騰で倍率が跳ね上がった。」(『日本経済新聞』2024.12.12)

その他

●「韓国国会は14日、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領による非常戒厳宣言は憲法違反だとして野党が提出した2度目の弾劾訴追案を可決した。尹氏は職務停止となり、韓悳洙(ハン・ドクス)首相が軍の統帥権を含む権限を代行する。憲法裁判所が180日以内に罷免の是非を判断する。弾劾案の賛成票は可決に必要な在籍議員数(300)の3分の2を上回る204票だった。反対85票、棄権3票、無効8票だった。与党『国民の力』の議員から少なくとも12人が賛成に回ったとみられる。1987年の民主化以降、初めて出された非常戒厳宣言により、約2年半の任期を残して尹氏は職務執行停止に追い込まれた。韓国大統領の弾劾訴追は2004年の盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領、16年の朴槿恵(パク・クネ)大統額に続く3例目となる。」(『日本経済新聞』2024.12.15)