情勢の特徴 - 2024年12月後半
●「政府の経済対策を裏付ける2024年度補正予算か17日の参院本会議で、自民、公明両党や国民民主党、日本維新の会などの賛成多数で可決、成立した。一般会計の歳出総額で13兆9433億円を計上した。前年度を上回る規模で、歳入の半分近くの6兆6900億円を新規国債発行で賄う。石破茂政権は野党の主張の一部を補正予算に組み込んだ。予算案が国会審議で修正され成立したのは28年ぶり。首相は17日夜、『少数与党の中で本当にいい審議ができた』と述べた。首相官邸で記者団に語った。」(『日本経済新聞』2024.12.18)
●「自民、公明両党は20日、与党政策責任者会議で2025年度の与党税制改正大綱を決定した。所得税の非課税枠『年収103万円の壁』を123万円にする方針を明記した。178万円への引き上げを求めた国民民主党との協議はいったん打ち切られたものの、改めて調整する。政府は年内に大綱を閣議決定し、25年の通常国会に関連法案を提出する。与野党の協議次第では提出前後に内容を修正する可能性も残す。自民党の宮沢洋一、公明党の赤羽一嘉両税制調査会長は大綱決定後、国会内で記者会見した。宮沢氏は所得税の『年収の壁』是正による減収は年6000億~7000億円を見込んでいると説明した。『物価が上がり、経済が大きくなっている中で財源を考えなくていいレベルの引き上げだ』と話した。地方への影響を考慮し住民税の基礎控除は据え置く。…基礎控除を現行の48万円から58万円に、給与所得控除の最低保障額を55万円から65万円に、10万円ずつ引き上げる。基礎控除の引き上げ幅は身近な品目の物価上昇率を根拠とした。25年1月から適用し、源泉徴収分は年未調整で対応する。高所得者の減税効果は抑制する。控除を段階的に減らす要件を2400万円から2350万円に下げる。」(『日本経済新聞』2024.12.21)
●「政府は27日、2025年度予算案を閣議決定した。一般会計の総額は115兆5415億円で当初予算案としては2年ぶりに増え、過去最大となった。物価上昇を背景に税収も78兆4400億円と過去最高になる見込みだ。国債の新規発行額は17年ぶりに30兆円を下回るなど表面上は財政健全化が進んだ。」(『日本経済新聞』2024.12.28)
●「国土交通省は、建設業団体に対し、下請け契約・代金支払いの適正化や施工管理の徹底などを要請する文書を13日付で発出した。同日に一部規定が施行された改正建設業法を踏まえ、建設業者として求められる対応を追記。発注者・元請け間の協議によって契約後に原材料費などの変動を理由とした請負代金額の変更が行われた場合は、その下請け契約でも請負代金額変更を適切に協議することが重要と指摘している。資金需要の増大が予想される夏季と冬季に、不動産・建設経済局長名で毎年発出している文書。改正建設業法の13日施行により、請負契約書の法定記載事項が明確化され、『価格などの変動または変更に基づく工事内容の変更または請負代金の額の変更及びその額の算定方法に関する定め』を記載しなければならないことになった。通知では、この規定を周知するとともに、工期または請負代金額の変更が必要と認められる場合は、法定記載事項に基づいて書面での契約変更を徹底するよう求めた。また、改正建設業法の施行により、請負代金や工期に影響を及ぼす事象が発生する恐れがある場合、契約締結前に『恐れ情報』を注文者へ通知する義務が建設業者に課せられるとともに、その事象が実際に発生したことを受けて建設業者が契約変更を申し出た際には注文者が誠実に協議に応じる努力義務を負うことを追記した。下請け代金の設定に当たって労務費は、建設キャリアアップシステムの能力評価を例示しながら、技能者の地位や技能を反映した賃金の支払いにつながるよう具体的な見積もりとすることが望ましいとした。」(『建設通信新聞』2024.12.17)
●「国土交通省と総務省は18日、入札契約適正化法(入契法)などに基づく2024年度入契調査の結果を発表した。工期設定に当たっての猛暑日の考慮状況を初めて調査したところ、都道府県と政令市はともに8割だった一方、特殊法人等は3割、国は2割と低く、市区町村では1割にとどまった。猛暑日は中央建設業審議会による『工期に関する基準』の3月改定で工期設定の考慮事項に位置付けられたもので、都道府県、政令市以外の公共発注者には基準が十分浸透していない状況が浮き彫りになった。週休2日工事などの実施割合は、市区町村が5割を超えた。」(『建設通信新聞』2024.12.19)
●「国土交通省は、国の各省庁や地方自治体を含めた公共工事全体の不調・不落の発生状況をまとめた。直近の調査実績となる2023年度の入札案件の不調・不落発生率は7.2%。過去5年で発生率は最も低かった。国交省は『トレンドとしては不調・不落は減少傾向』とし、各発注機関が着実に公共事業を執行していることを裏付けるデータの一つとみている。全公共発注機関を対象とした公共工事入札契約適正化法(入契法)に基づく工事の実態調査(入契調査)の設問の一つとして、不調・不落の合計件数を集計している団体に回答してもらった。全団体の入札行為の総数を母数に、その中で不調・不落となった回数の割合を算出した。」(『建設工業新聞』2024.12.19)
●「国土交通省は24日、2023年度の直轄工事等契約関係資料を公表した。本省や地方整備局など全発注機関を集計対象とした直轄工事全体の23年度契約実績は、件数が前年度比0.2%減の1万2424件、金額が5.0%減の1兆9363億円だった。件数、金額ともに3年連続の減少。金額が2兆円を割ったのは18年度以来5年ぶりで、防衛省からの支出委任で発注した大型の国庫債務負担工事の契約額を前年度に計上した反動などで減った。平均落札率は0.1ポイント低下の92.9%だった。」(『建設通信新聞』2024.12.25)
●「国土交通省は26日、中央建設業審議会の第3回労務費の基準に関するワーキンググループ(WG)を開き、二つの方向性に分けて検討する労務費の基準(標準労務費)の実効性確保策について、各契約段階で適正水準の労務費を確保するための取り組みから個別具体の議論を始めた。適正な労務費は、標準労務費だけでなく、現場の施工条件も踏まえて算出することから、施工条件の良しあしで変動するとした。労務単価部分を引き下げないことを前提に、生産性の高い建設企業が歩掛かりを良くすることで、標準労務費より低い労務費を見積もることは基本的に認められるとの見解も示した。」(『建設通信新聞』2024.12.27)
●「全建総連の首都圏5組合(埼玉土建、東京土建、千葉土建、神奈川土建の各一般労働組合、神奈川県建設労働組合連合会)が行った第4回『首都圏建設労働組合基本調査』の結果概要によると、月給制が着実に浸透していることが分かった。若い年齢層ほど月給制の比率が高く、30歳代未満では月給制が4割を超えた。結果概要によると、『年代別収入(賃金)名目』は月給制が30歳未満42.8%、30歳代40.2%、40歳代29.9%などとなった。『雇用労働者』だけを抽出すると、月給制は前回(2012年)調査から16.9ポイント上昇し52.6%となった。一方、日給月払いは3.3ポイント低下し43.3%になった。人材確保が難しくなる中、小規模・零細事業所が求人条件で月給制の導入を進めたことなどが背景にあるようだ。」(『建設工業新聞』2024.12.13)
●「政府は、改正入管法・技能実習法に基づいて創設する育成就労制度の基本方針を2025年2月、受け入れ対象分野を設定する分野別運用方針の初弾を同年12月にそれぞれ閣議決定する。基本方針と分野別運用方針の策定に当たり、新たな有識者会議を設ける。育成就労制度は特定技能制度と一体的な制度にする観点から、両制度の受け入れ対象分野を合わせる方針で、建設分野が育成就労制度の受け入れ対象分野に位置付けられる見通し。27年6月までに施行する。」(『建設通信新聞』2024.12.18)
●「人手不足対策の在留資格『特定技能』をめぐり、退職者の3人に2人が入社後1年以内に辞めていることが民間調査で分かった。給与への不満のほか、人間関係を退職理由に挙げる人が目立つ。外国人材に長く働いてもらうには、処遇向上や職場のコミュニケーション改善を図る必要がある。2019年に創設された特定技能は一定の技能や日本語力がある外国人が対象で、9月末時点で26万9千人が働く。技能実習を3年終えた後に特定技能に移行するケースが多い。原則として転職できない技能実習と違い、自らの意思で勤務先を変えられる。外国人材の紹介や就労後の支援を手掛けるマイナビグローバル(東京・千代田)が、23年7月~24年6月に退職した350人から対面やオンラインで聞き取りした。退職までの在籍期間を尋ねると10~12カ月が最多の25.4%で、退職者全体の66.9%が在籍1年以内だった。退職理由を複数回答で聞いたところ出身国による違いが大きかった。回答者の8割近くを占めるベトナム出身者は『給与の不満』が31.8%で最多だった。マイナビグローバルの杠(ゆずりは)元樹社長は『ベトナム国内の賃金上昇によって、日本で期待する給与水準も上がっているため実際の支給額に不満を抱きやすいのではないか』と分析する。インドネシアやミャンマーの出身者は『人間関係の不満』を挙げる人がそれぞれ30%と28%で多かった。」(『日本経済新聞』2024.12.24)
●「公正取引委員会は16日、事業者が労務費や原材料費、エネルギーコストの上昇分を発注者に適切に価格転嫁できているかを把握するための特別調査の結果を公表した。価格交渉について協議せず取引価格を据え置くなど独占禁止法上の『優越的地位の乱用』の恐れのある行為が認められた総合工事業325社を含む発注事業者8175社に注意喚起文書を送付した。調査は2023年6月から24年5月の取引を対象とし、43業種11万社にコスト上昇分が適切に転嫁されているかについて受注者、発注者双方の立場で回答を求めた。23年度調査で注意喚起した8175社、事業者名を公表した10社のフォローアップも実施した。回答者数は全体で3万7636社で、このうち総合工事業は1828社だった。総合工事業の調査結果を見ると、全ての商品・サービスについて発注者に価格転嫁を要請した割合は30.0%で全体の30.8%を下回った。発注者に価格転嫁を要請し、全ての商品・サービスの取引価格が引き上げられた割合は46.4%で、こちらも全体の54.2%を下回った。受注者からの価格転嫁の要請額に対する引き上げ額の割合について全体の調査結果を見ると、労務費は前年度と比べ17.3ポイント増の62.4%、原材料価格は1.6ポイント増の69.5%、エネルギーコストは13.8ポイント増の65.9%となった。」(『建設通信新聞』2024.12.18)
●「日本建設業連合会(宮本洋一会長)は、『週休二日実現行動計画』に基づく、2024年度上期のフォローアップ報告書をまとめた。時間外労働上限規制の適用開始後として初めての実績把握。4週8閉所以上の達成割合は、土木が7割を超え、建築も5割に迫った。建設業で始まった新たな法規制を巡り、業界の自助努力に加え、発注者側の理解も進展した結果、現場閉所の取り組みが一気に加速した。調査期間は4月から9月まで、96社が回答した。事業所数合計は1万2152現場(土木6063現場、建築6089現場)、従業員数合計は5万4479人(土木2万6013人、建築2万8466人)。全体の8閉所以上は、前年同期より11.7ポイント上昇して61.1%となり、初めて6割を超えた。」(『建設通信新聞』2024.12.23)
●「日本建設業連合会(官本洋一会長)は、民間発注の建築工事を対象に、4週8閉所・週40時間稼働を原則とする初回見積書の提出に足並みをそろえる『適正工期確保宣言』について2024年度上期のフォローアップ調査報告書をまとめた。4-9月の間に契約に至った1842件のうち、1726件、率にして93.7%で『真に適切な工期』の確保に成功した。成功率は、前回23年度下期調査に比べて10.9ポイントの大幅な上昇となった。時間外労働の上限規制が実際にスタートし、発注者の理解も加速度的に進んでいる。」(『建設通信新聞』2024.12.24)
●「日本の住宅が再び狭くなっている。国の最新調査(2023年)では、1住宅当たり延べ面積は約92平方メートルとピーク時の03年から約3平方メートル狭くなり、30年前の水準に逆戻りした。建設コストが上がるなか、面積を削って価格上昇を抑える『ステルス値上げ』が常態化。適切な広さの住宅が取得できなければ、若年世代が結婚や出産をためらう原因となりかねない。5年に1回の総務省『住宅・土地統計調査』では、住宅全体は1960年代から拡大傾向が続いた後、2000年代に頭打ちとなり、直近5年は縮小が鮮明になった。戸建て、一般的な分譲マンションや賃貸アパートを含む共同住宅も前回(18年)より縮んだ。特に共同住宅は約50平方メートルと、国が『豊かな住生活』の目安に定める都市部の大人2人暮らしの面積(55平方メートル)も下回る。…国土交通省『住宅着工統計』から推定すると、24年に入り、面積の縮小はさらに進んでいる。不動産経済研究所(東京・新宿)の松田忠司・上席主任研究員は『住宅が狭くなる最大の要因はコスト吸収だ』とみる。国勢調査によれば、一般世帯に占める単独世帯の割合が20年までの5年で3.5ポイント高い38%に達するなど広い家への需要は衰えつつあるとの見方もある。ただ、単独世帯などでも『収納などで住宅の狭さに不便を感じる人は多い。供給者側の都合で狭くなった面積に個人が我慢している面が大きい』(松田氏)。一方、近年は建設工事費が大きく上昇した。国交省の建設工事費デフレ一ター(住宅総合)は基準となる2015年度に対し、足元は30%程度高い。人気の住宅地は地価も上昇基調だ。東京カンテイ(東京・品川)の高橋雅之・上席主任研究員は『コスト増をそのまま転嫁すると、高くなり過ぎて需要が続かない。面積縮小で表面的な価格を抑える動きが増えた』と話す。食品などで一時、話題となった価格を据え置く一方、内容量を減らす『ステルス値上げ』と同じ図式だ。」(『日本経済新聞』2024.12.23)
●「石川県が能登半島地震の被災者向けに整備してきた仮設住宅が23月、全て完成した。当初は8月中の整備完了を予定していたが、各地で追加の整備要望が出たことや9月の記録的豪雨などの影響で4カ月遅れた。珠洲市でこの日24戸が完成し、10市町の計約6880戸の整備を終了。地震発生から1年を前に、被災地は生活再建に向けた新たな段階に入った。豪雨で自宅を失うなどした住民向けの仮設住宅は、輪島市と珠洲市で計約280戸を建設中。県は来年3月の整備完了を目指している。…県内の地震による避難者は最大3万人超に上ったが、12月17日時点で約50人に減少。自宅再建中の人がいるほか、豪雨による避難者が今も約310人おり、避難所は当面解消しない見通しだという。県は今年3月末時点で約6610戸の仮設住宅建設を想定。その後、住民の意向変化により市町からの建設要望が増えた。さらに豪雨で建設途中の仮設住宅団地が被害を受けるなどしたため、完成が大幅に遅れた。…建物は大半がプレハブ型。将来的に災害公営住宅に転用できる木造の集合住宅型は全体の22%に当たる1502戸が整備された。」(『日本経済新聞』2024.12.24)
●「2025年1月1日に能登半島地震から1年になるのを控え、国土交通省は復旧・復興の現状をまとめた。9月に豪雨災害が被災地を再び襲い、復旧にも影響を及ぼしたものの、切迫した箇所の応急対策は年内にほぼ完了し、本復旧が始まりつつある。ハード整備だけでなく産業やなりわいの再生に向けた取り組みも本格化し始めている。被災地では石川県が6月に『創造的復興プラン』を策定。被災市町でも復興まちづくり計画の策定に取り組んでおり、25年3月中に全ての被災市町が計画を策定できる見通し。応急仮設住宅は計画全戸数が着工済みで25年3月末までの完成を目指す。災害公営住宅は大半の自治体が24年度内に設計に着手。先行する能登町などでは25年夏ごろに着工する予定だ。」(『建設工業新聞』2024.12.27)