情勢の特徴 - 2025年5月前半
●「経済産業省は薄くて曲がる新型のペロブスカイト太陽電池について、近く東京、大阪、愛知、福岡の4都府県に導入目標の策定を要請する。平野の少ない日本で従来型の太陽光パネルの設置場所は限られる。東京都は2040年までに年間電力消費量で55万世帯分の設置目標を表明する。50年までに温暖化ガスの排出を実質ゼロにする政府目標の実現に向けては、太陽光や風力といった再生可能エネルギーによる発電の導入拡大が求められる。太陽光では今後は都市部の高層ビルなど建造物への設置が有効だとみて、普及加速を後押しする。7日に開く経産省の官民協議会で大都市圏の東京、大阪など4都府県にギガワット級の導入目標の策定を要請する。具体策を盛り込んだロードマップの作成や設置補助金の創設といった取り組みも求める。高層ビルや大規模集客施設といった既存の建造物や、今後着工する施設への設置を促す。東京都は40年までに2ギガワット分の導入目標をまとめており、協議会で表明する。標準世帯で55万世帯分の年間電力消費量にあたる。公共施設に加え、商業ビルや空港、駅といった場所への導入をめざす。都で独自に補助金を設け、設置費用を支援する。」(『日本経済新聞』2025.05.05)
●運送業の倒産が増加を続けている。民間信用調査会社の東京商工リサーチによると2024年度の道路貨物運送業倒産は353件と4年連続で前年度を上回った。年度件数が350件を上回るのは10年度の369件以来、14年ぶり。道路貨物運送業の重荷になっているのは経費の増加と人手不足だ。燃料費の高騰などによる物価高関連倒産は111件発生。人手不足関連倒産は77件と前年度の48件から大幅に増加した。(『しんぶん赤旗』2025.05.08より抜粋。)
●「公正取引委員会は12日、下請け企業への買いたたきや不当な代金の減額といった下請法違反で2024年度に勧告した件数が平成以降最多の21件だったと発表した。金型などを長期間無償で保管させる行為への勧告が9件となり、全体を引き上げた。勧告件数は23年度の13件から8件増えた。過去に勧告が20件を超えたのは、50年以上前の1972年度(41件)まで遡る。公取委は『一定の重大な事案を深掘りし、勧告・公表することに注力して活動した』としている。」(『日本経済新聞』2025.05.13)
●「国土交通省は改正建設業法で定める『労務費に関する基準(標準労務費)』の実効性確保策を巡り、官民の関係者間でほぼ合意が得られた対応の方向性を明らかにした。中央建設業審議会(中建審)のワーキンググループ(WG)で、契約段階で労務費を確保する『入り口』の対策は議論が収束しつつある。労務費などを内訳明示した『標準見積書』の作成と活用促進に向け、発注者や元請・下請などのサプライチェーン(供給網)全体で意見交換する場を設置する方向だ。」(『建設工業新聞』2025.05.02)
●「内閣府民間資金等活用事業推進室は8日、政府が決定するPPP/PFI推進アクションプラン(2025年改定版)の原案を明らかにした。地方自治体の支援強化、民間事業者の環境改善、人口5万人以上の自治体にPPP/PFI活用を促す方針をうたう。事業の検討開姶から事業者決定までの期間短縮や負担軽減を進める考えなども明記する。同推進室は手続きの効率化に関するマニュアルを25年度末に作成する。」(『建設工業新聞』2025.05.09)
●「政府は14日、人手不足が深刻と考えられる建設業など12業種の『省力化投資促進プラン』を策定した。建設業の目標は、労働生産性を2029年度までに9%の向上を目指す(2024年度比・実質値)と設定した。KPI(重要業績指標)として、29年度までに1人当たりの年間実労働時間を全産業平均並みまで減少させることも掲げている。」(『建設通信新聞』2025.05.15)
●「政府の新しい資本主義実現会議(議長・石破茂首相)は14日、中小企業・小規模事業者の賃金向上に関する施策パッケージをまとめた。価格転嫁の取り組みや、建設業など12業種の『省力化投資促進プラン』などで構成。低入札価格が次年度の予定価格の検討ベースとなるのを『厳格に禁止』することや、状況によって国などへの最低制限価格制度の導入を検討することを盛り込んだ。建設業は労働生産性の目標を2029年度までに24年度実質値比で『9%向上』と設定した。」(『建設工業新聞』2025.05.15)
●「国土交通省は、建設業法の条文などで使用される『下請』という用語を見直すべきかどうか検討に乗り出す。今国会で審議されている下請法改正案では『下請事業者』を『中小受託事業者』『親事業者』を『委託事業者』に見直すなど、上下・主従関係のイメージを与える用語を刷新する。ほかの法律でも同じように対応すべきとの声が審議中にあり、対応を求められた格好だ。国交省は検討に当たって、建設業界の当事者らに意見を聴取する機会を持つ考え。下請法改正案を審議した13日の参院経済産業委員会で、国交省の堤洋介官房審議官(不動産・建設経済局担当)が答弁した。堤審議官は、前置きとして『昨今、建設業界でも取引の相手方を「協力会社」や「パートナー」と呼称する動きがある』と説明。その上で『下請法改正案の趣旨を踏まえつつ、業界の意見も十分に伺った上で、建設業法における「下請」という用語の見直しについて必要な検討を行う』と話した。」(『建設工業新聞』2025.05.15)
●「建設業で時間外労働の上限規制が適用後も、主に現場で下請となる専門工事会社に雇用される技能者などの休日取得状況がそれほど改善されていないことが、建設産業専門団体連合会(建専連、岩田正吾会長)の調査で分かった。2024年11、12月時点で実際の休日取得が『4週8休以上』との回答は10.3%で、1年前の10.2%とほぼ変わりなかった。特に公共工事と民間工事で現場閉所の対応に大きな差があり、元請側には週休2日を見込んだ工期の確保や、設計変更に伴う工期延長の徹底を求める声が上がっている。」(『建設工業新聞』2025.05.01)
●「改正労働安全衛生法・作業環境測定法が8日、衆院本会議で可決、成立した。安衛法の保護対象として、建設業での一人親方など個人事業者(フリーランス)を位置付けるとともに、個人事業者の業務上災害報告制度を創設する。職場のメンタルヘルス対策として、ストレスチェックの実施を労働者数50人未満の全ての事業場にも義務化することや、働く高齢者の労災防止に向けた作業環境改善を努力義務とすることなども改正法の柱。改正法は今月中にも公布される見通し。」(『建設通信新聞』2025.05.09)
●「建設産業労働組合懇話会(建設産労懇、会長・木浪周作日本建設産業職員労働組合協議会議長)は12日、6月に一斉展開する『完全週休2日実現統一運動』の共同会見を都内で開いた。木浪会長は建設産業の持続可能性に触れた上で、『私たち自身が希望を持て、次世代に選ばれる産業へと変えていくためには、一刻も早く働き方改革を成し遂げ、完全週休2日を実現しなければならない。誰もがいつまでも働ける、誰からも誇りに思われる産業を目指し、引き続き完全週休2日実現に向けて、建設産業で働く全ての方々と力を合わせ、共に歩んでいく』と決意を示した。」(『建設通信新聞』2025.05.13)
●「日本建設産業職員労働組合協議会(日建協、木浪周作議長)は、加盟組合員の労働環境の実態把握を目的に実施した『2024時短アンケート』の結果を発表した。所定外労働時間の月平均は31.5時間で、前年より4.6時間減少した。時間外労働の上限規制が適用され改善が見られたものの、依然として外勤技術者を中心に労働時間は長い傾向にある。実際の残業時間が会社への報告と異なる乖離(かいり)申告も外勤者の2割で見られた。アンケートは2024年11月に実施し、1万8194人から回答を得た。所定外労働時間が上限規制の原則ルールの45時間を超えたのは23.7%で、このうち100時間以上も1.8%いた。職種別の所定外労働時間は、外勤建築が44.7時間、外勤土木が39.2時間で、ともに前年から約7時間減少したが、内勤と比べて長い傾向は変わらない。外勤の残業理由は『仕事の性格上、早出・残業する必要がある』『発注者向け書類などの業務が多い』『配置人員が少ない』の順に多い。改善に向けては『発注者による適正工期の設定』を挙げる回答が大勢を占めた。」(『建設通信新聞』2025.05.15)
●「国土交通省が発注した道路・河川工事、港湾・空港工事の8割弱で土日閉所を基本とした4週8閉所以上を達成していることが、日本運設業連合会(日建連、宮本洋一会長)の調査で分かった。農林水産省発注の工事も7割強となったが、鉄道や電力など民間工事は5割を下回り、官民の現場にばらつきがあった。日建連は全ての発注機関に対し、既に契約している工事を含む全工事で土日閉所による週休2日制工事(完全週休2日)の原則導入を求めていく。」(『建設工業新聞』2025.05.01)
●「2024年4月から適用が始まった時間外労働の上限規制。特別条項の順守は最低限のものとして、担い手確保・定着などの観点を含め、次なるターゲットとなるのが、時間外労働を月45時間以内、年360時間以内に収める原則ルールだ。日本建設業連合会(宮本洋一会長)が実施した土木工事に関する最新のアンケート調査によると、前年より大きな改曹は見られるものの、約4割の現場で原則ルールを守れていないことが分かった。また、生コンクリートやクレーンなど関連他産業の働き方改革の影響が表面化し、コストアップや作業時間の制約が生じている。」(『建設通信新聞』2025.05.02)
●「建設産業専門団体連合会(岩田正吾会長)が正会員団体の加盟企業に対して2024年度に実施した調査によると、技能者確保の意向がありながら1人も採用できなかったと答えた専門工事企業が4割を占めた。小規模事業者ほど、この割合が高く、採用面で厳しい状況となっている。正会員34団体のうち26団体の加盟企業から得た834件の回答を得た24年度『働き方改革における週休2日制、専門工事業の適正な評価に関する調査』で、『技能者の採用状況』を初めて調べた。その結果、『予定どおり採用できた』が19.1%、『採用できたが、予定人数を下回った』が24.1%、『必要だったが、1人も採用できなかった』が41.1%、『必要なかったので採用しなかった』が15.7%だった。『必要だったが、1人も採用できなかった』の回答企業を社員数別で見ると、『10人から29人』の区分で47.5%、『5人から9人』で51.7%、『1人から4人』で41.3%だった。建専連は『小規模な事業所ほど、採用に苦戦している様子がうかがえる』とする。」(『建設通信新聞』2025.05.02)
●「積水ハウスは7日、グループで雇用する住宅建設の職人を2033年までに現在より7割多い1000人に増やすと発表した。職人は大工と呼ばれることも多く、1000人規模は住宅大手でも珍しい。建設現場はベテランの団塊世代が75歳以上となって引退する『2025年問題』が懸念されている。職人を率いる一部のリーダーの年収を4割増やすなど待遇面も改善し、人手の確保を急ぐ。」(『日本経済新聞』2025.05.08)
●「建設産業専門団体連合会(岩田正吾会長)が正会員団体の加盟企業に対して2024年度に実施した調査によると、技能者の給与支給額(月額、中央値)は、登録基幹技能者、職長、日本人技能労働者、外国人技能実習生の4区分が前年度調査に比べて増え、外国人就労者(特定技能を含む)の1区分は減った。40万円台になった登録基幹技能者が1万円を超えるなど、職階が高いほど増加幅が大きい。正会員34団体のうち26団体の加盟企業から、834件の回答を得た24年度『働き方改革における週休2日制、専門工事業の適正な評価に関する調査』の結果を整理・分析したもの。24年度の給与支給額は、登録基幹技能者が1万2211円増の40万3704円、職長が7479円増の36万4441円、日本人技能者が3858円増の30万6548円、外国人技能実習生が4987円増の21万2662円、外国人就労者が738円減の27万5750円だった。」(『建設通信新聞』2025.05.08)
●「建設関連業の1件当たりの契約金額が上昇傾向にある。国土交通省がまとめた建設関連業等の動態調査によると、建設関連3業種上位50社の2024年度契約金額は、建設コンサルタント業と地質調査業が前年度を上回った。このうち、建設コンサルは過去最高を更新した。一方、測量業・地質調査業を含めた3業種の件数は過去6年で最も低く、1件当たりの契約金額も上昇傾向だった。建設コンサルは、24年度の契約金額が前年度比2.6%増の7039億9600万円と初めて7000億円台を突破した。一方、件数は2.5%減の4万6048件と令和元年度(19年度)以降で最も低い。」(『建設通信新聞』2025.05.09)
●「建設資材のセメントや生コンクリートの国内需要の縮小が止まらない。セメント協会(東京・中央)がまとめた2024年度のセメントの国内需要量(国内販売量と輸入量の合計)は23年度比5.6%減の3265万トンとなり59年ぶりの低水準となった。セメントを原料とする生コンクリートの出荷は過去最低になった。国内の建設現場で残業時聞の制限などによって工事が停滞し、内需が落ち込んでいる。24年度のセメントの国内販売量は23年度比5.6%減の3263万2263トンだった。前年度を下回るのは6年連続だ。25年3月の月間のセメント国内販売量は前年同月比3.7%減の267万1039トンとなり31カ月連続で前年同月を下回った。セメントを原料とする生コンクリートの出荷も6年連続で減った。全国生コンクリート工業組合連合会(東京・中央)によると24年度の全国の生コン出荷量は23年度比6.4%少ない6569万3396立方メートルで過去最低だった。官公庁向けと民間向けいずれも低調だった。25年3月は前年同月比7.0%減の524万2901立方メートルだった。」(『日本経済新聞』2025.05.10)
●「国土交通省は、建設業許可業者約47万者のうち約1万2000者を対象とする建設工事受注動態調査の2024年度結果をまとめた。受注高は前年度比16.8%増の126兆6419億円で、2年ぶりに増加した。元請け、下請けともに増えている。業種別も総合工事業、職別工事業、設備工事業の全てで増加した。」(『建設通信新聞』2025.05.14)
●「上場大手ゼネコン4社の2025年3月期の決算が14日までに出そろった。各社手持ち工事が順調に進捗(しんちょく)したほか、物価高騰を背景に工事単価は上昇しており、連結売上高は清水建設を除き3社が前期を上回った。建築の完成工事総利益(粗利)率改善や土木での設計変更の獲得が寄与し、各段階の利益は全社ベースで増加した。鹿島と大林組の売上高は過去最高を更新した。鹿島は5期連続の増収増益を目指す。」(『建設通信新聞』2025.05.15)
●「国土交通省が建築着工統計調査の最新結果を4月30日公表し、2024年度(24年4月~25年3月)に着工した住宅戸数は前年度比2.0%増の81万6018戸だった。09年度(77万5277戸)以来の80万戸割れは免れたが、年度明けに改正建築物省エネ法・建築基準法が全面施行する前の駆け込み着工の影響が大きく、当面は物価高などを要因とした低水準な住宅需要が続く見通しだ。」(『建設工業新聞』2025.05.01)
●「災害時の避難所に欠かせない支援物資が足りていない。日本経済新聞が内閣府のデータを基に南海卜ラフ巨大地震の被害が想定される自治体の備蓄状況を調べたところ、6割で簡易トイレなど主要8品目のいずれかがゼロだった。発災直後に迅速に調達するのは難しく、平時の備えが求められる。3月に政府が被害想定を公表した南海トラフ地震の避難者は最大1230万人と見込む。甚大な被害が想定され、14都県139市町村が指定されている『津波避難対策特別強化地域』は災害用物資や機材をどの程度備えているのか。内閣府のデータ(2024年11月時点)を基に分析した。調べたのは食料、毛布、乳児用粉・液体ミルク、子ども用おむつ、大人用おむつ、携帯・簡易トイレ、トイレットペーパー、生理用品の8品目。国は、被災者の命と生活環境を守るために不可欠な必需品と位置づけており、57自治体が全て確保していたのに対し、6割に当たる82自治体はいずれかがゼロだった。『備蓄なし』が最も多かった品目は乳児用ミルクで、43自治体。他の物資類と比べて保管できる期限が短いことが背景とみられる。トイレットペーパーの41、子ども用おむつの37大人用おむつの35自治体と続いた。」(『日本経済新聞』2025.05.06)