情勢の特徴 - 2025年5月後半
●「世界景気にブレーキがかかってきた。1~3月期の実質成長率は米国と日本がマイナスとなり、ドイツやフランスも0%台にとどまった。長引く物価高に先行きの不透明感が重なり、個人消費が鈍る傾向にある。さらに4月以降は米国の相互関税や自動車関税が企業活動に影を落とし、各国経済を下押しし始めた。安定した回復軌道は見通しにくくなっている。16日発表の日本の1~3月期の国内総生産(GDP)は、物価変動の影響を除く実質で前期比年率0.7%減った。マイナス成長は4四半期ぶりだ。全体の半分以上を占める柱の個人消費がほぼ横ばいで力強さを欠く。インフレの続く食料品の支出が減っている。赤沢亮正経済財政・再生相は『消費者のマインドが弱含んでいる』と話した。内需のもう一つの柱の設備投資は前期比1.4%増と堅調だった。ソフトウエアなどデジタル関連が伸びたとみられる。米関税の影響が本格的に出てくる先行きは楽観できない。日本経済新聞が4~6月期の見通しを民間エコノミスト10人に聞いたところ、実質GDPの予測平均は年率0.2%減と、ほぼゼロ成長だった。1~3月期の落ち込みからの持ち直しは鈍いとの見方が大勢だ。世界経済を揺らす震源地の米国は1~3月期に12四半期ぶりマイナス成長だった。GDPの計算上、差し引く輸入が関税前の駆け込みで増えたのが響いた。個人消費は自動車の駆け込み購入などで1.8%増えた。堅調さを保ちつつ、2024年10~12月期の4.0%増という高い伸びからは減速した。」(『日本経済新聞』2025.05.17)
●「物価高騰の長期化が利益を圧迫」―。全商連付属・中小商工業研究所は先ごろ、2025年上期(3月)営業動向調査の結果を公表した。今期(25年上期)の主要DI値は、全体(全回答者計)で、総合経営判断DI値(▲51.7)、売上DI値(▲38.6)、利益DI値(▲50.7)の全てが悪化。単価・マージンDI値(8.6)は緩やかな上昇傾向が続いているものの、原材料・商品の仕入値DI値(85.6)が6期連続(3年)で80台と高止まりし、『経営上困っていること』のうち『経費の増大』(35.6%)が過去最も高い回答割合だった。中小商工業者は単価・マージンの確保に努めているものの、長期化する物価高騰が経営に大きな影響を与え、利益の減少を余儀なくされている。(『全国商工新聞』2025.05.19より抜粋。)
●「改正下請代金支払遅延等防止法(下請法)・下請中小企業振興法が16日、参院本会議で可決、成立した。対象取引で価格協議に応じない、必要な説明や情報を提供しないなど、一方的に代金額を決める行為を禁止する。手形による代金支払いも禁止する。現行の資本金基準に加え、従業員基準も新たに設けて法適用対象企業を拡大。資本金を少額にしたり、受注者に増資を求めることによる法逃れを防ぐ。振興法では、多段階取引のサプライチェーンで、二つ以上の取引段階にある事業者による振興事業計画を承認し、金融支援できることなどを定めた。改正法によって、適正に価格転嫁できる取引環境を整え、中小企業の賃上げを後押しする。改正法の施行は当初、公布日から1年以内だったが衆院で修正され、2026年1月1日に施行する。改正法では、下請けという言葉が発注者と受注者の上下関係を印象付けるとして親事業者は『委託事業者』、下請け事業者が『中小受託事業者』、下請け代金が『製造委託等代金』に改める。法律名も『製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律』に改正。通称名を『中小受託取引適正化法(取適法)』とする予定。下請振興法でも下請け中小企業が『受託中小企業』、親事業者が『委託事業者』に改め、法律名が『受託中小企業振興法』になる。」(『建設通信新聞』2025.05.19)
●「政府が2026年に利用廃止とする方針の約束手形を巡って、国土交通省は建設業界内の商習慣の適正化を急ぐ。下請法を改正し16日成立した『中小受託取引適正化法(取適法)』で同法の適用対象となる下請取引の代金支払いに手形利用を禁止するが、この規定を建設業法ですぐさま準用することには慎重な姿勢を見せる。他産業の取引に比べて代金支払いまで長期間を要する傾向があるといった建設工事の特性を踏まえ、当面は民間発注者への要請などサプライチェーン(供給網)全体での取引適正化を推進する。」(『建設工業新聞』2025.05.21)
●「石破茂首相が2026年度中の設置を目指す防災庁を巡り、政府の有識者会議の議論が大詰めを迎えている。会議では防災庁の果たすべき役割や、今後取り組むべき具体の施策などを盛り込んだ報告書を作成し政府に提出する。会議の主査を務める福和伸夫名古屋大名誉教授は21日の会議後に取材に応じ、『(6月3月の)次回に決着を付ける方向でまとまりつつある』と説明した。」(『建設通信新聞』2025.05.22)
●「国土交通省は、建築分野の中長期のビジョン策定に向けた有識者会議を23日に立ち上げる。既存建築ストックの有効活用や官民の技術者の確保・育成といった政策課題への対応についての論点を定めていく。9月下旬の取りまとめを目指す。…ビジョンでは、将来の社会経済情勢の変化を踏まえ、今後10年程度を見据えた建築行政の政策展開の道筋を示す。27年春ごろの策定を予定しており、社会資本整備審議会建築分科会で今後の検討課題としていた『建築物の質の向上』『既存建築ストックの有効活用』『木材利用の促進』『新材料・新技術の導入促進』『持続可能な市街地の実現』『人材確保・育成』などへの対応を盛り込む。」(『建設通信新聞』2025.05.23)
●「国土交通省は、直轄土木工事で働く技能者の賃金や労働時間、下請けに支払われる労務費を把握するために2025年度から始める試行工事の進め方をまとめた。公共工事設計労務単価をベースに労務費、賃金それぞれで『目標金額』を設定し、実際の支払い状況と照らし合わせて適正かどうかを判断する。受注者の協力を得ながら、まずは受注者希望型で実態把握に取り組む。将来的に目標金額がおおむね達成できた場合は『基準金額』へと位置付け、受注者の順守を促していく。」(『建設通信新聞』2025.05.28)
●「PPP/PFIの導入を検討する公共事業の対象を広げる地方自治体が増えてきた。国が推奨する金額を下回る事業でも導入を優先的に検討している団体がある。北海道中富良野町のように民間参入が見込まれ、PPP/PFIの効果が期待できる場合は導入を検討するよう定める団体も出てきた。老朽施設の再編や公有地の活用などでPPP/PFIの導入に前向きな自治体は多く、行方が注目される。」(『建設工業新聞』2025.05.29)
●「日本建設産業職員労働組合協議会(日建協、木浪周作議長)は、国土交通省近畿地方整備局と13日に行った意見交換会を皮切りに、国に対する2025年度の政策提言活動をスタートした。時間外労働の上限規制適用開始から1年が経過した中、政労使で取り組んできた働き方改革を一層推進するため、第3次担い手3法の適切な運用や『4週8閉所+α』の実現などを働き掛ける。今後6月下旬までに順次、各地方整備局や本省を回り、理解と協力を求めていく。日建協の政策提言活動は、組合単独では難しい建設産業界の課題解決に向けた取り組みで、産業の魅力化や組合員の健康増進などの観点から、作業所における4週8閉所の推進や長時間労働の是正に重点を置いている。25年度の政策提言では、▽第3次担い手3法の適正な運用▽4週8閉所+αの実現▽さらなる書類の簡素化▽インフラ分野の業務効率化▽建設産業の魅力向上▽建設キャリアアップシステム(CCUS)のさらなる普及▽働きやすい建設産業の実現▽単身赴任者の帰宅旅費非課税化――という八つの柱を設定した。」(『建設通信新聞』2025.05.16)
●「政府の有識者会議は20日、2027年4月1日施行を予定する育成就労制度の分野別運用方針について議論を始め、受け入れ対象分野に建設分野を設定する方針を明確に示した。建設分野の業務区分は、接続する特定技能制度に合わせて土木、建築、ライフライン・設備の三つとする。育成就労外国人の受け入れ上限として運用する受け入れ見込み数や、本人意向による転籍の制限期間などを主要な論点とし、25年内の閣議決定を目指して6月から本格的に議論する。」(『建設通信新聞』2025.05.21)
●「厚生労働省が22日発表した2024年度の毎月勤労統計調査(確報、従業員5人以上)によると、物価変動の影響を除いた実質賃金は前年度から0.5%減った。マイナスは3年連続。高水準の賃上げで名目賃金にあたる現金給与総額は増えたものの、コメなどの物価高が圧迫し賃金が目減りした。」(『日本経済新聞』2025.05.22)
●「厚生労働省は、企業に対して職場での熱中症対策を義務付ける改正労働安全衛生法施行規則(安衛則)が6月1日から施行するのに当たり、関係者への改正内容などの周知徹底と、その運用に取りこぼしがないよう都道府県労働局に20日付で通知した。6月1日からの具体的な熱中症対策は、熱中症が生じる恐れがある作業を実施する時、労働者が熱中症の自覚症状がある場合や、熱中症の疑いがある労働者を見つけた場合に、その旨を報告するための体制を事業場(現場)ごとにあらかじめ定め、関係者への周知を企業に義務付けた。また、作業中止や身体冷却、医師の診察・処置、事業場での緊急連絡網や緊急搬送先の連絡先と所在地など、熱中症の症状悪化防止に必要な措置内容と実施手順も事業場ごとにあらかじめ定め、関係者への周知を義務化する。いずれも罰則規定があり、対策を怠ると、6カ月以下の拘禁刑か50万円以下の罰金が科される。熱中症対策を義務化する事業場での作業は、通知の中で『暑熱な場所』として、WBGT(暑さ指数)28度以上か気温31度以上の場所で、かつ連続1時間以上か1日4時間超が見込まれる作業と明記した。屋外作業が多い建設現場の多くが対象になる見通し。」(『建設通信新聞』2025.05.22)
●「建設資材のセメントの市中価格が上昇し最高値を更新した。5月の東京地区の指標品は3月より12%高い。輸送費の上昇や設備投資の増加を背景に、セメントメーカーが打ち出した値上げがほぼ満額浸透した。セメントを原料とする生コンクリートへの価格転嫁を通じ建設費用を押し上げる。マンション建設のコスト増加や再開発計画の見直しにつながりうる。」(『日本経済新聞』2025.05.16)
●「日本建築士会連合会(古谷誠章会長)、日本建築士事務所協会連合会(上野浩也会長)、日本建築家協会(佐藤尚巳会長)、日本建設業連合会(宮本洋一会長)、日本建築学会(竹内徹会長)の建築5団体は共同で、次世代の建築人材が国際的に活躍できる環境構築に向け、提言をまとめた。国境を超えた人・モノ・サービスの移動が加速する中、国内の建築学生が海外で、海外で建築を学んだ人材が日本で、それぞれ国内外問わず活躍できる環境整備を目指し、6点の課題に対して取り組むべき方向性を提示した。今後、国を含め、関係機関へ働き掛けていく。」(『建設通信新聞』2025.05.16)
●「主要ゼネコン26社の2025年3月期決算が15日に出そろった。連結売上高は国内建築・土木や海外で工事が順調に進捗した18社が増収となった。本業のもうけを示す営業利益も19社が前期を上回った。底堅い公共投資に加え、民間投資の回復が市場を支えている。26年3月期は12社が増収営業増益を見込む。」(『建設工業新聞』2025.05.16)
●「国土交通省は16日、2024年度末(25年3月末)時点の建設業許可業者数を発表した。総数は48万3700業者。底を打った17年度末(46万4889業者)から徐々に回復し、11年度末以来13年ぶりに48万業者を超えた。ただ24年度に許可を新規取得した業者は過去10年で最も少ない。許可の更新手続きを迎える業者が比較的少ない期間に重なり、廃業・許可失効も低水準となったことが総数増加の主因と言える。」(『建設工業新聞』2025.05.19)
●「建築工事分野で近年、調達や施工体制上の最大の懸案とされる設備工事の逼迫(ひっぱく)は、いまだ落ち着きの片りんも見えず、厳しさが増すばかりだ。日本建設業連合会(宮本洋一会長)が、『2025年春版』として改定し、20日に公表した設備工事費上昇の現状を説明する発注者向けパンフレットによると、大規模建築物に使われる特注の主要な設備機器は、依然として価格上昇が続いている。さらに、設備関係の専門工事業は、総じて労務需給の逼迫度合いが増しており、人手不足の深刻化が労務費や必要経費のアップに拍車を掛ける。」(『建設通信新聞』2025.05.21)
●「マンションなどに使う建設資材である生コンクリートの東京地区の取引価格が約14%上昇し、最高値を更新した。セメントなどの原材料価格や人件費の上昇を背景に生コンメーカーが求めていた値上げを、ゼネコン側が受け入れた。生コン取引慣行の見直しも進んだ。建設市場のコストが押し上げられる。」(『日本経済新聞』2025.05.27)
●「国土交通省は2027年度からセミオーダー式の戸建て住宅の新築の際、87.5%の物件で大陽光発電のパネル設置を要請する。年間供給戸数が300戸以上の事業者を対象として施工を求める。実績を毎年度報告してもらい、下回った場合は国交相による勧告や命令、社名公表といった措置をとる。住宅分野の脱炭素を加速させるため、標準仕様にすることを促す。戸建て購入の際に設備の新設費用が必要となるものの、自家発電による電気代の節約や売電収入の確保につながる可能性があり、国交省は家計負担を抑えられるとみている。」(『日本経済新聞』2025.05.18)
●2月から4月にかけ、岩手県大船渡市で発生した大規模な山林火災で、被災者の仮設住宅への入居が17日、始まった。入居者は「少しずつ前に進んでいきたい」と述べ、生活再建に意欲を示した。仮設住宅は同市赤崎町の旧小学校のグラウンド内に7戸建てられた。木造で、1戸当たりの面積は約30~40平方メートル。24日には、三陸町綾里の旧中学校グラウンドに建設された26戸でも入居が始まる。いずれも入居期間は原則2年間で、その間の家賃などは免除となる。(『しんぶん赤旗』2025.05.18より抜粋。)
●「東京都心部の大型ビルに飽和感が出始めている。日本経済新聞が1年以上にわたり20%超の空室を抱える物件の空室面積を調べたところ、2024年は3年前に比べて12倍に急増していた。湾岸部の苦戦か鮮明で、新型コロナウイルス禍後の出社回帰が進むものの、相次ぐ再開発によってオフィス市況は供給過剰に傾いている。ザイマックス総研(東京・港)が保有するテナント入退去のデータを基に、12年7月から25年1月にかけて東京23区内のオフィステナントの1カ月ごとの入退去動向を集計した。賃貸フロアのうち稼働していない空室がある割合を示す空室率が1年以上にわたり20%を超えるビルを『長期空室ビル』と定義した。賃貸の延べ床面積が5000坪(1万6500平方メートル)超の大型ビルでみると、長期空室の面積は24年平均値で約18.5万平方メートル。21年の12倍に増え、年平均値がわかる13年以降では13年に次ぐ高水準だ。棟数ベースでは16.6棟と7倍に増えている。一般的に市場全体でオフィス空室率が5%を上回ると供給過剰とされる。13年はリーマン・ショックや東日本大震災の影響で企業が雇用を減らしていた時期で、東京23区の空室率は平均7%台だった。24年はコロナ禍の在宅勤務中心の働き方から出社回帰が進み空室率は3%台前半だ。オフィスの賃貸需要は市場全体では堅調であるなか、大型ビルで長期空室が増える背景には再開発による供給増がある。ザイマックス総研によると、東京23区内の大型ビルの賃貸面積は25年末時点に約2400万平方メートルと14年末比で2割弱増える見通しだ。」(『日本経済新聞』2025.05.19)
●「能登半島地震の被災地で、持ち主を特定できないために解体できない空き家に自治体が手を焼いている。こうした所有者不明の物件は把握されているだけで80件を超す。自治体は裁判所の許可の下で解体を行える新制度の活用を模索するが、その数はさらに増えるとみられ、多くの倒壊家屋が放置されたままになる懸念もある。石川県輪島市の『朝市』にほど近い一角。更地が多くなる中、地震から1年4カ月以上が過ぎた今も、柱や屋根が崩れた1棟が手付かずで残る。持ち主とその息子は既に亡くなり、隣家の住人が『何とかしてほしい』と市に訴えてきた。私有財産である家屋の解体には、原則、所有者本人の申請が必要だ。持ち主を特定できない場合、それに代わる管理人の選任を自治体などが裁判所に申し立てる『所有者不明建物管理制度』が2023年に導入された。災害での本格的活用は能登半島地震からで、市はこの制度を使って朝市近くの1棟を取り壊す予定だ。ただ、所有者不明やその可能性がある倒壊した物件は少なくとも輪島市で47件、七尾市で35件に上る。自治体の調査が進むにつれ増えていくとみられるが、制度を活用して解体するには、登記や課税状況、現地調査などで所有者不明の根拠を示さなければならない。現状では、能登半島6市町で申し立てを行ったのは七尾市9件、輪島市7件、珠洲市2件、穴水町1件にとどまり、解体完了まで進んだのは輪島市の1件のみだ。同市の担当者は『相続登記が何代もされていない物件の相続人を一人一人調べるのは負担が大きい』と明かす。」(『日本経済新聞』2025.05.21)
●「国土交通省は地方中小都市を核とする文化や自然、日常生活に直結した『地域生活圏』の形成を通じ、新たな国土形成を目指す。地域生活圏は既存の市町村境界を越え密接に連携し、大都市を中心とする既存の広域都市圏を補完する。国交省は地域生活圏の在り方や形成を促す施策を議論する有識者専門委員会を設置し議論を重ね、今月末に開く次回会合で取りまとめ案を示す予定。6月にも国土審議会(国土審、国交相の諮間機関)に提出する。」(『建設工業新聞』2025.05.21)
●「政府は老朽化した大規模な下水道の更新工事を2030年度までに全国で完了させる。6月に閣議決定する国土強靭(きょうじん)化の中期計画で目標を設ける。全長5000キロメートルの安全性を確保する。対策のおくれから大規模事故も起きている。インフラの老朽化リスクはこれまで指摘されてきた。現行の国土強靭化計画は、速やかな対応が必要と判断した下水道管400キロメートルを21年度から5年以内に改築・修繕する内容にとどまっていた。1月には埼玉県八潮市で道路陥没事故が発生した。古くなった下水道管が破損したことが原因とみられる。県が2週間ほどにわたって120万人に下水道利用の自粛を求め、周辺住民の生活に影響が広がった。県は復旧経費を300億円規模と見込む。下水道は大小合わせて全国で全長50万キロメートルほどある。腐食の発生可能性や高低差などの負荷に左右されるが、一般的に耐用年数は平均50年ほどとなる。国土交通省によると、全体の7%が使用から50年以上となる。このほか40年以上が13%、30年以上が22%に上る。老朽化したまま放置すれば破損や漏水などの問題につながる。八潮市の陥没事故を受け、国交省は上下水道の調査に取り組む。16日に調査結果の一部を公表し、およそ15%が『速やかな対策』か『応急措置の上で5年以内の対策』が必要という結果だった。更新の対象は設置して30年以上が経過した口径が2メートル以上の大規模下水道管となる。損傷した際に道路陥没などのリスクや市民生活への影響が大きいことから優先的に対応する。古くなった下水道管を新しいものへ入れ替えるほか、樹脂を使って管内に新たな防水層を形成する工事をする。公共下水道は原則、市町村が事業主体を担う。使用料収入で経費を賄う『独立採算』で運営し、採算割れは全国の8割程度に上る。国からの十分な支援がなければ更新は難しい状況だ。国は新たな中期計画に沿って国交省が実施する補助事業などを利用し自治体の取り組みを後押しする。」(『日本経済新聞』2025.05.29)