情勢の特徴 - 2025年6月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「加速する少子化が経済成長や社会保障制度の維持の重荷になりつつある。厚生労働省が4日、2024年の人口動態統計を発表した。日本で生まれた日本人の子どもの数は前年比5.7%減の68万6061人で、統計のある1899年以降初めて70万人を割った。国の想定より15年早い。」(『日本経済新聞』2025.06.05)
●「政府の経済財政諮問会議は6日、経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)の原案をまとめた。物価を調整した実質で1%程度の賃金上昇を定着させる方針を打ち出した。盛り込んだ政策は中小企業への支援など従来路線の踏襲が目立ち、具体的な道筋までは描けていない。」(『日本経済新聞』2025.06.07)
●「政府の新しい資本主義実現会議は6日、実行計画改定版の原案をまとめた。中小企業で働く人の資金向上に向け、2029年度までの5年間、生産性を高める集中支援に取り組む。デジタル技術を駆使してより高い賃金を得る人材の『アドバンスト・エッセンシャルワーカー』も育成する。飲食業や宿泊業など特に人手不足が深刻な12業種で『省力化投資促進プラン』を示し、官民で60兆円規模の投資を実現する。」(『日本経済新聞』2025.06.07)
●「年金制度改革法が13日に成立した。就職氷河期世代らの低年金対策として基礎年金の底上げを実施するかを5年後に判断する規定を盛った。パート主婦や働く高齢者の増加を踏まえて厚生年金の仕組みを見直し、働き控えの解消を図る。13日の参院本会議で採決し、自民・公明・立憲民主の3党の賛成多数で可決した。2029年に予定する公的年金の財政検証で基礎年金の給付水準の低下が見込まれれば、底上げを実施するかを判断する規定を盛り込んだ。水準底上げの原資は、厚生年金の積立金を使うと想定する。底上げを巡る規定は二転三転した。政府はもともと低年金対策を盛り込むつもりだった。自民党内で異論が相次ぎ、5月に閣議決定した法案から削除した。自民、公明、立憲民主の3党合意を基に衆院で法案が修正され復活した。」(『日本経済新聞』2025.06.13)
●「日本製鉄は米鉄鋼大手USスチールの買収手続きを18日(米国時間)に完了する見通しだ。買収承認に必要な『国家安全保障協定』を米政府と14日に結んだことを受けて、141億ドル(約2兆円)を投じてUSスチール株すべてを取得する。政治問題化した買収劇は日鉄が一貫して求め続けたUSスチールの完全子会社化で決着する。」(『日本経済新聞』2025.06.15)

行政・公共事業・民営化

●「政府は4日、民間資金等活用事業推進会議を開き、PPP/PFI推進アクシヨンプランの2025年改定版、『多様なPPP/PFI手法導入を優先的に検討するための指針』の25年改定版をそれぞれ決定した。アクションプランは、地方創生2.0の推進に向け、官民連携による公共施設やインフラの整備・維持管理をさらに進めるため、自治体や民間事業者が抱える課題を解消する取り組みを盛り込んだ。指針では、PPP/PFIの導入を促す自治体を広げ、PPP/PFIの優先的検討規程の策定を求める自治体の人口規模を、現行の10万人以上から5万人以上に広げた。」(『建設通信新聞』2025.06.05)
●「2026年度中の防災庁の設置に向けて、政府の防災庁設置準備アドバイザー会議は4日、報告書をまとめ、赤沢亮正防災庁設置準備担当相に提出した。内閣直下の組織として専任の大臣を置き、各府省庁に対する勧告権を持たせることを提言。各府省庁や自治体、団体、企業と調整できる人員体制と、防災対策を抜本的に進めるための予算確保が必要とした。報告書では、防災庁の設置に向けた基本理念や具体施策、必要な組織体制の方向性を提示。防災庁の役割として、▽防災の基本政策・国家戦略の立案▽徹底した事前防災の司令塔▽発災時から復旧・復興までの災害対応の司令塔――の三つを定めた。」(『建設通信新聞』2025.06.05)
●「政府は4日、2026年度から5年間を計画期間とする『第1次国土強靭化実施中期計画』案を公表した。特に推進が必要な114施策の事業規模を『今後の5年間でおおむね20兆円強程度』とし、当初予算とは別枠で確保する考えを示した。埼玉県八潮市の道路陥没事故を受け、3月に提示した素案から施策の一部を見直した。週内にも開く国土強靭化推進本部(本部長・石破茂首相)を経て閣議決定する。」(『建設工業新聞』2025.06.05)
●「国土交通省は、改正建設業法に基づく労務費の基準(標準労務費)の作成方針の見直し案をまとめた。職種別の意見交換を踏まえ、標準労務費を都道府県別に示す考えなどを追記。3日に開いた中央建設業審議会労務費の基準に関するワーキンググループ(WG)では委員間で意見が分かれたため、引き続き議論を深めていく考えだ。」(『建設通信新聞』2025.06.11)

労働・福祉

●「勤労者退職金共済機構の建設業退職金共済事業本部は、導入実現に向けて本格的に議論が始まった、建退共の複数掛け金制度に対する業界ニーズを調査した。現在の退職金水準は不十分との回答が過半数を占め、1000万円以上が望ましいとの意見は全体の3割弱あった。また、負担できる掛け金日額は800円程度以下がほとんどだった。アンケートは元請け、下請け各1000社、任意組合100者を対象に、5月2日から23日にかけて実施。607件(元請け315件、下請け266件、任意組合26件)の有効回答を得た。同月29日に都内で開いた第2回建退共制度検討会議に、結果速報を報告した。元請け回答によると、現在の建退共退職金額について、『不十分』が47.9%、『かなり不十分』が8.3%を占め、これらを合わせると過半数が少ないと感じていた。『妥当』は38.7%だった。定年まで勤める現場作業員の望ましい退職金額を聞いたところ、『500万円程度』が27.3%で最多となり、次いで『1000万円程度』が20.6%、『600万円程度』が15.6%、『800万円程度』が14.6%などとなった。6.3%を占めた『1000万円超』も合わせると、全体の4分の1以上は1000万円以上が望ましいと考えている。」(『建設通信新聞』2025.06.02)
●「2024年(1-12月)の建設業での労働災害による死亡者数が2年ぶりに増加した一方、休業4日以上の死傷者数が3年連続で減少したことが、厚生労働省が5月30日にまとめた24年の労働災害発生状況(確定値)で分かった。新型コロナウイルス感染による労災者数を除いた死亡者数は、前年比4.0%増(9人増)の232人となった。過去最少だった23年の223人を上回り、死亡者数が増加に転じたものの、これまで2番目に少ない20年の256人は下回った。」(『建設通信新聞』2025.06.02)
●「厚生労働省は、2024年(1-12月)の職場での熱中症による死傷災害発生状況(確定値)をまとめた。休業4日以上の死傷者は前年比13.6%増(151人増)の1257人、死傷者のうち死亡者は、前年と同じ31人となった。このうち建設業は、死傷者数が9.1%増(19人増)の228人、死傷者のうちの死亡者数は16.7%減(2人減)の10人だった。」(『建設通信新聞』2025.06.03)
●「厚生労働省は、労働災害統計の死亡災害発生状況には含まれない建設業での『一人親方』の死亡者数が、2024年(1-12月)は前年比17人減の36人だったと明らかにした。労働者扱いとはならない中小事業主や役員、家族従事者も含めた『一人親方など』の24年死亡者数は23人減の57人だった。」(『建設通信新聞』2025.06.03)
●「国土交通省は改正建設業法で定める『労務費に関する基準(標準労務費)』の実効性確保策の方向性をまとめ、3日開いた中央建設業審議会(中建審)のワーキンググループ(WG)に提示した。これまで委員間で意見の相違が目立っていた労務費・賃金を支払う段階の『出口』の対策に手を加え、『コミットメント』制度などを具体化。第三者機関の設置を前提に、賃金支払いの確認システムを運用し優良企業を評価する方策について、官民の役割分担やコスト負担を引き続き検討したい意向を伝え、建設業団体などに前向きな議論を呼び掛けた。」(『建設工業新聞』2025.06.04)
●「国土交通省は、建設分野に焦点を当てて外国人材の新たな在留資格『育成就労制度』の運用の方向性を議論する『建設分野の外国人材育成・確保あり方検討会』の初会合を東京都内で9日開いた。育成就労で入国した外国人材が特定技能にステップアップし中長期的に安定したキャリアを形成できる環境を目指し、受け入れ企業には外国人材本人との共通理解に基づく『キャリア育成プラン』の作成を促す方針。職種ごとの特性を踏まえたプラン策定の手引を用意する方向で検討する。」(『建設工業新聞』2025.06.10)

建設産業・経営

●大阪・関西万博のパビリオン「アンゴラ館」の建設を巡り、注文を受けた3次下請け業者から工事代金が支払われていないとして、工事に携わった電気設備会社が30日、大阪府内で記者会見し、「被害者の会」を設立したと明らかにした。同会代表の男性によると、被害者の会は代金を支払われていない4社で、27日に結成。男性の会社は2月にアンゴラ館の電気関係や塗装などの発注を受け施工したが、3、4月分の代金計約4300万円が未払いとなった。そのため3次下請け業者に確認したところ「経理担当者が会社の資金を持ち逃げした」と支払いのめどが立たない状況を説明されたという。(『しんぶん赤旗』2025.06.01より抜粋。)
●「積水ハウスが5日発表した2025年2~4月期の連結決算は、純利益が前年同期比34%減の333億円だった。主力の米国市場では住宅ローン金利の高止まりを背景に顧客が購入に慎重になっているほか、支払利息の増加や円高による為替差損も重荷となった。売上高は15%増の8940億円と同期間で過去最高だったものの、営業利益は16%減の602億円となった。米国を中心とする国際事業の営業利益は54%減の49億円だった。24年4月に買収した米住宅大手M.D.C.ホールディングスの収益が期初から貢献したが、住宅購入を促すために住宅ローン金利を一部負担するインセンティブがかさんだほか買収に伴うのれん償却費が利益を下押した。」(『日本経済新聞』2025.06.06)
●「国内で商業施設や工場などの建設が停滞している。建設会社が手元に抱える工事は金額にして15兆円を超え、過去最大に膨らんだ。かねて深刻な人手不足に2024年からの残業規制が拍車をかけている。生産性の向上を急がなければ、民間企業の設備投資や公共投資の制約となり、日本の成長力が一段と下振れする恐れがある。…1990年代初めごろも今と同じように手持ち工事高が積み上がっていた。当時はバブルの崩壊で経済が長い低迷期に入る前で、建設需要の増加が大きかった。対照的に目下の大きな問題は業界全体で供給力が縮んでいることだ。総務省の労働力調査によると、24年の建設関連の就業者数は10年前に比べて6%減り、477万人となった。このうち65歳以上が80万人と2割近くを占めた。高齢化率は10年間で5ポイント上がった。加齢で体力が衰えれば若いころのようには働けなくなる懸念がある。社会全体での働き方改革の不可逆な流れも、こと労働力の確保という部分では足かせになる。24年4月に始まった時間外労働の上限規制で、建設業は原則として月45時間、年360時間までしか残業できなくなった。結果として24年の一人あたりの総労働時間は前年から32.3時間減った。マイナス幅は全産業平均の14.3時間を上回る。…建設会社が利益率の高い工事を優先する傾向も強まる。民間の産業用建築物の1平方メートルあたりの着工単価は、24年におよそ30万円と前年から18%も上がった。ある大手のトップは『採算や工期を十分に確保できるかによって厳格に選別している』と語る。近年は中小の建設会社の廃業も目立つ。人手の確保で後手に回り、好採算の案件にあぶれて生き残りが難しくなっているとみられる。労働集約型の産業構造の改革という古くからの課題も改めて浮上する。大和総研の末吉孝行氏は『日本の建設業は中小が多くIT(情報技術)の導入が遅れている』と説く。建設従事者が使える省人化などのソフトウエアの一人あたり導入量はフランスや英国の5分の1にとどまるというのが現状の試算だ。…建設業は日本の国内総生産(GDP)の5%程度を占める。内需の桂である設備投資の3分の1ほどにあたる。たとえば工場の建設が停滞すれば、備え付ける機械の投資の遅れなどにも波及する。ただでさえ低成長が続く日本経済のボトルネックになりかねない。」(『日本経済新聞』2025.06.08)
●「海外建設協会(佐々木正人会長)は、会員52社を集計した2024年度の海外建設受注実績をまとめた。受注総額は、前年度比12.6%増の2兆5808億円となり、2年連続で過去最高を更新した。受注件数は年間200件弱減少したものの、工事の大型化などを背景に受注額が積み上がった。物価高の影響も多少はあるとみられるが、純粋に受注量が増えたという。海外受注はコロナ禍で20年度に急減したが、その後は4年連続で前年度実績を上回っている。」(『建設通信新聞』2025.06.10)
●「全国建設業協会(今井雅則会長)は、都道府県建設業協会の会員企業が、元請け・下請けや注文者・受注者それぞれの立場から、取り組むべき行動などを定めた『労務費等の適切な価格転嫁のための自主行動計画』を改定した。請負契約締結後であっても、労務費や資機材価格、エネルギーコストなどの上昇によって原価が請負金額を上回った場合は、適切な変更協議と契約変更が建設業法上求められることを明文化した。また、改正業法に規定された発注者に対する『おそれ情報』の提示を支援するため、『全国建設業協会様式おそれ情報通知書』を新たに作成した。全建会員以外にも開放する。」(『建設通信新聞』2025.06.12)
●大阪・関西万博の建設工事で、アンゴラ、マルタ、中国の各パビリオンの建設に関わった下請け業者らが13日、工事代金が支払われていないと大阪府庁内で記者会見して訴えた。未払い金は、マルタ館施工B社は約1億1千万円。中国館施工C社は3700万円。B社は元請け企業に5日、未払い金を求めて提訴した。C社は3月に大阪府に未払い問題でメールを出し、翌日に府から万博協会を紹介されたものの解決していない。B社の代表取締役は「工事期間中に協会が『開幕までに間に合わせる』と言ったが、その発言が私たちを最後まで追い込んだ。『命輝く未来社会のデザイン』と言うが、命を削りながらなぜここまでやらないといけないのかと思っていた」と訴え。C社の社長は「公共工事をするつもりで受注したので、未払いなんて夢にも思わなかった」と強調し「3カ月も問題が解決できないのは、憤りを通り越している」と話した。(『しんぶん赤旗』2025.06.15より抜粋。)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「国土交通省は新たに建てるビルなどの建物について、建設から解体に至るまでに排出する二酸化炭素(CO₂)の合計量を算出するよう建築主に要請する。資材や設備調達で脱炭素を意識した選択を促す。法整備を進め、2028年度にも制度を導入する。建物の生涯を通じた環境負荷の検証は『ライフサイクルアセスメント(LCA)』と呼ばれる。鉄やコンクリートなど、どういった資材で建物を造るかに始まり、建設の過程や日々の維持修繕、解体時の廃棄物の処理に至るまで、建物の誕生から解体まで、一連の過程で生じるCO₂排出量を算出する。国交省はLCAを国の制度とするための検討会を立ち上げる。第1回の会議を6月上旬にも開く。有識者や建築主、建材や素材のメーカー、金融機関の代表者が参加する。農林水産省、経済産業省、環境省も議論に入ってもらい、制度の枠組みや支援策、算出方法などを話し合う。」(『日本経済新聞』2025.06.02)
●「国土交通省は5日、能登半島地震とその後の豪雨災害からの復旧・復興状況をまとめた。2024年1月の能登半島地震と同9月の豪雨災害で甚大な被害を受けた能登地域だが、被災箇所の応急対策は『おおむね完了』とし、本格的な復興への段階に入りつつあると説明した。災害公営住宅など住宅分野の再建も進んでおり年度内にも工事が始まる。また石川県内での液状化に伴う側方流動への対応検討も始まった。」(『建設工業新聞』2025.06.09)
●「土木学会(佐々木葉会長)は11日、巨大災害に対する国土強靭化施策の効果を検証した研究の最終報告書を公表した。2024年3月公表の中間報告書に南海トラフ地震の推計を追加。被害額は1466兆円と見積もり、インフラ整備などに58兆円以上を投じることで経済被害を約3割軽減し、対策費の約3倍の財政効果が見込めるとした。報告書の取りまとめを担った藤井聡京大教授は『インフラを強化すると被害は縮小できる。政府は速やかに取り組んでほしい』と力を込めた。」(『建設通信新聞』2025.06.12)

その他