情勢の特徴 - 2025年7月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「財務省が2日発表した2024年度の国の一般会計の決算概要で、税収は見込み額より1兆7970億円上振れた。自民、公明両党が掲げる国民1人当たり2万円の現金給付は必要な予算規模が3兆円台半ばとされる。石破茂首相(自民党総裁)は赤字国債に依存しない方針を示すものの、税収の上振れだけでは足りず、他の財源が必要になる。昨年11月時点の見込みから最も上振れたのは所得税収で1兆900億円ほど上回った。賃上げの勢いが当初予想より力強く、好調な市況を背景に金融所得の税収も増加した。消費税収も見込みを約6700億円上回った。昨年11月時点の見込み額は結果的に堅めの見積もりだった。」(『日本経済新聞』2025.07.03)
●「公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は4日、2024年度の運用収益が1兆7334億円のプラスになったと発表した。24年度が最終年度だった第4期中期目標期間の5年間では累計で約98兆円、資産を増やした。国内外の株高が寄与し高収益となったが、円安の貢献も4割程度と大きい。反動も警戒される。24年度の資産ごとの運用収益は外国株式が4兆3103億円、外国債券が1兆857億円のプラスとなった。世界景気が堅調に推移し世界の株高が運用成績を支えた。国内債券は2兆8426億円、国内株式は8200億円のマイナスだった。GPIFの第4期中期目標期間(20~24年度)では全ての年度でプラスの運用収益となり、合計は97兆9934億円に達した。うち外国株式で約53兆円、国内株式で約37兆円を稼いだ。コロナ禍での世界的な金融緩和や米巨大テック企業の成長が株価を押し上げた。歴史的な円安が進んだことも海外資産の評価額を押し上げた。GPIFが参照する各資産の指数を使って日本経済新聞が要因を分解したところ、5年間の収益率65%のうち、為替の効果は約24ポイント程度と4割弱に及ぶ。単純計算では98兆円のうち36兆円程度が円安効果による『追い風参考記録』とも言える。」(『日本経済新聞』2025.07.05)
●「住宅中ローンを夫婦で借りる割合が2024年、約4割に達した。首都圏などでは新築マンション価格高騰を受け、過去最高を記録。夫婦で借り、かつ返済期間が40~50年といった長期を選ぶ例も20代の1割を超すという調査もある。金利ある世界で膨らむ負債は家計のリスクになり得る。夫婦で住宅ローンを借りる代表的な手法が夫婦で1本ずつ、計2本のローンを借りる『ペアローン』だ。リクルートによると24年の新築マンション購入者では夫婦のペアローン利用率が首都圏で37%、関西圏で25.2%と18年の調査開始以来最高となった。これとは別に夫婦の一方が契約し、他方は連帯債務者などになる『収入合算』もあり、合わせると首都圏の利用率は約40%になる。住宅金融支援機構の全国調査でも24年10月で夫婦などのペアローンや収入合算を合計するとやはり40%程度。23年以前の調査はないが、ペアローンで、かつ返済期間は一般的な上限である35年を超え、最長で50年といった超・長期返済を選ぶ割合も6%弱になったことがわかる。20代に限ると、ペアローンかつ35年超の割合は10%を超す。」(『日本経済新聞』2025.07.07)
●「厚生労働省がまとめた2024年の国民生活基礎調査によると、6月6日時点で全国の世帯総数は5482.5万世帯(前年5445.2万世帯)となった。単独世帯は約35%を占める1899.5万世帯(前年1849.5万世帯)、高齢者世帯は約31%の1720.7万世帯(1656.0万世帯)、児童のいる世帯は約17%の907.4万世帯(983.5万世帯)だった。23年の1世帯当たりの平均所得金額は536.0万円(524.2万円)に増加した。単独世帯、高齢者世帯は世帯数、割合とも過去最高。一方、児童のいる世帯は世帯数、割合とも過去最少となった。世帯構造は単独世帯が最も多く、夫婦のみ、夫婦と未婚の子のみの順になっている。」(『建設工業新聞』2025.07.08)
●「東京商工リサーチは8日、2025年上期(1~6月)の倒産件数(負債額1000万円以上)が前年同期比1%増の4990件だったと発表した。大企業が高い賃上げ率を維持するなか、中小企業は人材流出や労務費増加が痛手となり、人手不足を理由にした倒産が過去最多になった。倒産全体は上半期としては14年以来、11年ぶりの高水準に達した。」(『日本経済新聞』2025.07.09)
●「貿易摩擦など逆風のなか上場企業が配当を一段と増やす。2026年3月期の配当総額は19兆9900億円と前期比3%増え、5年連続で過去最高を見込む。資本効率改革の要請が強まっていることが背景にある。単純計算では家計に約3.5兆円入る。インフレ下で実質賃金が増えにくいなか、個人消費を支える効果が期待できる。」(『日本経済新聞』2025.07.11)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は、6月30日に開かれた中央建設業審議会の総会に、建設工事標準請負契約約款の改正方針案を示した。改正建設業法で契約書の法定記載事項に定めた資材高騰に伴う請負代金の変更方法について、具体的な条項を約款に規定する方向で検討する。12月までに開く次回で改正案を審議する。」(『建設通信新聞』2025.07.01)
●「国土交通省、農林水産省、公共工事設計労務単価の設定のため、10月に実施している公共事業労務費調査の2025年度の実施方針を決めた。例年と同様に約1万件の公共工事を無作為に抽出し、約11万人の技能労働者の賃金実態を把握する。今回は複数職種を兼務する技能者の就労実態を詳しく調べて単価設定に役立てていく。調査は、両省や都道府県、政令市などが発注し10月に施工している1件当たり1000万円以上の工事から約1万件を抽出。対象工事に従事する約11万人の技能者の賃金実態を51職種ごとに都道府県別で把握する。標本数が少ない38職種は9月も調査対象とする。調査に当たってはオンラインと書面の双方を活用する。25年度調査は、技能者の複数職種の兼務状況について詳しく調べる。これまでも過去3年に兼務した職種を最大五つまで聞いていたが、今回はより詳細な実態を把握するため、兼務職種を最大三つまで記入してもらい、その職種の調査対象月の従事日数を確認する。現状、職種によっては標本の不足により単価設定できていない地域がある。複数職種に従事する技能者の調査データを活用することで単価設定の充実を図る。」(『建設通信新聞』2025.07.02)
●「国土交通省が先月公表した2025年版の『国土交通白書』では、建設業などの担い手不足に起因するサービスの供給制約を取り上げた。時間外労働の上限規制適用や資材高騰などの物価高も重なり、生活に必要な身近なサービスの維持・存続が危ぶまれる状況にあると指摘。国民への意識調査を通じ、一般市民目線で現状認識や国土交通行政の役割を捉え直し、今後の施策展開を展望した。国交省の『国民意識調査』は2月に実施。18歳以上で国内在住の3000人を対象にインターネットで回答してもらった。国交省所管の建設業や物流業の担い手不足の認識を聞くと、建設技能者を『深刻』と答えたのは67.6%、建設技術者が『深刻』と答えたのは55.8%といずれも半数を超えた。担い手確保が難しい背景として50代以上の回答者は『未経験では習得し難い専門的なスキルが必要』と技能面のハードルを多く挙げ、30代以下は『労働時間が長い』や『休みが不規則・取れない』と労働環境面の課題を挙げる傾向があった。建設業への入職が進まない課題の認識で世代間ギャップがあることが浮き彫りになった。同じギャップは担い手確保策への意見にも見て取れる。『(専門的スキルの)人材育成』や『外国人材の採用』との回答は約6割が50代以上。『賃上げ』や『(休憩・空調設備の充実など)職場環境の改善』との回答は50代以上が5割に満たず、30代以下が3割超を占めた。国民に身近なサービスのうち、廃止やサービス水準低下があると困るもので最も多かったのは『メンテナンス不足で水道の断水・漏水が発生する』。鉄道やバスの減便・廃止、宅配便や郵便物の遅配も多く挙がったが、それらを回答割合で上回った。日常生活に欠かせないインフラが安定的に利用できることが何よりも求められている証拠だ。」(『建設工業新聞』2025.07.03)
●「国土交通省は建設工事の取引実態の実地調査に当たる『建設Gメン』の活動を強化する。建設Gメンが調査に入る取引事案をあらかじめ洗い出したり、調査結果をフォローアップしたりする『補助員』を5月に配置するなど、より効果的で効率的な活動を展開していく。12月までに全面施行する改正建設業法で労務費のダンピングと減額変更依頼、工期ダンピングが規制されることを見据え、法施行後に問題となる可能性がある行為の改善指導に取り組む。各地方整備局などに設置している『建設業法令順守推進本部』の2025年度活動方針を決定した。建設Gメンの調査項目として▽適正な請負代金・労務費の確保▽適切な価格転嫁▽適正な工期の設定▽適正な下請代金の支払い―などに重点を置く。補助員は四国と沖縄を除く各整備局などに計10人を配置した。」(『建設工業新聞』2025.07.03)
●「改正建設業法に基づき労務費のダンピングや減額変更依頼、工期ダンピングを禁止する措置が12月までに施行となるのに先立ち、国土交通省の『建設Gメン』が施行後に問題となる可能性のある行為を先行的に指導した実例が出てきた。下請や技能者へのしわ寄せが及ぶ恐れがあることから改善を促している。…標準労務費が未設定の状況で労務費の額の多寡を判断するため、最初に提出された『当初見積書』と、価格交渉を経て契約に反映した『最終見積書』での額の変動を確認し、その積算根拠となる施工数量や人工数を調査。1人・日当たりの単価をはじき出し、公共工事設計労務単価と比較した。実際の指導例では当初・最終見積書で労務費の額に変動がなくとも、1人・日当たりの単価が設計労務単価を大きく割り込むケースがあった。これは当初の見積もりに起因する行為として受注者に改善するよう指導した。最終見積書で設計労務単価を下回る大きな減額が確認されたケースでは、受注者と注文書にヒアリングし原因を把握した上で、減額が注文者の変更依頼に起因する場合、注文書に改善指導した。」(『建設工業新聞』2025.07.03)
●「国土交通省は、法定福利費の支払い状況に関する調査結果をまとめた。法定福利費を内訳明示した見積書を提出した事業者は公共工事で約7割、民間工事で約6割となり、民間工事は前回調査と比べ、いずれの下請け次数も割合が増えた。公共・民間とも下請け次数が大きいほど提出割合は減少する傾向が確認された。…法定福利費を内訳明示した見積書を提出した事業者は、公共の1次が72.7%、2次が61.8%、3次以降が50.0%。前年度調査と比べ1次は0.2ポイント増加したものの、2次は3.8ポイント、3次以降は6.3ポイントそれぞれ減少した。民間の1次は58.0%、2次は53.7%、3次以降は42.8%で、いずれも前年度調査から増えた。見積書に内訳明示した法定福利費について、『100%以上受け取れた』と回答した事業者は、公共の1次が80.7%、2次が76.8%、3次以降が72.0%、民間の1次が73.0%、2次が70.2%、3次以降が59.5%だった。」(『建設通信新聞』2025.07.08)
●「国土交通省は、安全衛生経費の支払い状況に関する調査結果をまとめた。各専門工事業団体が作成する安全衛生対策項目の確認表や安全衛生経費を内訳明示する標準見積書を活用している事業者は公共工事、民間工事とも約2割だった。標準見積書を活用した事業者の約8割に適切な安全衛生経費が支払われていたが、下請け次数が大きいほど、その割合は減少していた。」(『建設通信新聞』2025.07.08)
●「関東地方整備局は7日、『建設業法令順守推進本部』の活動状況を公表した。受発注者間の適正取引や時間外労働の実態把握が目的の『建設Gメン』設置後、初の実地調査をまとめた。民間発注者と工事を受注した元請下請合わせ80社を調査したところ、『工期が著しく短いおそれがある』と答えたのは36社だった。建設業法に定めるルールが十分浸透していないと見て、同局は周知活動の徹底に努める。調査対象は、関東管内でおおむね2023年度に完了した民間発注工事から選んだ。内訳は発注者2社、元請14社と下請64社の計80社。是正指導などを行ったのは46社だった。受発注者に対し▽労務費見積▽工期設定▽価格転嫁―の3項目を聴取した。うち労務費は見積書への内訳明示や公共工事設計労務単価を活用しているかを調査した。この結果、『著しく低い労務単価で契約したおそれがある』のは23社だった。工期設定は4週8休や『猛暑日を考慮しているか』に加え、時間外労働の上限規制を超過する労働時間だったかを調べた。36社が著しく短い工期設定だったことを指摘した。」(『建設工業新聞』2025.07.08)
●「国土交通省は公共工事の施工時期の平準化を『閑散期のボトムアップ』と『繁忙期のピークカット』の両面から推進するに当たって、地方自治体発注工事の現状を県域別にまとめた。年度初めの4~6月だけでなく、年度終わりの1~3月の閑散・繁忙度合いを把握し、年間を通じた工事稼働の波を小さくすることに生かす。2023年度の実績を見ると、奈良県内や福岡県内の自治体発注工事で繁閑差が特に大きくなっていることが分かる。」(『建設工業新聞』2025.07.09)

労働・福祉

●「熱中症による死亡者が3年連続で30人以上となるなど事態が深刻化している。厚生労働省は職場における熱中症対策を強化する労働安全衛生規則を改正し、6月1日に施行した。熱中症の重篤化を防止する観点から事業者に『見つける』『判断する』『対処する』を基本とした行動を罰則付きで義務付けた。既に6月から気温30度を超える日が続く今年も猛暑となる見込み。安全な建設現場の運営に向けて改正規則に沿った対応が求められる。改正規則は、▽熱中症のおそれがある作業者を早期に発見するための体制の整備▽熱中症の重篤化を防止するための措置手順の作成▽これらの体制や手順の関係作業者への周知―が柱。…対象となるのは、熱中症の危険性が高いとされる暑さ指数(WBGT)28度以上か気温31度以上の環境下において、連続1時間以上または1日4時間を超えての実施が見込まれる作業。こうした環境下での作業を行う場合に、熱中症の自覚症状がある作業者や、熱中症のおそれがある作業者を見つけた者が、その旨を報告するための体制を整備。そうした体制を関係作業者に周知することも求める。報告を受けるのにとどまらず、職場巡視やウエアラブルデバイスなどを活用した双方向での定期連絡を通じて、熱中症の症状がある作業者を積極的に把握するよう努めることも呼び掛けている。体制整備を通じて熱中症のおそれがある労働者を把握した場合には、迅速かつ的確な判断が可能となる措置を講じることも明記。具体的には、事業場での緊急連絡網、緊急搬送先の連絡先や所在地に加え、作業離脱、身体冷却、医療機関への搬送等熱中症による重篤化の防止に必要な措置の実施手順を作成。それを関係作業者に周知する。」(『建設工業新聞』2025.07.01)
●「国土交通省は6月30日の中央建設業審議会(中建審)で、改正建設業法で規定する『労務費に関する基準(標準労務費)』に関する中建審ワーキンググループ(WG)の中間的な検討状況を報告した。適正な労務費・賃金を確保する契約段階から支払い段階までの実効性確保策の方向性で建設業団体などから異論は出なかった。改正業法の12月までの全面施行を見据え、今後は職種別に検討される具体的な金額などの作成に主な論点が移るとみられる。日本建設業連合会(日建連)の宮本洋一会長は、技能者の処遇改善が標準労務費の目的だと念を押した上で『何よりも大事なのは賃金がしっかり行き渡るよう、適正な水準の労務費が設定されることだ』と強調。発注者を含むサプライチェーン(供給網)全体で価格転嫁が確実に行える環境を実現する重要性を説き、『ウインウインの関係が構築されるよう最大限努力する』と話した。全建総連の小倉範之書記長は、標準労務費を職種ごとに作成するため国交省と関係団体で意見交換を開始したのが6月初めごろで13職種・分野にとどまることを懸念。処遇改善の早期実現を目指し、改正法の全面施行までに『加速度的に標準労務費の作成・勧告が可能となるよう、国交省は関係主体と連携強化を』と訴えた。国交省は6月末までに意見交換の実施が20職種・分野近くまで増えている状況を伝えた。」(『建設工業新聞』2025.07.02)
●「連合は3月、2025年春季労使交渉(春闘)の回答の最終集計結果を公表した。賃上げ率の平均は前年より0.15ポイント高い5.25%だった。24年に続き5%を上回る高水準となったものの、中小企業に限ると4.65%で目標の『6%以上』に届かなかった。中小の賃上げ加速が実現できなければ、実質賃金のプラス定着はおぼつかない。」(『日本経済新聞』2025.07.04)
●「副業・兼業をしている労働者が全体の3%にとどまることが厚生労働省の2024年の調査で分かった。他社での副業・兼業を認める企業は4分の1だった。政府は労働時間を細かく管理するルールが妨げになっているとみて、2026年にも関連法の改正案を国会に提出できるよう検討を進める。調査結果は政府の規制改革推進会議で報告した。有効回収数は事業所が4921、個人が5505で、有効回答率はそれぞれ48.4%、30.9%だった。事業所のうち、他社で雇用される副業・兼業を認めているとの回答は24.7%だった。フリーランスなど非雇用で認めているのは13.2%だった。認めていないが25.7%、把握していないが20.1%だった。個人で副業・兼業をしているのは子会社など本業の関連会社で0.7%、それ以外で2.3%と、合計で3%にとどまった。副業・兼業をしていないとの回答は96.4%だった。規制改革推進会議では副業・兼業が進まないハードルとして労働基準法が定める労働時間の通算を指摘する声が相次ぐ。…4月の会議では社会保険労務士から企業の声として『各社で締め日も適用される労働時間制度も異なり実務上の対応が困難』との紹介があった。『通算を要しないとするルール変更の要望が強い』とも明らかにした。…24年の規制改革会議の答申は、割増賃金の支払いで米欧は労働時間を通算管理していないなどとして、労働基準法など関係法令の見直し検討を求めた。今回の調査は副業・兼業が進んでいない実態を浮き彫りにした。厚労省の有識者会議は通算管理の廃止について年内をめどに結論を出す。規制改革会議の幹部は『26年の関連法改正を目指す』と語る。」(『日本経済新聞』2025.07.05)
●「国土交通省が実施した2024年度の一人親方に関する実態調査によると、工事着手前に見積書を提出していない一人親方は約6割に上ることが分かった。その理由として『提出する習慣がない』が多数だった。工事契約で書面を交わしていない一人親方も約4割を占めた。調査は建設キャリアアップシステム処遇改善推進協議会の構成団体などを通じて24年11、12月に実施し、2277件の回答を得た。工事を請け負う前の見積書について、63.2%が『提出していない』と回答。その理由に『提出する習慣がない』を挙げる回答が最も多かった。『提出するよう指示がなかった』『提出しないように指示された』といった回答も確認された。工事契約時に書面を交わしているかについては、『書面契約していない』が43.6%に上った。『書面契約の習慣がない』を理由に挙げる回答が大勢を占めた。『書面契約をしないように言われた』『過去に書面契約を断られた』などの回答もあった。書面契約をした一人親方のうち、請負代金に必要経費が反映されているかについては、『すべて反映された』が55.5%、『一部反映された』は26.1%、『反映されていなかった』は6.9%だった。書面契約をしても必要経費が必ずしもすべて反映されていない実態が浮かび上がった。また、希望する就業業態を聞くと、『今後も一人親方として働きたい』が65.9%、『できれば雇用労働者として働きたい』が6.7%だった。一人親方として働きたい理由は.『好みの仕事を選べる』、雇用労働者を希望する理由は『安定した収入が得られる』とする回答がそれぞれ最も多かった。」(『建設通信新聞』2025.07.10)
●「厚生労働省は建設業で1年単位の変形労働時間制を導入する時のポイントをまとめたパンフレットを作成した。猛暑や積雪で現場を不稼働にせざるを得ない建設業に特有の事情を踏まえ、同制度を活用すれば年間を通じて労働時間を柔軟に設定可能だと呼び掛ける。制度導入のイメージとして具体的な労働日・労働時間の設定例を紹介し、時間外労働の上限規制への対応などに苦慮している建設業者に参考にしてもらう。」(『建設工業新聞』2025.07.10)

建設産業・経営

●「千葉銀行系のちばぎん総合研究所の受託調査リポート『県内企業の2024年問題への対応状況』によると、適用から1年になる時間外労働上限規制について、建設業の約5割が自社の経営に『悪い影響』を及ぼしたことが分かった。一方、『どちらともいえない』『影響はない』の割合も4割強に上る。規制適用までの猶予期間のうちに2024年問題への対応を前倒しで取り組んできた事業者が少なくないと見られる。」(『建設工業新聞』2025.07.01)
●「資機材などのコスト上昇分を価格に反映する上で必要な『価格交渉』を、建設業でも行うことができる状況へと確実に変わってきたことが、経済産業省中小企業庁がまとめた2025年3月の『価格交渉促進月間』フォローアップ調査の結果で明らかとなった。価格交渉の申し入れや実施などを点数化した『価格交渉の実施状況』の業種別ランキングで、建設業は30業種中4位となり、前回(24年9月)調査からランクアップした。交渉の結果ある『価格転嫁率』も前回調査から上昇している。」(『建設通信新聞』2025.07.03)
●「海外建設協会(海建協、佐々木正人会長)が6月に発表した会員企業52社の2024年度の海外建設受注実績は、前年度比12.6%増の2兆5808億円となった。23年度(2兆2929億円)を超えて2年連続で過去最高を更新した。アジアと北米がけん引し、シンガポールの工場や台湾の商業施設、北米の大規模な上下水道の建設需要を取り込んだことで全体を押し上げた。内訳を見ると、日本の企業本体(本邦法人)が67.8%減の6917億円、現地法人が0.4%増の1兆8891億円だった。本邦法人は大型工事が多いことが要因となりアジアで116.5%増と大幅に伸びた。現地法人では大洋州が78.1%減となった。8地域別では▽アジア=1兆4268億円(前年度比39.1%増)▽北米=9161億円(16.3%増)▽東欧=951億円(38.9%減)▽大洋州=569億円(72.8%減)▽中南米=400億円(7.2%減)▽アフリカ=225億円(55.0%減)▽中東・北アフリカ=190億円(11.2%増)▽欧州=45億円(4.7%増)―だった。」(『建設工業新聞』2025.07.09)
●「東京商工リサーチは8日、2025年上期(1-6月)の建設業倒産(負債額1000万円以上)状況を公表した。件数は前年同期比2.3%増の969件で、4年連続で前年同期を上回った。件数ではコロナ禍前の水準を上回った。負債総額は16.1%減の857億9600万円で、3年ぶりに前年同期を下回った。負債額10億円以上が5件と半減したことが負債を押し下げた。」(『建設通信新聞』2025.07.10)
●「建設経済研究所と経済調査会は11日、2026年度の建設投資見通しを発表した。投資総額は名目値が前年度見通しと比べて5.0%増の79兆2100億円、物価変動の影響を除いた実質値が3.2%増の59兆6729億円と推計した。伸び率は過去10年で最も高かった17年度に次ぐ水準を見込む。6月に決定した第1次国土強靭化実施中期計画による政府投資の増加を背景に、建設投資が堅調に推移するとみている。」(『建設通信新聞』2025.07.14)
●「建設工事の元下契約での労務費交渉の実態が、国土交通省の調査で明らかになってきた。建設業許可業者約2万者の回答結果を集計したところ、下請として請負契約で労務費を内訳明示した場合、最初に元請へ提出した『当初見積書』より、価格交渉を経て契約に反映した『最終見積書』の方が低くなったとの回答が3割以上あった。著しく低い労務費への減額変更依頼を禁じる改正建設業法の施行を前に、『建設Gメン』がこの調査結果を端緒とした個別の違反行為の洗い出しに乗り出している。」(『建設工業新聞』2025.07.15)
●「国土交通省は2024年度『下請取引等実態調査(元下調査)』の結果を公表した。建設業法に基づく指導対象となる調査項目すべてに適正回答した事業者の割合は3.1%。調査項目別の適正回答率は、請負契約書の相互交付状況などを見る『契約締結方法』が59.2%、『手形の現金化などに関するコスト負担の協議』が52.3%、契約書に定めるべき15項目の状況を見る『契約条項』が30.2%、見積もり条件として提示すべき14項目の状況を見る『見積もり提示内容』が13.1%で特に低い水準だった。」(『建設工業新聞』2025.07.15)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「東京の地価が『一人勝ち』の状態になっている。国税庁が1日発表した2025年の路線価で、東京都の標準宅地の平均上昇率は全国最甘同の8.1%だった。全国平均の2.7%に比べて3倍の伸びとなった。地方や海外から人口が流入し、マンションの需要拡大が続く。海外からの投資マネーも価格上昇に拍車をかけている。…東京都の平均上昇率は前年から2.8ポイント拡大した。上昇は4年連続で、比較可能な10年以降では上昇率は最大となった。マンションの値上がりが主な要因だ。不動産経済研究所(東京・新宿)によると、24年度の東京23区の新築マンション平均価格は前年度よりも11%高い1億1632万円だった。開発用地が不足して発売戸数が減る一方、人口が増えて住宅需要は拡大しており、需給が引き締まっている。外国人による購入も東京のマンション相場を押し上げた。三菱UFJ信託銀行が25年1月に実施した不動産開発会社向けのアンケートでは、千代田区・港区・渋谷区の新築マンション購入者に占める外国人の割合は2~4割との回答が多かった。24年7月時点では1~3割が多く、割合は上がっている。船窪芳和上級調査役は『東京は国際的な知名度が高いうえ、新築物件が香港やニューヨークといった海外主要都市に比べて割安感がある』ことが人気の理由だと分析する。都心物件の値上がりに日本人の購買力が追いつかず、富裕層の外国人が目立ってきている。…今後は東京と地方との不動産価格の差が一段と広がりそうだ。理由の一つに、物価高や人手不足による建築コストの上昇がある。三井住友トラスト基礎研究所の大谷咲太投資調査部長は『採算を確保しやすい都市部の工事が優先され、地方の再開発が進みにくくなる』と指摘する。もう一つが人口の東京一極集中だ。国立社会保障・人口問題研究所が23年に公表した人口の中位推計によると、50年時点の人口が20年よりも多いのは東京都のみ。愛知県は1割減、大阪府は2割弱減る。住宅需要が衰えず、値崩れしにくいとみて、東京の人気が一段と高まる可能性がある。東京では地価上昇による弊害が深刻だ。家賃の上昇は顕著で、不動産情報サービスのアットホーム(東京・大田)によると、23区の単身者向けマンションの平均募集賃料は5月に初めて10万円を超えた。学生や若者には負担が重い。東京圏に人口や企業が集中すれば大規模災害時の損害が膨らみやすくなる可能性もある。」(『日本経済新聞』2025.07.02)
●「政府1日、中央防災会議を開き、3月に公表した南海トラフ地震の新しい被害想定を踏まえて同地震の防災対策推進基本計画を変更した。新計画では今後10年の減災目標として、死者数は想定の約29万8000人から約8割、建築物の全壊焼失棟数は約235万棟から約5割の減少を目指す。住宅の耐震化や津波対策、ライフラインの強靭化など被災による直接死を減らす『命を守る』対策と、インフラの早期復旧など災害関連死を減少させる『命をつなぐ』対策を重点的に進める方針だ。」(『建設通信新聞』2025.07.02)
●「国土交通省は、能登半島での地震や大雨を踏まえた水害・土砂災害対策の在り方に関する提言をまとめた。先発の災害で被災したエリアにはリモートセンシング(遠隔探査)技術も活用しながら、その後の災害リスクを把握することや、流域全体で土砂・流木対策を考え、効果的に事業を進めることを求めた。能登半島では2024年1月の地震発生後、9月の記録的な大雨により再度、甚大な被害に見舞われた。こうした複合災害の発生頻度が高まることが想定されるため、国交省は有識者検討会を設置し、複合災害の被害を効率的、効果的に防止、軽減させる手法を検討し、提言をまとめた。複合災害に対して、計画的に実施するハード・ソフト対策や被災シナリオの選定、地形データの取得などを事前に準備するとともに、先発の災害が発生した際には速やかに地形・施設の変状の把握、地域の安全度評価を行った上で応急対応を行い、後発の災害による被害を防止、軽減すべきとした。」(『建設通信新聞』2025.07.02)
●「九州5県で災害関連死を含め79人が犠牲になった2020年7月の豪雨から、4日で5年となった。球磨川が氾濫し、大きな被害が出た熊本県球磨村では人口が半減。防災強化のため支流で川辺川ダムを建設する計画には、一部住民の根強い反発が残る。大部分が不通となったJR肥薩線は一部で鉄道復旧のめどが立っておらず、復興は道半ばだ。熊本県によると、球磨村の人口は豪雨前の約3200人から、今年6月時点の推計で約1620人に半減した。隣接する人吉市は約3万1770人から約2万8690人となり、1割近く減った。いずれも豪雨が過疎化に追い打ちをかけた形だ。」(『日本経済新聞』2025.07.04)

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