情勢の特徴 - 2025年7月後半
●「地価の上昇を受け、不動産の売買や所有にかかる税収が増えている。2024年度は不動産取得税が17年ぶりの高水準となり、固定資産税は過去最高を更新した。税収の増加は財政を下支えする一方、相続や住宅ローンを巡って税負担の軽減に向けた議論が盛り上がる可能性がある。不動産は購入、所有、売却の各段階で税金がかかる。総務省によると、購入時に都道府県に納める不動産取得税は24年度に4546億円となった。前の年度に比べて3%増え、不動産ミニバブル期の07年度(4845億円)以来の水準に回復した。地価が上がったことで課税額の基準となる不動産評価額が上昇し、取引件数の増加も寄与した。行政手続きの手数料収入も増えた。該当する国の印紙収入は1兆442億円と3%増え、6年ぶりの高い水準となった。…不動産の所有者が市町村に払う固定資産税は9兆9556億円と2%増え、3年連続で過去最高となった。市街地にある土地や建物の所有者に上乗せする都市計画税は1兆4402億円と2%増え、こちらも過去最高を更新した。国に納める相続税は3兆5523億円で、過去最高だった23年度の3兆5663億円に次ぐ規模だった。要因としては地価上昇が大きい。株高による株式価値の向上も税収を押し上げた。相続税の算定基準となる路線価は25年に、全国の標準宅地の平均変動率が4年連続でプラスとなった。高齢化で亡くなる人が増えていることもあり、今後も税収増加が見込まれる。…24年度の不動産関連の税収合計はおよそ16兆4000億円と過去最高となり、バブル期のピークだった1996年度の15兆3000億円程度に1兆円超の差をつけた。不動産売買では他にも所得税や消費税がかかり、これらを含めると関連する税収はさらに大きくなる。税収の拡大は国や地方自治体の財政を下支えする。ただ、都市部ではマンションなどの価格が高騰し、若年層が住宅を購入しづらい状況が続く。お金を借りて物件を買った人の所得税を軽くする『住宅ローン減税』は2025年末が期限で、制度の継続の是非は26年度税制改正のテーマのひとつとなる。」(『日本経済新聞』2025.07.17)
●「日本経済新聞社がまとめた2025年度の設備投資動向調査で、全産業の計画額は前年度実績比12.4%増の34兆2663億円となった。2年連続で過去最高を更新した。人工知能(Al)向けのインフラ投資が旺盛で、NTTが2年ぶりに首位に立った。米国での投資計画は微減となったが、関税交渉がまとまったことで今後、投資意欲が高まる可能性もある。調査は国内の上場企業と資本金1億円以上の有力企業を対象に、885社から回答を得た。製造業は10.1%増の20兆1395億円、非製造業は15.8%増の14兆1267億円だった。」(『日本経済新聞』2025.07.25)
●「経済産業省は、『価格交渉促進月間(2025年3月)フォローアップ調査結果』を6月20日に発表。同調査では中小企業を対象に、主な発注企業との間でどの程度価格交渉・価格転嫁が行われたかを問うアンケートを実施した。回答企業数は6万5725社(回答から抽出される発注側企業数は延べ7万6894社)、調査期間が4月21日~5月30日となっている。価格交渉の状況(『価格交渉は不要』を除いた場合の回答分布)において、『発注側企業から申し入れがあり、価格交渉が行われた』割合は、前回(2024年9月)から約3ポイント増の31.5%となった。『価格交渉が行われた』割合も前回から約3ポイント増の89.2%だった。一方、『価格交渉が行われなかった』割合は減少した(前回13.6%→10.8%)。発注企業からの申し入れはさらに浸透しつつあるものの、受注企業の意に反して交渉を行わなかった発注企業が約1割存在する。…さらに、2023年11月に『労務費指針(労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針)』が策定・公表されたことを踏まえ、今回の調査においても『労務費について価格交渉ができたか』を調査。価格交渉が行われた企業(64.2%)のうち7割超において、労務費についても交渉を実施した(前回70.4%→73.2%)。一方、『労務費が上昇し、価格交渉を希望したが出来なかった』企業は依然として存在している(前回7.6%→6.4%)。…また、価格転嫁の状況において、コスト全体の価格転嫁率は、前回から約3ポイント増の52.4%となった。『一部でも転嫁できた』割合は、前回から約3ポイント増の83.1%だった。一方、『転嫁できなかった』『マイナスとなった』割合は減少した(前回州20.1%→16.9%)。価格転嫁の状況は改善してはいるが、引き続き『転嫁できた企業』と『できない企業』とで二極分離の状態となっている。同省では、転嫁が困難な企業への対策が重要とした。」(『日本住宅新聞』2025.07.25)
●「日本経済が賃上げを起点とした『成長型』への分岐点にある。内閣府が29日公表した2025年度の経済財政報告(経済財政白書)で、賃上げの現状などに触れて『近年にはない明るい動き』があるとの認識を示した。消費に鈍さが残るなか、物価の伸びを上回って賃金が上昇する好循環を定着させる必要がある。今年度の白書は賃金や消費の分析に多くを割いた。賃金や物価は過去四半世紀の『凍りついた状況』から脱し、ともに緩やかに上昇する好循環が見られ始めていると記した。日本経済の現状に関して、白書では600兆円を超えた名目国内総生産(GDP)や33年ぶりの高さだった24年を上回る賃上げ率などを列挙して『近年にはない明るい動き』と評した。ここから『分岐点』を越えて成長の道へと進むためにはGDPの過半を占める個人消費がカギを握る。ただ、その消費は決して好調とは言えない。可処分所得に対する消費支出の割合を示す『平均消費性向』は低下傾向にあり、賃上げ率が高い割にはお金を使わない節約志向が表れている。」(『日本経済新聞』2025.07.30)
●「国土交通省は、各都道府県の管内市区町村の週休2日工事について、2025年度の実施率の見込みをまとめた。各都道府県に調査したところ、19府県が100%を見込んだ一方、11府県で70%を下回った。25年度中の全市区町村での週休2日工事の実施に向けて、実施率が低い団体を中心に取り組みを強化していく。」(『建設通信新聞』2025.07.16)
●「国土交通省は公共発注者の取り組みを見える化する『第3次・全国統一指標』を決めた。施工時期の平準化に向けて1-3月の工事稼働状況を把握するピークカット指標を新たに設けた。2023年度実績では奈良県や福岡県などが高くなった一方、冬季の施工が難しい日本海側は基準値を割り込むなど地域特性による差が見られた。国交省は積雪寒冷地に対して実情に見合った目標設定を求めつつ、それ以外の地域に対しては積算の前倒しや早期執行の目標設定などでピークカットを進めるよう呼び掛ける。」(『建設通信新聞』2025.07.17)
●「国士交通省の調査によると、都道府県と政令市の約7割で職員のみでは発注関係事務の業務遂行が難しいと感じていることが分かった。特に設計・積算、監督・検査でその傾向が強い。公益法人などに業務を委託している団体も多いが、受託量が限られ、業務を十分に補えていないといった課題も浮かび上がっている。」(『建設通信新聞』2025.07.18)
●「国土交通省は、『住宅分野における建設技能者の持続的確保懇談会』の取りまとめ作業を進めている。取りまとめでは入職者の増加、職場環境や将来見通しの整備を進める方針を提示するとともに、これらの取り組みを展開しても労働力が不足することが考えられるため、住宅建設の省力化・効率化にも取り組む必要性を明記する予定だ。脱炭素やまちづくり、子育て支援、ウェルビーイングなど社会的要請や消費者ニーズの高まりにより、住宅に求められる性能は上がっており、建設技能者の役割も増えている。一方で地方の中小工務店や大工は担い手不足の課題に直面している。そのため、国交省は今後も安定的な供給や適切な維持管理を持続できる社会の実現に向けて2月に懇談会を立ち上げた。建設技能者の確保に焦点を当てた施策の方向性について意見を交わし、9月ごろに議論をまとめ、住宅基本計画の中間取りまとめに反映させる。」(『建設通信新聞』2025.07.18)
●「国土交通省は、埼玉県八潮市での道路陥没事故を受けて老朽化施設が及ぼす社会的影響の大きさを再認崩し、上下水道管路に限らずインフラ全般のマネジメントの在り方を見直す。地方自治体などへの取り組み状況の聞き取りも実施した上で、有識者による『下水道等に起因する大規模な道路陥没事故を踏まえた対策検討委員会』で議論し、第3次提言としてまとめる。」(『建設通信新聞』2025.07.25)
●「全国知事会は23~24日開催の全国知事会議で、外国人の受け入れ拡大を国に求める提言をまとめた。人材育成や確保を目的として2027年に始まる『育成就労制度』の柔軟な運用などを求める。人口減が加速するなか、外国人は地域産業や地域社会の重要な担い手となる。参院選で外国人規制が争点となったこともあり、過剰な規制強化への懸念は大きい。提言では『外国人の受け入れと多文化共生社会の実現に国が責任を持って取り組むよう、強く要請する』と主張し、技能実習制度の後継となる育成就労制度に関する要望を多く盛り込んだ。技能実習は日本で学んだ技能・技術を出身国の経済発展に生かしてもらうのが目的だが、育成就労は人材の育成と確保を主眼とする。国は受け入れ要件を厳格化し、一定以上の日本語能力を要求する方針だ。知事会は育成就労について『技能実習の作業職種から大きく減少することを危惧する声が多くの自治体から聞かれる』と指摘。受け入れ分野の追加や手続きの簡素化など柔軟な運用を求めた。外国人の受け入れ環境を整えるため、国が主体となり制度設計や財源確保に取り組むことも要望した。多文化共生に向けた施策を担う司令塔組織の設置も提案した。」(『日本経済新聞』2025.07.25)
●「国土交通省は、新たな住生活基本計画(全国計画)の中間取りまとめの素案を作成した。国や地方自治体、住宅・住生活関連事業者など多様な関係者で、2050年に向けた方向性を共有し、住宅性能・機能を一律に充実させる政策をより一歩深めるとともに、国民の暮らし・住まいのウェルビーイングを満たす政策を本格的に推進する方針を示した。」(『建設通信新聞』2025.07.31)
●「企業の稼ぎが賃金に回っていない。利益などのうち人件費に回る割合を示す労働分配率は2024年度に53.9%となり、1973年度以来51年ぶりの低水準だった。企業の内部留保は24年度未の時点で636兆円と過去最高を更新する。賃上げによる経済の好循環はなお道半ばだ。財務省が発表した2025年1~3月期までの法人企業統計調査の結果をもとに、年度ベースで計算した。…規模が大きい企業ほど分配率が低下する。資本金10億円以上の大企業は36.8%と前年度から1.3ポイント、資本金1億~10億円未満の中堅企業は59.9%で前年度から0.7ポイントそれぞれ下がった。他方、1000万~1億円未満の中小企業は70.2%で前年度から0.1ポイント上昇した。中小企業は大企業や中堅企業と異なり、人手不足を背景に、利益が増えるスピードを上回って人件費の上昇が生じている可能性がある。…企業活動のグローバル化が分配率を構造的に引き下げている側面もある。24年度の国際収支統計の第1次所得収支によると、日本企業の海外子会社から受け取る配当金などの直接投資収益は25.9兆円の黒字だった。海外から来る稼ぎは一定程度、分母である企業の利益に計上される一方、国内で働く従業員が直接生み出した付加価値ではないため、分子である賃金上昇につながりにくい。結果的に労働分配率を下げる方向に働く。企業が蓄積した内部留保は増え続けている。利益剰余金は24年度末時点で636兆円で、前の年度末から1割ほど増えて過去最高を更新した。現預金は268兆円と過去最高だった前の年度末(272兆円)から小幅に減ったが、依然高水準にある。」(『日本経済新聞』2025.07.17)
●「国土交通省は、建設キャリアアップシステム(CCUS)の能力評価制度に関するガイドラインを改正した。複数職種にまたがって就業履歴が蓄積される多能工については、関連する職種コードも設定することが望ましい旨を明確にした。就業履歴の適正な反映につなげ、能力評価が受けられる環境を整備していく。」(『建設通信新聞』2025.07.17)
●「帝国データバンクが行った上場企業の『平均年間給与』動向調査(2024年度決算)によると、上場企業の平均年収は24年度が671万円となり、過去20年で最高だったことが分かった。前年度の651万円か、3.0%増と4年連続で増加。産業別では海運業が1052万円で最高となり、建設業は前年度比5.1%増の776万円だった。…調査対象は24年度を決算期とする上場企業のうち、有価証券報告書に『平均年間給与・従業員平均年齢・勤続年数』の記載がある企業3800社。持ち株会社といった業態、社員数などで対象を限定していない。業種分類は金融庁の定めにのっとった。産業別にみると、建設業は776万円(5.1%増)となった。上場する製造業で平均681万円(前年度3.1%増)、非製造業で平均665万円(3.0%増)となった。製造業・非製造業とも平均給与額と、前年度からの増加額が過去20年で最高となった。」(『建設工業新聞』2025.07.17)
●「三菱総合研究所が行った働きがいに関する実態調査の結果によると、建設業で働きがい向上のため『労働時間削減や休暇取得促進に向けた取り組み』を実施している企業が71.5%に上ることが分かった。このほか『従業員が受講する教育プログラムや資格試験受験への経済的補助」(72.2%)、『上司、人事部門などとの面談の実施』(68.1%)などに取り組んでいた。調査は、厚生労働省から受託した『令和6年度働く人のワークエンゲージメントの向上に向けた支援事業』の一環。働きがい向上に関する取り組みの実態・効果・課題を把握するのが狙い。2024年8~10月に全国の企業1万社を対象に実施し、約2400社の回答を得た。建設業は144社が回答した。エンゲージメントの認知度や働きがい向上の取り組み状況、障壁・促進の要因などを聞いた」(『建設工業新聞』2025.07.18)
●「厚生労働省の中央最低賃金審議会は22日、2025年度の最低賃金額の目安を決める小委員会の第2回会議を開いた。最低賃金の水準は、日本全体の賃金の伸びを上回るスピードで上がってきた。足元では労働者のうち700万人程度が最低賃金の近くの金額で働く。…春季労使交渉の賃上げ率も踏まえると、最低賃金の目安額は全国平均で1100円台前半での攻防となる。厚労省は最低賃金を議論する時期にあわせ、受け取っていた時給が引き上げ後の最低賃金の金額を下回っていた労働者の割合を影響率として算出し公表する。従業員30人未満(製造業は100人未満)の中小・零細企業について24年度の影響率は23.2%となった。前年度より1.6ポイント上昇した。従業員が5人以上の事業所全体では8.8%で、同じく前年度より0.7ポイント上昇した。第一生命経済研究所の星野卓也氏と日本経済新聞が影響率や各種データをもとに一定の仮定を置いて試算したところ、最低賃金に直面するゾーンで働く人は700万人程度となった。最低賃金の引き上げが手取りに直結する人は一定の規模に達する。中小・零細企業では現在、5人に1人以上が最低賃金に近い水準で働いている。中小・零細における影響率は10年前の14年度は7.3%だったが、10年間で3倍以上に急拡大した。20年前の04年度はわずか1.5%だった。」(『日本経済新聞』2025.07.23)
●「ゼネコンの賃上げの動きが続いている。日本建設産業職員労働組合協議会(日建協、木浪周作議長)が24日に公表した2025年賃金交渉の中間結果によると、回答した31組合すべてが基本給を引き上げるベースアップ(ベア)を獲得し、13組合は要求を上回る水準の回答が会社からあった。ベアの加重平均で1万8044円。加盟組合が一体となって賃金水準の改善に取り組む中、政府主導の賃上げ機運の醸成や物価上昇が追い風になったと見ている。」(『建設工業新聞』2025.07.25)
●「建設キャリアアップシステム(CCUS)運営主体の建設業振興基金(振興基金、谷脇暁理事長)は、CCUS登録技能者向けスマートフォンアプリ『建キャリ』を用いて就業履歴を蓄積できる仕組みを普及させる。CCUSカードを携行していなくても建キャリで表示するQRコードの読み取りで履歴蓄積が可能となるよう、API連携する民間システム側の機能を拡張してもらう。初弾としてエムシーディースリー(東京都渋谷区、飯田正生社長)が提供する『グリーンサイト』の入退場登録アプリで8月上旬から利用できるようになる。」(『建設工業新聞』2025.07.25)
●「建設業が目下抱える最大の課題とされる担い手不足には、どのような歴史的経緯と構造的要因があるのか。日米の建設労働市場に詳しい惠羅さとみ法政大学社会学部准教授は、国内市場の先行研究も参考に、日本の建設業の労務供給構造の転換点を示す。建設労働市場は高度経済成長期には地方からの出稼ぎ市場として、バブル崩壊後も公共投資に下支えされる形で他産業からの失業者の受け皿として拡大。1997年に建設業就業者はピークの685万人に達した。こうした量的な拡大と同時に発展したのが重層下請構造だ。80年代には元請の経営効率化の観点からも下請による『責任施工』が進展する。元請から下請への機能移転が進み、技術面などの管理機能も下請が担うようになる。しかし『聖域なき構造改革』のスローガンに代表される経済政策の転換があった90年代後半~2000年代に建設投贅が大幅な減少に転じると、労働市場も質の部分で大きく変容する。従来のように仕事量が保証されず競争市場としての色合いが濃くなる中でダンピング受注が横行。経営の不安定化から専門工事会社には雇用を切り離す動きが目立つようになる。社会保険加入など労働関係法令の規制逃れを目的として偽装請負的な形態も含めて『一人親方化・個人請負化が進んだ』と惠羅氏は説明する。惠羅氏によると、米国との比較で日本の建設業は『保護されない労働市場』と定義できる。専属的に従事する技能者も正規雇用を前提とせず、仕事量は繁閑で左右される。雇用される中で給与を得るのではなく、重層構造の中での請負契約に基づき『職人としての腕』で稼ぐことになっている。一方、米国は近代化・都市化の過程で職種ごとのユニオン(労働組合)による組織化が進展。日本の明治時代に当たる時期には『ユニオンを通じた正規雇用の労働者化』が各都市で進んでいたという。欧州諸国も含めて職種別に最低賃金などを定める集団的な労働協約が締結されるケースが多く、労使間の集団的な交渉が定着している。日本の建設業では『労使関係という概念がもともと希薄だ』と惠羅氏は指摘する。米国のユニオンと同じような労務供給や技能育成の機能を日本で担っていたのは『親方制度』だとする。労使関係で対等に取り決められている部分が、親方制度の下で請負関係に左右される構図となっている。惠羅氏はこうした歴史的背景から日本では親方制度をベースとする『インフォーマルな(法令などで制度化されていない)育成システム』が主流だったとみる。実質的なスキル形成は現場での『見よう見まね』となり、その評価や処遇が公的な制度で基礎付けられていない。近代的な見習い制度と労働協約が結び付き、労使間のパートナーシップに基づきユニオン主体の職業訓練校が現在まで運営されてきた米国とは対照的だ。一人親方化・個人請負化を通じ雇用の外部化が進む中で、技能育成は置き去りにされた格好だ。構造改革の時期以降、旧来的な親方制度は町場の現場を中心に機能不全となり、技能育成の機能も弱まっている。一方、技能者の人手不足と高齢化が顕在化する中で外国人就労者の受け入れが加速している。27年度に育成就労制度が開始すると、既存の特定技能制度と一体的に運用されることで中長期のキャリア形成を促す方向となり、技能育成の重要度も格段に増す。ただし集団的な労使関係が存在せず、競争市場を前提とする中では、労務供給や技能育成の面で個社ごとに労働力の『囲い込み』を助長することになりかねないと惠羅氏は懸念する。将来的な外国人材の大量就労も念頭に置き『(技能育成を)集団的に取り組むしかないフェーズに入っている』と指摘。技能職種別の労働市場として横のつながりを持ちつつ『キャリアアップの道筋を、個々人の努力や、企業単位の現場育成だけではなく、職種別の集団的な枠組みで進めるべきだ』と主張する。」(『建設工業新聞』第2部 2025.07.31)
●「建設企業の海外受注が好調を維持している。海外建設協会(佐々木正人会長、会員52社)が6月6日に公表した2024年度の海外受注実績は、受注総額が前年度比12.6%増の2兆5808億円と2年連続で過去最高を記録した。受注額が大きなアジア、北米を中心に世界各地域の成長を取り込んだ格好だが、同時に海外受注の増加を続ける受注額トップ2社のシェアが高水準を維持し続けていることも大きな特徴だ。本邦法人受注頼み一辺倒から近年は、海外受注の受注構造が大きく変化していることも好調な海外受注額を下支えしている。海建協の24年度海外建設受注実績2兆5808億円に対し、大林組の24年度連結受注の土木・建築合わせた建設事業海外分は、前年度比60.3%増の1兆l142億円と海外受注だけで1兆円を突破した。国内建築・土木連結受注額は2兆0879億円で、国内建設事業の半分まで海外受注が伸長した格好だ。過去10年間でこれまでの大林組の海外受注最高額は23年度の6949億円だった。また、鹿島の24年度連結海外受注額は7637億円。大林組を合わせた2社の連結海外受注合計は1兆8779億円で、海建協の海外受注全体額の72.7%を占めた。海外受注上位2社の高いシェアは、昨年の実績を見ても明らかだ。具体的には、23年度海外建設受注実績2兆2929億円に対し、大林組6949億円、鹿島9914億円の計1兆6863億円で2社の全体受注額に占める割合は73.5%だった。高いシュアを維持し続けるこの2社には、『海外・現地法人が海外受注の大きな柱』という共通項もある。M&A(企業の合併・買収)で連結にした現地企業や地域ごとに設立した海外法人が海外受注の大半を担っている。」(『建設通信新聞』2025.07.16)
●「日本アスファルト合材協会(今泉保彦会長)が会員企業を対象にまとめた2025年度第1四半期(4-6月累計)のアスファルト合材製造数量は、前年同期比2.1%減の694万4637トンとなり、過去最低だった前年同期実績(709万7210トン)をさらに下回り、700万トン台も割る低水準となった。単月を見ても4-6月は全てマイナスで、さかのぼると2月以降、5カ月連続の前年割れとなっている。合材の需要そのものが長らく低迷し続ける中、材料やエネルギーコストなどの上昇に伴う単価アップも加わり、物量が出ない。25年度第1四半期の製造数量の内訳は、主に高規格の道路に使われる新規合材が0.8%減の178方5978トン、一般道の新設や補修などに多用される再生合材が2.5%減の515万8658トンで、両方とも減少した。」(『建設通信新聞』2025.07.22)
●「日本建設業連合会(宮本洋一会長)は、2050年の建設業の姿を展望し、そこに向かって今後10年間に実現すべき方策や目標などを示した『建設業の長期ビジョン2.0』を策定した。35年の建設市場規模や技能労働者必要数を推計した上で、現状のまま特段の施策を講じなければ、129万人の技能者不足が見込まれると指摘。この危機を克服し、建設業の持続可能性を確保するため、25年比で生産性を25%向上させる目標を掲げた。併せて、新成人数が100万人超を維持するこれからの10年間を最後のチャンスと捉え、異次元の処遇改善で担い手確保・定着に全力を挙げる。年平均7%以上の持続的な賃上げで技能者の『所得倍増』を図り、40代の平均年収1000万円超を目指す。」(『建設通信新聞』2025.07.23)
●「日本建設業連合会(宮本洋一会長)は、民間発注の建築工事を対象に、4週8閉所・週40時間稼働を原則とする初回見積書の提出に足並みをそろえる『適正工期確保宣言』について、2024年度下期のフォローアップ調査報告書をまとめた。24年10月から25年3月の間に契約に至った1582件のうち、1498件、率にして94.7%で『真に適切な工期』の確保に成功した。日建連会員各社での取り組み実施が浸透し、行動を起こせば着実に成果に結び付いている。時間外労働上限規制の適用や、価格転嫁をはじめとする政府主導の取引適正化の動きなどを背景に、発注者側の理解も大きく進展している。」(『建設通信新聞』2025.07.24)
●リフォーム・塗装工事の倒産が急増している。東京商工リサーチのまとめによると、2025年1~6月期の倒産は119件に達し、過去20年で最多だったリーマン・ショック後の09年同期の111件を上回った。材料高騰や人件費上昇で工事単価が上昇したことに加え、いわゆる「点検商法」による風評も横たわる。…倒産した119件の内訳は、リフォーム工事業が54件、塗装工事業が65件だった。資本金規模では1000万円未満が107件、従業員10人未満が113件と小・零細規模が中心だ。原因別にみると最多は「販売不振」で95件と約8割を占め、深刻な販売不振が際立っている。(『しんぶん赤旗』2025.07.24より抜粋。)
●「日本建設業連合会(宮本洋一会長)は、『週休二日実現行動計画』に基づく、2024年度通期のフォローアップ報告書をまとめた。時間外労働上限規制の適用初年度は、発注者サイドの理解も大きく進展し、取り組みがさらに加速した。4週8閉所以上の達成割合は通期としていずれも初めて、土木が7割を超え、建築も5割に到達した。」(『建設通信新聞』2025.07.28)
●「日本建設業連合会(宮本洋一会長)は、法人会員108社の回答を集計した2024年度決算(単体)状況をまとめた。ここ数年、建設需要が高水準で推移する中、完成工事高の合計は前年度比4.1%増の17兆9890億円となり、3年連続のプラスとなった。コロナ禍明けに受注した低採算の一部大型建築案件の消化が進み、利益面の改善も鮮明になっている。売上高の合計は3.6%増の19兆0960億円で、この5年間で初めて19兆円台に乗った。回答企業のうち67社が増収で、減収は41社。10%以上の伸び率となった企業が最多の29社だった。減少傾向が続いていた完成工事総利益は、26.4%増の1兆7780億円と急回復し、20年度並みの水準に戻った。完工総利益率は9.9%と前年度より1.8ポイント上昇したが、まだ10%にも届いておらず道半ばの状態だ。完工総利益率の分布を見ると、8%未満が32社と最多で、次いで8-10%未満が27社だった。10%以上は49社となっている。」(『建設通信新聞』2025.07.30)
●「日本建設業連合会(宮本洋一会長)は30日、法人会員92社を対象とした2025年度第1四半期(4-6月累計)の受注調査結果を発表した。民間受注の好調さを背景に、国内計は前年同期比29.7%増の4兆6653億円となり、過去20年間で最高水準に達した。第1四半期時点で4兆円を超えるのは初めてで、一気に4兆円台後半に乗った。4月調査に計上した大阪IR(統合型リゾート)関連の超大型工事の寄与度が大きいが、IR関連を除いても前年同期比はプラスに推移している。単月で見ても、4-6月は全て前年同月実績を上回った。第l四半期の民間受注は43.0%増の3兆8609億円で、これも過去20年間で最高額となる。初の3兆円超えどころか、4兆円に迫るいきおいとなっている。内訳は、製造業が2.1%減の6604億円と微減になったものの、もともとボリュームの大きい非製造業が58.1%増の3兆2004億円と大幅なプラスとなった。…一方、官公庁受注は9.9%減の8012億円とマイナスになった。内訳は、国が14.2%減の2265億円、独立行政法人が145.4%増の405億円、政府関連企業が38.3%減の1973億円、都道府県が58.3%増の889億円、市区町村が5.3%増の1588億円など。日建連会員企業がメインどころとする国、政府関連企業が伸びていない。」(『建設通信新聞』2025.07.31)
●「マンション管理費が高騰している。物価や光熱費に加え、管理人の人件費が上昇していることが要因だ。マンション管理人のなり手となっていたシニアの就業先が多様化し、人が集まらなくなっており賃上げを余儀なくされている。…不動産コンサルティング会社のさくら事務所(東京・渋谷)によると、24年時点の都心9区(千代田・中央・港・渋谷・新宿・目黒・品川・世田谷・江東)に建った新築マンションの1平方メートル当たりの管理費は512.1円だった。データが遡れる19年と比べて3割上昇し、過去最高となった。『物価高だけでなく、人手不足によって管理費が高騰している』とさくら事務所のマンション管理士の山本直弥氏は説明する。マンション管理費のなかに含まれる管理会社に支払う管理委託費のうち約3~5割が人件費にあたるという。背景には管理人のなり手不足が続いていることがある。東京労働局によると、東京都でパートタイムで働く居住施設やビルなどの管理人の有効求人倍率は3倍を超える。本来、管理人は定年退職したシニア人材から人気な職種だ。自宅の近くで働けることが多く、フルタイムでないかたちで働けるため、好まれてきた。ただ、最近ではシニア人材から選ばれにくくなっている。マンション管理業協会の業務部長の梅津潤氏は『以前は60歳で定年した人の職業として管理員も選択肢になっていた。65歳での定年が一般的になったことにより、重労働である管理員という職業を選択する人が少なくなってきている』と話す。」(『日本経済新聞』2025.07.17)
●「不動産経済研究所が17日発表した2025年1~6月の首都圏新築マンションの供給戸数は前年同期比11%減の8053戸だった。需給逼迫から都心部の平均価格は1億円超えが続く。海外マネーの流入も続いており、購入を諦めた消費者の一部は賃貸へのシフトを余儀なくされている。…平均価格は17%増の8958万円だった。束京23区に限れば20%増の1億3064万円と23年以降、1億円超えが続く。用地の少なさに加え、建設現場の人手不足や資材コスト増が需給逼迫と価格高騰を招いている。…中古マンションも高値傾向にある。東京カンテイによると、東京23区の価格(5月)は70平方メートルあたり1億88万円だった。新築・中古とも価格が高騰するなか、一部の実需層は購入を諦め、賃貸物件へと流れている。…家賃も上昇傾向にあり、24年度の首都圏の分譲マンション賃料(東京カンテイ調べ)は上昇率が2%。それでも同時期の新築マンションの分譲価格は約8%増と割安感がある。」(『日本経済新聞』2025.07.18)
●「関西電力が次世代の原子力発電所の建設に乗り出すことが18日、わかった。美浜原発(福井県美浜町)の敷地内で地質などの調査を始める。原発の新増設が具体化するのは東日本大震災以降、初めて。政府が脱炭素目標の達成に欠かせないと位置づける原発の活用が動き出す。関電は新設に向けた調査を始めると近く発表する。来週にも関電幹部が地元自治体に説明する。2010年に美浜原発で増設へ向けた調査に着手したが、東京電力の福島第1原発事故を受けて中止していた。国内の原発新設は09年に稼働した北海道電力の泊原発3号機が最後だった。関電は安全性が高いとされる『革新軽水炉』など次世代型原発の建設を想定している。地質や地形などの調査は原発建設に向けた最初のプロセスとなる。調査後、基本設計を策定し、原子力規制委員会に申請する。認可を受けてから実際の建設工事に入る。工事も規制委に提出した計画通りに進んでいるかの審査を工程ごとに受ける。原子炉の保安に関する認定なども受けた上で稼働する。そのため調査から運転開始までは20年程度かかるとみられる。」(『日本経済新聞』2025.07.19)
●「国土交通省は、2024年度住宅市場動向調査の結果をまとめた。23年度に住み替え、建て替え、リフォームを実施した世帯を対象に住宅の種類別に調査した。住宅ローン減税適用の住宅に関して、注文住宅のうち認定長期優良住宅が占める割合は57.3%、分譲戸建て住宅の場合は36.3%となった。ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)水準省エネ住宅については、分譲集合住宅で18.2%、注文住宅で15.2%だった。」(『建設通信新聞』2025.07.23)