情勢の特徴 - 2025年8月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「日本企業がお金を余らせている。日銀の資金循環統計によると、資金余剰は2024年度に25.6兆円と11年ぶりの規模になった。金融緩和などで投資を促そうとしたアベノミクスが動き出した当初の水準に逆戻りしたかたちだ。企業が資金をため込んだり海外に回したりしていることを映しており、国内投資への消極姿勢が浮き彫りになっている。資金循環統計は家計、企業、政府などマクロの経済主体別のお金の動きをまとめている。お金が足りずに借りている状態なら資金不足、逆に使い切れずに余れば資金余剰となる。25年1~3月期までの結果をもとに年度ベースで計算した。企業部門は24年度に2年連続で資金余剰幅が膨らみ、額は25.6兆円と前年度から2割増だった。13年度の25.9兆円以来の大きさだ。企業の目線が海外を向いていることも影響している。対外直接投資は22.2兆円と過去最高だった。統計上は国内で余った資金を回しているとみなし、資金余剰にカウントする。…国内での投資は乏しい。明治安田総合研究所の小玉祐一氏は『高度成長期からバブル期までに資本蓄積が進み、設備投資の大部分を減価償却の範囲でまかなうようになっている』とみる。内閣府が7月29日に公表した25年度の経済財政報告(経済財政白書)も企業部門の貯蓄に言及した。国民経済計算によると1998年度以降、四半世紀にわたって投資を上回る。『財務体質の強化や海外需要の取り込みなどを優先してきた半面、人件費や国内での設備投資が抑制されてきた』とした。24年度に家計は6.6兆円の余剰、政府は8.2兆円の不足、海外は30兆円の不足だった。財政赤字にあたる政府の不足幅は4年連続で縮小し、リーマン危機前の07年度以来の低水準になった。物価高による税収増が主因とみられる。家計は余剰幅が4年連続で縮んだ。物価高による貯蓄の取り崩しなどがあったとみられる。」(『日本経済新聞』2025.08.06)
●「経済産業省中小企業庁は5日、3月の価格交渉促準月間の取り組み成果を確認するフォローアップ調査の追加結果となる『発注者リスト』をまとめた。今年6月に公表した価格交渉などの状況調査結果に続く第2弾の結果となる。受注側中小企業からの回答をベースに、発注側企業の『価格交渉』『価格転嫁』『支払条件』という三つの状況をそれぞれ4段階評価した結果、発注側企業58社が最高評価ランクの『ア』を三つの状況全てで獲得している。」(『建設通信新聞』2025.08.06)
●「国土交通省の2026年度予算概算要求の基本方針案が分かった。『国民の安全・安心の確保』など3本柱に基づき、予算要求する主要課題を整理。公共事業については、労務費確保の必要性や資材価格高騰の影響を考慮しながら必要な事業量を確保すると明記した。第1次国土強靭化実施中期計画の施策に要する費用は予算編成過程で検討する。8月末までに財務省に概算要求を提出する。要求の柱は、▽国民の安全・安心の確保▽持続的な経済成長の実現▽個性を生かした地域づくりと持続可能で活力ある国づくり――の三つ。要求に当たり、重要政策推進枠を最大限活用する。実施中期計画に基づく取り組み、労務費や資材価格の高騰対策、敦賀~新大阪間の整備新幹線の着工などにかかる経費は、事項要求として予算編成過程で検討する。実施中期計画の施策を進めるため、資材価格や人件費の高騰による影響を適切に反映することや、自然災害の発生状況、事業の進捗(しんちょく)状況、経済情勢などを踏まえて機動的・弾力的に対応することを改めて明記。物価上昇を踏まえ、公的制度の基準額なども点検・見直しを進めるとした。」(『建設通信新聞』2025.08.06)
●「トランプ米政権による相互関税の新たな税率が米東部時間7日午前0時1分(日本時間午後1時1分)た発動した。およそ70カ国・地域ごとに10~41%の相互関税をかけた。その他の国・地域は一律で10%とした。一段と下押し圧力がかかる世界経済は同時減速に向かうおそれがある。…世界の経済成長は鈍化する公算が大きい。米モルガン・スタンレーは5日、2025年10~12月期の世界の実質成長率が前年同期比で2.6%との予測を公表した。前年同期の3.5%から0.9ポイント落ち込む。ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は米経済が25年に1%成長に減速するとみる。米国一強と呼ばれた23年の2.9%、24年の2.8%と比べ大幅に縮小する。ドイツ銀行はEU全体の域内総生産(GDP)が4月の関税表明前と比べて0.5%程度下押しされると算出。特に輸出主導型のドイツへの影響が0.6%超と大きい。日本経済にはどう響くのか。内閣府は7日、25年度のGDPの成長率が0.7%になるとの見通しを公表した。米国の関税措置でGDPは0.3~0.4%ほど下押しされると予測した。相互関税と自動車関税が15%になり、企業が関税コストを100%価格転嫁して販売が落ち込むという前提の分析だ。」(『日本経済新聞』2025.08.08)
●東京商工リサーチが8日発表した7月の企業倒産件数(負債総額1000万円以上)は前年同月比0.8%増の961件となった。物価高や人手不足が引き続き企業の経営圧迫要因となり、月間件数で今年の最多となった。(『しんぶん赤旗』2025.08.09より抜粋。)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は、下請け契約・代金支払いの適正化、施工管理の徹底などを求める通達を建設業団体などに1日付で発出した。取引の適正化に向けて、建設業法に抵触する可能性がある場合は『駆け込みホットライン』で通報を受け付けていることを章立てして改めて周知している。通達は資金需要の増大が予想される夏季、冬季に不動産・建設経済局長名で毎年発出している。建設業団体のほか、公共発注者、都道府県建設業担当部局、民間団体に送付した。例年からの追記事項を見ると、下請けが注文者に交付する見積書に関して、代金設定で考慮すべき費用として、材料費、機械経費、建設業退職金共済(建退共)制度の掛金を追加。これまで記載していた労務費、法定福利費、安全衛生経費などと並んで適切に反映するよう求めた。改正公共工事品質確保促進法の基本方針などで建退共の電子申請方式の積極活用が位置付けられたことを踏まえ、建設キャリアアップシステムと連携した電子申請方式の活用を促している。業務繁閑が大きい場合などに1年単位の変形労働時間制を活用できることも改めて周知。労使協定の締結により労働時間を柔軟に設定できることを示した。」(『建設通信新聞』2025.08.04)
●「国土交通省は、建設業退職金共済制度(建退共)の証紙貼付方式について、地方自治体の履行状況を把握するための調査結果をまとめた。工事契約時はほぼ全て、工事完成時は約8割の自治体が元請けに書類を提出させて証紙の購入・納付を確認していたが、依然として一部自治体で確認が行われていない実態が明らかとなった。特に完成時に提出を求める書類はばらつきが見られるなど、適正履行に向けた取り組みの徹底が求められている。」(『建設通信新聞』2025.08.05)
●「国土交通省は、建設工事の職種別に検討している『労務費に関する基準(標準労務費)』の統一的な作成方法を提示した。『公共工事設計労務単価×国交省直轄工事で用いられている歩掛かり』での作成を基本としつつ、公的な歩掛かりがない一戸建て住宅関係の職種では実態調査で把握した歩掛かりを計算式に当てはめる。民間工事主体の職種などで標準的・中立的な歩掛かりデータの把握が難しいケースも想定。標準労務費を明確な数値で定めず『現場に応じ適正に見積もった歩掛かり』を適用するという形で、文字によって表現するパターンも提示する。」(『建設工業新聞』2025.08.07)
●「改正建設業法で規定する『労務費に関する基準(標準労務費)』の作成に向けた国土交通省と各専門工事業団体などによる職種別の意見交換を経て、先行的に検討が進んだ▽鉄筋工事(建築)▽圧接工事(同)▽型枠工事(同)▽同(土木)―の4工種で標準労務費の素案が固まった。他職種での意見交換の進捗も踏まえ、これらの工種を標準労務費の初弾として11月ごろに中央建設業審議会(中建審)が作成・勧告する見通しだ。」(『建設工業新聞』2025.08.07)

労働・福祉

●「2025年度の最低賃金の目安を巡る議論は4日、44年ぶりとなる7回目の会議で決着した。議論が長引いた背景には『2020年代に1500円』との目標実現にこだわる政府の意向があった。政治介入の圧力を認識しつつも、有識者と労使は経済データに基づき『6.0%』を引き上げ率の上限とした。目安額の全国加重平均は24年度実績から63円引き上げ1118円となった。目安を議論する厚生労働省の中央最低賃金審議会では、小委員会の委員が『6.0%』を引き上げ率の上限として念頭に置いて議論を続けた。目安どおりの引き上げがされた場合、すべての都道府県で1000円を超える。政府は『20年代に1500円』との目標を掲げる。実現には平均で年7.3%の引き上げが必要となる。政府は6月に決めた経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)で、最低賃金も含めた賃上げを『成長戦略の要』と位置づける。国が示す目安を上回って最低賃金を設定した都道府県を補助金や交付金で支援するとも明記した。最低賃金に近い時給で働く人は700万人ほどにのぽるとみられる。インフレや賃上げに応じた一定の引き上げは、働き手の暮らしの水準維持に欠かせない。他方、経営体力と乖離(かいり)した賃金を強いられれば、思うように人材の採用や雇用の維持ができず、地域経済がしぼむリスクがある。政府が過剰な引き上げ支援に傾けば、中小企業による自主的な生産性向上の意欲をそぐ側面もある。…『賃上げの原資確保につなげる取り組みを継続的に実施するよう政府に対して強く要望する』。厚生労働省の中央最低賃金審議会は4日まとめた答申で強調した。中小や小規模事業者の生産性底上げ支援や価格転嫁対策の徹底を訴えた。大幅引き上げ実現には中小の生産性底上げが欠かせない。日本商工会議所は25年1~2月、政府が掲げる『20年代に1500円』の実現に必要な年7.3%の引き上げが実際に行われた場合の対応を中小企業に聞いた。複数回答で尋ねたところ、約4000社のうち『設備投資など人件費以外のコストの削減』(39.6%)がトップで『残業時間・シフトの削減』(31.3%)と続いた。引き上げに見合う経営体力が伴わなければ、縮小均衡に陥りかねない。時給の上昇で『年収の壁』を越える人も増えそうだ。労働政策研究・研修機構が1~2月に実施した調査では、事業所内で最も低いパート賃金が『最低賃金を10%以上上回る』と答えた企業は26.7%にとどまる。最低賃金の近くで働くパートやアルバイトは多い。基準となる金額の引き上げで、社会保険料がかかり始める年収106万円への到達が前倒しになる人は少なくない。社会保険料の支払いを嫌がって働き控えをしている人は一定数いる。野村総合研究所が1~2月にパート主婦らを対象に実施した調査で、働き控えをする理由として『夫の社会保険に被扶養者として加入するため』が69.4%(複数回答可)で最も多かった。最低賃金の上昇が人手不足に拍車をかけることにもなりかねない。」(『日本経済新聞』2025.08.05)
●「政府は5日、トラック運転手の長時間労働抑制に向けた計画作成を2026年4月から義務化すると決めた。配送拠点で順番を待つ『荷待ち』や、荷物を積み降ろす『荷役』の時間を短縮し、負担軽減につなげる。取扱量が多く、物流網への影響が大きい荷主、運送業者、倉庫業者が対象で、全国計3千社超に上る見込み。計画義務化は、トラック運転手の労働時間規制に伴って物流が停滞する『24年問題』への対応として、24年に改正した物流効率化法で規定。開始時期と、対象業者の基準を定めた政令を5日閣議決定した。荷主は扱う荷物の年間総重量9万トン以上、倉庫業者は保管量70万トン以上、運送業者は保有するトラック150台以上が対象。業者からの届け出を受け、所管する省庁が指定する。計画には、予約システム導入など具体的な対策や期間を盛り込む。国に実施状況を定期報告する必要もある。荷主は、計画の作成、実行の責任者となる『物流統括管理者』を経営幹部の中から選任しなくてはならない。届け出を怠ったり、計画に不備があったりした場合は、国が是正を勧告、命令する。命令に従わなかった場合は最大100万円の罰金を科す。」(『日本経済新聞』2025.08.06)
●「埼玉県は『工業高校生の就職動向』をまとめた。調査対象は県立工業高校15校。最新の2024年度調査では、進路の割合は全体(全学科)で就職者51.5%、進学者44.6%(大学・短大19.4%、専修学校等25.2%)、その他4.3%となった。就業者の比率は19年度調査の64.1%から毎年減少を続けており、進学志向が高まっていることがうかがえる。建設関係の学科は5校(いずみ高校、大宮、川越、春日部、熊谷の各工業高校)で生徒定員は計280人。建設系学科の24年度の進路比率は▽就職=55.4%▽大学・短大進学=22.8%▽専修学校等=16.9%▽その他=4.9%。全体の平均と比べると就職者の比率はやや高いが、大学進学者が2割を超えるなど進学志向は他の学科と共通している。」(『建設工業新聞』2025.08.06)
●「国土交通省は、育成就労制度の建設分野での運用の方向性を定めるため、今後の外国人材の育成・確保に関する論点を整理した。中長期のキャリア形成を念頭に置きつつ、育成就労では転籍制限に焦点を当て、その期間などを議論する。育成就労と接続する特定技能については原則認めていない在籍型出向の可否を検討する。」(『建設通信新聞』2025.08.08)
●「建設現場でアスベスト(石綿)を吸って健康被害を受けた元労働者や遺族らが損害賠償を求めた訴訟は7日、東京高裁で建材メーカー17社との間で和解が成立した。このうち7社が原告400人に計約52億円の和解金を支払う。先行して和解が進んだ国に続き、メーカー側との同種訴訟の早期終結につながる可能性がある。建設現場の石綿被害を巡っては2008年以降、国とメーカーに損害賠償を求めた訴訟が全国で相次いだ。このうち4訴訟について、最高裁は21年に防じんマスク着用の義務付けなど適切な規制を怠ったのは違法だとして、国の賠償責任を認める初の統一判断を示した。最高裁はメーカー側に対しても危険性の警告表示をしなかったとして賠償責任を認めたが、賠償額の算定などについて改めて審理を尽くすよう高裁に審理を差し戻していた。メーカー側は現場で複数の建材が使われていたことなどから、それぞれの被害への影響をはかりづらく、賠償にも消極的だった。東京高裁が昨年12月以降に原告とメーカー側双方に和解案を提示し、双方が内容を検討していた。7日に和解が成立した原告は、08年に全国で初めて提起した東京第1陣訴訟の332人と14年に始まった第2陣訴訟の114人。賠償を求めた18社の建材メーカーのうち、ニチアス(東京)や太平洋セメント(同)など7社が計400人に和解金約52億円を支払い謝罪することなどで合意した。支払いは元労働者1人当たり約700万~2100万円。勤務した現場の数が基準に満たなかった元労働者らは支払い対象から外れるものの、和解を受け入れた。賠償責任はないとされたメーカーは弔意や見舞いの意を表明する。原告側によると、複数メーカーとの和解は初めて。大規模な和解が成立したことで、各地の同種訴訟の早期終結にも見通しが立ったとの見方が強まる。大阪高裁での集団訴訟も8日に原告と建材メーカーとの間で和解が成立する見通しだ。…メーカー側との大規模な和解成立を受け、建設現場の石綿被害の救済は一歩前進する見通しだが、全面解決に向けてはなお課題も残る。最高裁が国の責任を認めたのは1975年10月~2004年9月に被害を受けた人が対象だ。『一人親方』と呼ばれる個人事業主を含めて幅広く救済すべきだとする判断枠組みを示した。一方、該当期間外で被害を受けたり、屋外での作業が中心となったりした人は対象から外れた。最高裁が22年の判決で『解体を実施する事業者が必要な対策をとるべきだ』として建材メーカーの賠償責任を認めなかった元解体工も含め、各地で訴訟が続いている。」(『日本経済新聞』2025.08.08)
●建設労働者が石綿(アスベスト)含有の建材を取り扱い生命と健康の被害を受けたとして建材メーカーを訴えた大阪2・3陣訴訟で8日、大阪高裁で和解が成立した。12社が67人に12億4675万円を支払い、「被害を生じさせたことに深くおわびする」と謝罪(2社を除く)した。原告・弁護団は「謝罪と高水準の和解による救済は大きな成果。救済対象が広がったことも重要」と指摘。「東京1・2陣訴訟和解とあわせて関連訴訟解決の後押しになる。メーカーらの拠出によるすべての被害者救済制度の創設に力となる」と強調している。…村松昭夫弁護団長は「解体・屋外作業者にも対象を広げていくことが必要。政治の決断ですべての被害者が救済される制度創設が求められる」と述べた。(『しんぶん赤旗』2025.08.09より抜粋。)
●「政府は23の都道府県に最低賃金の大幅な引き上げを要請する方針だ。赤沢亮正経済財政・再生相が一部の知事を直接訪問して働きかけることも検討する。政府が掲げる『2020年代に全国平均で1500円』の目標達成に向けて、引き上げ率を毎年度上乗せし、29年度には8.8%とする計画案も示す。23都道府県は東京、大阪など最低賃金に近い水準で働く労働者が多い10都道府県と、秋田や沖縄など最低賃金が1000円を下回るうちの13県を想定している。政府の支援策などを説明して対応を求める。すでに決定している都や県もあり、一部の知事に対しては赤沢氏らがすでに電話によって考えを伝えたとみられる。」(『日本経済新聞』2025.08.09)
●「厚生労働省は、賃金不払いが疑われる事業場に対して、労働基準監督署が2024年(1-12月)実施した監督指導(立ち入り調査)結果をまとめた。建設業の賃金不払い件数は、全体の10%を占める2213件で、対象労働者数は6%に当たる1万0665人だった。不払い額は5%の9億2000万円となっている。」(『建設通信新聞』2025.08.12)

建設産業・経営

●「国土交通省は、5年に1度実施している建設業構造実態調査の2024年度結果をまとめた。経営上の課題については約8割の会社が『人手不足』と回答。中途を軸に採用に注力する傾向があるほか、定年延長や再雇用など従業員が長く働くための環境整備を進める動きも見える。調査は24年11月から25年1月にかけて実施。建設業許可業者から抽出した1万3000社(個人を含む)に調査票を送り、6252社から回答を得た。調査基準日は24年3月31日。経営上の課題(複数回答)の上位1、2位を集計すると、『人手不足』が58.7%と最も多く、いずれの資本規模でも最多だった。続いて『利益率の低下』が34.8%、『民間需要の減少』が28.7%、『官公需要の減少』が17.3%などとなった。経営上の課題の集計を上位5位まで広げると、『人手不足』の割合は78.9%に高まる。優先順位は異なれど、多くの会社で人材確保に苦慮する実情が浮かび上がる。」(『建設通信新聞』2025.08.01)
●大阪・関西万博のパビリオン建設を巡り、工事代金が施工業者に支払われていない問題が広がっている。全国商工団体連合会は6日、東京都の建設業許可を受けた事業者が未払いを行っているとして、未払いの解決へ適切な措置を講じるよう小池百合子知事宛てに要請した。…要請には、米国パビリオンの建設工事を下請けで受注し、2800万円分が未払いになっているという内装工事会社経営の男性が参加。英国の建設会社の3次下請けで工事を受注し、「工期が間に合わないため追加の人手を入れてほしい」と求められ職人を雇ったものの、男性に仕事を発注した2次下請け事業者が5月に経営破綻したという。「自分も(4次)下請け事業者から支払いを求められ、本当にきつい」と訴えた。全商連の中山眞常任理事らは「施工事業者は、建築内容の変更を含めた長時間労働の突貫工事を強いられ、パビリオン完成に尽力したにもかかわらず、代金未払いで倒産・廃業の危機に追い込まれている」と強調。元請け企業には都知事から建設業の許可を受けている企業もあるとして、▽建設業法に基づく指導・監督権限を最大限発揮し、未払いを至急解決する▽都知事許可の最上位元請けに工事代金の立て替え払いなど適切な措置を講じる▽都知事の指導・監督に不誠実な対応をする許可業者に営業停止処分など厳しく対応する―ことを求めた。(『しんぶん赤旗』2025.08.07より抜粋。)
●「大成建設は8日、海洋土木大手の東洋建設を買収すると発表した。TOB(株式公開買い付け)などを通じて全株式を取得する。実質的な買収額は約1600億円。両社の単純合算した売上高(2025年3月期)は約2兆3200億円と建設業界2位の大林組に迫る。業界全体が市場縮小と資材・人件費高騰による収益圧迫に直面するなか、再編機運が一段と高まる。」(『日本経済新聞』2025.08.09)
●「ゼネコン大手4社の2025年4~6月期の連結決算が8日出そろった。大成建設、鹿島、清水建設の3社の純利益が前年同期より増えた。資材費や人件費の上昇が逆風だが、大型工事の進捗や好採算の工事を重視する取り組みが奏功している。」(『日本経済新聞』2025.08.09)
●「空調設備工事を主力とする上場大手6社の2026年3月期第1四半期決算(連結)が、8日に出そろった。売上高は、豊富な繰越工事が順調に進捗(しんちょく)したことなどにより、朝日工業社を除く5社が増収だった。その5社が第1四半期として過去最高を更新した。営業利益は、増収や受注時の採算性向上などによって全6社が増益となり、過去最高も更新した。」(『建設通信新聞』2025.08.12)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「国土交通省は水資源機構が管理するダムのうち、少なくとも15道府県33カ所の貯水率が平年や昨年と比べ低いことが2日までに分かった。降雨が少なく気温の高い日が続いているため。7月31日時点の国交省まとめによると15水系19河川で取水制限など渇水への特別態勢を敷いている。長引けば農作物の不作や断水につながる恐れがある。国交省は2017年以来8年ぶりに渇水対策本部を設置した。農業用水確保に向け、自治体から要望があればポンプ車や給水車などを派遣する方針を決めた。」(『日本経済新聞』2025.08.02)
●「マイホームの敷地面積が都心で縮んでいる。東京23区で2024年に売り出された50平方メートル未満の戸建ては18年比3割増え、新築全体に占める比率は16%と4ポイント高まった。住宅が値上がりする中、狭い土地に立つ割安な戸建て『ペンシル住宅』が若い世帯で人気が高まっている。ただ建物の維持コストは重く、長期居住を見据えると不安もある。…こうした小規模な住宅は1階に駐車場と水回り、2階が居間、3階に寝室という間取りが多い。ペンシル住宅と呼ばれ、地価の高い都心部を中心に存在感が高まっている。不動産情報サイト『マンションレビュー』を運営するワンノブアカインド(東京・港)の協力で大手不動産販売サイトに載る新築物件を集計したところ、50平方メートル未満は24年に少なくとも1733件と18年比34%増えた。100平方メートル以上の敷地を分割した事例も複数あった。国は快適に暮らせる戸建ての延べ床面積の目安を3人家族なら一般的に100平方メートルとする。3階建ての建築面積を35平方メートル、建ペい率を一般的な60%で計算すると敷地面積は58平方メートル強となる。この目安を下回る住宅が増えている背景には価格の上昇がある。不動産調査会社の東京カンテイ(東京・品川)によると敷地100~300平方メートルの平均価格は18年比38%上昇した。50平方メートル未満の値上がり率は20%にとどまる。資材の上昇を受け、住宅メーカーは狭い土地でコストを抑えて需要をつかもうとしている。不動産仲介のらくだ不動産(東京・渋谷)の山本直彌副社長は都心の小規模戸建ては『資材費が急騰した20年以降に急増した』とみる。ペンシル住宅は将来の住みやすさや資産価値に不安もある。中古価格は既に伸び悩む。住宅情報サイト『ライフルホームズ』で24年に売り出された築20年以内の戸建ての値上がり率は19年比13%と80~100平方メートル未満を下回る。一因は費用負担だ。住宅診断サービスのさくら事務所(東京・渋谷)の田村啓氏は『3階建ては屋根のひさしが小さいため、外壁塗装の頻度が高まる』と話す。3階建てに45年住むと修繕費は2階建てと比べて1坪あたり25%高くなる可能性もある。東京都の推計では世帯主が65歳以上の割合が45年に20年比5ポイント上昇し32%になる見通しで、高齢者にはバリアフリー対応などの負担も重い。建物を敷地いっぱいに建てるペンシル住宅は建て替え工事の際に足場がはみ出ることもある。隣地の住民と合意できなけれぼ着工できず、資産価値にも響く。」(『日本経済新聞』2025.08.10)

その他

●「英国の民営化政策が転機を迎えている。水道などのインフラ部門は投資不足でサービスが劣化し、鉄鋼をはじめとする製造業は地盤沈下が続く。サッチャー政権で世界に先駆けて民営化や自由化を推し進めた新自由主義の本家が官の関与を強める経済政策にかじを切る。…水質検査で大腸菌数が基準を超えている。政府が指定したイングランドのおよそ450カ所の水浴び場のうち40カ所以上で水質不良の警告が出ている。不名誉な判定を受ける場所は増えている。…イングランドの川や海への下水放出は2024年に延べ361万時間と過去最長にのばった。投資不足の下水道システムが機能不全で汚水を処理しきれず、雨水とともにたれ流す。投資の停滞を招いた一因がサッチャー政権下の1989年に実施した民営化だ。最大手『テムズ・ウオーター』は2006年にオーストラリアの投資銀行などの傘下に入ると、株主への配当優先でインフラ投資に資金を十分に回さなくなった。不正な下水処理に伴う罰金もあり、債務が膨張。再国有化が取り沙汰される。政府は水道会社の財務や水質などを監督する強力な規制機関を設ける。水道管の老朽化対策や下水施設に今後5年で1040億ポンド(約20兆円)の投資が必要とされる。家庭の水道代の大幅な上昇は避けられない。…2024年7月に政権復帰した労働党はサッチャー氏の保守党に比べ、大きな政府を志向しており、サッチャー主義からの転換を進める。英国民はインフラの再国有化を望む。24年6月の世論調査によると、国有化を支持する割合は水道が82%、鉄道が76%、エネルギーが71%だった。民営化や自由化は当初、コスト削減などのプラス面が目立った。ただ短期的な利益を追求し、老朽設備を使い続けてサービスは悪化した。英グリニッジ大学のデビッド・ホール客員教授は『民間が官より効率的だというのはフェイクニュースだった』と結論づける。」(『日本経済新聞』2025.08.11)