情勢の特徴 - 2025年8月後半
●「政府は、地方自治体が国土強靭化地域計画に盛り込む防災・減災対策関係の事業に2026年度以降の交付金・補助金を重点化する。同計画の策定・改定や、計画に入れた取り組みに対する協力と支援も進める。内閣官房は国土強靭化を巡る府省庁の交付金・補助金のメニュー、リストを取りまとめた上で公表する。地域の国土強靭化をさらに推進するのが狙い。…自治体の国土強靭化を促し、国が主体となっている多くの施策と自治体の計画の連携を向上させる。実施中期計画に関しては、『国民の生命と財産を守る防災インフラの整備・管理』などの施策の実行に必要な検討を府省庁が本年度から行っていく。」(『建設工業新聞』2025.08.18)
●全国の民商青年部所属の事業主、家族専従者でつくる全商連青年部協議会(全青協)が行った全国業者青年経営実態アンケートによると、消費税のインボイス(適格請求書)制度が「消費税負担の増加」(375件)、「経理事務負担の増加」(285件、いずれも複数回答)を招いたことが示された。2月中旬から6月上旬に実施し、40歳未満の会内外の業者青年40都道府県893人が回答。建設・土木が過半数だ。89.4%が従業員5人以下の小規模企業。インボイス発行事業者登録で課税事業者になった30.9%を含む72.1%が消費税の課税事業者だ。(『しんぶん赤旗』2025.08.21より抜粋。)
●「財務省は2026年度予算の概算要求で、国債の元利払いにあてる費用を過去最大の32兆3865億円とする。足元の金利上昇をふまえて利払い費が膨らむ。高齢化による社会保障費の伸びも続き、一般会計の要求総額は初の120兆円台になる見通しだ。政策経費に回す余地は狭まり、予算の硬直化を招く恐れがある。26日の自民党の部会に国債費などの要求内容を提示した。国債費は25年度予算と比べて15%増となり、初めて30兆円台に乗る。…国債費のなかでも伸び率が大きいのが利払い費で、25年度予算比で24%増の13兆435億円と過去最大を見込む。計算する際に用いる総低金利は2.6%とし、25年度の2.0%から引き上げる。」(『日本経済新聞』2025.08.27)
●「国土交通省は26日、2026年度予算の概算要求を発表した。国費総額は一般会計が前年度当初予算費18.9%増の7兆0811億円。このうち公共事業関係費は19.0%増の6兆2819億円、非公共事業は17.9%増の7992億円を要求する。26年度から始まる第1次国土強靭化実施中計計画の必要経費は、予算編成過程で検討する事項要求とした。要求の柱は、▽国民の安全・安心の確保▽持続的な経済成長の実現▽個性を生かした地域づくりと持続可能で活力ある国づくり――の3本。公共事業関係費のうち、一般公共事業費は19.2%増の6兆2403億円、災害復旧等が前年度とほぼ同額の416億円。一般会計とは別に、東日本大震災復興特別会計に40.3%減の367億円、財政投融資に23.4%増の1兆6413億円を要求する。」(『建設通信新聞』2025.08.27)
●「国土交通省は2026年度予算の概算要求で、上下水道関連分野に前年度比20.0%増の1660億円を計上した。新たに管路更新やリダンダンシー(冗長性)確保を支援する個別補助事業を創設し、交付金事業も拡充する。埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故や進行する人口減少など社会的動向を踏まえ、強靭で持続可能は上下水道システムの整備を目指す。上下水道分野は従来、社会資本整備総合交付金が主な支援手段だった。事業を後押しするため個別補助制度を設ける。対象は、大口径管路や緊急輸送・重要物流道路下の管路など、事故時に社会的影響が大きいものを想定し、重点支援する。事故時の修繕・復旧が困難な施設はリダンダンシー確保の取り組みを支援。補助率は下水道事業2分の1、水道事業3分の1とし、重大事故の予防とインフラの安定的な維持管理を支援する。」(『建設工業新聞』2025.08.27)
●「国に納める税の滞納が増えている。2024年度に新たに発生した滞納額は前年同比24%増の9925億円で、21年ぶりの高水準となった。物価高で企業の資金繰りが悪化し、消費税や法人税の納付が滞っている。滞納額は今後さらに増える恐れがある。国税庁が27日に発表した租税滞納状況によると、24年度の新規滞納額は2年連続で増えた。バブル期直後をピークに減少傾向だったが、新型コロナウイルス禍以降は増加基調に転じた。コロナ禍前の19年度と比べると1.8倍に膨らんだ。24年度の新規滞納額で最も大きいのが消費税で21%増の5298億円と全体の半分を占めた。所得税は14%増の2343億円、法人税は63%増の1627億円だった。」(『日本経済新聞』2025.08.28)
●「政府予算が膨張している。財務省は29日、2026年度の概算要求を事実上締め切った。一般会計総額は要求段階で122兆円台と過去最大となり、初めて120兆円の大台を超える。増加が続く歳出に対し、国内総生産(GDP)や物価は見合うだけの伸びを伴っていない。支出を絞る取り組みが欠かせない。要求総額は過去最大だった25年度の117兆6059億円を上回る。財務省は9月上旬に集計結果を公表する。内容や金額を精査し、与党などとの調整を経て、年末までに26年度予算案をまとめる。…要望内容をみると、国債の利払い費の膨張や地政学リスクの高まりに対応する防衛費、高齢化に伴う医療や年金などの社会保障費が総額を押し上げる構図が続く。厚生労働省の要求額は25年度予算から1.4%増の34兆7929億円と過去最大になった。うち年金・医療などの経費が32兆9387億円と95%を占める。防衛省も8兆8454億円と過去最大の要求額を計上した。国債の元利払いにあてる費用も過去最大の32兆3865億円にのぼる。足元の金利上昇をふまえて想定金利を2.6%に設定した。25年度は2.0%だった。利払い費は24%増の13兆435億円になる。国土交通省は25年度当初予算比19%増の7兆812億円を要求した。上下水道やトンネル、空港などの老朽化対策で29%増の1兆783億円を計上した。経済産業省は中堅・中小企業の輸出促進など、トランプ米政権の関税措置を受けた要望が目立つ。農林水産省は『コメの需要に応じた増産実現予算』と銘打ち、輸出用米の生産促進に投じるお金を25年度当初比で倍増するよう求めた。担い手農家へ農地の集約を進める政策にも予算を要求した。」(『日本経済新聞』2025.08.30)
●「厚生労働省が29日発表した1~6月の人口動態統計(外国人を含む速報値)によると、出生数は前年同期比3.1%減の33万9280人だった。新型コロナウイルス禍後に5%を超えていた減少ペースこそ鈍ったものの少子化に歯止めがかかったとは言いがたい。2025年4月の待機児童が7年連続で過去最少を更新したのも少子化による需要減が一因だ。上半期の出生数としては比較可能な1969年以降で最少を更新した。同じペースが続けば、通年でも過去最少となる可能性が高い。死亡数は3.1%増の83万6818人だった。出生数から死亡数を引いた自然増減はマイナス49万7538人となった。自然減は21年連続。婚姻数は4.0%減の23万8561組と、2年ぶりに減少に転じた。地域別ではすべての都道府県が自然減となった。」(『日本経済新聞』2025.08.30)
●「国土交通省は公共建築工事の積算基準で採用している材工一式の『市場単価』の一部を見直し、労務費などの内訳が把握可能な新しい方式の積算単価を導入する。改正建設業法で規定する『労務費に関する基準(標準労務費)』の検討と連動して官房官庁営繕部が進めていた歩掛かり調査の結果を反映。中央建設業審議会(中建審)が標準労務費の初弾を11月ごろに作成・勧告するのと同じ時期に、鉄筋と型枠の両工種を新方式の単価に切り替える形で積算基準を改定する。」(『建設工業新聞』2025.08.18)
●「建築大工をはじめとした住宅分野の建設技能者に焦点を当てて、国土交通省の有識者会議が検討してきた担い手確保策の大枠が固まってきた。若年層などの入職増加と、その後の定着につながる職場環境向上・キャリア形成を促す観点で、社員大工化の促進を柱の一つに据える。地域の工務店が社員大工化に取り組むインセンティブの整理や、入職後教育の共同実施などを提言する方向。これらを後押しする国の政策の具体化に道筋を付ける。」(『建設工業新聞』2025.08.19)
●「中央建設業審議会(中建審)が検討している『労務費に関する基準(標準労務費)』の運用の大枠を、建設業者や工事発注者に周知する国土交通省の説明会が始まった。労務費を内訳明示した見積書での価格交渉など、従来の総価一式とは異なる対応の必要性を訴える。標準労務費を活用した新たな商習慣への転換を意識付けるのが狙いだ。民間発注者などにも『技能者の賃金にしわ寄せが及べば、持続的・安定的に発注できなくなる』と警鐘を鳴らし、新たな取引ルールの定着に理解を求めた。」(『建設工業新聞』2025.08.21)
●「国土交通省は、住宅分野の労務費の基準(標準労務費)の作成に向けた歩掛かり調査の実施方針をまとめた。職種別意見交換の議論を踏まえ、木造戸建て住宅の新築に要する15の作業工程ごとに歩掛かりの実態を把握する。調査結果の一部は非住宅分野にも転用する。9月末にも素案をまとめる。標準労務費は公共工事設計労務単価に直轄工事の歩掛かりを乗じて算出することを基本とする。戸建て住宅は直轄で発注実績がないため、調査をして標準的な歩掛かりを設定する。調査は在来工法による木造戸建て新築住宅を対象とする。方形状で2階建て延べ100平方メートル程度を条件とし、JBN・全国工務店協会、全国解体工事業団体連合会、全日本瓦工事業連盟が推薦する計25件程度を調べる。8月に調査に着手する。調査対象作業に要する時間や人数について、調査員による実測や施工者からの申請に基づき実態を把握し、平均値を標準的な歩掛かりとしてまとめる。算出した数値と、作業内容に対応する設計労務単価を乗じて住宅分野の標準労務費を作成する。対象の作業工程は、▽解体▽仮設▽基礎▽足場▽建て方▽防水▽板金・屋根▽外装▽断熱・気密▽造作▽内装仕上げ▽電気設備▽給排水・ガス設備▽美装▽外構――の15工程。」(『建設通信新聞』2025.08.25)
●「国土交通省は改正建設業法で規定する『労務費に関する基準(標準労務費)』の運用に合わせ、最終的に技能者に支払う『適正な賃金』の目安を新たに示す方針だ。2023年6月に公表した『建設キャリアアップシステム(CCUS)レベル別年収』を改定し、支払いを目指すべき『目標値』と、最低限支払うべき『基準値(下限値)』の2通りで判断基準を設ける。…既存のレベル別年収は、公共事業労務費調査で把握した技能者の賃金実態をベースに、個々の技能者を相当するレベルに振り分けることで算定。公共工事設計労務単価が行き渡ることを前提とした賃金水準と言える。ただ現状は、技能者の年収実態がレベル別年収の水準には届いていない。標準労務費に関する中央建設業審議会(中建審)のワーキンググループでは、地域別最低賃金とは別の規制的な枠組みとして、『最低限支払われるべき賃金』のラインを設けるべきだとの指摘があった。最低賃金法に基づき特定産業・職業の労使間で設定できる『特定最低賃金』を活用する提案も出た。新たに設定する賃金目安のうち、目標値は標準労務費で確保される賃金原資と対応する水準とする。基準値は地域別最低賃金より高く、目標値より低い水準を想定。公共工事では両数値を目安として、発注者が賃金の支払い状況を確認することを念頭に置く。国交省は特定最低賃金の設定を目指す労使間にパートナーシップ醸成を促すことも重要との姿勢も示す。」(『建設工業新聞』2025.08.20)
●「建設産業専門団体連合会(建専連、岩田正吾会長)が技能実習生などの外国人材を受け入れている専門工事会社に行ったアンケートで、日本人を採用しようとしても『全然入社してくれない』との回答が70.9%に達した。若年層を中心に国内人材の確保が一段と厳しくなる中、外国人材を貴重な戦力として将来も継続的に採用していく意向の会社が多い。実習生の採用を『現状維持で続けていく予定』は61.7%、『増やしていく予定』は27.8%だった。」(『建設工業新聞』2025.08.22)
●地方最低賃金審議会(地賃審)で、最賃引き上げの目安額に積極的に上積みをはかる地域が広がる一方、改定額の発効日を大幅に遅延させる動きが起こっている。最賃引き上げが非正規雇用労働者に届かず、約半年のあいだ地域間格差は212円から275円へ拡大する。最賃改定の発効日は、最賃法14条2の規定で、原則は改定額を公示して30日後。春闘の賃上げを非正規雇用労働者に早く汲及させるためだ。例年は10月に各地で順次発効する。昨年は最も遅く改定額を決めた徳島でも11月1日発効だった。ところが、今年は地賃審で発効日の遅延を決める事例が相次いでいる。翌年まで遅延する地域があるのは、最賃を時給だけで示す現行制度となった2002年以来初めて。最賃額全国最下位951円の秋田は、目安に16円上積みし80円引き上げとした一方、来年3月31日まで発効を遅らせる。東京の10月3日から半年遅れだ。…埼玉は例年並みの審議日程なのに、8日に発効日遅延の先陣を切った。目安どおり63円引き上げで11月1日発効。全会一致の慣例が破られ、労働者側委員3人が反対のもと、使用者側3人と公益委員1人(会長以外の2人は欠席)の賛成で押し切った。発効日遅延には財界の意向がある。経団連の春闘方針「経営労働政策特別委員会報告」は19年版から最賃改定の発効を遅らせるよう主張。また石破茂政権が「骨太の方針」でアピールした中小企業支援拡充を具体化しないことが、使用者側の強硬姿勢の口実となっている。(『しんぶん赤旗』2025.08.29より抜粋。)
●国際建設林業労働組合連盟日本協議会(BWI-JAC、議長・中村恭士森林労連委員長)は29日、大阪・関西万博の解体工事での法令順守の徹底や海外パビリオン工事での未払い問題の解決などを万博協会に要請した。BWI-JACに加盟する森林労連、UAゼンセン、全建総連、日建協の4組合の代表らが参加。一昨年8月にも万博建設工事での労働条件の改善や労働者の安全確保などを要請してきたと指摘した上で、閉会後に実施される施設解体工事でも、法令順守の徹底、労働安全の確保、適正条件の整備などをはかるよう強く求めた。具体的に、▽必要経費と工期の確保、週休2日制の実施▽万博協会と契約を締結する業者への安全衛生協議会の設置や現場パトロールの義務化▽安全問題や通報状況の徹底的な公開▽下請け業者への未払い問題の解決への働きかけと防止対策など4項目にわたる対策を協会に申し入れた。(『しんぶん赤旗』2025.08.30より抜粋。)
●「建設業のM&A(合併・買収)が活発だ。2025年1~6月は113件と5年前から7割増え、通年で過去最多だった24年を上回るペースで推移する。全国で人手不足による工事の遅れが広がる一方、老朽イシフラの更新や建物修繕など需要は旺盛だ。8月には大成建設が東洋建設の買収を発表するなど、今後は大手を含む業界再編の動きが加速しそうだ。M&A調査会社のレコフデータ(東京・千代田)によると、建設関連企業が関わる1~6月のM&Aは113件と前年同期に比べて8%増えた。集計を始めた1985年以降で最多だった24年通年(189件)の6割に達し、最多を更新する勢いだ。新型コロナウイルス禍以降は毎年180件前後と高水準が続いており、10年前から2~3倍と増加傾向が鮮明だ。…M&Aが活発な背景には人手不足による供給制約がある。国土交通省によると、契約したうち工事が完了していない手持ち工事高は24年平均で42兆円と、10年前より約8割増えた。建設業就業者の減少や残業規制を受け、『現場監督や技術者の不足を理由にゼネコンに工事を断られるケースが増えている』(大手デベロッパー)という。人手不足を理由にした倒産も増えつつある中、不動産・住宅大手は地元の有力企業に狙いを定める。住友林業は3月、東京都と大阪府を基盤とする不動産会社のLeTech(リテック)を買収すると発表した。主力の戸建て販売市場が人口減で縮小が予想されるなか、リテックが強みとする賃貸住宅事業を新たな収益源に育てる方針だ。長谷工コーポレーションは5月に名古屋圏で戸建て住宅の施工・販売を手掛けるウッドフレンズを約22億円で買収した。業績不振が続く同社の救済といった側面もあるが、長谷工の担当者は『用地仕入れから施工、販売のノウハウを組み合わせれば、国産木材の安定供給に加えて東海圏での事業拡大を実現できる』と話す。」(『日本経済新聞』2025.08.18)
●「大手・準大手ゼネコン25社(単体27社)の2026年3月期第1四半期決算が8日までに公表された。連結売上高は飛島ホールディングスを除いた24社のうち、17社が前年同期比で増収となった。うち10社が過去最高を更新した。連結の営業損益は21社が増益で、うち6社が過去最高となった。単体の完成工事総利益(粗利)率は公表した23社のうち、22社が前年同期を上回り、14社が10%超となった。土木・建築別で見ると、土木の粗利率(21社開示)は13社が前期を上回った。大成建設が25%を超えたほか、鹿島、安藤ハザマ、奥村組、ピーエス・コンストラクションが15%を超えた。建築の粗利率(21社開示)は19社が前期を上回った。10%超えは8社だった。受注高(単体)は15社が前年同期を上回り、11社が下回った。」(『建設通信新聞』2025.08.18)
●「東京商工リサーチは11日、好調な業績が目立つゼネコンとは裏腹に、解体工事業では倒産が過去最多ペースで進んでいる実態を『進む小規模業者の淘汰(とうた)、難しいコスト削減』としてまとめ、TSRデータインサイトで公表した。解体工事業でも安全確保や労働時間の管理など法令順守が厳しく求められる一方、一部業者のホームページには『格安』や『安価』などの言葉が飛び交う中、解体工事業の倒産の実態を明らかにしている。今回の報告によると、2025年1-7月の解体工事業の倒産は36件(前年同期比12.5%増)だった。過去20年間で見ると、12年の同期に並ぶ最多件数で、このペースで推移すれば、これまで年間最多だった24年59件を超える計算という。倒産した36件を原因別で見ると、受注不振が23件(構成比63.8%)と6割を占める。価格競争による値引きや受注競争で売り上げが落ち込んだ業者が多い。倒産形態は36件全てが破産だった。民事再生法などによる再建は難しいようだ。資本金別では、1億円以上がゼロで、個人企業を含む1000万円未満が28件(構成比77.7%)と小規模事業者が目立つ。ただ、負債額別では1億円以上が14件(構成比38.8%)と約4割を占める。資本金が少ない小規模事業者にも関わらず負債が肥大化する理由として、機械や重機、車両などへの投資のほか、コロナ禍の資金繰り支援や運転資金の借り入れが膨らんだのではと分析している。」(『建設通信新聞』2025.08.18)
●「万博工事費未払い問題の解決に向け、政府は役割を果たせ」―。全商連は7月28日、国会内で国土交通省、経産省、内閣府に、大阪・関西万博の建設工事費未払い問題の早期解決を要請した。…要請は、全商連が同16日に被害業者らとともに、国交省、財務省、経産省などに要請したのに続いて2回目。前回の要請以降、被害業者ら2社に経産省が個別に聞き取りを行うなど新たな動きも出ているが、解決に向けた具体的な進捗はない。被害業者からは「もう、もたない」「解決を急いでほしい」などの切実な声が寄せられている。要請では、被害業者からの個別要請書を改めて3府省に提出し、早期解決を要請。「国家プロジェクトと位置付け、政府が進めてきたのが大阪・関西万博だ。各省庁が持てる権限を全て生かして、問題の早期解決を図るべきだ」「“万博倒産”を出してはいけない。支払うべきものを全て支払って、『万博は成功した』と言える」などと追求した。(『全国商工新聞』2025.08.18より抜粋。)
●大阪府の吉村洋文知事と万博協会が連日「万博の成功」を演出する一方で海外パビリオン工事費未払い被害が広がり、下請け業者の命と暮らしが脅かされていることが大問題になっている。万博は巨額の税金を投じた国家的事業であり、国と府市、万博協会の責任が問われている。未払いが判明している海外館は10カ国10館。マルタ館を担当した1次下請けのA社は、元請けの世界的イベント大手GLイベンツ社(本社フランス・リヨン)の日本法人に工事代金約1億2000万円の支払いを求め、6月に東京地裁に提訴した。GL社は来年の愛知・名古屋アジア競技大会でも630億円の特命随意契約を結んでおり、不払いなら資格が問われる。全商連が取り組んだ「万博工事代金未払い110番」被害アンケートには、関西から中四国、関東まで全国11社が回答。被害総額は4億3500万円超で、このうち6社の最上位元請けがGL社で被害額は3億円超に上る。(『全国商工新聞』2025.08.18より抜粋。)
●「大成建設が東洋建設の全株式をTOB(株式公開買い付け)などで取得し、完全子会社化する。買収総額は約1600億円を見込み、実現すれば建設業界で過去最大規模のM&A(合併・買収)になる。海上土木に強みを持つ東洋建設を傘下に収めることで、大成建設が得意な陸上土木の技術などと融合して国内外での受注や利益の拡大を目指す。担い手不足や脱炭素化といった社会課題や成長領域への対応が迫られる中、従来はすみ分けられてきた施工領域にとらわれない、連携の機運が高まりそうだ。東洋建設へのTOBを12日に開始した。買い付け価格は1株1750円、期間は9月24日まで。TOBが成立すれば年内にも大成建設の完全子会社となり、上場廃止する見通しだ。両社はそれぞれが強みを持つ土木・建築分野で技術を補完し合い、洋上風力発電や建築リニューアル、海外事業など成長分野での受注拡大を目指す。」(『建設工業新聞』2025.08.19)
●「建物解体に伴うアスベスト(石綿)除去作業中に、粉じん飛散防止のため密閉された空間での事故が相次いでいる。発電機使用で一酸化炭素(CO)中毒になるケースもあり、専門家は『対策が十分ではない現場もある』と指摘。飛散性が高い石綿建材を含む建物の解体は2028年度ごろにピークを迎えるといい、さらなる事故増加が懸念されている。…日本石綿対策技術協会(東京)によると、粉じんを吸い込むとじん肺や肺がんになる恐れがあり、除去には飛散防止措置が義務化されている。人体への危険性に加え、飛散防止のために閉ざされた空間での作業が求められ、難易度の高い工事とされる。石綿被害が社会問題化すると、国は06年に国家資格『石綿作業主任者』を設け、現場での適任を義務付けた。しかし協会の姫野賢一郎理事長は、資格取得に実地研修がないことや、更新不要であることを挙げ、『作業員が知識や経験の足りないまま現場に出てしまう要因となっている』と指摘する。国土交通省によると、石綿建材は1950年代から使用され、粉じんが出やすい石綿を使ったビルなどの大規模建造物は、使用が全面禁止となった2006年までに約280万棟建てられた。耐用年数などから、解体される建物が10万棟に達する28年度ごろが工事のピークとされる。姫野理事長は除去作業が増えるにつれて、事故は多くなると強調。米国や韓国、オーストラリアでは、石綿工事に携わるには実地研修や資格の定期更新が必須になっているとして、『日本も資格制度をより厳格化すべきだ』とした。」(『日本経済新聞』2025.08.21)
●「東京都内の共同住宅が着工戸数減、1戸当たりの工事費予定額(戸当たり工事費)上昇という傾向が続く中、隣接する埼玉、千葉、神奈川の3県では共同住宅着工戸数増、戸当たり工事費上昇という流れが続いている。都内の供給戸数の減少と販売価格上昇が続くことで、一定の需要が隣接県に流れているとみられる。国土交通省の建築着工統計調査報告住宅着工統計によると、埼玉県の4-6月の共同住宅累計着工戸数は、前年同期比4.5%増の4567戸となった。3年連続の増加で、22年同期と比べると11.4%という増加率になった。24年度全体では前年度比29.4%増の2万0495戸で、2万戸を超えた。戸当たり工事費も4-6月平均が前年同期比4.8%上昇の1478万円だった。年度別でも、24年度平均は前年度比0.7%上昇の1466万円で、22年度平均と比べると9.4%の上昇だ。神奈川県も戸数増、戸当たり工事費上昇の傾向は顕著だ。4-6月の累計着工戸数は前年同期比23.0%減の7797戸にとどまったものの、24年度全体は前年度比8.9%増の3万3689戸だった。戸当たり工事費は、24年度平均が前年度比5.0%上昇の1591万円で、25年4-6月平均はさらに前年同期比1.2%上昇の1702万円となり、上昇傾向が収まる気配はない。干葉県は、4-6月累計着工戸数が前年同期比29.8%減の3553戸となったが、年度別では24年度は前年度比14.9%増の1万8485戸と高い水準となった。戸当たり工事費も同様の傾向で、4-6月平均は前年同期比29.4%低下の1204万円だったが、年度別では24年度平均が前年度比21.5%上昇の1623万円で、上昇傾向が収まったとは言えない。都内の販売価格が非常に高い状態を維持する状況を嫌気した一定の購入希望者が隣県に流れ出しているとみられる。」(『建設通信新聞』2025.08.22)
●「主要都市の路線バスで公費依存が強まっている。日本経済新聞の調査によると、主要自治体がバス事業者に拠出する補助金が10年で2倍の220億円超に増えていた。人件費の負担が重く、補助金だけで交通網を維持するのは限界に来ている。公共交通空白地の拡大懸念が都市部にも波及する中、代替サービスなど新しい対策が求められる。路線バスの補助金は過疎地の路線を維持するために主に国が拠出するものと、個別事情に合わせて自治体が拠出するものの2種類がある。国土交通省によると、国が拠出したのは2023年度に124億円だった。日経は都市部の路線の収益の悪化が進んでいる事情を明らかにするため、自治体の補助金を調査した。調査対象は政令指定都市、中核市、施行時特例市の105自治体。回答率は100%。24年度に市の財源で補助金を拠出していると答えたのは全体の76%にあたる80都市で、15年度(70都市)から14%増えた。24年度の補助金額は合計221億円で、15年度の113億円から倍増した。一般的にバス補助金は運賃収入で運行費用をまかなえない赤字路線に支給される。調査では5割超の自治体が運行収支の赤字部分を全額負担する系統を抱えていた。公費依存に拍車をかけた背景には新型コロナウイルス禍の業績悪化がある。20~24年度平均の補助金額はコロナ前(15~19年度)に比べて7割増。政令市で最も増加率が高かったのは札幌市の2.6倍で、名古屋市(2.2倍)も2倍を超えた。神戸市は7割増、大阪市も約5割増えた。」(『日本経済新聞』2025.08.22)