情勢の特徴 - 2025年9月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「日銀は19日の金融政策決定会合で、保有する上場投資信託(ETF)と不動産投資信託(REIT)を市場で売却することを決めた。2026年初めごろからの売却開始を目指す。株式市場への影響を考慮して売却ペースは少額にとどめる。13年から始まった異次元緩和は最終出口に向かう。日銀は24年3月にマイナス金利政策や長短金利操作(YCC、イールドカーブ・コントロール)を解除し、異次元緩和からの脱却を決めた。同8月には国債の買い入れ額を減らし、国債の保有残高を縮小させる事実上の量的引き締めも開始した。ETFとREITの処分は異次元緩和の出口に進む上で最後のピースになっていた。日銀が保有するETFは25年3月末時点で簿価37兆円、時価70兆円にのぼる。REITは簿価で6500億円、時価で7000億円ある。年間でETFを簿価3300億円程度、時価6200億円程度のペースで売却していく。REITは簿価50億円程度、時価55億円程度を売却する。」(『日本経済新聞』2025.09.20)
●「2022年度以降のインフレ局面で日本の実質賃金の累計の落ち込みがリーマン・ショックの時に近い下げ幅となっている。24、25年と続いた5%を超える歴史的な賃上げでも物価の伸びには追いつかず、会社員らの給料は目減りしている。経済界は来春の労使交渉で、複数年を見据えた『継続的な賃上げ』を目標に掲げる方針だ。…連合の最終集計によると賃上げ率はバブル期以来、三十数年ぶりの水準に達している。24年は5.10%、25年は5.25%だった。基本給を底上げするベースアップ(ベア)と定期昇給を分けられる組合で集計したベア率も3%台半ばから後半を記録した。これだけの賃上げでも、物価の上昇分を差し引いた実質賃金は22年春以来おおむね減り続けた。…厚生労働省の毎月勤労統計で、実質賃金の推移を21年度をベースラインとしてたどると、24年度までに4.4%減った。25年度も7月までに0.4%前後落ち込んだとみられる。従業員5人以上の企業のデータをもとに計算した。過去30年で見ると、リーマン・ショックや14年に消費税率を5%から8%に上げた後の落ち込みに肩を並べる。…政府は経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)で実質賃金を年1%押し上げる目標を掲げた。仮にこのペースが実現しても、21年度の水準まで回復するのに5年程度はかかる。この間の落ち込みを取り戻すにはさらに5年程度を要する。」(『日本経済新聞』2025.09.23)
●「土地と建物の所有権を分離し、土地のみを取引する『底地(そこち)ビジネス』が拡大している。物言う株主(アクティビスト)の要求もあり、企業が資産の効率化に向けて土地の売却を進めていることが要因だ。米投資ファンドのKKRやイオンリテールが活用しており、2026年には国内市場が累計10兆円規模になるとの推計もある。底地とは、建物を他者が所有することを前提に借地権を設定している土地を指す。20~50年程度の定期借地権契約を結び借地料を長期で安定して得られる利点がある。建物の修繕や改装の投資がいらず、空室リスクも低い。契約終了後は流動性の高い更地で返還されるため、資産価値が下がりにくいともされる。拡大の背景には、企業による資産効率化の流れがある。アクティビストらの要請を受け、企業は遊休資産を売却し、その資金を成長分野に再投資するようになった。…日本不動産研究所(東京・港)によると、底地の累積取引額は23年に6兆4800億円と10年前から3.7倍に、取引件数は約2500件と5倍に増えた。取引額は26年に9兆6500億円、30年には16兆4200億円に拡大すると推計する。」(『日本経済新聞』2025.09.29)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は、『住宅分野における建設技能者の持続的確保懇談会』の取りまとめ案を示した。減少傾向にある住宅建設技能者の確保に向けて、社員大工化の一般化やキャリア育成プランの作成促進、M&A(企業の合併・買収)による経営基盤強化などの対策を検討するよう求めた。脱炭素やまちづくり、子育て支援、ウェルビーイングなど社会的要請や消費者ニーズの高まりで住宅に求められる性能は上がっており、住宅建設技能者の役割も増えている。一方、地方の中小工務店や大工は担い手不足の課題に直面している。そのため、国交省は2月に技能者確保に焦点を当てた懇談会を立ち上げた。5日の第5回会合で取りまとめ案を提示しおおむね了承された。今後、座長に一任し修正を加えて策定し、住宅基本計画の中間取りまとめに反映させる。取りまとめ案では、▽選ばれる業界・職場への変革▽育成環境整備▽担い手の裾野拡大――の3点に取り組むほか、これらの取り組みを促進するためにマネジメントの強化を検討するよう求めた。」(『建設通信新聞』2025.09.17)
●「国土交通省は、18日に開かれた中央建設業審議会のワーキンググループ(WG)に労務費に関する基準(標準労務費)の素案を提示し、大筋で合意を得た。標準労務費の基本的考え方や実効性確保策は文書で整理し、中建審の勧告対象とする。職種別に定める具体額は『労務費の基準値』として扱い、WGや職種別意見交換が関与しながら国交省が決定・公表する。」(『建設通信新聞』2025.09.19)
●「国土交通省は地方整備局発注の全国の土木工事で7~8月に『夏休み』を可能にする。工事を休む必要性を受注者が国と協議できると発注仕様書に明記する。休み中は工事の準備などに充て、状況に応じて工期延長も認める。建設業に多い熱中症被害を防ぐ取り組みとして民間工事への波及を狙う。炎天下の作業が多い道路や河川などの工事を想定する。関東地方整備局宇都宮国道事務所が試行済みで、2026年度から全国に広げる。地方整備局と受注者が協議し、数週間から2カ月ほどの休みを設定する。工期への影響が最小限になるよう工夫し、やむを得ない場合は工期の延長も認める。都道府県や自治体にも情報提供し、同様の取り組みを後押しする。試行では7月時点で6件に適用した。受注者や作業員から『社員の健康管理に寄与した』や『休暇を取得する時期の自由度がお盆期間以外にも広がった』といった声が寄せられた。厚生労働省によると、直近5年の熱中症による労働災害の死傷者数は業種別で建設業が最も多い。夏の暑さは年々厳しさを増し、工事現場での熱中症リスクは高まっている。今夏は東京都心で8月18日から10日続けて最高気温が35度以上の猛暑日となり、観測史上の最長記録を塗り替えた。建設業の働き手を確保する観点でも猛暑対策は欠かせない。国交省は23年から建設業界向けの指針を改定し、猛暑日を作業不能日として工期を設定するよう求め、国交省発注の工事で取り入れている。さらに土木工事の夏休み設定に積極的な姿勢を示すことで自治体や民間の工事でも採用するよう事実上推奨していく。」(『日本経済新聞』2025.09.23)
●「建設労働者の雇用改善や能力開発を支援する次期の『第11次建設雇用改善計画』(2026~30年度)を検討している厚生労働省の有識者委員会が開いた24日の会合で、担い手の確保・育成や処遇改善を巡ってさまざまな意見が出た。業界として技能労働者を育成する制度や基金の設置を求める提案が相次いだ。若い入職者の確保と夏季作業の対策のため、現場を夏季に閉所し、『夏休み』や『夏季のバカンス』のある建設業を目指す提案もあった。労働政策審議会(労政審、厚労相の諮問機関)の職業安定分科会雇用対策基本問題部会建設労働専門委員会が会合を開き、同計画の議論に当たって団体にヒアリングした。委員の松葉晋平全国建設労働組合総連合技術対策部長、岩田正吾建設産業専門団体連合会会長、若鶴純日本建設業連合会常務執行役らが意見を表明。松葉氏は、新規入職者の受け皿となる地域の中小建設事業主に対する助成金からの支援や、官民共同の『建設技能者育成基金』の構築を提案した。技能労働者を『建設業全体の財産』と位置付け、国と自治体、建設会社が協力、連携して技能の習得を後押し。建設技能者を労働協約に基づいて現場に出す仕組みとして、同基金の設置を求めた。建設キャリアアップシステム(CCUS)を生かすことにもしている。」(『建設工業新聞』2025.09.25)
●「国土交通省は、公共工事の落札候補者の入札金額の労務費が適正かどうかを確認する『労務費ダンピング調査』について、公共発注者向けのガイドライン案をまとめた。入札金額内訳書に記載の直接工事費が、官積算の直接工事費に0.97を乗じた水準を下回る場合、発注者は労務費が適正ではないと判断し、建設Gメンに通報する。発注段階のダンピング対策を強化し、労務費のしわ寄せを行う不良・不適格事業者の排除につなげる。」(『建設通信新聞』2025.09.26)
●「国土交通省は、地方自治体発注工事の積算に使う歩掛かりについて、直轄工事の標準歩掛かりと異なる独自歩掛かりの作成状況を調査した結果をまとめた。現場実態と標準歩掛かりがあっていないなどの理由で、都道府県・政令市の約半数に当たる33団体が独自の歩掛かりを設定していた。国交省は歩掛かりの作成手順などを示す事例集を2025年度内にもまとめる。」(『建設通信新聞』2025.09.29)

労働・福祉

●「建設技能人材機構(JAC、三野輪賢二理事長)は、日本国内での特定技能評価試験を大幅に拡充する。12月から試験会場を全国95カ所に広げ、各会場で月1回以上の実施頻度を確保する。特定技能1号としての在留期間5年を経過した外国人材が今後増加し、2号移行に向けた試験需要が急激に拡大すると見込む。これまで不便だった地方で就労する外国人材にも受験しやすい環境を整える。」(『建設工業新聞』2025.09.17)
●「政府は17日、特定技能と育成就労の分野別運用方針を議論する有識者会議を開き、両制度で分野ごとに定める上乗せ基準の案を示した。建設分野では事業者に対する基準として、建設業法に基づく監督処分を受けていないことなどを新たに設ける。育成就労で設定する分野ごとの転籍制限期間について、建設分野は2年とする案も提示した。」(『建設通信新聞』2025.09.18)
●「勤労者退職金共済機構(勤退共、梅森徹理事長)の建設業退職金共済事業本部(建退共本部)は19日、東京都内で第4回建退共制度検討会議を開き、最終取りまとめ案を報告した。建設労働者などの処遇改善のため、技能・経験に応じた退職金を建退共制度から受け取れるようにする。複数掛け金制度の導入と、制度の民間工事への普及、手続きの電子化の推進を見直しの3本柱に据える。退職金は最低でも1000万円を目指す。」(『建設工業新聞』2025.09.22)
●「外国人技能実習制度に代わる『育成就労制度』が2027年6月までに施行される。新制度では『育成就労』から『特定技能』への移行に当たり、日本語能力試験の合格が必須となる。法政大学社会学部の惠羅さとみ准教授は、日本語教育費用の負担をはじめ課題が山積していると指摘。現実的に運用可能な要件設計と費用を含めた体系的な支援策の整備が不可欠との見方を示す。育成就労制度では来日時点で技能試験は課されず、日本語能力は日本語能力試験N5相当の合格または講習受講で代替できる。3年間の在留中に所定の技能試験と同試験N4以上に合格すれば、帰国せず『特定技能1号』(通算5年まで)に移行できる。さらに家族帯同を認める『特定技能2号』(在留上限なし)への移行には技能試験合格が必須となる。従来は厳格だった転籍も、新制度では同一業種内に限り一定の条件下で認められる。転籍制限期間は分野ごとに1~2年で設定されるが、建設分野では人材確保・育成の観点から2年とする案が出されている(2年の予定は全17産業分野のうち8分野)。転籍条件となる日本語能力水準は、建設分野はA1相当からA2相当までの間の一定レベルで設定する方向で調整がなされている。惠羅氏は『日本語能力試験は試験対策をしなければ合格が難しい。N5でも直近の合格率は3割程度にとどまっているとも聞く』と説明する。教育費用の負担主体が不透明なままでは制度運用に支障を来す恐れがあり、とりわけ受け入れの中心となる中小企業が実現可能な制度設計が望ましいと強調する。」(『建設工業新聞』2025.09.26)

建設産業・経営

●「中野洋昌国土交通相と建設業主要4団体トップは11日、東京・霞ヶ関の同省で意見交換会を開き、建設業界の賃上げと生産性向上を引き続き官民一体で進めることで一致した。現下の予算執行状況を踏まえ、建設業界に十分な施工余力があることも確認。団体側からは物価高騰を反映した公共事業予算の確保とともに、第1次国土強靭化実施中期計画の初年度予算の早期編成を求める声が上がった。国交省からは中野国交相や水嶋智事務次官、廣瀬昌由技監ら幹部、団体からは日本建設業連合会の宮本洋一会長、全国建設業協会の今井雅則会長、全国中小建設業協会の河崎茂会長、建設産業専門団体連合会の岩田正吾会長らが出席した。意見交換会のテーマは、▽2026年度概算要求▽賃上げ▽生産性向上――の3点。2月の車座対話で石破茂首相の立ち会いの下、国交省と4団体が申し合わせた『おおむね6%』とする技能者の賃上げ目標や、生産性向上の取り組みの進捗(しんちょく)を確認した。」(『建設通信新聞』2025.09.16)
●「全国鉄筋工事業協会(全鉄筋)の岩田正吾会長と宮村博良副会長が16日に都内で会見し、10月1日に大阪で開催する創立60周年記念祝賀会の狙いや、国土交通省が検討している標準労務費の考え方などで見解を述べた。岩田会長は『全鉄筋は専門工事業界のリーダーシップを担っている。(これを継続するためにも)記念式典を次世代につなぐ一つのきっかけにしたい』と目的を説明。標準労務費の定着は『すべての人のマインドを変えないといけない』と述べ、価格一辺倒の競争ではなく、技能や品質で競争する社会に変える必要があると訴えた。…標準労務費の定着について、岩田会長は『最終的には(建設費も上がるため)国民の方々の理解も必要。われわれも(賃金台帳などの)中身を見せながら課題を一つずつ解決しなければいけない』とし、自らも職人に払う賃金を透明化していく意向を示した。その上で『元請企業の現場第一線の方に響かないとうまくいかない。建設Gメンとの連携が重要になる』と指摘。建設Gメンの立ち入り調査などが、定着の第一歩になるとの考え方を改めて表明した。」(『建設工業新聞』2025.09.18)
●「インフロニア・ホールディングス(HD)の三井住友建設に対する株式公開買い付け(TOB)が18日に成立した。インフロニアHDの岐部一誠社長は『エンジニアリング力をより強固にし、さまざまなインフラで(設計から施工管理、運営など事業全般を)ワンストップで手掛ける唯一無二の企業集団に近づける』とコメントした。近く連結後の影響を織り込んだ2026年3月期通期業績予想と中期経営計画(28年3月期)を公表する。」(『建設工業新聞』2025.09.22)
●「全国建設業協会(今井雅則会長)が実施した工事代金の支払い状況調査によると、民間発注者からの請負代金の支払い手段は全体の8割超、元請けから下請けは7割超が『全額現金』だった。2026年をめどに手形を廃止する政府方針などが示されているが、『手形廃止の影響は思っていたより少ないかもしれない(全建担当者)という。都道府県建設業協会の会員1891社から回答を得た『2025年度発注関係事務の運用状況等に関するアンケート』の中に、代金支払いに関する質問を設けた。民間発注者からの支払い手段は『全額現金』が84.1%で最多となり、次いで『労務費相当分を現金、残りを手形』が11.5%、『一括決済方式、電子記録債権を利用』が2.7%の順になった。元請け・下請け間もほぼ同様で、それぞれ75.3%、20.8%、2.5%となっている。」(『建設通信新聞』2025.09.24)
●「大成建設の東洋建設に対する株式公開買い付け(TOB)が24日に成立した。8月12日からのTOBに5830万5532株の応募があった。買い付け価格は1株当たり1750円で、取得価格は1020億3400万円。TOBの成立を踏まえ、大成建設は残る株式をスクイーズアウトで取得する。所定の手続き後、束洋建設は上場廃止になる。東洋建設はTOBの決済を開始する30日付で大成建設の連結子会社になる予定。東洋建設の株式の約3割を持つヤマウチ・ナンバーテン・ファミリー・オフィス(YFO)がTOBに応募。約2割を保有していた前田建設はTOBに応募せず、東洋建設が実施する自己株式取得に応じる。経営統合で陸海相互補完の関係が形成される。従来はすみ分けられてきた陸上・海上の施工領域にとらわれない幅広い分野での協業が可能になる。土木事業はJV組成による落札率の向上とともに、民間大型案件で陸海共同提案による受注増加を目指す。建築事業はより大型で高収益な案件、設計・施工一括(DB)案件の受注増加もにらむ。」(『建設工業新聞』2025.09.26)
●「日本型枠工事業協会(三野輪賢二会長)は26日、『1カ月の連続夏季休暇取得による生産性向上提言』を発表した。最高気温が35度を超える猛暑日が近年急増し、屋外作業を行う職人の熱中症リスクが高まっているほか、酷暑で生産性が5割経度まで低下しているため、その対応策をまとめた。生産性が上がる10月から5月までの9カ月間は隔週の週休2日にする一方、7月下旬から8月下旬までの1カ月間は連続して夏季休暇にする。年間で労働時間を柔軟に設定する『1年単位の変形労働時間制』採用によって労働法制をクリアする。今後、上部団体や元請け、発注者に説明し、理解と実現を求めていく。提言では、屋外作業をメインにしている主要建設技能労働者(とび・土工、鉄筋工、型枠大工、鉄骨とび、橋梁工など)だけで、建設キャリアアップシステム登録(2024年2月時点)技能工数は25万7348人おり、気温が33度を超えると労働生産性が半減することを踏まえ、東京を含めた全国17都市の平均猛暑日数20日間に技能工人数と生産性5割減を乗じると、夏場の現場で延べ257万人余の労働力が失われているとし、『職人の命を守る』とともに建設生産システムの供給力が低下していることへの危機感を示している。提言実現の前提である、繁忙期と閑散期で労働時間や休日を柔軟に設定する『1年単位の変形労働時間制』は、製造業を中心に全国で年間40万件の変形労働時間制協定が提出されている。日本型枠が今回提言の前提とした1年単位で働き方の繁閑調整に着目したのは理論上、1カ月間の連続休暇に伴う工程を繁忙期の9カ月間の労働生産性で補うことが可能で、年間の生産量は減少しないと判断したからだ。また、年間休暇や労働時間の長さなどで他産業に劣る建設産業の現場で、1カ月の長期休暇という日本の産業では珍しい取り組みには、『産業イメージを高め、新規入職者増大につながる』(三野輪会長)との期待感がある。ただ、都市圏の専門工事業の職人は日給月払い、いわゆる日給月給が主流。そのため、就労日数が減れば賃金も減少する問題がこれまでも建設業の重層構造解決を阻む最大の壁といわれてきた。さらに請負である職人に対して専門工事業経営者の中には有給休暇を付与することに違和感を持つケースも多く、結果的に最低限の休日確保にとどまっていた。今回の提言が実現すれば、今年12月の改正建設業法完全施行に伴う『労務費の基準(標準労務費)』導入でも事実上、積み残された職人の“日給月給問題”についても、請負の良い部分を残しながら不安定な日給月給から成果報酬制(月給制)移行が加速するほか、これまで以上に有給休暇の付与が可能になるとした。」(『建設通信新聞』2025.09.30)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「国土交通省が16日に発表した2025年の基準地価は、住宅地や商業地といった全用途平均の全国の上昇率が1.5%だった。4年連続で上昇した。海外から投資マネーが流入する東京圏がけん引役となった。国内景気がインフレを伴って緩やかに回復する中、地価も上がるサイクルが続いている。7月1日時点の地価動向を調べた。全用途平均の全国の伸び幅は前年より拡大し、1991年の3.1%以来の大きさとなった。全国の調査地点のうち上昇した割合は49.3%で、24年の48.3%から割合は高まった。東京圏では89.2%の地点が上昇した。」(『日本経済新聞』2025.09.17)
●「埼玉県八潮市で1月に起きた道路陥没事故を受け、設置後30年以上が経過した下水道管などを対象とした全国調査で、国土交通省が高リスクとみて優先的に調べた箇所の半分に当たる約300キロが緊急度の高い『要対策』と判定された。16日、関係者への取材で分かった。調査結果は、国交省が17日に開催する有識者委員会で報告する。老朽化した下水道管は料金収入の減少などを背景に更新が進んでいないケースもあり、各自治体の対応が急務となる。八潮市の事故は下水道管の腐食が原因とみられ、国交省は3月、約500の自治体に管路の調査を要請。全国に約49万キロある下水道管のうち、設置後30年以上で直径2メートル以上の管路約5000キロについて腐食、たるみ、破損の状況などを1年以内に調べる『全国特別重点調査』の実施を求めた。このうち▽八潮市の陥没現場と似た構造▽腐食しやすい▽過去に陥没したことがある――などリスクが高いと判断した箇所を優先的に調査し、夏ごろまでの点検完了を目指していた。同省によると、調査の条件に該当したのは約800キロで、このうち約620キロについて緊急度を判定した。調査は目視やドローンの活用によって実施。腐食や破損状況などを診断し、原則1年以内の速やかな対策が必要とする箇所を『緊急度I』、応急措置の上で5年以内の対策が必要と見込まれる箇所を『緊急度Ⅱ』と判定した。診断の結果、『緊急度I』とした管路の総延長が計約70キロ、『緊急度Ⅱ』が同約230キロだった。これらの下水道管を管理する自治体は130程度で、国交省は対策を確実に実施するよう要請する。」(『日本経済新聞』2025.09.17)
●「国土交通省は19日、第66回社会資本整備審議会住宅宅地分科会を開き、新たな住生活基本計画(全国計画)の全体的なビジョンとなる『次の25年の住宅政策の全体像』について審議した。過度な負担なく希望する住生活を実現できる環境や持続可能で多様なライフスタイルに対応可能な住宅地形成を目指し、住宅ストックの性能や利用価値が市場で適性に評価されるシステムを構築する方針を示した。同計画の中間取りまとめ案も提示し、おおむね了承を得た。」(『建設通信新聞』2025.09.22)

その他