情勢の特徴 - 2025年11月前半
●「財務省は富裕層ほど所得税の負担率が低くなる「1億円の壁」の対応強化に向けた議論に着手した。追加課税する所得の目安を現行の年30億円超から引き下げる案が有力だ。与野党で合憲したガソリン減税の財源としての期待もあるが、見直しによる増収は限定的で他の財源も必要になる可能性が高い。高所得者に一定水準の税負担を課すミニマム課税の対象者を広げられないか議論する。現状では事業所得や金融所得などの年間合計から3.3億円を差し引いたうえで22.5%の税率をかける。これが通常の税率に基づく課税額を上回る場合に差額を徴収する。今は合計所得金額が30億円前後を超えると対象になる。線引きを20億円や10億円などに引き下げる案がある。ミニマム課税は2025年に適用が始まった。実際の対象者数が明らかになるのは26年以降だ。政府が制度の新設を決めた22年時点では300人程度との見方があった。制度改正により、合計所得金額が1億円を超えると所得税の負担率が下がっていく『1億円の壁』の是正を狙う。国税庁の23年のデータで、負担率は所得が上がるにつれ上昇するが5000万~1億円の25.9%をピークに低下する。100億円超は16.2%で、1500万~2000万円の17.2%よりも低い。1億円の壁は、給与所得などは高額になるほど税率が上がる累進制をとる半面、富裕層に多い株式の売却益は金額にかかわらず15%と一定であることが原周で生じる。給与所得への依存度が高い中間層は税の負担割合が高めになり、所得の再分配機能が不十分となる。」(『日本経済新聞』2025.11.05)
●「国土交通省は住宅金融支援機構が提供する全期間固定金利型の住宅ローン『フラット35』の融資限度額の引き上げを検討する。限度額は現在8000万円で、2005年から変わっていない。建築費の高騰などが続いており、今秋にとりまとめる政府の経済対策に盛り込む方向で調整する。」(『日本経済新聞』2025.11.07)
●「政府は10日、日本経済の成長促進に向けた『日本成長戦略会議』の初会合を開いた。月内にまとめる総合経済対策に『投資促進につながる税制措置の方向性を示す』とした。減価償却費の一括計上による負担軽減などが施策の候補となる。低迷する国内投資を官民でてこ入れする。…同日の会合では人工知能(AI)・半導体など17の『戦略分野』を掲げるとともに、新技術立国・競争力強化や人材育成など8の『分野横断的課題』を示した。2026年夏に成長戦略をまとめる前に、経済対策に盛り込める重要課題は前倒しで実行するとした。同日示した重点施策案には新技術立国・競争力強化の取り組みとして『大胆な設備投資の促進に向けた税制を創設する』方針を明記した。国内向けの設備投資の一定割合を法人税の負担額から差し引く税額控除や、設備投資にかかる費用の全額を初年度に減価償却費として一括計上する即時償却の導入などが念頭にあるとみられる。企業が設備投資をする場合、工場の建設費用や産業機械の購入費用などは減価償却費として耐用年数に応じて数年に分けて計上し、課税対象の利益から差し引く。即時償却ができれば初年度の税負担が大きく減る効果が見込める。…これまで中小企業を対象とした設備投資の税優遇策はあった。内閣府の分析によると、税制の利用企業は利用していない企業に比べて設備投資比率が高い傾向がある。大企業にも税制が広がれば、企業の設備投資意欲が高まる可能性がある。日本企業はグローバル化の進展などに伴って海外投資の比率を拡大してきた。2000年度を100とした場合、23年度の海外への設備投資は271だったのに対して国内は132にとどまる。日本企業の連結業績を良くする効果はあったものの、産業の空洞化や賃上げの遅れにつながった側面がある。楽天証券経済研究所の愛宕伸康氏は『海外に向いていた企業の目を国内投資に振り向けさせなければならない。国内経済の成長期待を上げて投資を促す仕掛けが必要だ』と指摘し、高市政権が打ち出す政策について一定の評価をする。…同日の重点施策には『賃上げ促進税制の活用による賃上げモメンタム(勢い)の維持・向上』も示した。賃上げ促進税制を巡っては政府内でも有効性を巡り評価がわかれる。政府主導の産業振興が必ず成功を収めるわけではない。企業の新陳代謝を促す視点も必要となる。」(『日本経済新聞』2025.11.11)
●「高市早苗首相は労働時間の規制緩和を成長戦略の柱に据える。残業できる時間を延ばし、企業の競争力を高めるとともに、賃金を増やす選択肢の拡大を狙う。『柔軟な働き方』は雇用の流動性向上といった労働改革への布石にもなる。首相が新たに立ち上げた『日本成長戦略会議』は10日の初会合で、経済対策に盛り込む重点施策をまとめた。労働市場改革の項を設け『心身の健康維持と従業者の選択を前提に、労働時間法制にかかる政策対応のあり方を多角的に検討』すると記した。残業上限の引き上げや、労使があらかじめ定めた時間分を働いたとみなす裁量労働制の拡大が選択肢になる。残業代の割り増し手当や深夜労働、休日の扱いといった論点もある。有識者の意見も聞いて政府内で議論を深め方向性を決める。」(『日本経済新聞』2025.11.13)
●「国土交通省は5年ごとの住生活基本計画で、住宅ローン減税の適用基準として準拠してきた居住面積の目安を『40平方メートル程度』に引き下げる。現状の『最低50平方メートル』を改定する。狭いマンションや戸建てにもローン減税を適用できるようにする。資材高などによる住宅価格の高騰を踏まえ、家計の負担軽減を狙う。」(『日本経済新聞』2025.11.13)
●「国土交通省は建設従事者への適切な賃金の支払いに向けて、同省の直轄土木工事を対象に受注者希望型による賃金・労働時間などの実態調査を試行的に始める。受注者から提出された日報や契約書、賃金情報を基に、発注者が調査対象工種の実施率や労務費達成率、賃金達成率を確かめる。試行は調査方法や調査結果の算定方法を検証することが目的のため、調査結果に対するインセンティブ(優遇措置)やペナルティーは設けない。試行の成果を踏まえ改善を重ね、将来的には調査結果を適切な業者選定に反映させることを目指す。」(『建設通信新聞』2025.11.05)
●「国土交通省は、12月12日に予定する改正建設業法の全面施行を踏まえ、大臣許可の建設業者の不正行為などに対する監督処分基準を改定する。改正法で規定する『原価に満たない請負代金』(19条の3)、『著しく短い工期』(19条の5)、『著しく低い労務費などによる見積もり作成と変更依頼』(20条)に違反した場合、強制力を持つ行政処分となる『指示処分』相当であることを処分基準に明記する。10月31日に開始した意見募集を経て、改正法の全面施行と同日に運用を開始する予定。各都道府県にも通知し、都道府県許可業者向けの処分基準の改定も促す。現行の処分基準では、『著しく短い工期』の規定に違反した場合、必要な勧告を行うこととし、正当な理由がなく勧告に従わなければ、指示処分として企業名を公表する措置を講じるとしている。今回の処分基準の改定で、必ずしも勧告を経ることなく指示処分を行う運用に切り替える。」(『建設工業新聞』2025.11.05)
●「埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故を受け国土交通省が設置した有識者会議が5日、インフラ全般も対象にした第3次提言案をまとめた。第1次国土強靭化実施中期計画を踏まえた重点的な財政支援や、計画から設計、整備、修繕、改築までを一体的に考える『統合的なマネジメント』体制の構築などを求めている。月内に提言を決定する。」(『建設工業新聞』2025.11.06)
●「国土交通省は、建設業法などの施行規則を改正する省令案をまとめた。建設業者が通常必要と認められる原価に満たない代金で請負契約できる場合の正当な理由を、自らが保有する低廉な資材を活用できることや、先端的な技術、蓄積した知識などを活用し工事原価の低減が図られることなどと規定する。このほか、建設従事者による適正な施工を確保するために不可欠な経費として、▽法定福利費▽安全衛生経費▽建設業退職金共済(建退共)契約の掛け金――の三つを定めた。」(『建設通信新聞』2025.11.07)
●「建設業政策の次なる展開を模索する国土交通省の有識者会議で、企業経営の目線から建設業の人的資源の在り方に焦点を当てた議論が始まった。処遇改善や働き方改革を通じ担い手確保を目指す従来の取り組みにとどまらず、建設業で働く人材の『教育』『配置』『就業環境整備』などに視野を広げ、政策的対応の方向性を模索する。人的資源の有効活用という観点で、重層下請構造や仕事量の繁閑差も課題に挙げる。これらの業界特性に起因する弊害を軽減する経営の在り方も議題となりそうだ。」(『建設工業新聞』2025.11.07)
●「国土交通省は12月に控える改正建設業法・公共工事入札契約適正化法(入契法)の全面施行に合わせ、公共工事で適正な労務費を行き渡らせるためのダンピング対策の徹底を地方自治体に働き掛ける。改正法で労働費を明示した入札金額内訳書の提出が義務化され、公共発注者の対応として『労務費ダンピング調査』の導入を含めた書類内容の確認が求められることを、都道府県経由で周知する。17日の中部地区を皮切りに全国8ブロックで開く2025年度下期『ブロック監理課長等会議』(入札契約担当課長会議)で主要な議題にする。」(『建設工業新聞』2025.11.14)
●「国土交通省は、建設現場での外国人技能者の適正な就労を促すため、建設キャリアアップシステム(CCUS)のカードタッチで外国人技能者の在留資格や在留期間をチェック可能とするシステムの開発に乗り出す。システム運用により現場での受け入れ手続きを円滑化し、外国人技能者の就業履歴をCCUSに着実に蓄積する環境をつくる。建設業で就労する外国人材の適正な評価・処遇と、中長期的なキャリア形成につなげる考えだ。」(『建設工業新聞』2025.11.04)
●自治労連は5日夜、「すべての世代が笑顔で暮らせる賃金水準をつくろう!全国いっせい生計費調査運動」スタート集会をオンラインで開いた。生計費原則に基づく「あるべき賃金水準」を明らかにし、要求運動の根拠として活用を図るとしている。人事院は今年度の国家公務員の月給を3.62%引き上げるよう勧告したが、物価高に追いつかず生洛改善につながっていない。公務員の賃金は生計費を考慮することが定められているが、人事院勧告はこの要素を十分に加味したものになっていない。橋口剛典書記長は、「生計費を明らかにし、賃上げ要求が正当である確信をもつことや、東京23区と地域手当のない所では20%も格差がある不当性の根拠をも必要がある」と強調。嶋林弘一書記次長は、「生計費を下回る水準では持続な公務の提供も危ぶまれる。賃金のあるべき水準を私たちがつくる攻めの運動だ」と述べ、多くの仲間の参加を呼びかけた。(『しんぶん赤旗』2025.11.07より抜粋。)
●「国土交通省は、施設投資見通しを基に推計した2025年度主要建設資材需要見通しを発表した。主要建設資材6資材のうち、セメント、生コンクリート、普通鋼鋼材の国内需要量が前年度実績より上回るとしている。セメント(内需量)は1.1%増の3300万トン、生コン(出荷量)は0.5%増の6600万立方メートル、普通鋼鋼材(建設向け受注量)は6.7%増の1670万トンと推計した。一方、木材(製材品出荷量)は1.2%減の740万立方メートル、アスファルト(建設向けなど内需量)は4.6%減の80万トンと落ち込む見通しを立てた。前年度実績と比較できない砕石(出荷量)は8700万立方メートルと予想する。」(『建設通信新聞』2025.11.04)
●「東日本建設業保証は、本店所在地が東日本23都県内にある2万0216社を対象とした『建設業の財務統計指標(2024年度決算分析)』をまとめた。総合的な収益性を表す『総資本経常利益率』の平均は、前年度より0.66ポイント上昇して4.72%となった。関連比率の『売上高経常利益率』も0.58ポイント上昇の3.65%に改善した。これまで利益率は低下傾向が続いていたが、4年ぶりに上昇に転じた。ただ、災害復旧工事による売上高の増加などで上昇が顕著だった北陸地区の寄与度が大きく、業界全体として利益率が改善傾向にあるとまでは言い切れない。調査対象は総合工事業(土木建築、土木、建築)、電気工事業、管工事業を専業とする企業で、大手ゼネコンは含んでいない。」(『建設通信新聞』2025.11.05)
●「日本電設工業協会(文挟誠一会長)は、会員企業に対して2024年度に実施した第7回働き方改革アンケートの結果(速報)をまとめた。新築工事現場の月間休日数は、『4週8休』が4割で最も多く、22年度調査で最多だった『4週6休』を上回った。建設業への時間外労働の上限規制適用に伴い、4週8休が主流になったとしている。一方で、4週8休のうち現場一斉閉所による休日取得は3割弱にとどまり、現場一斉閉所の取り組みは途上にあることが分かった。」(『建設通信新聞』2025.11.07)
●「上場ゼネコン大手4社(鹿島、大林組、大成建設、清水建設)の2025年4~9月期連結決算が11日に出そろった。豊富な手持ち工事を順調に消化し、2社が増収。採算管理や施工段階のリスク管理を徹底し、追加・設計変更工事の獲得や原価低減も進展した。全社が増益となり、単体の完成工事総利益(粗利益)率は建築を中心に改善した。26年3月期は利益率の一段の好転を見込み、3社が通期業績予想を上方修正している。」(『建設工業新聞』2025.11.12)
●「建設産業専門団体連合会(岩田正吾会長)は13日、東京都港区のニッショーホールで2025年度全国大会を開いた。『職人たちの未来予想図―職人の価値を正当に評価する未来へ―』をテーマに、若者が入職し将来へ持続するために変わりゆく専門工事業を発信した。開会に当たり、岩田会長は『建設業の商取引は変革の時を迎えている』と切り出し、12月の改正建設業法の全面施行で運用が始まる労務費の基準(標準労務費)に触れ、『労務費と雇用にかかる経費を競争の原資とせず、実効性を担保し、欧米並みの年収を職人に払える業界にしなければならない。施工者の選択基準を、価格から人への投資にマインドを変える必要がある。標準労務費を意識改革の端緒とすることを業界全体で共有し、マインド改革を実行しよう』と力を込めた。その上で、『われわれ職人団体は技量を評価して見合った賃金を払い、3K(きつい・汚い・危険)だけど夢を描ける賃金をもらえる世界を見せ、「粋な」「かっこいい」「稼げる」業界を取り戻すべく勇気を持って取り組もう』と呼び掛けた。」(『建設通信新聞』2025.11.14)
●「東京都で新築マンションの供給が約30年ぶりの低水準となっている。地価や建設コストの上昇、投資目的の購入増を背景にデベロッパーは採算を見込みやすい高級物件に新規開発を集中させている。住宅価格や家賃の上昇には都民らの不満もあり、空き家など活用されていない既存住宅の流通促進に向け実効性ある施策が必要となっている。不動産調査会社の東京カンテイ(東京・品川)によると、2025年1~9月の都内の新築分譲マンションの供給戸数は1万1226戸だった。通年で約30年ぶりの少なさだった24年の同期間(1万621戸)は上回るものの、1990年代前半以来の水準に落ち込んでいる。土地代や資材費、人件費の上昇に加え、海外勢も含めた投資目的の住宅購入が活発なため、開発事業者が高級物件の開発にリソースを集中させている。東京カンテイの高橋雅之・上席主任研究員は『コスト高で「ちょうどいい価格」での新築マンションの供給が難しくなり、結果的にマス(大衆)層を無視した開発になっている』と解説する。オフィス需要の高まりでマンション用地がしわ寄せを受けている側面もある。仲介大手の三鬼商事(同・中央)によると9月の都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)のオフィス空室率は、前月比0.17ポイント低い2.68%と7カ月連続で下がった。ある大手デベロッパー幹部は『世界的に見ても東京都心のオフィス需要は堅調で、マンション用地は年々減少している』とする。新築購入を断念した人たちは中古や賃貸に流れ、家賃上昇に拍車をかける。特に面積が一定以上あるファミリー向けの賃貸マンションは『取り合いの状況だ』(東京カンテイの高橋氏)。不動産・住宅情報サービス『LIFULL HOME’S』によると東京23区のファミリー向け物件の平均賃料は3年間で約8万円上がり、24万円に迫る。都内では子どもと同居している世帯の30%が賃貸住宅に住んでおり、全国(21%)より割合が高い。家賃はいったん上がると下がりにくく、子育て支援に力を入れる都にとって対策は喫緊の課題だ。都議会では家賃補助や都営住宅の増設など直接的な支援を求める声も強まる。」(『日本経済新聞』2025.11.05)
●「東京都は手ごろな家賃で住める『アフォーダブル住宅』を供給する総額200億円以上の官民ファンドの運営事業者候補に、野村不動産や三菱UFJ信託銀行などが入る4グループを選んだ。2026年度から順次、相場の2割安程度の家賃で約300戸を供給する。賃料が上昇するなか、子育て世帯が都内に住める環境づくりを目指す。」(『日本経済新聞』2025.11.07)
●「国土交通省は11日、社会資本整備審議会建築分科会建築環境部会を開いた。住宅トップランナー制度について、特に多くの住宅を供給する事業者に対し、実績を踏まえてより高い省エネ性能の確保を求める制度を新たに導入する方針を示した。現行の制度は戸建て住宅(建て売り・注文)、共同住宅(分譲・賃貸)の区分ごとに市場全体の約2分の1を供給する事業者を対象としているが、新しい制度の対象は約4分の1を供給する事業者とする考えだ。国交省は、4月に全建築物に省エネ基準適合を義務付けるなど、2030年度以降に新築する住宅・建築物をZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)・ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)基準の性能まで引き上げることを目標に取り組みを進めている。住宅トップランナー制度は構造・設備が規格化された住宅を年間に一定戸数供給する事業者が対象。省エネ基準を上回る基準を達成するよう努力義務を課している。制度を拡充することで市場全体の省エネ性能の押し上げを図る。新しい制度の対象事業者には、自ら設定した目標を基に中長期的な計画を立てた上で毎年度の取り組み状況を報告することを求める。」(『建設通信新聞』2025.11.12)