情勢の特徴 - 2025年11月後半
●「政府は21日、21.3兆円の総合経済対策を閣議決定した。電子クーポン券や子育て世帯への一律支援など『給付』が前面に出た。電気・ガス補助額は土壇場で膨らみ、ガソリン補助は減税で恒久化した。コロナ禍やウクライナ危機以降の大型補正が平時も続く。財政拡張が『強い経済』につながるのか、市場には警戒感もくすぶる。政府は経済対策が実質GDP(国内総生産)を24兆円程度押し上げるとの試算を示した。物価上昇率はガソリン減税で年0.3ポイント、電気・ガス補助で月平均0.4ポイント抑える効果があるとみる。経済対策の裏付けとなる2025年度補正予算案の一般会計歳出は17.7兆円ほどで24年度の13.9兆円を上回る。財政省が当初提示した14兆円ほどの案から増額した。」(『日本経済新聞』2025.11.22)
●「政府が28日に閣議決定する2025年度補正予算案のうち、国土交通省関係分が明らかになった。公共事業関係費は国費ベースで2兆0873億円となり、24年度補正予算と比べて9.1%増えた。このうち第1次国土強靭化実施中期計画の初年度分は1兆2346億円。12月上旬にも臨時国会に提出し、早期の成立を目指す。」(『建設通信新聞』2025.11.28)
●「改正建設業法・公共工事入札契約適正化法の全面施行が12月12日となることが正式に決まった。政府は14日に改正法の施行日を定める政令を閣議決定した。労務費の基準(標準労務費)をはじめ、技能者の処遇を改善し建設業を持続可能なものとするための新たなルールが動き始める。改正法では標準労務費を基準として著しく低い労務費などでの見積もり提出や変更依頼を禁止する。建設業者には労務費や材料費、必要経費などを明示した材料費等記載見積書の作成、注文者にはその内容を考慮する努力義務を課す。公共工事でも入札金額内訳書に記載すべき事項として労務費や材料費などを位置付ける。これまで注文者を対象としていた総価での原価割れ契約や工期ダンピングを受注者にも禁じる。」(『建設通信新聞』2025.11.17)
●「国土交通省は、改正建築物省エネ法・建築基準法の全面施行から半年が経過したことから、建築確認申請や省エネ適合性判断の審査状況を調査した。建築確認申請の審査期間を調べたところ、多くの指定確認審査機関で審査期間が増加傾向にあることが分かった。増加要因には、両法の改正に伴う想定以上の審査時間の増加や不慣れな設計者への対応をあげた。こうした要因に審査員の数が不足している状況が想定される。」(『建設通信新聞』2025.11.18)
●「国土交通省は『労務費に関する基準(標準労務費)』を踏まえた建設工事契約の価格交渉のガイドラインとなる『運用方針』の案をまとめた。個別に異なる契約実務の現場で標準労務費をいかに『使いこなすか』にフォーカスし、さまざまな場面に置かれた受注者や注文者など当事者の視点で71項目の具体的な対応を整理した。運用方針に基づく対応を浸透させ、まずは労務費・賃金を『払うためにもらう』という行動変容と商慣習の定着につなげる。」(『建設工業新聞』2025.11.19)
●「公共工事の入札段階で落札候補者に労務賃金調書の提示を求めるなど、技能者への賃金支払いを独自に確認している都道府県・政令市が16団体に上ることが国土交通省の調査で分かった。改正建設業法の全面施行で運用が始まる労務費の基準(標準労務費)は、確保された労務費が技能者に賃金として行き渡ることが鍵となる。公共工事の実効性を確保する上では、発注者によるこうした主体的な対策が求められる。」(『建設通信新聞』2025.11.25)
●「国土交通省の調査によると、公共工事での重層下請け構造の改善に向けて、都道府県・政令市のうち7府県で下請けの次数制限を導入していた。施工責任の不明確化や労務費へのしわ寄せといった重層化に伴う課題の解決につなげる狙いがある。徳島県では7月から次数制限の試行を開始するなど、地方自治体による独自の取り組みが広がりつつある。」(『建設通信新聞』2025.11.26)
●「国土交通省は、新たな住生活基本計画(全国計画)の素案をまとめた。これまでの官民投資で整備された住宅・住宅地が最大限活用されるよう市場環境を進化させ、ストック価値の最大化を図る。2035年度までの指標として、既存住宅取引とリフォームの市場規模(23年度16兆9000億円)は19兆7000億円まで拡大を目指す。26日に開いた第67回社会資本整備審議会住宅宅地分科会で示した。21年3月に閣議決定した現行計画がおおむね5年経過することから計画を見直す。素案では、▽住まうヒト▽住まうモノ▽住まいを支えるプレーヤー――の三つの視点に立って11の目標を設定。各目標ごとに、50年までに目指す姿や、当面10年間で取り組む施策の方向性、施策例を示した。」(『建設通信新聞』2025.11.27)
●「出入国在留管理庁は、2021年1月から24年12月までに特定技能1号を取得した外国人の地域をまたぐ転職状況をまとめた。建設分野では延べ転職者5051人のうち、約2割に当たる1058人が地方から大都市圏に移動していた。大都市から地方に移動した人数と比べて500人多く、大都市圏への転入超過となっている実態が浮き彫りとなった。」(『建設通信新聞』2025.11.17)
●「解雇の金銭解決制度」をめぐって厚生労働省が有識者会議を設置し、検討の議論を進める方針を決めた。18日に開かれた労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)労働条件分科会で確認された。…解雇の金銭解決制度は、違法解雇であっても使用者が一定の金銭を払えば雇用契約を終了できる仕組み。本来なら無効となる不当解雇や雇い止めを容認・合法化するものだ。長年議論されてきた制度だが、この日の会議で厚労省は2022年12月の労働条件分科会で指摘を受けて実施した労働者意識や諸外国の制度などの調査結果を報告。「解雇等経験者の15.9%が『金銭救済制度』を選択した」ことなどを説明した。労働者側委員は「不当な解雇を正当化する。安易な解雇を促進しかねず導入すべきではない」と強調。使用者側は「制度創設の労働者の一定のニーズが確認できた」などとして導入の検討を求めた。(『しんぶん赤旗』2025.11.19より抜粋)
●「建設会社が2023年12月以降に請け負った民間工事を対象に、現場従事者が実際に取得できた休日を国土交通省が調査したところ、4週8休以上を取得できたとの回答は26.6%だった。1年前の前回調査と比べ4.5ポイント上昇し、休日の取得実態は改善している。特に、発注者の主要な業種となる『不動産業』の工事では4週8休以上が17.5%(前回調査は9.0%)、『製造業』の工事は26.8%(19.3%)と改善が顕著だった。」(『建設工業新聞』2025.11.20)
●「全国建設労働組合総連合(全建総連)の結成65周年記念式典が、東京都港区の東京プリンスホテルで19日に開かれた。構成組合の幹部など450人が参加。建設業で働く人の処遇改善や地位向上に向け、引き続き運動を展開する決意を新たにした。鈴木貴雄中央執行委員長は、公的医療保険の『建設国保』の設立や災害後の仮設住宅建設など、これまでの活動を振り返りつつ、担い手確保への危機感が増している現状の課題を指摘。政府・政党への要望活動や第3次担い手3法への対応を踏まえ『60万人の組合員、建設業で働く私たちの処遇改善を通じ、持続可能な建設業の実現に向けまい進していく』と述べた。」(『建設工業新聞』2025.11.21)
●「大手・準大手ゼネコン23社(単体27社)の2026年3月期第2四半期決算が14日に出そろった。連結売上高は飛島ホールディングスを除いた22社のうち、18社が前年同期比で増収となった。半数に当たる11社が過去最高を更新。連結の営業損益は全社が増益で、うち11社が過去最高となった。併せて12社が通期の業績予想を修正した。設計変更や追加工事の獲得などによる利益率の改善により、ほとんどの会社が上方修正した。単体の完成工事総利益(粗利)率は、公表した23社のうち22社が前年同期を上回った。16社が10%を超えた。土木・建築別で見ると、土木の粗利率(20社開示)は13社が前期を上回った。鹿島と大成建設が20%超、大林組と前田建設、安藤ハザマ、奥村組、ピーエス・コンストラクション、東鉄工業が15%を超える高水準となった。建築の粗利率(20社開示)は18社が前期を上回った。10%超えは11社となる。好調な市況環境を背景に、各社は受注時採算の確保を徹底していることなどが奏功した。」(『建設通信新聞』2025.11.17)
●「全国建設業協会(今井雅則会長)は18日、東京・大手町の経団連会館で全国会長会議を開いた。10月に全国9地区で開催した2025年度地域懇談会・ブロック会議で出た意見を集約した全建要望を決定。26年度が期初となる第1次国土強靭化実施中期計画の初年度は、少なくとも2兆円を上回る公共事業費を確保するよう求める。28年度当初予算の公共事業関係費については、長らく続く横ばい基調から脱却し、資機材価格の高騰や人件費の上昇によるコストアップ分を反映するのはもちろん、高市内閣が掲げる『危機管理投資・成長投資による強い経済』を実現するため、必要な事業量をさらに上乗せするよう働き掛ける。全建・47都道府県建設業協会の総意として政府・与党に要望活動を展開していく。」(『建設通信新聞』2025.11.19)
●「日本建設業連合会(日建連)の宮本洋一会長ら幹部が26日に都内で記者会見し、高市早苗首相が厚生労働相に指示した労働時間規制の緩和検討について『建設産業は一品生産で天候の影響も受けやすい。画一的な規定はそもそも合わないという側面がある』と述べ、現行制度の限界を指摘した。働き方改革に関連し、会員企業には『もっと働きたい』『夏場を避け働きやすい時期に集中して働きたい』などさまざまな要望がある。宮本会長は『ニーズに応えられるよう日建連で検討し、要望していきたい』と語った。週休2日制の定着には『土日閉所の検討が避けられない』との認識を示した。押味至一副会長(土木本部長)は、上限規制の運用開始後に現場で課題が出ているとし『規制内の画一的な話では経済活動の妨げになる』と強調。『働きたい人が働ける環境づくりを考えれば制度は成り立つ。現場の実情に合わせた応用を部会で検討したい』と述べた。蓮輪賢治副会長(建築本部長)は、業種や事業規模ごとの実態を踏まえた制度設計が必要と指摘し、『多様な働き方とは何かを、データに基づき精緻に詰めるべきだ』と主張。『見えにくい実態も多いが、厚労省には業界の現状を理解し、柔軟な制度運用につなげてほしい』と求めた。」(『建設工業新聞』2025.11.27)
●「日本建設業連合会(宮本洋一会長)は、設備工事費上昇の現状を説明する発注者向けパンフレットを『2025年秋版』として改定した。主要な設備機器の価格が依然として上昇傾向にあるほか、設備工種の施工人員の確保も困難さが一段と増している。国内で続く活発な工場建設や大都市圏、地方都市での大型プロジェクト、データセンター建設などの同時期進行によって、全国で多くの設備工事の需給がタイトになり、資機材・工事価格が大きく高騰し、納期の遅延も発生している。特に、日建連の会員企業が施工する大規模物件には、特注品の設備機器が多用されるほか、特注品以外でも中心価格帯のものとは異なる場合が多いことから、平均的な資機材の価格動向と大幅に乖離(かいり)しているケースがあるという。」(『建設通信新聞』2025.11.28)
●「不動産大手の業界団体、不動産協会(東京・千代田)はマンションの投機的な取引を防ぐため、引き渡し前の転売禁止を柱とする対応方針をまとめた。転売行為が発覚した場合、契約解除や手付金没収に踏み切る。都心のマンション価格高騰は投資家や外国人による短期転売が一因との批判が出る。業界を挙げた対策で抑制につなげる。…方針では、今後発売する物件を中心に、購入希望者との契約段階で転売行為を違反とみなすことを説明する案を盛り込んだ。契約から鍵を受け取るまでの間に、第三者への転売を目的とした売買や仲介の依頼に関わる契約、物件情報の提供などができないようにする。購入者とは合意の上で売買契約を交わす。その後に違反行為が発覚した場合、違約金として引き渡し前に支払う手付金を没収するとともに契約を解除することを重要事項説明書などで知らせる。」(『日本経済新聞』2025.11.19)
●「新潟県の花角英世知事が東京電力ホールディングス柏崎刈羽原子力発電所6号機の再稼働を容認する意向を固めた。2018年の就任時から、原発の安全性の確認や県民の考えの把握など慎重に手続きを進めた。再稼働を巡る賛否が県内で二分するなか、国や東電に安全対策の徹底や避難体制の充実を引き続き求める。」(『日本経済新聞』2025.11.20)
●「大分市佐賀関で170棟以上が焼損した火災は強風による『飛び火』や乾燥、住宅の密集といった複数の要因が重なり延焼が拡大したとみられている。焼損住宅のうち40棟以上は空き家とみられ、管理が行き届かない建物の延焼リスクも改めて浮き彫りにした。大規模火災の危険性が高い地域は各地にあり、ハード・ソフト両面の対策が重要になる。火災は18日夕に発生した。19日にかけて燃え広がり、焼損範囲は約4万8900平方メートルに及んだ。1人の死亡が確認され、一時125世帯188人が避難した。…延焼がここまで広がったのはなぜか。東京理科大学の細川直史教授(防災情報)は大規模な火災が起きる要因として『住宅の密集』『強風』『乾燥』『初期消火の失敗』――を指摘する。今回の現場は佐賀関漁港近くの住宅密集地。火炎や熱気流によって火の粉が舞う飛び火により各戸に燃え移ったとみられる。消防隊の活動スペースを確保しにくく、『通路が狭く、消防車が入って行けなかった』という消防団員の証言がある。延焼防止に不可欠な初期消火が難航した可能性もある。気象状況をみると大分市では冬型の気圧配置の影響で17日から強風注意報が発令されていた。18日の平均風速は4.4メートルで、11月の平年(2.6メートル)と比べ強い風が吹いていた。出火した時間帯の湿度は40%台で、月間の平年(69%)と比べて低かった。佐賀関地区の降水量は11月1~18日に平年の約2割にあたる計11ミリにとどまり、家屋や地表も乾燥していたとみられる。さらに要因として重なったのが空き家だ。焼損住宅のうち40棟以上は空き家とみられる。人口約6900人の佐賀関地区は、65歳以上の割合を示す高齢化率が58%に達し、市平均と比べ約30ポイント高い。過疎化が進み空き家も目立っていた。細川教授は『空き家から出火する可能性は低い』と指摘する。一方、『古い家屋は防火性能が十分でなく、手入れされず外壁や窓が壊れ延焼リスクが高い状態になっている可能性がある』とみる。」(『日本経済新聞』2025.11.25)
●「日本不動産研究所(東京・港)が28日発表した世界の主要都市の不動産相場に関する調査によると、大阪のマンション価格は2025年10月時点で半年前と比べて3.4%上昇した。調査対象都市のなかで最大の伸びとなった。人件費や資材費などの上昇に加え、大規模再開発や『万博効果』などを背景とした高額物件の需要の高まりが相場を押し上げた。」(『日本経済新聞』2025.11.29)