情勢の特徴 - 2026年8月前半
●「日米両政府は3日、7月31日の外国為替市場で円買いの協調介入を実施したと発表した。約40年ぶりの水準まで進んだ円安・ドル高の阻止に動いた。異例の協調介入を打ち出し日米で危機を防ぐ。連鎖的な米国債の金利上昇への警戒感も浮き彫りとなった。日米両政府は日本時間で3日朝、同じタイミングで協調介入を明らかにした。片山さつき財務相が『米東部時間7月31日、米国財務省と協調して円買い介入を実施した』と談話を発表した。ベッセント米財務長官もⅩ(旧ツイッター)に『さらなる強調介入への参加をためらわない』と投稿した。…日米の協調介入は金融危機時や災害時などを除くと極めで異例だ。2011年の東日本大震災の発生直後以来、15年ぶりの協調介入となる。円買いの日米協調介入では日本の金融機関の経営破綻などで円安が進んだ1998年にまで遡る。介入に至った背景には通貨安と債券安が同時に進む『日本売り』がある。高市早苗政権の『経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)』の原案の記述を巡り、長期金利は一時、約30年ぶりに2.9%に達した。政府の財政規律への不安が債券安を引き起こした。米国の事情もある。同国の30年債利回りは足元で一時5.2%台となり、およそ19年ぶりの高水準を付けた。慢性的な財政支出の拡大に加え、米連邦準備理事会(FRB)のインフレ抑制姿勢に不透明感が高まっていた。低金利が続いた時期、日本の生命保険会社などの機関投資家は長期の運用資金をドル資産に多く投じてきた。円安・ドル高が進みドル建て資産が日本からみて割高になれば米国債投資の意欲はしぼむ。日本国内の金利上昇が進めば為替リスクを負ってまで米国債に投資する必要性も薄れる。円安と日本の金利上昇は米金利を押し上げるリスクがあった。」(『日本経済新聞』2026.08.04)
●「中小企業庁は4月、3月の価格交渉促進月間を踏まえた発注者リストを公表した。公表対象となった企業リストは、過去最多の557社となり、価格交渉・価格転嫁・支払い条件がいずれも最高評価となった企業の割合は全体の2割に増加した。価格交渉・価格転嫁はいずれも最高評価となる『ア』の企業の割合が増加し、最低評価『エ』の企業は減少した。一方、官公需の公表対象機関は92機関となり、価格交渉は『ア』の機関の割合が増加したものの、価格転嫁は下から2番目の『ウ』の割合が増加し、十分な価格転嫁ができていない状況が浮き彫りになった。」(『建設通信新聞』2026.08.05)
●「日本政策投資銀行(政投銀)は、2026年度設備投資計画調査の結果を公表した。全産業の投資計画額は前年度比19.7%増の24兆7551億円。中東情勢など不確実性が高まる中でも投資意欲は旺盛に推移している。製造業ではAIやデータセンター(DC)関連の投資が拡大し2桁増を計画。非製造業では都市機能強化やインバウンドへの対応が全体の押し上げの要因となった。戦略17分野でAI・半導体、デジタル関連を強化する企業が多く、3年以内の追加投資を予定する企業の割合も高い傾向にある。」(『建設工業新聞』2026.08.05)
●「政府は5日、食料品の消費税率を2027年4月から2年間に限って1%に下げる方針を閣議決定した。中低所得者への1%分の給付を組み合わせて税率を『実質ゼロ』にする。財源に外国為替資金特別会計(外為特会)を使う案が浮かぶものの、具体策を示さぬまま決定した。高市早苗首相は9月に与党税制改正大綱をまとめ、秋の臨時国会に関連法案を提出する意向だ。消費税率の引き下げは1989年の導入後で初となる。2029年4月に導入する新たな所得連動型の給付までの『つなぎ』と位置づけ、物価高対策の効果も見込む。現行の8%から1%への引き下げ対象は酒類と外食を除く食料品だ。27年6月以降に1%分に相当する額を中低所得の現役勤労者の所得に応じて給付する。」(『日本経済新聞』2026.08.06)
●「上場企業の2027年3月期の配当総額は前期比6%増の23兆円と6年連続で最高となる見通しだ。半導体や人工知能(AI)関連の好業績を背景に全体の5割弱の企業が増配する。個人が受け取る配当は家計所得を押し上げ、消費の下支え効果が期待される。3月期決算の上場企業(変則決算などを除く)約2200社を日本経済新聞が集計した。配当総額は予想1株配当に発行済み株数(自己株式を除く)を乗じて求めた。配当予想が未定の場合は市場予想の平均(QUICKコンセンサス)を使った。集計社数の半分弱にあたる1010社が増配を予想する。東証プライム上場企業(親子上場の子会社などを除く)の純利益は6年連続の最高益となる見通しだ。業績拡大を受けて還元を厚くする企業が多い。」(『日本経済新聞』2026.08.13)
●「国土交通省は、地方自治体発注工事で依然多いくじ引きでの契約の実態把握と、自治体間での対策の共有に乗り出した。昨年度実施した国交省の調査によると、都道府県のうち25団体はくじ引きでの契約率が1割未満にとどまるが、6団体は4割以上の契約がくじ引きとなっている実態がある。国交省はくじ引きの頻発は『技術力と経営力による競争を損ねかねない』と問題視。総合評価方式の適用範囲を拡大するなどの抑制対策を周知する。」(『建設工業新聞』2026.08.03)
●「国土交通省は、改正物流効率化法に基づき特定荷主に指定した事業者を公表した。建設業は第1種、第2種合わせて延べ144社に上り、これらの指定事業者には物流効率化に向けた規制的措置が課される。同法に違反した建設業者に対する監督処分基準の案も固めた。他の法令違反と同様、最長で7日以上の営業停止処分を科す。9月中旬の施行を予定する。4月に全面施行した改正法により、前年度の取り扱い貨物重量が9万トン以上の事業者は特定荷主に該当し、▽物流統括管理者(CLO)の選任▽中長期計画の作成▽定期報告――の三つが義務付けられた。荷待ち・荷役時間の短縮、積載効率向上の取り組みが国の判断基準に照らして不十分な場合は勧告・命令の対象となる。」(『建設通信新聞』2026.08.04)
●「昨年12月施行の改正建設業法で労務費と併せて確保すべき必要経費の一つとなった安全衛生経費を巡って、適切な費用計上につなげるための各専門工事業団体の取り組みが広がってきた。85団体を対象に国土交通省が3月に聞いた結果によると、個々の安衛対策の実施主体を元下間で明確化する対策項目の『確認表』は約5割の40団体(昨年5月時点34団体)、安衛経費を内訳明示する『標準見積書』は約3割の23団体(13団体)で作成が完了した。」(『建設工業新聞』2026.08.05)
●「国土交通省は、都道府県と連携して市区町村発注工事での猛暑対策の導入を後押しする。国交省の調査によると、都道府県の3割が管内市区町村に対して猛暑対策導入への働き掛けをしていないと回答。既に働き掛けをしている都道府県の事例を共有し、取り組みを促す。19日まで開催している2026年度上期ブロック監理課長等会議の主要議題に盛り込んだ。」(『建設通信新聞』2026.08.06)
●「国土交通省が地方自治体の維持管理業務の受注者を、対象に実施した調査によると、人手不足や体制確保に課題を感じている建設企業が多く見られた。業務を効率的・円滑に実施するため、発注者の地方自治体に対しては、包括的民間委託制度や発注者支援制度の導入を求める意見が根強い。インフラを支える建設業が持続するための支援や随意契約の柔軟な活用を国に望む声も寄せられた。」(『建設通信新聞』2026.08.07)
●「建設業で有給休暇の取得や男性育休といった働き方改革の取り組みが進展している。日本建設産業職員労働組合協議会(日建協、青山敏幸議長)の調査によると、2025年に10日以上の有給を取得した組合員の割合は46.5%と5年間で20ポイント以上上昇。男性育休の取得率は24年度で35.5%と初めて3割を超えた。他方で4週8閉所以上の割合は30.8%にとどまるなど、建設現場の働き方には課題も残る。」(『建設工業新聞』2026.08.04)
●「人事院は7日、2026年度の国家公務員の月給とボーナス(期末・勤勉手当)を引き上げるよう国会と内閣に勧告した。月給の引き上げ幅は平均3.51%(1万5056円)で、2年連続で3%を超えた。転居を伴う異動をした職員に支給する手当も新設する。ボーナスの年間支給月数は0.05カ月分増やし、4.70カ月分とする。月給とボーナス双方のプラス勧告は5年連続となる。月給の上げ幅は25年度の3.62%に続く高水準で、民間での賃上げの広がりを国家公務員給与にも反映する。」(『日本経済新聞』2026.08.08)
●「日本アスファルト合材協会(日合協、今泉保彦会長)によると、会員外工場を含む2025年度の合材製造量が前年度比3.6%減の3424万トンとなり、統計を開始してから初めて3500万トンを下回った。新規材、再生材の製造量もともに5年連続の減少。1992年度のピーク(8000万トン超)以降、減少傾向が続く。」(『建設工業新聞』2026.08.03)
●「日本建設機械工業会(先崎正文会長)は5日、2026、27年度の建設機械需要予測(出荷金額ベース)を公表した。26年度は前年度並みの3兆0733億円、27年度は前年度比1%増の3兆0993億円と予想した。26年度は国内が減少するが、輸出は一部の機種を中心に回復するとみる。27年度は出荷額が回復する機種があるものの、大きく回復することはないと見込む。」(『建設通信新聞』2026.08.06)
●「大手・準大手ゼネコン23社(単体27社)の2027年3月期第1四半期決算が7日までに出そろった。連結売上高は、15社が前年同期比で増収となった。うち9社が過去最高を更新した。連結の営業損益は18社が増益で、うち7社が過去最高。建築の完成工事総利益は18社が10%を超えた。単体の完成工事総利益(粗利)率は公表した23社のうち、22社が前年同期を上回り、19社が10%超となった。土木・建築別で見ると、土木の粗利率(21社開示)は12社が前期を上回った。鹿島、ピーエス・コンストラクションが20%を超えたほか、大成建設、前田建設、フジタ、三井住友建設、青木あすなろ建設が15%を超えた。建築の粗利率(21社開示)は20社が前期を上回った。10%超えは18社だった。受注高(単体)は15社が前年同期を上回り、12社が下回った。」(『建設通信新聞』2026.08.10)
●「戸建て住宅市場で大手と中小の明暗が鮮明になっている。ハウスメーカー大手が受注を伸ばす一方、中小工務店の倒産や休廃業は増加した。経営規模に劣る中小にとっては中東情勢による資材の調達難が大きな打撃となった。8月にハウスメーカー各社が発表した決算では売上戸数や受注棟数の伸びが目立った。大和ハウス工業の4~6月期の売上戸数は前年同期比で7%増加した。分譲住宅大手の飯田グループホールディングスも7%増加した。中東情勢を背景とした建築コスト上昇への懸念から、顧客が早期購入に走った。住友林業も27年1~6月期の注文住宅の受注棟数は3%増加した。影響が無かったわけではない。住友林業によると中東情勢を受けた資材高は通期の経常利益を70億円ほど押し下げる見込み。ただ大手の場合は経営体力に余裕がある。…より厳しい状況に追い込まれているのが、中小工務店だ。『ナフサ不足が直撃したがなんとかしのいでいる』。関東近郊で戸建て住宅を手掛ける工務店では6月、屋根材と断熱材が確保できず2つの現場で工事を中断した。建物を引き渡せなければ代金を受け取れず、資金繰りは一気に厳しくなる。同工務店では価格は高いが調達可能な資材の仕入れや、工期の調整などでやりくりしたという。別の工務店も足元では調達難は和らいだものの『(一時は)持ちこたえられるかギリギリだった』と振り返る。帝国データバンクによると、1~6月に建設業で倒産した件数は前年同期比6%増の1043件となった。法的整理をともなわない休廃業や解散も含めると5937件に上り過去最多となった。うち新築戸建てなどを担うハウスメーカーや工務店など『木造建築工事』は947件となり、全体の約16%を占める。」(『日本経済新聞』2026.08.11)
●「水道管などに使う塩化ビニール管の取引価格が再び上昇し、最高値を更新した。中東危機による原料高を背景に主要メーカーが打ち出した追加値上げが進んだ。春以降の流通混乱を受けて商社や需要家が調達を急いだ。在庫確保が進展し、供給懸念は徐々に和らいでいる。指標となる薄肉管(VU、4メートル×直径100ミリメートル)の卸値(1次店卸)は東京地区で1本2890~3190円と、前月比で中心値が325円(12%)上昇した。中東危機以降の値上がりは6月に続き2回目で、累計の上昇率は3割程度に達した。塩ビ管の主原料は塩化ビニール樹脂だ。原油を精製したナフサをもとにつくられるエチレンから生産される。中東危機を受けた供給懸念でナフサ価格が上昇し、エチレンや塩ビ樹脂の製造コストを押し上げた。」(『日本経済新聞』2026.08.14)
●「熊本県で最大震度7を観測した地震では最大10万戸超の断水が発生した。生活への影響が長引く恐れがある。被害の大きい自治体では災害拠点病院など重要施設につながる水道管の耐震化率は3割未満にとどまる。全国平均を下回る水準で、耐震化の遅れが目立つ。県によると、31日午後2時時点で熊本県の10市町で約7万9100戸が断水している。内訳は八代市が約2万5000戸、宇城市が約1万7000戸、熊本市が約8700戸など。一時は10万8000戸を超えた。…断水の要因は地震に弱い水道管が多いことにある。国交省の2024年度末の調査によると、災害拠点病院や避難所など重要施設に接続する水道管の耐震化率は全国で32%。八代市は29%、7600戸が断水する上天草市は6%、震度7を観測した宇城市では4%だった。…断水は過去の地震でも発生し、対策の必要性が指摘されてきた。1995年の阪神大震災では約130万戸が断水し、最大3カ月続いた。厚生労働省は2008年に水道管などの技術的基準を定める省令を改正。震度7相当の地震でも『重大な影響を及ぼさない』程度の耐震化を進めるよう自治体に求めた。16年の熊本地震では約44万戸、24年の能登半島地震では約13万戸が断水した。政府は水道に加え、下水道も含めた耐震化率を高めることを目指す。24年度末の9%から30年度に30%、54年度には100%を目標に掲げた。国交省は24年度から耐震化を進める自治体への財政支援を拡充した。」(『日本経済新聞』2026.08.04)
●「不動産調査会社の東京カンテイ(東京・品川)が12日発表した7月の東京23区の新築小規模戸建て住宅の平均希望売り出し価格は前月比0.6%高の9321万円だった。9000万円台の高値は3カ月連続。高騰するマンション相場に比べた割安感が需要を押し上げている。敷地面積が50平方メートル以上100平方メートル未満の新築木造一戸建て(土地含む)について、最寄り駅まで徒歩30分以内またはバスで20分以内の物件を対象に価格を調べた。前年同月と比べると14.6%(1184万円)の上昇だった。価格上昇の背景には、資材費や工事の人件費などが高くなっていることがあるのに加え、新築・中古のマンションの相場が高騰したことで相対的に割安感が出た戸建て住宅に需要が流れている影響もあるとの見方も増えてきた。東京カンテイのマンションや戸建ての平均希望売り出し価格の推移について、2015年1~3月期を100として指数化したところ、26年4~6月期時点で新築戸建て(建物面積100平方メートル換算)は173。これに対し、新築マンション(70平方メートル換算)は207、中古マンション(同)は263だった。近年のマンションの急上昇に比べれば、戸建ての上昇は相対的に緩やかだ。投資用の需要も呼び込み価格が高騰しがちなマンションに対し、実需が大半の戸建てはマンションの上昇についていけない購入層にも選ばれやすくなっているとみられる。」(『日本経済新聞』2026.08.01)(『日本経済新聞』2026.08.13)
●「千葉県での記録的な豪雨は都市型水害のリスクを浮き彫りにした。気象庁は初の『レベル5大雨特別警報』を発表し警戒を呼びかけたが、冠水が相次ぎ死者も出た。排水が追いつかず水があふれる『内水氾濫』が多発したとみられ、対策の点検が不可欠となる。千葉県では13日夕以降、線状降水帯が発生するなど断続的に猛烈な雨が降った。千葉市中央区では24時間降水量が観測史上最大の367ミリを記録。気象庁は同市や市原市、佐倉市など22市町にレベル5大雨特別警報を発表した。県などによると、市川市や佐倉市、八千代市などで計8人の死亡が確認された。…東京大の池田幸司名誉教授(河川工学)によると、都市部はアスファルトやコンクリートで覆われる範囲が広いため水が浸透しにくく、低地などに水が集まりやすい。『一部では1時間に100ミリを超えるなど下水道の排水能力を大きく上回る猛烈な雨が降ったことで、各地で内水氾濫が起きた可能性が高い』とみる。内水氾濫は下水道の排水能力を超えたり、支流の川の水が本流に入り込めなくなったりするほどの大雨が降ることで、用水路やマンホールから水があふれる状態を指す。堤防の決壊などで河川から水があふれた場合は『外水氾濫』と呼ぶ。…国土交通省の調査によると、2014~23年の10年間に起きた水害による被害額4兆3000億円のうち、35%にあたる1兆5000億円は内水氾濫が原因だった。同期間に浸水した建物28万棟に占める割合は56%の16万棟に上る。」(『日本経済新聞』2026.08.15)