情勢の特徴 - 1999年2月

経済の動向 行政の動向 労働関係の動向 業界の動向 その他の動向

経済の動向

● 総額9兆3,630億円あまりの公共事業費を含めた1999年度予算案が19日、衆院を通過した。先に成立した98年度の第2次補正予算と合わせた「15ヶ月」予算ができあがることになり、年度末から4−6月という端境期にかけて公共工事の切れ目のない執行が行われる。99年度予算の一般会計は過去最高となる86兆8,600億円。このうちの10%強にあたる額が公共事業として執行されることになる。この結果、公共事業費は、97年度に比べると、3ヶ月多い15ヶ月予算とはいえ、97年度の8兆9,177億円に比べて、11兆8,030億円となり、32.4%の伸びを示す。政府の試算によると、98年度第3次補正予算案の今年度内支出見込みは4,000億円程度のために、84%が99年度に繰り越される見通しだ。この結果、九八年度の公共事業費は11兆4,000億円の支出となり、これが99年度になると、実に、13兆4,000億円とう巨額なものとなる。
● 住宅金融公庫では、毎年、公庫融資の個人住宅建設についてその実態調査を行っているが、平成9年度についての実態調査の結果がこの程発表された。それによるとプレハブ住宅は工期が軸組木造工法より大幅に短いにもかかわらず建築工事費が高い。また2×4工法住宅はシステム化された合理化工法なのに軸組木造工法住宅とは11日しか短くないのに、工事費が高いという結果である。価格を見ると、軸組木造住宅が一番安い。坪単価でみると578,830円、プレハブ住宅が627,110円、2×4工法住宅が633,780円で軸組木造はプレハブに住宅に比べて48,280円、2×4に比べて54,950円安い。工法別に1戸当りの、建築費で見ると軸組木造住宅が2,507万円で一番安く、プレハブに比べて250万円安い。
● 総務庁が9日発表した1998年の家計調査報告(速報)によると、昨年の全世帯の消費支出(1世帯あたり、1ヶ月平均)は32万8,186円で、前年に比べ名目で1.5%、消費者物価上昇分を差し引いた実質で2.2%それぞれ減少した。実質減は93年以降6年連続で、実質の減少幅は74年(2.6%減)に次いで2番目の大きさである。全世帯の支出の内容を実質でみると、住居(同8.7%減)、被服・履物(同8.1%減)がいずれも調査開始以来、最大の減少幅で、落ち込みが目立っている。食料(同1.6%減)が8年連続の減少となったほか、保健医療(同3.1%減)が4年ぶり、教養娯楽(同1.3%減)が3年ぶりに減少した。

行政の動向

● 99度発注の公共工事で、積算に用いる設計労務単価が切り下げられる見通しとなった。建設、農水、運輸の3省で組織する連絡協議会は昨年10月に行った労務調査のデータを集計中だが、集計結果が前年度水準を下回るのは必至の状況で、前年度より数%下落する見込みだ。公共工事の設計労務単価は、3省の連絡協議会が原則として毎年度1回、10月に現場労働の計50職種を対象として全国で一斉に実施する賃金実態調査によって設定され、翌年度の発注工事の積算に利用される。50職種全体の平均設計労務単価が前年度を下回ったことはこれまでもあるが、主要11職種(特殊作業員、普通作業員、軽作業員、とび工、鉄筋工、特殊運転手、一般運転手、型枠工、大工、左官、交通整理員)の平均単価の下落はなく、98年度も2万0,327円(1日8時間当たり)と前年度比で0.06%の伸びを維持した。今回は11職種に限定しても初めて数%のマイナスが見込まれている。
● 公共工事の入札に業種の異なる複数の専門工事業者が共同企業体を組んで参加する「異業種JV制度」が、建設省が検討している"新建設産業ビジョン"に盛り込まれる可能性が浮上してきた。公共投資の伸びが期待できない状況の中で、建設業界には近い将来、ゼネコンが、専門分野に特化したり、持ち株会社化や分社化する可能性があると見る向きも多い。建設省もゼネコンの経営形態が多様化するとの見方をしており、こうした新たな経営形態に対応した産業政策を打ち出すためにビジョンの策定作業を進めている。異業種JVは、専門分野に特化し、実質的に総合建設業者から専門工事業者に業態変化したゼネコンがこれまで通りに公共工事を受注する仕組みであるだけでなく、専門工事業者に公共工事の直接受注というインセンティブを与え、各企業の成長を促すというメリットが見込める。
● 建設省は4日、住宅・都市整備公団を廃止し、都市基盤整備公団を新たに設置する法案をまとめた。5日に閣議決定する。主な業務分野を、これまで担ってきた「住宅・住宅地の大量供給」から「都市の基盤整備」にシフト。大都市圏の再編整備に向けた土地利用整序など、民間や地方公共団体にとって困難な業務に力点を置き、建築物の整備は基本的に民間にゆだねる。一方で民間・公共団体とこ連携し、各種整備計画の策定やコーディネート業務を強化する。分譲住宅からは10年以内に撤退し、賃貸住宅供給に特化。組織のスリム化も徹底する。正式な移行は10月1日の予定だ。
● 建設省は5日、公共事業の執行に関する説明責任(アカウンタビリティー)向上に向けた行動指針を決めた。公共事業の実施効果を事業の完成後に評価・検証する「事後評価システム」を99年度から一部の事業に導入するほか、入札・契約の透明性を高める方策として平均落札率(予定価格に対する落札価格の割合)を新たに公表する。 無駄や非効率な公共事業が多いという批判にこたえて、事業評価を拡充。既に導入済みの新規採択時の費用対効果分析や事業途中の再評価に加えて、99年度から事後評価を導入する。公共事業の計画段階では、計画を検討する時点で国民の意見を広く集める「パブリック・インボルブメント」(PI)と呼ぶ方式をすべての事業に採用。インターネットを活用した情報提供にも力を入れ、事業の個所別の整備状況や事業評価の実施結果など、公共事業に関する多様な情報を検索・入手できるようホームぺージの充実を図ることなども盛り込んでいる。
● 建設省は、建設産業界の新しい組織や経営形態に備えて、業界に関係するさまざまな制度についての内部検討に着手した。現在の建設産業界を取リ巻く環境の厳しさ、時代の急速な変化に向けて、企業の合併・協業化、さらには業務提携、アウトソーシング、分社化、持ち株会社化、グループ企業化などの、新しい組織や経営の形態について検討している。研究会では、建設業許可制度、経営事項審査制度、技術者の専任制など、いろいろな制度改正に結びつく可能性があることについて、検討することになりそうだ。建設省は、この「業界再編プラン」ともういうべき施策を、今夏をめどにまとめることにしている。
● 和歌山市は24日、市が発注する公共工事を全国大手、あるいは県外のゼネコンが受注した場合、下請けには市内の建設会社を使うことを義務付けると発表した。景気浮揚策の一環として、4月から実施するとしている。指名を受けた県外ゼネコンは、入札の前に、下請けとして採用する、和歌山市内に本店を置く企業名のリストを市に提出することになっている。これについて、建設省建設業課は「現時点では聞いたことはない。もっとも、建設業法、あるいは地方自治法上の問題はない」と述べている。ただし、問題となるのは、下請けを市内の建設会社に限定した場合、市内にきちんとした技術力を備えた企業がどれだけいるかという点である。
● 神奈川県横浜市では平成11年度から、木造住宅等の耐震改修を促すための補助制度を創設する。同市では平成7年度以来、木造住宅の無料耐震診断の実績が約6,000戸となっているが、そのうち「危険」と判定された住宅に対し、費用の3分の1を、上限で200万円まで補助しようというもの。建設省でも、耐震改修に対する補助の予算化を目指したが、個人財産の拡充につながるという理由で見送られ、耐震相談のみに限定したという敬意があるだけに、横浜市の実績が今後の突破口になることが期待される。

労働関係の動向

● 建設省は、平成10年の新設住宅着工統計を公表した。平成10年は、前年比13.6%減の119万8,295戸と2年連続の減少となった。しかも、119万戸台は昭和59年以来の低水準である。工法別にみると、軸組木造は前年比10.2%減の44万7,287戸で、40万戸台は前年(49万7,843戸)に次いで二度目。在来非木造(非プレハブ非木造)は同17.0%の50万686戸。50万戸台は平成5年(57万9,611戸)以来。プレハブは同11.7%減の18万2,399戸。プレハブの20万戸割れは昭和60年(17万7,842戸)以来。2×4は同14.5%減の6万7,923戸。6万戸台は平成6年(6万4,037戸)以来。なお、各工法とも2年連続の減少である。
● 労働省は5日、建設業技能職種の賃金調査結果を発表した。屋外建設技能労働者を対象として昨年8月分の賃金を調べたもので、建設技能21職種の日賃金は前年同月比0.8%減の1万5,060円と、4年ぶりに前年を下回った。職種別の賃金をみると、電気工が1万6,000円台で前年に続き、最も高く、大工、とび工、溶接工が1万5,000円台、配管工、機械運転工、型枠工、左官、塗装工が1万4,000円台、貨物自動車運転者、鉄筋エが1万3,000円台などとなった。技能労働者の年齢階級別賃金では、年齢格差が拡大傾向にある。賃金が,最も高い年齢層は50〜54歳の1万6,570円。これは、,最も低い20〜24歳(1万1,460円)の約1.5倍に当たり、年齢格差がここ5年間で広がっている。また、技能職種の平均年齢は41.8歳。93年に19.4%を占めていた29歳以下の階層が、98年に24.9%に増えており、若年層の割合が高まっている。

業界の動向

その他の動向