情勢の特徴 - 1999年3月

経済の動向 行政の動向 労働関係の動向 業界の動向 その他の動向

経済の動向

● 公共工事の着工が再び上向いてきた。建設省が10日を発表した1月の公共工事着工統計によると、国・地方機関を合わせた総着工額は前年同月比13.9%増を記録し、3ヶ月ぶりに前年水準を上回った。同省は「残る2〜3月は第三次補正予算の効果がよりはっきり出て、増加傾向が続く」(建設経済局調査情報課)とみている。最終的に98年度の着工実績は前年度実績を上回り、3年ぶりに増加に転じる見通しだ。この結果、昨年4月からの累計着工額は、前年同期を0.04%上回る12兆8,708億円となった。地方機関の累計着工額は9兆3,926億円(前年同期比3.7%減)と依然、前年水準割れを続けているが、国の機関が3兆4,782億円(同11.9%増)と大きく伸びて全体を引っ張っている。
● 政府は18日、貸し渋り対策の強化、公共事業の前倒し実施など追加景気対策の内容を固めた。中小企業向けの特別信用保証枠を現行の20兆円から30兆円程度に拡大するほか、公共事業は99年度上半期の発注規模を過去最大の15兆円程度とする。住宅金融公庫の99年度第1回個人向け融資の基準金利(現行年2.2%)は年2.4%と引き上げ幅を0.2%にとどめる。これらの措置で設備投資や住宅投資などを回復につなげ、小渕内閣の公約である99年度のプラス0.5%成長の達成を確実にしたい考えだ。
● 経済企画庁が12日発表した昨年10〜12月期の国民所得統計によると、同期の国内総生産(GDP)は前期(同7〜9月期)に比べ、物価変動を除いた実質で0.8%(年率換算で3.2%)減少した。この結果、98年の実質GDP成長率は2.8%減と第一次石油危機の74年(1.2%減)以来24年ぶりのマイナスで、戦後最悪のマイナス幅となった。大企業のリストラ・人減らしなどによる雇用の悪化や社会保障改悪などで強まる将来不安が冷え込んだ消費をさらに抑え、不況を長期化させている。GDPの約6割を占める民間最終消費支出(個人消費)は前期につづき実質で同0.1%減。このほか、民間住宅が同7.0%減、民間設備投資が同5.7%減など内需の落ち込みが響いている。
● 東京商工リサーチは12日、2月の建設業倒産状況をまとめた。全国の倒産件数は263件、負債総額は833億2,900万円となり、前年同月比で件数40.8%減、負債57.7%減と大幅に減少した。2月の建設業倒産で負債規模が比較的大きいのは、タケダ(東京都)で販売不振のため170億円の負債を抱え、特別清算した。共栄建設(山形県)は累積赤字が圧迫し80億円の負債総額で和議法、翔計画(北海道)は過大設備投資が影響し37億4,500万円の負債で銀行から取引停止を受けた。ほかに六建ホーム(東京都)、末徳(愛知県)、桜林建設(兵庫県)、三建工業(岡山県)、シトリ(栃木県)、大洋建設(静岡県)など。業種別では総合工事業が143件、専門工事業が82件、設備工事業が38件という内訳。

行政の動向

● 建設省は、17日に成立した99年度予算の配分を決定した。同省関係の事業費10兆6,214億円を政策課題に応じて配分した結果、中心市街地の活性化や高規格幹線道路・地域高規格道の整備、市街地整備などに手厚い配分となった。具体的には、配分額が最大の高規格幹線道路・地域高規格道路の整備に1兆2,033億円、中心市街地の活性化事業に7,333億円、市街地整備に2,957億円、慢性的な床上浸水地域の解消に2,741億円を重点配分。事業ごとの配分額は次の通り。▽道路整備=4兆6,984億円(直轄1兆7,760億円、補助2兆9,224億円)▽ 治山治水=2兆930億円(直轄9,810億円、補助1兆1,120億円)▽公園=3,190億円(直轄352億円、補助2,838億円)▽下水道=2兆 794億円(補助だけ)▽住宅対策=1兆2,004億円(同)▽市街地整備=2,312億円(同)。
● 2月17日の地方自治法施行令改正により、地方公共団体の発注工事でも中間前払金制度導入が可能になったのを受けて、4月1日から導入する宮城をはじめ、都道府県での取り組みが活発化している。全国建設業協会などの調べ(2月23日時点)では、北海道など15道府県が「導入予定あり」として検討を開始している。一方、神奈川県など17府県は「導入予定はない」ことが明らかになった。都道府県建設業協会は、地方自治体の中間前金払いは資金繰りに悩む中小建設業者にとって、「干天の慈雨」になるとして、導入に向けた働きかけを活発化していく方針だ。
● 通産省は経営の行き詰まった企業の資産や技術を有効活用するため、新たな「再建型倒産手続き」制度を導入する方針を決めた。会社更生法など現行法の手続きは時間がかかり、優秀な人材が次々と退職したり営業網が崩壊して競争力のある部門や事業の価値がなくなるため、営業譲渡の手続きを大幅に援和、事業を迅速に売却できるようにする。土地・建物の担保権も現在の評価額に応じて処理できる特例を設け資産を転売しやすくする。通産省の倒産法制研究会が17日に報告書をまとめ、今年の臨時国会にも法案を提出する。
● 欠陥住宅をめぐるトラブルを解消するための「住宅の品質確保の促進等に関する法律案」が2日、閣議決定される。住宅の性能に関する表示制度の創設と紛争処理体制の整備とともに、新築住宅の基本構造部分を対象にした瑕疵担保責任を10年間義務付けている。今国会に提出し順調に審議が進めば5月にも成立、2000年4月から施行される見通しだ。住宅性能表示制度は取得者と供給者間の任意の制度で、住宅の品質保証として、床の遮音性や省エネルギー性、採光・換気性などの項目について、第三者機関として建設大臣から指定された「指定宅性能評価機関」が評価し、標章を付けた評価書を交付する。設計図書の作成時と住宅の完成時の二段階で評価する。工事の請負者は、契約を交わし注文者に評価書が交付された場合、契約書にとくに意思表示をしない限りは、承諾したものとみなされる。メーカーの住宅の形式がパターン化されている場合やプレハブなどの工業化住宅については、性能評価の簡略化が認められている。また、性能評価を受けた住宅に関する紛争処理について、弁護士会などの協力による指定住宅紛争処理機関を設置し、対応する。新築住宅に関する瑕疵担保責任の特例では、基礎や柱など構造耐力上主要な部分と雨水の侵入を防止する部分について、瑕疵担保期間を10年間義務化する。
● 建設省は、元請・下請業者間の契約内容を透明化する目的で、実行予算の内訳書の提出を施工業者に求める新たな施策について、3月中にも基本的な方向性をまとめる。99年度に数件の直轄公共工事で試行する方針を固めており、建設業団体との調整が終わり次第、実行に移したい考えだ。建設省が検討しているのは、公共工事の元請業者と下請業者が交わす契約の内容を、実行予算べースで発注者が把握できる仕組み。同省は提示の対象とする実行予算の詳細を明らかにしていないが、施工体制台帳への記載を義務づけている1次下請けとの契約代金だけでなく、資機材の調達額や事務所経費などが具体的な対象になることも想定される。
● 自治相は26日の閣議に、地方自治体の97年度決算(一般会計ベース)をまとめた地方財政白書を報告し、了承を得た。一般財源に占める公債費の割合は96年度比1.2%上昇の15.2%になった。6年連続の上昇で、同比率が警戒ラインとされる15%を上回った自治体も前年度より203増え全体の46.5%にのぼる。歳入は99兆8,878億円、歳出は97兆6,738億円と、ともに前年度に比べ1.4%減少し、戦後初めて前年度を下回った。将来の財政負担につながる地方債の残高は、98年3月未時点で前年度比7.9%増の111兆4,964億円と過去最高。地方債残高を含む地方財政の借入金も同7.6%増の149兆6,730億円に拡大した。
● 建設省は、1999年度から2000年度にかけて、不良・不適格業者の排除策徹底を本格化する。99年度は都道府県や政令指定都市、県庁所在都市を対象とし、2000年度には市区町村レベルにまで広げて徹底することにしている。施策は、技術者の専任制の確保、発注者支援データベースの活用、施工体制台帳の活用などが中心になるが、まず、発注者の意識改革を促す啓蒙活動を積極的に展開し、発注者が工事現場に立ち入り調査を実施するよう強力に要請することにしている。
● 政府の産業構造転換・雇用対策本部(本部長・小渕恵三首相)は5日、保健・福祉、情報・通信、住宅、観光の4分野で 2000年度までに計約77万人の新規雇用を創出する方針を決めた。住宅分野では、住宅金融公庫融資条件の改善や住宅関連税制の大幅拡充などにより、99 年度に住宅着工戸数の約20万戸増が期待できるとし、関連産業も含め約40万人の雇用機会の創出が見込めると試算している。住宅分野での雇用創出規模の根拠として建設省は、@住宅金融公庫融資などの融資条件の改善(基準金利適用融資額の 1,000万円増額、リフォーム融資額の約500万円増額など)A住宅関連税制の大幅拡充(住宅口ーン控除制度の創設、繰越控除制度の拡充)B公共賃貸住宅整備などの推進C住宅市街地整備の推進−−の4点を挙げている。これらの施策により、99年度の住宅着工戸数が約20万戸増えると予測、関連産業も含めた雇用機会の創出規模を約40万人と算定した。

労働関係の動向

● 建設現場の技能労働者の余剰傾向が依然として続いている。建設省が23日発表した2月の建設労働需給調査結果によると、主要6職種合計の労働者不足率は、工事量の年間変動を加味した季節調整値でマイナス0.4%と、13ヶ月連続して労働者の余剰を示すマイナスの不足率。各職種の不足率(季節調整値)は▽土木の型枠工0.5%▽建築の型枠工マイナス0.5%▽左官マイナス1.0%▽とび工マイナス1.0%▽土木の鉄筋工0,4%▽建築の鉄筋工マイナス0.9%。地域別の6職種合計不足率は、北海道が前月のマイナス1.5%から需給均衡の0%になったほか、四国が同マイナス0.5%から0.1%、沖縄が同マイナス0.2%から0.6%とそれぞれ不足に転じた。
● 建設省が30日に公表した1999年度の建設、運輸、農水3省の公共工事設計労務単価によると、前年度と比べて主要 11職種で3.2%減、全職種でも約3%減で、調査開始以来初めて減少に転じた。普通作業員、型枠工、大工など主要11職種の全国平均単価は1万 9,650円で、98年度の単価に比べて653円減少している。全職種をみても、約3%減となっており、これも調査開始以来初めて。建設省は「厳しい経済状況が、労働者の賃金にもはね返ってきた。建設業への就業者は低水準で推移、労働需給は過剰感のまま推移しており、厳しい状態が続いている」としている。
● 総務庁が30日発表した2月の労働力調査によると、完全失業率(季節調整値)は前月比0.2ポイント上昇の4.6%となり、調査を始めた53年以降の最悪水準を更新した。中高年層だけでなく若年層の離職者が増えており、完全失業者(原数値)は313万人と初めて300 万人を超えた。 男女別にみると、男性が前月比0.2ポイント上昇の4.7%、女性は同0.4ポイント上昇の4.6%となり、ともに過去最悪を更新した。完全失業者数は前年同月比67万人増。2ヶ月連続で過去最多を更新した。失業の理由をみると、最も多いのは自己都合の離職者で113万人と前年同月比23万人増えた。次いで解雇や定年などで失職を余儀なくされた「非自発的離職者」が同27万人増の96万人。ただ業種別に見ると56万人減の製造業や21万人減の建設業に対し、運輸・通信は4万人増、卸・小売りとサービス業はそれぞれ5万人増と業種間でばらつきが出た。

業界の動向

● 自社開発の分譲マンションの直接施工に乗り出した住友不動産は、第1号物件を着工し、8月までに12棟を計画している。直接施工は延べ、5,000u以下、金額にして10億円以下の物件を対象に、この1年間に15棟前後の着工を予定している。戸数にして同社の年間供給量の約10%が自社施工になる見通しだ。社員が現場所長を務め、専門工事業者と直接契約を結ぶ。1物件当り約70社の専門工事業者と契約する。結果的に、20%のコストダウンを実現できると見込んでいる。住友不動産グループ全体で450人ほどいる技術者を活用して、物件の設計にあたる。施工監理は設計事務所に委託しているという。施工にあたっては、現場の作業所長となる技術者を昨年から募集してきた。ゼネコンなどでマンションの施工経験のある、一級建築士や一級施工管理技士の資格者から、20人弱の技術者を入社させた。それぞれの現場は、約70社の専門工事業者と契約する。これまでに、つながりのあった業者、新たに売り込んできた企業などさまざまだ。鉄筋、基礎などいろいろな工種の専門工事業者との契約になるが、間にゼネコンが入っていないために、コストダウンになっているという。また、10億円以上の大型物件は従来どおりゼネコンに発注する方針だが、価格的な折り合いがつかない場合、自社施工になることもあり得るとしている。

その他の動向