情勢の特徴 - 1999年5月

経済の動向 行政の動向 労働関係の動向 業界の動向 その他の動向

経済の動向

● 日銀が発表した4月の国内卸売物価指数(95年平均=100)は95.7となり、前月比0.3%下落した。1月以来4ヶ月連続の下落で、下落幅は前年から拡大した。前年同月比では1.9%の下落。指数は79年7月以来、ほぼ20年ぶりの低水準となった。4月の国内卸売物価の内訳は、円安・ドル高の影響で燃料油など石油・石炭製品が上昇したが、そのほかは、ほとんどが下落か横ばいとなった。
● 東京商工リサーチがまとめた4月の建設業倒産は370件、負債総額は917億1,400万円だった。前月に比べて件数は33件増だが、前年同月比では147件の減少となり、7ヶ月連続で前年同月を下回る小康状態にある。負債総額も4ヶ月連続で1,000億円を下回った。一方、負債額も小型化しており、4月に100億円を超えたのは1社だけ。これを含め10億円以上は14件にとどまっている。業態別の倒産企業の構成は総合建設業56.2%(208件)、職別工事業23.7%(88件)、設備工事業20.0%(74件)。設備は21.1%の増加だが、総合は33.1%、職別は37.1%の減少。
● 97年度(98年3月末日時点)の建設業の許可業者は、56万8,548社。56万社の内訳は、建設大臣許可が1万 724社、都道府県知事許可業者が55万7,824社。また、一般建設業許可業者が54万6,123社、一定以上の金額を下請けに出す場合に必要な特定建設業の許可業者は4万7,476社。97年度は、2つ以上の都道府県に、本支店や営業所を置く時に必要な建設大臣許可、あるいは特定建設業と、比較的規模の大きな企業の増加が目立った。

行政の動向

● 神奈川県は民間の資金や活力を生かし社会資本整備を進めるPFI(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ)やリース方式の本格的な導入に乗り出す。6月の組織改革にあわせ全国でも珍しいリース・PFIの専門担当を新設。県内部の体制を一本化し民間企業との共同プロジェクトが効率良く展開できる体制を整える。財政難の中でも民活を導入することで自治体負担を軽減しながら行政サービスの充実を目指す。

労働関係の動向

● 政府が発表した3月と98年度の労働統計は、小渕内閣の「経済構造改革」「産業再生・競争力強化」などの掛け声のもとで、雇用情勢がさらに深刻化している姿をしめした。「過剰雇用」として労働者削減になりふりかまわぬ財界・大企業と、それを支援する政府の責任は重大である。総務庁発表の3月の完全失業率は、2月より0.2ポイント悪化の4.8%で過去最悪を更新した。労働省発表の同月有効求人倍率は3ヶ月連続の0.49 倍。同月の実質賃金は前年同月比0.4%減と20ヶ月連続の減少である。完全失業率は、とくに大企業を中心にしたリストラ計画で新規採用が手控えられている15−24歳層で大幅に上昇(失業率男性11.7%、女性10.2%)。さらに早期退職の対象になっている中高年など世帯主失業率が過去最悪の3.4%で、家計への影響は深刻である。完全失業者数も2ヶ月連続で300万人の大台を上回る339万人で過去最悪となった。離職による失業者は106万人、学校を出ても就職できない学卒未就職者は30万人、職探しを始めた主婦など「その他の者」も82万人で、いずれも一年前より大幅増である。
● 労働省が発表した1998年度の「毎月勤労統計調査」(結果速報)によると、従業員5人以上の事業所で働く常用労働者数は月間平均4,188万人で、前年度比0.1%の減。うち、正規社員をしめす一般労働者は同1.0%減と初めての減少であったが、パート労働者は同 3.6%増と高い伸び。企業が正規社員を賃金の安いパートなどに置き換えていることを示している。所定内給与は前年度比0.1%増の月額平均26万 7,997円であったが、残業などの所定外給与が同6.9%減で2年連続の減少となったことから、きまって支給する給与は0.5%の減と初めて減少。一時金など特別に支払われた給与は6.0%の減であったことから、現金給与総額も1.7%減の36万2,642円と、初めて減少に転じた。このため、物価変動分を差し引いた実質賃金は1.7%減で2年連続の減少であった。労働時間では、年間総労働時間が1,861時間(30人以上規模は1,868時間)となった。

業界の動向

● 日本建設業団体連合会(日建連、前田又兵衛会長)法人会員64社を対象にまとめた受注実績調査によると、98年度の受注総額は17兆40億円と前年度実績を9.6%下回り、87年度以来の低水準となった。ピーク時の90年度に比べ、受注量は約40%減少した。受注の内訳は、「民間」が14.1%減の10兆950億円、「官公庁」が5.2%増の6兆2,250億円。民間は87年度と同水準で、ピーク時の90年度と比較して 51.3%減となった。官公庁が前年度比プラスに転じたのは3年ぶり。
● (財)住宅保証機構は4月1日から中小企業の建築業者等を対象に「基金コース」を設置したが、同23日現在で 1,256社の申し込みとなった。今まで加入を見合せていた中小の建築業者が、昨年10月の公庫基準金利適用住宅の条件変更や、住宅品質確保促進法案によってすべての新築住宅に義務付けとなる「瑕疵担保責任の特例」(施行は平成12年6月頃)を考慮して、加入に転じているようだ。同機構では「今の時点でどの位の加入者になるのか予測できないが、予算上で言えば乗り換え粗プラス新規参入で約3万社」。これから基金コースを広めるため、各県・地域を単位に加入促進の講習会を実施していく意向だ。
● 熊谷組は、同社の国内受注高のうち約3割を占める集合住宅建設分野の競争力を強化する。2000年度に施行予定の「住宅の品質確保の促進等に関する法」をにらみ、測定時間を10分の1に短縮できる「遮音性能簡易測定システム」を開発し、「音創シミュレーター」(集合住宅音環境創成システム)などを実用化した。今後も、住宅性能表示時代に向けた、顧客二ーズを先取りした技術開発に積極的に取り組んでいく。熊谷組の集合住宅建設は、国内の受注高の約3割に当たり、国内建築工事の中では約4割を占めている。同社は、2000年度に施行する予定の同法に足並みをそろえるかたちで建築設計者やデペロッパーなどに向けた集合住宅の企画・設計支援ツールとして活用を提案するなど、より川上分野での技術メニューをそろえ住宅建設分野での競争力を強化・充実させる。
● 大手ゼネコン4社の99年3月期決算が18日、出そろった。長引く建設市場の冷え込みから、4社とも減収となった。ただ、収益面ではリストラ効果などが出始めており、大成建設と鹿島は経常利益が前年比20%以上と大幅に増加した。最終損益では清水建設と鹿島が不良資産処理などで多額の特別損失を計上したため、赤字決算となった。次期予想では4社とも98度の受注の低迷から減収などで特別損失を計上する予定だが、他3社は不良資産処理をほぼ終えており、今後リストラ後の実力が問われることになりそうだ。

その他の動向