情勢の特徴 - 1999年11月

経済の動向 行政の動向 労働関係の動向 業界の動向 その他の動向

経済の動向

● 総理府が発表した「森林と生活に関する世論調査」結果によると、「仮に今後新に住宅を建てたり、買ったりする場合、どんな住宅を選びたいと思うか」という問いに対して、「木造住宅(昔から日本にある在来工法のもの)と答えた人の割合が67.0%ともっとも高かった。次いで「在来工法以外の木造住宅(ツーバイフォー工法、木質系プレハブを含む)」が、21.5%と続き、在来工法とツーバイフォー工法を合わせると88.5%となり、「非木造住宅(鉄筋、鉄骨、コンクリート造りのもの)」7.7%を大きく引き離す結果となった。前回の調査と比較すると在来工法は2.1%減少し、ツーバイフォー等の木造住宅が9%も増加した。また「非木造住宅(鉄筋、鉄骨、コンクリート造りのもの)」は7.4%減少している。今回の調査結果を年代別でみると、20代では「ツーバイフォー工法など」を選びたいという割合が44.8%と一番高く、続いて「在来工法」31.5%となっている。ただし、年代が上がるにつれて「ツーバイフォー工法など」の割合が低くなり、「在来工法」の割合が増加、50代では77.2%が在来工法を希望、60歳以上になると、85.1%が在来工法の住宅を選びたいとしている。
●「改正中小企業基本法」をめぐり、公共事業と中小保護政策の行方が注目されている。改正法では、中小企業の範囲がこれまでの資本金「1億円以下」から「3億円以下」に引き上げられる。これにより、中小企業の範囲となる企業は、全産業で約1万6000社増えるとされている。建設産業では経営事項審査を受審している約20万社のうち、約2000社(建設業情報管理センター調べ)がこの階層(1億〜3億)を構成している。しかし、この数には、従業員数の基準で既に中小企業に位置づけられている企業も含まれるため、「実際は200社前後が中小企業に加わるのでは」(建設省)と見られている。中小企業庁では官公需法についても「法の基本方針に変わりはないが、(対象となる)資本金の定義など一部を変更することになる」としている。
● 政府は景気を回復軌道に乗せるためとして、事業規模で総額18兆1千億円にのぼる「経済新生対策」を決定した。対策は、拠点空港や道路の建設など公共事業を中心に6兆8千億円、中小企業への貸し渋り対策特別保障枠の延長・追加や、ベンチャー企業の金融支援など7兆4千億円、住宅金融公庫の融資枠追加などで2兆円、人材育成など雇用対策に1兆円、介護保険料の徴収延期分で9千億円を盛り込んだ。国の財政支出は、銀行支援の交付国債償還分9000億円を盛り込んだ。国の財政支出は、銀行支援の交付国債償還分9000億円を加え、6兆5000億円を見込んでいる。さらに、施策の目標年次を明示するとして、ベンチャーを含む開業企業数(現在年間14万社)を5年後に10万社程度引き上げ、また、確定拠出型年金の2000年度導入を目指すことなどをあげている。
● 東京商工リサーチが発表した10月の建設業の倒産(負債総額1000万円以上)は432件、負債総額は1090億1400万円となった。小口倒産の増加で、件数は今年最悪となり、7月から4ヶ月連続の増加で400件超となる。業種別では、総合建設業220件、職別工事業121件、設備工事業91件。公共工事の減少で土木工事業が103件とトップを占めた。倒産原因別では受注不振が242件と半数以上を占め、これに赤字累積37件、売掛金回収難2件と合わせると、いわゆる不況型倒産は全体の65%に達した。一方、負債総額を見ると、年商5億円未満の倒産が382件で9割近くを占めた。負債総額10億円以上の大型倒産が18件あったものの、1社平均2億5000万円と小口化している。
● 政府は臨時閣議で、総額6兆7890億円の1999年度第2次補正予算案を決定し、国会に提出した。「15ヶ月予算」として切れ目ない事業執行をめざす。社会資本整備の内訳は、道路や空港・港湾施設など「物流効率化・競争力強化特別対策」分野に4017億円、「生活基盤充実特別対策」に6099億円、光ファイバー網などの整備に向けた「情報通信・科学技術等経済発展基盤強化」として9076億円、「少子・高齢化・教育・環境」に5466億円、「災害復旧等事業費」に5168億円となっている。社会資本整備費は国費ベースで3兆5000億円だが、総事業規模は6兆8000億円程度になる見通し。地方自治体の財政難に配慮し、単独事業は盛り込んでいない。補助事業の地方負担分は全額を地方債でまかない、返済財源は国の地方交付税を充てる。社会資本整備以外では、中小企業金融対策に7733億円、住宅金融対策に2001億円、雇用対策に1907億円、都市基盤整備公団補給金などに1177億円となっている。補正予算の財源は、国債を7兆5660億円発行して確保する。国債依存率は43.4%と過去最悪となる。99年度末の長期債務残高は、国と地方を合わせて608兆円程度になる見通しだ。

行政の動向

● 建設省は11月中にも、不良不適格業者排除策の一環で、経営事項審査(経審)の申請データに対するチェックを強化する方針を打ち出す。コンピューターに組み込んだチェックシステムを用いて経営状況分析の申請データに虚偽がないかを調べるほか、技術職員数と相関関係を利用して完成工事高が水増しされていないかをチェックする。虚偽申請が疑われる場合には、税務申告書を提出させてデータの真偽を確認する方策を盛り込む方向だ。チェック強化で技術者のいないペーパーカンパニーなどを市場から排除する狙いで、2000年度の経審からの実施を目指す。チェック強化ではまず、この経営状況分析の段階で異常データチェックシステムを稼動させ、申請データに虚偽がないかどうかを確認する。次の都道府県への申請段階では、技術職員数と完工高の相関関係に着目した異常値の判別基準を新たに設けておき、完工高の水増し申請をチェックする。

労働関係の動向

● 総務庁が発表した「労働力特別調査」によると、今年8月時点の完全失業者320万人のうち、失業期間が1年以上の人が前回調査(今年2月)に比べ1万人増の71万人となり、過去最多を更新した。企業などで働く雇用者数は前回よりも増えたが、増加の内訳はパートタイム労働者など臨時雇用がほとんどで、雇用の不安定化が進んでいることが裏付けられた。失業期間が1年以上にのぼる人は、失業者全体の22.2%。とくに男性の中高年層で再就職に要する期間が長引いており、企業のリストラの影響がうかがわれる。仕事に就けない理由としては、「求人の年齢と自分の年齢が合わない」(69万人)、「希望する種類の仕事がない」(48万人)、「条件にこだわっていないが、とにかく仕事がない」(40万人)などと答えた人が多い。
● 日本銀行が発表した「生活意識に関するアンケート調査」(9月)によると、1年前と比べた現在の暮し向きについて、「苦しくなってきたと思う」という回答が48.3%と約半数にのぼった。暮し向きが「苦しくなってきた」と感じている人は、前回調査(今年3月)より1.7ポイント増えている。「ゆとりが出てきたと思う」はわずか5.4%である。「苦しくなってきた」と考える理由について聞いたところ、「給与等の定例的な収入が減ったから」が最も多く、67.1%と突出している。一年前と比べた現在の収入が「減った」は45.5%「増えた」は6.2%にとどまっている。

業界の動向

● 建設省は、1999年度上半期(4−9月)の大手建設企業50社の受注統計(A調査)をまとめた。上半期受注総額は6兆8872億6900万円、前年同期比11.7%減と前年水準を大幅に上回る上半期前倒し執行などの対策が取られたが、前年水準を大きく下回る厳しい結果となった。発注者別では、国内、海外ともすべて減少した。国内受注総額は、6兆6260億3500万円で10.4%減、海外受注は2612億3400万円で35.1%減と軒並み減少した。国内受注のうち民間は、4兆2439億3700万円、11.9%減、官公庁2兆1565億1600万円、8.2%減となった。
● 大林組、大成建設、清水建設、鹿島の大手ゼネコン(総合建設)4社が、99年9月中間決算を発表した。企業の設備投資抑制や公共事業の伸び悩みが響き、大成建を除く3社が減収だったが、外注費や人件費の削減により清水建を除く3社が経常増益となった。大成建は販売用不動産の評価損やグループ会社向け支援損などで最終損益が39億円の赤字に転落、2000年3月期通期では600億円の最終赤字になる。売上高は清水建が2ケタ減になったほか、各社とも低迷した。人員削減や外注費引き下げなどを徹底、本業の採算を示す完成工事総利益率は4社とも10%前後を確保した。間接部門の人員削減や本社から現場への人員シフトなどの合理化を進め、販管費は鹿島が11%減、清水建が9%減らした。コスト削減効果から中間期の経常利益は鹿島が82%増、大林組が86%増となるなど大幅に改善した。前期に不良資産やグループ会社向け支援などで大幅な最終赤字となった鹿島と清水建は黒字転換。今期からリストラを本格化する大成建は資産売却損、グループ会社の支援損などを中心に中間期で148億円、通期では1142億円の特別損失を計上する。

その他の動向