提言・見解
「公共工事の入札および契約の適正化の促進に関する法律」
(入契法)の施行に伴う地方自治体の施策に関わる要求項目
2001年7月9日
特定非営利活動法人 建設政策研究所「公共事業改革プロジェクト」
「入契法」は、談合の排除等公共工事の入札・契約の透明性と公正性を担保するために制定された。予定価格の近傍に張り付いた落札価格は、官製談合などにより公正な競争が排除されていることの象徴であり、公共工事の「談合価格」に対する納税者の強い批判は当然のことである。今回の「入契法」の施行によって公共事業全体の改善がはかられるわけではないが、公共工事の入札・契約に関する情報公開、施工体制の適正化、不正行為の防止に一定の改善がはかられることが期待される。私たちは「入契法」の目的にそった適切な具体化を地方自治体に要求するものである。
「入契法」の本来の精神は「良いものを安く」という納税者の要求に基づくものであるが、際限のない競争は必ずしもこの要求を満たすものとはならない。建設業においては、今日不況の長期化の中で大手建設業者による下請単価たたきと賃金・労働条件の切り下げが進んでおり、良質な建造物の構築・供給が危ぶまれる事態となっている。このような状況の中で、際限のない価格競争が最終的に建設労働者の賃金・労働条件にしわ寄せされていくことに歯止めをかけることが必要となる。
また、「入契法」の施行に伴って、過度な低価格競争が生じ、中小建設業者の排除と淘汰が急速にすすむ危険もなしとは言えない。そのため、「付帯決議」や「適正化指針」において、地域中小建設業者の受注確保と建設労働者の賃金、労働条件の確保がうたわれ、「適正化指針」においては、ダンピング受注の排除が特に定められたのである。私たちは「入契法」の関連諸法規が定めているこれらの点に関して地方自治体が責任ある対応を行うため以下の項目を要求するものである。
なお、今回の公共工事改革を良い機会として、公共事業の内容をいっそう住民生活に密着したものに転換させていくことを各地方自治体に強く求めたい。
- 情報公開について、ホームページ上で情報を開示するなど市民に対して入札情報を広く公開すること
- 談合等不正行為があった場合は、第三者機関である入札監視委員会が不正行為情報の受信・通知・開示を行うこと
- 官製談合など不正行為の疑いのある場合の、自治体内部からの善意の告発に関しては、刑事事件の罰則の対象としないこと
- 入札参加にあたっては業者の地域要件と規模要件を適切に定めることにより、過度な競争を排除に努めること。また、予定価格の適切な積算と最低制限価格制度の実効ある運用に努めること、さらに入札にあたっては各業者に対して入札金額だけでなくその内訳の提出を求めることによりダンピング受注を排除すること
- 低入札価格調査制度を採用する場合は、調査対象となる落札価格を従来より高めに設定するなど、ダンピング受注の排除に実効性を持つようにすること。
- 入札監視委員会等の第三者機関を設置するにあたっては、構成メンバーに民主的に選出された市民、労働者代表を加えること
- 開発型大規模公共事業から住民生活に密着した公共事業への転換を図るとともに、公共事業が持つ地域経済振興としての役割を発揮するため、及び官公需法に基づき、分離発注に努めるなど地域中小建設業者への優先発注に配慮すること。また、下請業者に地域内業者が優先参入できるよう配慮すること
- 一括下請負等の違法行為を排除するために、請求があった場合には、施工体制台帳の記載事項を公開すること
- 公共工事に従事する労働者の適切な賃金・労働条件を確保するため、その水準が地域の労働者の標準的水準を下まわることのないよう、発注者の責任において施策を講じること。
- 賃金・労働条件の適切な設定、および安全対策の適切な実施のために、地方自治体独自の客観的な基準を定めこと。そして、この基準の設定のために地方自治体、地域業者、労働者代表の三者による協議の場を設けること
- 各工事の積算労務経費(賃金及び法定福利費)を公開するとともに、積算労務経費と工事に従事する労働者の賃金・労働条件に相当な隔たりが生じていると労働者から申し出があった場合には、その原因を調査し発注者の責任で解消することに努めること。また、積算労務賃金決定にあたっては労働者代表との協議を行うこと
- 適正な施工の確保のため労働者・市民オンブズマン等による現場調査権を認めること
- 「入契法」の適切な実施のため発注部署の職員の増員を図り、業務執行体制を確立すること、特に施工監理業務の充実のため技術職員の拡大を図ること。また安易な民間外部委託に依存することは避けること