提言・見解

公共工事の品質確保と公正競争に関する見解と提言
―「公共工事調達制度のあり方に関する提言」及び「公共工事品質確保法」を受けて―

2005年4月10日
特定非営利活動法人 建設政策研究所

 今通常国会において、自民党・公明党の議員提案として審議された「公共工事の品質確保の促進に関する法律案」は、民主党の修正を含めた共同提案として再提出され、3月30日に成立、4月1日から施行となった。本法律は公共工事の品質確保を名目としつつ、大手ゼネコンの技術力本位の落札者決定方式を受け入れ、特に予定価格を民間の技術提案に沿って定めるという事実上予定価格の上限拘束性の撤廃に道を開いている。

 この法律案が提出されるに至った背景には、昨年9月、日本建設業団体連合会、日本土木工業協会、建築業協会の3団体が共同で作成した「公共工事調達制度のあり方に関する提言」(以下「3団体提言」という)がある。

 そこで、「3団体提言」の問題点を指摘することにより、本法律の真のねらいを明らかにするとともに、公共工事の品質確保と公正な競争に関する建設政策研究所の提言を行なう。

 「3団体提言」の主旨は、大規模工事を始めとする技術的難易度の高い工事と限定しつつ、現行の入札時の価格のみで落札者を決める会計法令に基づく調達制度では品質および競争性の確保ができないという問題意識のもとで

 第1に、公共工事の調達制度を、価格競争による落札者の決定から、技術力の活用を通じた競争による落札者決定方式に転換すること。

 第2に、技術力を最大限に活用するため、予定価格の制約性にこだわらない価格設定方式を可能とすること。

 第3に、予定価格制度を前提としない制度の本格的適用のため、「公共工事調達特別措置法」のような新法を制定すること。 

 というものである。

 このような大手ゼネコン団体の提言は、1996年の日建連ビジョン「新たな総合建設業を目指して」の中の「価格と品質の調和」の項で同様の提案が行なわれて以降、一貫して主張されている内容である。

 ここには、民間技術力活用=品質確保・効率化という図式を盾に、大手ゼネコンへの公共工事受注の集中と工事の大規模化・一括化および大手ゼネコンによる公共工事の計画・設計・積算への参入と新しい利益確保というねらいがある。以下に「3団体提言」の問題点を指摘し、大手ゼネコン本位の品質確保と競争に関する欺まん性を明らかにする。

「3団体提言」の問題点

 1.技術力だけで品質が確保できるのか

 「3団体提言」では「適切な技術力を持たない企業の施工による品質の低下」を技術力競争の必要性の第1に上げている。

 しかし、建設施工の生産組織は、技術力のある元請企業が工事を受注したとしても、実際に施工に携わるのは重層下請下位の専門工事業者及び技能労働者である。

 そのため、工事施工に直接携わる専門工事業者や労働者の技能・技術が公共構造物の品質確保の上では決定的に重要であり、元請企業の技術力だけでは公共構造物の品質は確保できない。元請企業の技術力の向上とともに、実際に施工に携わる業者・労働者の技能・技術の向上、そのために必要な工事単価や賃金・労働条件の確保をないがしろにした公共構造物の品質向上は見込めない。「3団体提言」はこの点を無視している。

 2.技術提案を重視した落札方式では大手ゼネコンへの受注の集中および競争性の欠如が生じるのではないか

 入札時の技術提案力に重点を置いた方式は、提案力の蓄積のある大手ゼネコンが圧倒的に有利になる。また、技術力の発揮を理由とした1件あたり発注規模の大型化は羽田空港D滑走路工事にみられるように競争化政策とはならず、談合的独占の構造化をもたらすことになる。

 3.設計・施工一括方式、特に基本設計から民間企業の参入は公共工事の公共性をいっそう後退させ、企業の営利追求目的の設計にならないか

 公共工事は多くの国民・市民の生活の利便性、安全性、文化性などの視点で必要とされる構造物を適正な価格で建設されるものである。しかるにその基本設計を営利目的の民間業者に委ねるなら、国民の必要性の視点が歪められるとともに、営利追求を基本とした設計に変質することになる。

 4.予定価格を排除または上限拘束性に影響されない落札方式では、大手建設企業提出価格に歯止めが掛からなくなるのではないか。

 「3団体提言」にある総合評価方式における予備積算価格方式、予定価格を設けない設計・施工一括発注方式、民間業者の見積り価格をもとにした交渉(確認) 方式など、行政機関が行なう工事積算に基づく予定価格設定を行なわない落札方式は、事実上国民の税金を管理する行政機関の責任を放棄するもので、営利を目的とする民間業者に税金を食い物にされる危険が生じる。

 5.技術力・技術提案に対する評価の客観的仕組みが定められていないため、政官業癒着が生じやすくなるのではないか

 「3団体提言」では技術力評価の仕組みとして、入札参加業者に対する資格審査の総合点数における主観点数比率を5割に高める、一定の工事成績評点以上のもののみ入札参加を認める工事の選定、履行保証割合の引き上げ、応札者に対する技術ヒヤリングの実施などを上げている。しかし、このような仕組みだけでは、具体的技術提案に対する発注側の提案との比較など客観的比較評価をすることが困難である。そのため客観的評価にもとづく公正な競争ではなく、結果的には、様々な政官業癒着による落札者決定となる可能性がある。

 公共工事の品質確保と公正競争に関する建設政策研究所の提言

 公共構造物の品質確保は、工事規模や工事の難易度にかかわらず、すべての公共工事において最重視しなければならない課題である。その前提で難易度の高い工事などには必要とされる技術力を評価し、価格を含めた公正な技術力競争を確保する必要がある。

 競争は品質と価格のバランスのとれた競争政策、入札・契約方式が求められる。そのためには、品質に関する客観的評価を点数化するなど公正さが必要とされる。

 このような視点から、以下に建設政策研究所の提言を行なう。   

 1. 価格だけでなく、さまざまな条件や評価基準による入札・契約制度の確立

 入札・契約制度については、透明性・客観性・競争性を担保した、公正で開かれた競争による入札・契約制度が望ましい。価格のみによる市場競争万能主義では公共構造物の品質・耐久性確保を保証することが困難である。そこで、技術力を含めた、さまざまな条件や評価基準による入札・契約制度を提案する。

 1)条件付一般競争入札制度の広範な導入

 大手ゼネコンへの受注の集中、不良・不適格業者の参入を防止し、企業間の公正な市場機会の均等を図ることが基本である。そのため、企業規模、技術力、工事実績、経営状態などで業者を等級区分し、ランク別に登録する。工事実績には下請施工実績も評価する。「不適格業者」の名により中小業者を排除せず、中小業者参入を公正に評価する。そしてランク内における業者間の公正な競争を行なう。   

 2)多様な評価基準による政策入札の実施

 施工過程の品質確保を含めた構造物の品質・耐久性確保のため、価格だけでなく、技術提案を含めた品質確保に必要ないくつかの提案を評価に組み入れた総合評価型政策入札を行なう。具体的には、労働安全・公正労働基準、環境への配慮、福祉や男女共同参画への配慮、法令遵守などを含めた提案と評価による落札者決定方式を採用する。入札審査は、公共機関が住民へ公開された等級区分や審査基準に基づき、提案項目の点数評価と価格との加算方式により、厳正に行なう。尚、提案された技術や政策が施工時において確実に実行されているか、労働組合など関係者と行政機関による現場立ち入り調査を行う。

 また、難易度の高い工事については技術提案を重視した評価による落札者の決定を行なうが、入札審査は住民への公開性、審査基準に基づく客観性、入札参加業者の競争性確保を前提とする。  

 3)工事種別・規模に応じた分離・分割発注の実施

 工事規模は大手ゼネコンの技術力を重視した工事の一括化や集約化ではなく、中小業者への受注確保に配慮し、工事の地域性を重視した地元業者への受注確保の見地から分離・分割発注に配慮する。そのため、1件工事の大規模化は避け、大規模工事を理由とした技術提案型落札方式を少なくする。

 4)官業癒着につながるゼネコンへの設計・施工一括発注方式ではなく、設計と施工の分離を原則とした発注方式を堅持する。

 設計・施工一括発注方式は公共工事の設計段階に大手ゼネコンなど施工業者が公式に参入する方式で、堂々と水増し設計をすることが可能になる仕組みとなる。また設計者と施工者が同一では、設計どおり施工が行なわれているかチェックが行なえない。このような方式ではなく、むしろ徹底した設計(監理)と施工(監理)の分離を行なうべきである。発注者に設計態勢が確保されていない場合は、民間の設計業者(コンサルタント業者)に発注者の立場から設計委託し、施工者との明確な分離を図る。但し、施工者が発注者に技術提案を行なうVE型設計やVE型入札制度は客観的で厳正な審査を条件に実施する。

 5)政官業癒着・談合の厳禁、企業献金の全面禁止、天下りの抜本規制と罰則の強化、内部告発権を認めること

 技術提案型落札方式などが政官業癒着・談合を助長する可能性を排除するため、癒着構造を抜本的に規制し、違反に対しては厳罰を科す必要がある。

 特に政党等への企業献金の全面禁止と罰則の強化、天下りの抜本規制、談合に対する厳罰などとともに、これらを内部から告発する内部告発権を全面的に擁護する。

 2.高品質を理由とした工事価格の高騰を避けるため、予定価格の上限拘束性を堅持するとともに、予定価格づくりの厳格化と公開を

 本法律制定による予定価格をあいまいにした落札方式や、交渉(確認)方式など民間業者の見積価格主体の予定価格設定では、税金を原資とした公共工事の価格が民間業者の言いなりに高騰する可能性がある。そのため、予定価格づくりの厳格化と公開性を含め積み上げ積算方式にもとづく予定価格制度について提案する。

 1)公共工事の予定価格は公共構造物の品質・安全性・利便性・環境配慮の立場から材料や工法を検討した設計書に基づき、標準的市場単価(材料費、機械経費のみ)を基本に各種条件を加味した積み上げ積算方式により行う。

 2)労務費の算出は地域の標準的生計費を基本に、職種ごとに技能程度、難易度、地域の他産業労働者の賃金水準を加味した独自の調査によって作成する。

 3)歩掛の算出は施工に携わる下請業者および職人労働者へのヒヤリング・アンケート調査を基本とした職種ごとの標準的歩掛に難易度・特殊性などを加味したものとする。

 4)積算に使用する標準的市場単価・労務費・歩掛はその作成過程を含め公開する。

 5)公共機関は積算された労務単価・経費・歩掛が実際に工事施工に携わる下請業者や労働者に反映されているかの監視・調査機能を充実させ、悪質な業者に対する罰則規定を設ける。

 3.工事現場における施工体制の充実、労働条件向上で品質確保の民主的ルール形成を

  公共工事の品質や耐久性を確保する上で、最大の課題は今日の重層下請構造に起因する工事施工体制上のさまざまな問題である。また、それは公共工事調達時の政官業癒着・談合およびダンピング競争など公正な競争性確保の上でも根本的原因になっている。そのため、工事施工現場における公正なルール形成のためのいくつかの提案を行なう。

 1)施工に携わる労働者の雇用の安定と賃金・労働条件の引き上げ、諸権利の保障

 (1) ILO94号条約の批准とともに公契約法(条例)の制定により、公共工事に携わる労働者に関する世間並みの賃金・労働条件の確立

 (2) 建設産業における産別・業種別・地域別労使交渉機構の確立により、賃金・労働条件の全体的底上げを図る。

 (3) 元請企業は社会保険料や労働保険料の企業負担、建退共制度活用などの労働費用負担を下請契約に別枠で盛り込み、労働者の直接雇用による雇用の安定を図る

 (4) 有給休暇、労災・職業病補償、悪天候・手待保障、無年金者保障などについて行政と業者団体の出資による基金制度を確立する

 (5) 建設労働組合の現場立ち入り調査権を広く認め、労働者の労働条件や諸権利確保についてのチェックを可能にする。

 2)技能・技術の発展・継承と現場における技術者配置の充実

 (1) 建設労働者の技能の向上と伝承のために国と地方自治体および建設業者団体がそれぞれの立場から資金を拠出し、建設労働組合を加えた第三者機関による技能教育・訓練校を地域規模で設立するとともに、すでに存在する職業訓練校に対する助成金を抜本的に増額する。

 (2) 元請ゼネコンの技術者の現場への配置人員を抜本的に増員し、構造物の品質確保のための技術監理を強化する。また、ゼネコン技術者への安易なリストラ策を中止するとともに、技術者の現場における基本的技術教育を重視し、技術の伝承が図られる人事政策を行なう。

 (3)  発注行政機関の技術監理職員の増員により、工事の監理・検査体制の充実を図るとともに、安易に民間委託による監理代行を行なわない。

 3)重層下請施工の是正

 (1) 建設業法に基づく元請責任による工事施工上の下請け指導の明確化、下請責任施工・下請の品質等の自主管理などによる元請責任の回避に対しては法的規制を強化すること。

 (2) 元請企業による下請一括発注、さらに一括再下請発注を厳禁すること。特に施工機能のない商社やブローカーなどのピンハネ業者の元請受注や中間下請参入を許さない。 

 (3) 独禁法・建設業法に基づく「優越的地位の濫用」「不当に低い請負代金を条件とする下請契約の締結」「下請代金の減額・支払遅延」の禁止を厳格に実行し、元請・下請間の対等な取引関係を実現する。   

 

別添条文

公共工事の品質確保の促進に関する法律

(目的)

第一条

この法律は、公共工事の品質確保が、良質な社会資本の整備を通じて、豊かな国民生活の実現及びその安全の確保、環境の保全(良好な環境の創出を含む。)、自立的で個性豊かな地域社会の形成等に寄与するものであるとともに、現在及び将来の世代にわたる国民の利益であることにかんがみ、公共工事の品質確保に関し、基本理念を定め、国等の責務を明らかにするとともに、公共工事の品質確保の促進に関する基本的事項を定めることにより、公共工事の品質確保の促進を図り、もって国民の福祉の向上及び国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

(定義)

第二条

この法律において「公共工事」とは、公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律(平成十二年法律第百二十七号)第二条第二項に規定する公共工事をいう。

(基本理念)

第三条

公共工事の品質は、公共工事が現在及び将来における国民生活及び経済活動の基盤となる社会資本を整備するものとして社会経済上重要な意義を有することにかんがみ、国及び地方公共団体並びに公共工事の発注者及び受注者がそれぞれの役割を果たすことにより、現在及び将来の国民のために確保されなければならない。

2公共工事の品質は、建設工事が、目的物が使用されて初めてその品質を確認できること、その品質が受注者の技術的能力に負うところが大きいこと、個別の工事により条件が異なること等の特性を有することにかんがみ、経済性に配慮しつつ価格以外の多様な要素をも考慮し、価格及び品質が総合的に優れた内容の契約がなされることにより、確保されなければならない。

3 公共工事の品質は、これを確保する上で工事の効率性、安全性、環境への影響等が重要な意義を有することにかんがみ、より適切な技術又は工夫により、確保されなければならない。

4公共工事の品質確保に当たっては、入札及び契約の過程並びに契約の内容の透明性並びに競争の公正性が確保されること、談合、入札談合等関与行為その他の不正行為の排除が徹底されること並びに適正な施工が確保されることにより、受注者としての適格性を有しない建設業者が排除されること等の入札及び契約の適正化が図られるように配慮されなければならない。

5公共工事の品質確保に当たっては、民間事業者の能力が適切に評価され、並びに入札及び契約に適切に反映されること、民間事業者の積極的な技術提案(競争に付された公共工事に関する技術又は工夫についての提案をいう。以下同じ。)及び創意工夫が活用されること等により民間事業者の能力が活用されるように配慮されなければならない。

6 公共工事の品質確保に当たっては、公共工事における請負契約の当事者が各々の対等な立場における合意に基づいて公正な契約を締結し、信義に従って誠実にこれを履行するように配慮されなければならない。

7 公共工事の品質確保に当たっては、公共工事に関する調査及び設計の品質が公共工事の品質確保を図る上で重要な役割を果たすものであることにかんがみ、前各項の趣旨を踏まえ、公共工事に関する調査及び設計の品質が確保されるようにしなければならない。

(国の責務)

第四条

国は、前条の基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、公共工事の品質確保の促進に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。

(地方公共団体の責務)

第五条

地方公共団体は、基本理念にのっとり、国との連携を図りつつ、その地域の実情を踏まえ、公共工事の品質確保の促進に関する施策を策定し、及び実施する責務を有する。

(発注者の責務)

第六条

公共工事の発注者(以下「発注者」という。)は、基本理念にのっとり、その発注に係る公共工事の品質が確保されるよう、仕様書及び設計書の作成、予定価格の作成、入札及び契約の方法の選択、契約の相手方の決定、工事の監督及び検査並びに工事中及び完成時の施工状況の確認及び評価その他の事務(以下「発注関係事務」という。)を適切に実施しなければならない。

2 発注者は、公共工事の施工状況の評価に関する資料その他の資料が将来における自らの発注及び他の発注者による発注に有効に活用されるよう、これらの資料の保存に関し、必要な措置を講じなければならない。

3 発注者は、発注関係事務を適切に実施するために必要な職員の配置その他の体制の整備に努めなければならない。

(受注者の責務)

第七条

公共工事の受注者は、基本理念にのっとり、契約された公共工事を適正に実施するとともに、そのために必要な技術的能力の向上に努めなければならない。

(基本方針)

第八条

政府は、公共工事の品質確保の促進に関する施策を総合的に推進するための基本的な方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならない。

2 基本方針は、次に掲げる事項について定めるものとする。

一 公共工事の品質確保の促進の意義に関する事項

二 公共工事の品質確保の促進のための施策に関する基本的な方針

3 基本方針の策定に当たっては、特殊法人等(公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律第二条第一項に規定する特殊法人等をいう。以下同じ。)及び地方公共団体の自主性に配慮しなければならない。

4 政府は、基本方針を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。

5 前二項の規定は、基本方針の変更について準用する。

(基本方針に基づく責務)

第九条

各省各庁の長(財政法(昭和二十二年法律第三十四号)第二十条第二項に規定する各省各庁の長をいう。)、特殊法人等の代表者(当該特殊法人等が独立行政法人(独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第一項に規定する独立行政法人をいう。)である場合にあっては、その長)及び地方公共団体の長は、基本方針に定めるところに従い、公共工事の品質確保の促進を図るため必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

(関係行政機関の協力体制)

第十条

政府は、基本方針の策定及びこれに基づく施策の実施に関し、関係行政機関による協力体制の整備その他の必要な措置を講ずるものとする。

(競争参加者の技術的能力の審査)

第十一条

発注者は、その発注に係る公共工事の契約につき競争に付するときは、競争に参加しようとする者について、工事の経験、施工状況の評価、当該公共工事に配置が予定される技術者の経験その他競争に参加しようとする者の技術的能力に関する事項を審査しなければならない。

(競争参加者の技術提案) 第十二条

 発注者は、競争に参加する者(競争に参加しようとする者を含む。以下同じ。)に対し、技術提案を求めるよう努めなければならない。ただし、発注者が、当該公共工事の内容に照らし、その必要がないと認めるときは、この限りではない。

2 発注者は、技術提案がされたときは、これを適切に審査し、及び評価しなければならない。この場合において、発注者は、中立かつ公正な審査及び評価が行われるようこれらに関する当事者からの苦情を適切に処理することその他の必要な措置を講ずるものとする。

3 発注者は、競争に付された公共工事を技術提案の内容に従って確実に実施することができないと認めるときは、当該技術提案を採用しないことができる。

4発注者は、競争に参加する者に対し技術提案を求めて落札者を決定する場合には、あらかじめその旨及びその評価の方法を公表するとともに、その評価の後にその結果を公表しなければならない。ただし、公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律第四条から第八条までに定める公共工事の入札及び契約に関する情報の公表がなされない公共工事についての技術提案の評価の結果については、この限りではない。

(技術提案の改善)

第十三条

発注者は、技術提案をした者に対し、その審査において、当該技術提案についての改善を求め、又は改善を提案する機会を与えることができる。この場合において、発注者は、技術提案の改善に係る過程について、その概要を公表しなければならない。

2 前条第四項ただし書の規定は、技術提案の改善に係る過程の概要の公表について準用する。

(高度な技術等を含む技術提案を求めた場合の予定価格)

第十四条

発注者は、高度な技術又は優れた工夫を含む技術提案を求めたときは、当該技術提案の審査の結果を踏まえて、予定価格を定めることができる。この場合において、発注者は、当該技術提案の審査に当たり、中立の立場で公正な判断をすることができる学識経験者の意見を聴くものとする。

(発注関係事務を適切に実施することができる者の活用)

第十五条

発注者は、その発注に係る公共工事が専門的な知識又は技術を必要とすることその他の理由により自ら発注関係事務を適切に実施することが困難であると認めるときは、国、地方公共団体その他法令又は契約により発注関係事務の全部又は一部を行うことができる者の能力を活用するよう努めなければならない。この場合において、発注者は、発注関係事務を適正に行うことができる知識及び経験を有する職員が置かれていること、法令の遵守及び秘密の保持を確保できる体制が整備されていることその他発注関係事務を公正に行うことができる条件を備えた者を選定するものとする。

2 発注者は、前項の場合において、契約により発注関係事務の全部又は一部を行うことができる者を選定したときは、その者が行う発注関係事務の公正性を確保するために必要な措置を講ずるものとする。

3 国及び都道府県は、発注者を支援するため、専門的な知識又は技術を必要とする発注関係事務を適切に実施することができる者の育成、発注関係事務を公正に行うことができる条件を備えた者の選定に関する協力その他の必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

附則

(施行期日)

1 この法律は、平成十七年四月一日から施行する。

(検討)

2 政府は、この法律の施行後三年を経過した場合において、この法律の施行の状況等について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。

理由

公共工事の品質確保の促進を図るため、公共工事の品質確保に関し、基本理念を定め、国等の責務を明らかにするとともに、公共工事の品質確保の促進に関する基本的事項を定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

公共工事の品質確保の促進に関する法律に対する附帯決議

平成17年3月18日 衆議院国土交通委員会(一〜九)

平成17年3月29日 参議院国土交通委員会(一〜十一)

 政府は、公共工事の品質確保の促進に関する法律の施行に当たっては、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。

一 公共工事の入札契約に関し、不良不適格業者の排除の徹底を図ること。

二 公共工事の入札及び契約の過程等に関して学識経験者等の第三者の意見を適切に反映する方策を講じるとともに、当事者の苦情に適切に対応するため、法的整備を含む検討を行うこと。

三 発注者による競争参加資格の設定に当たっては、新規参入企業の競争への参加が阻害されないよう配慮すること。

四 入札に参加しようとする建設業者が適切に評価されるよう、入札参加希望者登録制度における格付け及び経営事項審査制度の適切な運用に努めること。

五 施工体制の適正化を図るため、工程表及び施工体制台帳の発注者に対する提示が徹底されるよう努めること。

六 技術提案制度の運用に当たっては、発注者の自主性が尊重され、工事の内容に応じた適切な判断がなされるよう配慮すること。

七 体制が整っていない地方公共団体においても、技術提案に関する審査及び評価を適切に行うことができるよう配慮すること。

八 技術提案の審査の結果を踏まえて予定価格を定める場合においては、学識経験者の意見も踏まえ、適切に定めること。

九 適正な施工体制の確保、下請代金の適正な支払の確保等の観点から、施工体制台帳の活用、営業所への立入調査等により、施工の範囲や条件が明確な契約が締結され、下請代金の適正な支払が確保されるなど、元請企業と下請企業の関係の適正化に努めること。

十 公共工事の品質確保の一層の促進を図るため、瑕疵担保期間の延長、瑕疵担保責任の履行に係る保証の在り方などについて総合的な観点から検討を行うこと。

十一 公共工事に係る工事実績、評価等に関する情報の共有化のため、発注者支援データベースの整備に努めるとともに、その適正な運用の確保に十分留意すること。

右決議する。