もくじ 東急不動産(株)概史ーーーーーーーーーーー1 不動産証券化の現状と問題点ーーーーーーー7 東急不動産梶@概史 篠井 謙 東急不動産鰍フ社史より、同社の発展の軌跡を辿ってみる。 〜東急不動産創立まで【‘18〜’53】 T.田園都市開発(土地造成、鉄道経営他)から東急不動産設立(大正7年【1918】〜昭和28年【1953】)(東急不動産『街づくり五十年』第1編 土地業としての発足より) 東急不動産は、典型的な近郊鉄道と緊密に連携して発展してきた不動産企業で、「田園都市」づくりのパイオニアとしての地位を確固として、首都圏中心に発展してきた。 街づくり事業への理念〜田園都市づくり 起業は畑弥右衛門ら荏原郡地主有志が地域開発の要望を持って、渋沢榮一や日本橋クラブ(紳商グループ)メンバーへ働きかけ、日本初の田園都市建設と近郊鉄道業の発展展開を目指すことから始まった。 田園都市叶ン立〜大正7年9月2日【1918.9.2】社長 中野武営(翌月10月急逝、以下不在。以降、副社長 竹田政智事務処理代行) わが国初の田園都市づくりを専業とした会社として、1)市街地の経営、2)不動産の売買賃貸およびその仲買、3)土木建築工事設計請負および監督、4)前各項の目的を達するため、これに関連する諸般の事業を営み、またはこれらの事業に出資することを営業目的にして発足。事業計画としては、 ・ 東京府下荏原郡玉川村及び洗足池周辺の約42万坪〜田園都市建設地として好適地 ・ 東京市と連絡する交通機関設備として、府下大井町起点、洗足予定地、玉川予定地から、玉川電気鉄道駒沢付近に連絡、院線新宿駅に至る電気鉄道を自ら敷設〜鉄道建設計画 ・予定地域の1期500戸の中流住宅家屋建築(庭園菜園付き) 貸付且つ年賦払込方法にて其の所有権移転〜わが国初の年賦払込方式の分譲方法 を提案。今までの都市近郊の住宅作りには無かった新機軸を導入、成功した。 注)田園都市:エベネーザ・ハワード『田園都市とは、田園の中にある都市、つまり、美しい農村に取り囲まれた都市』(Garden City of tomorrowより) この田園都市梶i東急不動産の前身)における都市整備の総合事業〜田園都市整備事業は、土地買収(洗足地区造成地、多摩川台地区(現田園調布地区)造成地など)から、区画整理事業、幹線道路計画の道路(幹線道路ほか)づくり、下水・上水道、瓦斯・電灯・電気などの電気事業、公園(洗足池整備、弁天池整備、田園コロシアム(野球場)、テニスコート、多摩川園開園経営など)づくり、学校教育施設(小学校、幼稚園用地確保)・医療施設などの誘致、商業用地造成・誘致(市場、購買組合等への便宜)、宗教施設(カトリック教会誘致)に至るまで、近郊都市として必要なあらゆる要素を網羅する総合的住宅地づくりであった。 その他、田園都市鰍フ都市整備事業の特徴 ・ 分譲地建設条件 厳しい住環境保全対策義務付け ・ 融資、割賦販売方式、後に一戸建ての「土地貸、家屋貸」方式も ・大工事業(維持補修サービス、駅が受付窓口)、その他関連事業による多角化、拡大 ・大学学園誘致 東京工業大学(大岡山)、慶応義塾大学(日吉)他、高校、大学多数 ・誘致大学との土地交換による、都心部土地取得、販売の先鞭 大正9年1月30日田園都市鰍ヘ約款に、 ・ 鉄道を敷設し、一般旅客及び貨物の運輸 ・ 経営街地域内の電灯電力供給 の2項目を追加し、鉄道事業と土地造成、分譲開発業との連携〜総合的街づくりへの先駆となった。鉄道整備事業としては、荏原電気鉄道敷設免許の無償譲渡、武蔵野電鉄鉄道免許の譲渡などで、鉄道事業を拡大、現在の東急電鉄の鉄道事業の礎を築く。田園都市梶E目黒鎌田電鉄梶E東京横浜電鉄鰍ェ合併し、東京横浜電鉄椛n設に!発展した。五島慶太が社長に就任。電鉄〜インフラ整備事業のマッチアップの先駆としての地位を確固とした。 戦中期の企業活動 国家総動員法下、国による企業合併推進、企業効率化の方針に沿って合併〜“大東急“誕生へ!東京横浜電鉄、小田急電鉄、京浜電気鉄道(以上の3社合併で「東京急行電鉄」に!)合併(昭和17年5月)後、京王電気軌道を合併した「大東急」誕生!(昭和19年5月) 田園都市業は統制経済の下で減退傾向。 戦後の企業活動 戦後、“大東急”(東京急行電鉄梶jの再編、分離へ! 京王、小田急、京急及び東横百貨店へ再編分離され、合併前文化を継承しつつも、ほぼ均等に資産、事業(事業線、不動産開発事業など)を配分! 東急電鉄本体の元で不動産事業は、 ・「東急文化小住宅」〜所謂、「建売り」販売戦略開始! ・ 物納財産払下げ事務の受託〜手数料収入 の2本柱で戦後復興対応業務を立直した! ’51.8(昭和26年8月)五島慶太が追放解除、復帰後、田園都市業再建に着手 ・ 渋谷再開発 東急会館建設 渋谷地下街建設 第一マーケット処理 ・城西南地区開発〜衛星都市建設へ 多摩田園都市開発に着手 などで、不動産業の隆盛を! 〜東急不動産創立から現在まで【’53〜】 U.土地業から不動産業へ 背景:朝鮮動乱から特需景気、景気浮揚と都市集中による住宅不足解消に鳩山内閣「住宅建設10ヵ年計画」(昭和30年1月)を提案。日本住宅公団の設立(昭和30年7月)など。こうした状況の中で、東急不動産叶ン立に!(五島昇の社長就任(会長 五島慶太)) 五本柱の事業計画〜東急電鉄時代の建設計画の継承、延長 1) 衛星都市の建設 2) 有料自動車道路建設 3) 大邸宅、農地等の開放 4) 中高層アパートの建設 5) 渋谷地区開発 から、自立へ、「住宅5万戸建設計画」推進 ・公庫住宅建設〜東急電鉄からの委託 ・特売〜自己資金建売住宅 を事業の柱に発展。 しかし、昭和30年以降は東急沿線外の宅地開発〜座間・柏・横浜相模原・中央線国分寺などが主流となった。一方、別荘地開発にも手を染め、軽井沢、箱根などの開発も! 中高層住宅の建設 ・ 賃貸アパート開発(外人向け高級賃貸「代官山アパート」建設や日本人向け高級賃貸「三田東急アパート」建設など)の新規事業へ参入 ・ 分譲アパート建設、販売(「東急スカイライン(48戸)」S33.9.30竣工〜分譲アパート付賃貸ビル建設(南平台東急ビル)共用部分、土地、管理は東急不動産、専用部分のみ分譲の方法。)(分譲アパート「代官山東急アパートアネックス」S34.10.12竣工) S37.4.4 建物区分所有に関する法律が成立したが、東急の分譲アパート建設、販売は、マンションブーム招来の一助にも! ・ 社宅向け一棟分譲アパート建設、販売 勤労者向け低価格住宅の提供(「日吉アパート」S30 三菱日本重工業横浜造船所社宅として売却4棟)などの事業も。 「厚生年金還元融資制度」の発足(S27.11)、「産業労働者住宅資金融通法」の公布、施行(S28.7)に続く日本住宅公団発足(S30.7)による「特定分譲住宅制度」制定などが追風に! 東急沿線 未開発農地の開発に注力 新丸子(6棟)、白楽(4棟)、玉川町(9棟) 以上東急沿線 以外の小机(S37、9棟)までは順調な売行きだったが、新所沢(S38.11、7棟)や戸塚(S39.5、11棟)は不振、撤退へ〜S40年にかけての経済不況の影響 企業の住宅政策の転換〜給与住宅供給から持家化推進、住宅手当支給などの住居費補助に V.新分野への進出 不動産専業体制への地歩固め〜砂利業、倉庫業、建設業、広告業などの分離独立を図り、不動産専業化へ S37からS42、大型のニュータウン建設へ スーパーストア併設 (「東光ストア」支援) 組合方式 土地区画整理事業に 強制執行も(一括代行方式 S36年、つくし野 町田市小川第1地区開発) 東急大井町線延長含む計画 住宅の生産方式の近代化、工業化 軽量軽型鋼プレハブ住宅(S36年以降〜) 東急スチールハウス展示会の失敗〜ニーズに合わず高価→本格木造住宅「東急ホーム」へシフト。 大型ビル建設、運用(貸しビル業) 渋谷東急ビル建設 S40.6竣工 大型事務所、ショッピング食堂街ビル 3社合同合併型 蒲田東急ビルS43.10竣工 全館ショッピングビル 赤坂東急ビル S44.9竣工 国有財産(元宮家所有地)→一部民間払下げ(他は、現在衆議院議長公邸) 東急Gの2社所有に!(東急電鉄、東急自動車) 建築基準法の改定前の駆け込み着工 高さ制限規制→容積率規制に! オリンピックによるビルブームと重なって、未曾有のビル建設ラッシュに! 運営 商店会の結成、売上連動賃料設定、東急プラーザ呼称など 順調 観光事業への進出(岩戸景気〜レジャーブームに乗って、S36年頃 伊豆急行建設〜伊豆半島開発 西伊豆堂ヶ島開発やS38.10堂ヶ島レステル竣工)し、「東急レジャー」設立。設計コンサルタント業、不動産鑑定業にも進出。 W.総合都市産業をめざして 住宅産業への展開 人口増加年率1%増やベビーブーム世代の新規所帯増加による住宅需要の増大 波及効果を含め年17兆円市場(当時、自動車工業や電子工業で2兆円市場)となった。この中で、住宅産業は活況を呈する ・ 住宅提携ローンの長期化,大型化 ・ 住宅プレハブ工業など コストダウン努力 などで、中高層マンションの供給増大に!不動産供給も、中小企業→大企業の時代へ移った! 東急の住宅産業への参入方針 ・ 東急ホームの拡販 ・ 高層住宅(東急ドエル)の拡大 ・ 仲介収入の増加 を柱に住宅産業への参入を狙った! 武里ニュータウン 全区画建売方式 S45年 大宮プラーザ タウンハウス住宅 S46年 拡販策 ・ プレハブ量産住宅開発〜量産住宅販売システムの中核として「東急住宅販売」設立 ・ 東急ホーム販売のバックアップ 「東急ホーム・サービス」設立 ・ 販売専業代理店方式 ・ 法人販売強化 ・ 広告宣伝費拡大 などのほかに、ローンの多様化に対応した仲介ローンや買い換えローンも開発 多摩田園都市の建設 1,300万坪(4,300万m2)に計画人口40万人の田園都市づくり〜キャッシュレスタウン・CATVタウン・地域サービスセンター設置など 中高層住宅建設 都市型(東急アルス本郷/東急アルス石川台の2件のみ)から郊外型へ転換 地域開発に伴う総合サービス会社「東急コミュニティー」設立 アフターサービス デベロッパー東急の確立 近畿圏への進出 共同開発で、進出図る!川西、奈良生駒、神戸名谷など 日本列島改造とデベロッパー 私鉄28社「都市開発協議会」の理事長 五島昇就任 S44年以降、全国地方都市へも進出 〜全国的展開を開始 S47年 海外事業の展開推進 〜グアム,ハワイなど 不動産流通システムの開発 ・ 新仲介システム開発 不動産検索システム 〜「タナック・システム」 I・C設置前後で仲介収入 倍半分違う その後、S45年にはコンピューターの導入により、業界初のオンライン仲介物件情報管理システムを開発,稼動した。 不動産証券化の現状と問題点 1.はじめに 大手ディベロッパー調査部会では昨年度から今年度の始めにかけて、発行されている社史などを資料としながら、大手ディベロッパーの誕生から今日までの経過を調べ、どのような業務内容と戦略のもとで今日の企業規模を作り上げてきたかを探ってきた。その後、大手ディベロッパーの現在の戦略を調査・研究していく中で、不動産証券化が大手ディベロッパーの中で急速にその実績を拡大させていることを知った。同時にマスコミでも頻繁に話題にされ、社会的にも関心が高まっていることを知った。不動産証券化は不動産業界と深く関わっている問題ではあるが、本来は「証券化」の名が示すとおり金融分野の問題である。しかし同時に「不動産」に関する新しい仕組みでもあり、建設産業にとっても関係の深い問題でもある。当研究所でも2002年1月の「建設政策」誌で「不動産証券化による『都市再生』」と題する論文を掲載し、不動産証券化に注目していた。当調査部会は、「不動産証券化」は今日的テーマであり、そこに的を絞って研究を深めていくことは大いに意義があると判断し、「大手ディベロッパーの調査・研究」という当初の目的からは多少軌道が外れることを承知の上でその後の調査・研究を進めた。 今年の9月、東京23区の基準地価が15年ぶりに上昇したと新聞で大きく報道された。バブル崩壊以降、デフレの象徴として下落を続けていた地価の上昇であるから大きなニュースには違いない。この地価上昇の背景のひとつに指摘されているのが不動産証券化の拡大である。 今日の地価上昇はミニバブルとも云われている。もしバブルの崩壊が再び起きれば、個人投資家の被害のみならず、建設産業にも大きな影響を与えることは明らかである。不動産証券化の複雑な仕組みと金融に関わる難解な用語を理解しながら問題点を探ることは、われわれ金融の素人には大変困難な作業であった。どこまで達成できるかは不明だが、不動産証券化の仕組みをなるべく分かりやすく解説し、その問題点を明らかにすることを目標に以下述べていきたい。 2.不動産証券化とは 不動産証券化とは不動産に対応する証券を発行し、それによって得られる資金で不動産を取得し、その不動産の賃料収入や売却費で発行した証券の元本や配当等を支払う行為である。ねらいは金融機関の担保不動産や企業の固定資産として存在していた不動産を投資市場に開放し、不動産の流動化を図ることである。 不動産証券化は、@不動産の小口投資商品化、A資産の流動化、Bノンリコース・ローンを内容としている。 @不動産の小口投資商品化は投資家の資金の運用を主目的としたもので、資産運用型証券化とも言われている。投資家が共同で対象不動産に投資(共同事業に出資)し、不動産会社などが設立する特殊な主体(投資法人 又は特別目的会社(SPC) など)がこの不動産を運用する事業を行い、不動産の賃料や売却から得た収益を投資家に分配するものであり、個人投資家の参入を可能とする不動産の小口投資商品化である。この投資(出資)分が第三者に譲渡される場合には、有価証券であり、文字通りの不動産証券化となる。 A資産の流動化は、企業が所有する不動産を第三者に移転することでオフバランス化 を図る又は資金を調達することを目的としている。企業はSPCに不動産を売却し、SPCはこの不動産対応の有価証券を発行して不動産取得の資金を調達し、賃料からの収益を投資家に還元する。資産の流動化により、不動産を所有していたものは、不動産取得に伴う債務のオフバランス化あるいは投下資金の早期回収ができる。SPCの形態としては特定目的会社(TMK) 、有限会社、匿名組合などがある。 Bノンリコース・ローンは、SPCを借り入れ主体とし(SPCの所有する不動産を担保とする)、銀行の債務返還請求権が、SPCを構成する母体企業の資産に遡及しない銀行貸し出しである。つまり企業の信用に対する貸し出しではなく、プロジェクトの信用への貸し出し(プロジェクト・ファイナンス)である。 不動産の証券化を活用する目的によって大きく2つに分類したのが上記の@不動産の小口商品化A資産の流動化である。しかし実際の活用目的は多岐にわたっており、その目的に沿う組織の形態もまたさまざまであるが、共通する仕組みとしては@不動産を直接顧客に売却するのではなしに、資産の保有・証券の発行・投資家への収益の配分を行なうための特別の組織 (SPCなど)を設立して、そこに売却する、A銀行などの融資は、SPCなどに対して行い、債務はディベロッパーやゼネコンに遡及しない、B投資家に対しては、小口化された不動産証券を売却する、というものである。このうちのひとつの要素のみを含むものであっても、証券化の範疇に含まれることになる。 これらの結果、不動産投資を行おうとする金融資本、ディベロッパー、ゼネコンなどは、不動産の所有に付随する不動産価格(地価)の下落リスクや開発保有物件の売れ残りリスクを回避することができる。バブル経済の破たん時のように、金融機関の側では不良債権、企業の側では不良資産を抱え込んだような事態を回避する仕組みをつくることで、不動産の投機や開発を進めていくことができるのである。 3.不動産証券化の法整備の経過 不動産証券化に関わる法制度の整備としては、不動産特定共同事業法、特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律(以下資産流動化法)、投資信託および投資法人に関する法律(以下投資信託法)の3つが重要である。 不動産特定共同事業法は、投資家が資産や金銭を出資し、業務を委託された不動産会社などがその資産などを一括して不動産事業を行い、収益を投資家に分配する「不動産特定共同事業」を規制する法律である。この法律は1995年に施行されている。この法律の施行以前、不動産共同投資商品の供給がはじまっていたが、バブル経済の崩壊による業者の倒産などによって投資家に被害が出、規制が求められた。事業法では、宅地建物取引業者免許などを基準として事業者を許可制とし、また、業者への情報開示、行為規制などの業務規定、事業報告書の提出など監督規定、罰則規定などを定めている。 資産流動化法は、資産を証券化する際に不可欠な導管体 (ビークルともいう)を規定して、資産証券化の制度を確立したものである。この法律は1998年に施行されている。銀行の側では多額の不良債権、企業の側では多額の有利子負債を削減するために、特定資産(不動産等)の信用力(担保力)を生かして、新たな資金調達を実現する仕組みが求められていたのである。 投資信託法は、投資信託の運用対象(特定資産)を規定し、投資法人の業務を規定している。従来、主として有価証券とされていた運用対象の範囲を不動産等へと拡大する法の改正・施行が2000年11月になされた。この法改正によって、不動産投資信託の運用と不動産投資法人の設立が可能となった。REIT(米国で発達した不動産投資信託の日本版という意味でJ-REITとも言う)は、この法律に基づいて設立されたものである。 不動産証券化に関連する法律や制度等の経過は以下のとおりである。 1987年 3月 信託型不動産小口化商品の供給始まる 1989年 4月 任意組合型不動産小口化商品の供給始まる 1990年12月 国鉄清算事業団の不動産変換ローンの供給はじまる 1993年 6月 特定債権等に係る事業の規制に冠する法律の施行 1995年 4月 不動産特定共同事業法の施行 1997年 5月 不動産特定共同事業法改正 (最低出資単位を1千万円から500万円に引き下げ、プロ投資家を対象とする事業の規制緩和) 1998年 9月 特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律(旧SPC法)の施行 1998年12月 証券投資信託法の改正により会社型投信(証券投資法人)解禁 1999年 2月 不動産特定共同事業法改正 (最低出資単位を1千万円から500万円に引き下げ、第三者への譲渡解禁) 1999年 9月 不動産特定共同事業法改正 (対象不動産変更型契約の追加(入替え型)) 2000年 7月 公認会計士協会による「5%ルール」の導入 2000年11月 投資信託及び投資法人に関する法律の改正施行 (不動産ファンドの解禁(投資法人型、投資信託型-REIT)) 2000年11月 資産の流動化に関する法律(旧SPC法の改正)施行 (特定目的会社の設立手続きの簡素化等の改正。略して資産流動化法) 2001年 3月 東京証券取引所が不動産投資信託(REIT)市場を開設 2001年 7月 不動産特定共同事業法改正(最低出資単位の制限撤廃) 2003年12月 大阪証券取引所がREIT市場を開設 2004年 8月 福岡証券取引所がREIT市場を開設 2004年12月 ジャスダックが証券取引所に移行し、REIT市場を開設 4.不動産証券化の背景 不動産証券化の目的としては、大きくふたつがある。第1は、金融システムの改革であり、第2は、バブル経済の崩壊で積みあがった不良債権と有利子負債の処理、削減である。 第1の目的は、間接金融から直接金融へ、つまり個人資産を銀行へ預金し、銀行から企業へ貸付ける間接金融から、個人資産の証券への投資、銀行資産のプロジェクトへの貸付など企業やプロジェクトが投資家から直接資金を調達する直接金融へのシステムの転換である。前者は日本の現在までの金融システムであり、後者はアメリカ型の金融システムである。 ここで、日米の金融システムの違いを金融資産の構成から見て置く。日本の金融機関の資産は、2001年末で2885兆円に及ぶが、その構成を、預金取扱機関、保険・年金基金、その他の金融機関で分けると、預金取り扱機関が、1530兆円と過半を占めている。それに対してアメリカの金融機関は、同じく2001年末で総額38.4兆ドルに対して、預金取扱機関は8.6兆ドルに過ぎない。政府後援金融機関(証券化支援機関など)や投資信託、ファイナンス会社などのその他の金融機関が18.6兆ドルと過半に迫っている。金融機関全体で見た資産に占める貸出の割合を見ると、日本が51%であり、アメリカは32%に過ぎない。また、株式・出資基金は、日本は5%に対して、アメリカでは20%を占めている。また、2001年末の家計の金融資産構成を見ると、日本は、現金預金が54%、債券5%、株式出資金7%、投資信託2%、保険年金準備金28%、その他4%、となっているが、アメリカは、現金・預金は、11%に過ぎず、株式・出資金が34%を占めてトップであり、債券10%、投資信託12%、保険年金準備金が29%、その他3%となっている。株式・出資金、債券、投資信託を合計すると56%に及ぶ、家計資産の過半がリスク資産となっているのである。したがって、金融機関の資産も家計の資産も、日本においては、比較的リスクの低い構成になっているのに対して、アメリカにおいては極めてリスクの高い構成となっているのである(日本銀行調査統計局「資金循環統計の国際比較」2003年12月 参照)。 金融システムの改革とは、具体的にはこのような極めてリスクの高い資産構成を持つアメリカ型の金融システムへ向けて、日本の金融システムを変革していく、ということに他ならない。このような資産構成は、アメリカにおいては、預金者・投資家がより高い金融的利益、配当を求めてファイナンス会社や年金基金、投資信託を選択し、それとの市場競争の中で、銀行などの預金取り扱い機関も預金金利を引き上げる中で形成されてきたものである。銀行などの預金取扱機関は貸出金利を高めるため、ベンチャー企業や開発プロジェクトなどよりリスクの高く金利の高い貸出へ傾斜していくことになった。構造改革の大きなねらいのひとつには、国民経済の停滞・後退の状況の下でも、金融資本の利益追求を継続的に展開できるように、金融システムとさらには経済構造自体を再編するということがある。 この第一の目的からすれば、不動産は、個人資産の証券(債券、株式・出資金、投信)への投資、あるいは銀行資産のプロジェクトへの貸付へと転換していく際の、最適の対象と考えられる。不動産の証券化は政府が進める金融システム転換の有力な施策なのである 。 第2の目的は、金融機関の不良債権の処理、企業の有利子負債の削減のための手段として活用することである。わが国の営利法人の資金調達中の借入金の動向を、2000年度以降について見ると、2004年度まで一貫して減少している。返済額で見ると2000年度が11兆6千億円、2001年度が4兆4千億円、2002年度が17兆4千億円、2003年が18兆円、2004年度が13兆4千億円である。一方自己資本比率は、2000年度以降、全階層で上昇している。資本金10億円以上の企業では、2000年度に32.8%だったものが、2004年度には37.4%にまで上昇している(平成16年度法人企業統計調査)。2003年以降の景気回復による経営の好転がもちろん影響しているが、2000年度以降、一貫して自己資本比率が上昇している背後には、不動産など資産の、証券化によるオフバランス化と調達した資金を原資とした借り入れの返済が大きく影響していると考えられるのである。 また、平成15年土地基本調査によれば、平成10年(1998年)から平成15年(2003年)の間に、「不動産業」「建設業」において、棚卸資産が大きく減少している。面積では、不動産業は、1011kuから611kuへ、建設業でも246kuから141kuへと大きく減少している。REITなどへの不動産の売却が大きく反映していると考えられる。 5.不動産の評価方法の変化 バブル経済の崩壊以降、不動産評価の方法に変化が生じてきている。不動産評価は、いわゆる絶対的価値観によるものと相対的価値観によるものとで大きくことなる。前者は、不動産の価格には絶対額で、適正な水準が存在するという考え方であり、この考え方に立つと、バブル崩壊後、地価はこの適正水準を下回って下落したために、いずれ地価は反転上昇に向かうという評価になる。後者は、収益還元法により地価水準の評価を行うもので、地価に絶対的な適正水準を想定しない。 収益還元法による不動産価格の評価は、次のようになる。年間純収益(家賃収入から管理費用を差し引いたもの)を還元利回りで割り戻すのである。例えば物件からあがる年間収益が5億円であり、還元利回りが5%の不動産評価額は、5億円÷0.05=100億円 とういことになる。還元利回りは物件のリスクが低いほど低くなり、東京・丸の内のオフィスビルは地方のビルに比べて還元利回りが低くなる。長期不況による地価の下落・停滞の継続により、今日、地価評価は収益還元法行われるようになっている。そして、この地価評価方法の変化の中で、現在都心部におけるオフィスビルの評価価格の上昇が生じてきているのである。 問題は、この還元利回りは、理論的に決まるわけではなく、主観的な判断が入ってくるということである。上記の例で還元利回りが4%になれば、同じ物件の価格が125億円になり、3%になれば、167億円と価格が上昇していくことになる。最近の都心部での地価の上昇には、REITや私募ファンドが、還元利回りを低く評価して、高い物件を取得していることも影響しているのである。 収益還元法による不動産評価は、収益に基づいているためにバブルではない、という議論があるが、還元利回りを低めに設定してしまえば、同じ収益であっても、絶対額を高めることができるのであって、バブルが発生する余地は大いにある。 6.不動産証券化のしくみ (1)様々なタイプの不動産証券化 所有する不動産による資金調達や新たな不動産を取得する場合の資金調達方法として企業が活用する、あるいは不動産投資信託(REIT)と称して、不動産を個人を含む投資家の投資対象とするなど、不動産証券化はその目的によって様々な形態をとって進められている。 不動産証券化には、資産流動化型、開発型、資産運用型がある。資産流動化型は、企業の保有する資産をSPCに売却するタイプのものである。開発型は、証券化手法を用いて不動産を購入、開発を行うものである。資産運用型は、証券化手法を用いて、一般投資家の不動産への投資参入を図るものである。また、不動産証券化には対象となる投資家が異なる、私募ファンドと公募ファンドがある。公募ファンドは、広く市場の投資家に出資を呼びかけて行うものであり、REITがこれに当たる。私募ファンドは、ファンドの組成者に縁故のある大口の投資家や機関投資家に出資を呼びかけて行うものである。公募ファンドについては、多くの場合情報の開示がなされるが、私募ファンドの実態は中々明らかになってこない。 スキーム別の実績は以下のようになっている。 1997〜2004年度の累計(億円) 2004年度分(億円) REIT 24,878 8,954 不動産特定共同事業 10,678 2,503 TMK 42,726 21,955 その他のスキーム 1123,593 41,771 計 201,875 75,183 (国土交通省「不動産証券化実態調査」2005年6月10日)。 (2)不動産特定共同事業法に基づく不動産証券化 不動産特定共同事業法に基づく不動産証券化には、現物出資型(任意組合型)、金銭出資型(匿名組合型)、賃貸型、対象不動産変更型などの様々なタイプがある。いずれの場合にも、不動産の運用を共同事業としておこない、投資家に収益を配分するという基本的なしくみは変わらない。現物出資型と賃貸型は、ディベロッパーが開発物件の共有持分権を投資家に事前販売するものであるが、現物出資型では、投資家は、共有持分権を現物出資する。賃貸型では、投資家は、共有持分権を不動産特定共同事業者に賃貸借契約する。金銭出資型は、投資家が匿名組合に金銭出資を行い、その出資金により不動産特定共同事業者が不動産を取得し、自ら不動産を運用して得た収益を投資家に分配する。 不動産共同投資商品の募集額は、不動産特定共同事業法施行された1995年以降2004年までに、179件 8804億円に達しているが、そのほとんどは、金銭出資型によるもので、164件 8497億円を占めている。 (2)資産流動化法に基づく不動産証券化 資産流動化法では、資産を証券化する導管体を特定目的会社(TMK)として、規定している。TMKを用い、資産からの収益を投資家への配当に回し、資産対応証券の発行で資産取得の資金を調達しくみは特別目的会社(SPC)と同じである。しかしTMKは不動産の流動化を促進するため、他のSPCには無い様々な規定が設けられている。 TMKを用いるのは、投資家への配当前の利益への法人税の課税を回避するためである。資産流動化法では、TMKの社債の発行が1億円以上であり、利益の90%以上を配当に回すことなどの要件を満たす場合は、配当を損金とすることができる。また、所有権をTMKに移す(オフバランスする)ことで、資産価格の下落などのリスクを元の所有者(オリジネーター)からTMKに移すことも資産流動化の目的のひとつである。そのための条件としては、オリジネーターがTMKの発行する証券を買い取ることなどによってTMKの資産総額の5%を越えて保有しないこと(5%ルール)がある。5%を越える場合には、真正売買と認められず、オフバランスできないことになる。 1つのTMKが扱える資産は1件のみであり、資金の調達は有価証券のほかノンリコースローンの利用も可能である。 資産流動化法は、もともと、企業の過剰債務(有利子負債)の削減のために、本社ビルなどを流動化して、資金を調達することを主な目的として制定されたのであるが、開発型証券化と言われる新築ビルの資金調達手法としても積極的に活用されている。資産流動化法に基づいて、商業施設、マンション、オフィスなどの開発が行われている。 (3)法に基づかない不動産証券化(私募ファンドなど) 資産流動化法に基づかない不動産証券化は、導管体に有限会社や株式会社組織による特別目的会社(SPC)を使用するものである。資金調達は投資家の出資とノンリコースローンでまかなわれるが、ノンリコースローンではなく社債による場合は株式会社になる(有限会社は、社債が発行できないため)。資本出資は、匿名組合方式で行うことになる。匿名組合は、法人格もなく社団にも該当しないため、会社のように納税の義務はない。したがって、匿名組合員は税引き前の利益の配当を受けることができるのである。私募ファンドでは、情報公開などの法規制を受けないこの形態による不動産証券化が一般的である。 私募ファンドは、特定された機関投資家や富裕な投資家に出資を募り、匿名組合(SPC)をつくり、このSPCが不動産の所有権を得て、運用や開発を行うものである。通常数年で不動産を売却し、利益を分配して終了する。不動産取得資金として金利の低いノンリコースローンを組み入れることで、投資家への配当率を高めることができる。しかし、事業が破たんした際には、SPCの保有資産の売却によってまず、第一順位の銀行債権を手当てすることになる。投資家は、高配当と引き換えに、破たんの際のリスクを引き受けるのである。 7.不動産投資信託(REIT)について (1)不動産投資信託(REIT)とは 資産流動化型の不動産証券化は主に企業やプロジェクトの資金調達として活用され、発行証券は特定の機関投資家(銀行、生命保険、年金組合など)が購入する仕組みであるが、資産運用化型は多数の投資家から集めた資金で不動産を購入し、その不動産の賃料・売却益を投資家に配当する仕組みである。この仕組みには私募ファンドと公募ファンドがあることは前述した。公募ファンドは不動産投資信託(REIT)と言われ、2000年11月の「投資信託及び投資法人に関する法律」の改正によって制度化されたものである。 REITは、大手不動産会社等が設立した投資法人(不動産ファンドとも云う)が不動産を購入し、そこから入る賃料収益を投資家に配当する。投資家は投資法人が発行する投資証券(株式に相当するものであるが株式ではない)を購入する。投資証券は公募され、個人投資家も証券会社等で購入できる。投資法人は株式と同様に上場され、投資証券の価格は株式と同様にその売買によって変動する。 投資法人は特殊なペーパーカンパニーと言われており、特定目的会社(SPC)と同様に取得した不動産の資産保管、資産運用、事務等の業務は全て外部業者へ委託しなければならないことになっている。 (2)不動産投資信託の現状 REITは2001年9月に三井不動産を主要株主とする「日本ビルファンド」、三菱地所を主要株主とする「ジャパンリアルエステイト」の2銘柄が初めて上場された。始めは大手不動産を中心に設立されていったが、その後金融や商社あるいは日本たばこ等が進出し、今年になってからはダヴィンチ・アドバイザーズなど私募ファンドの運営会社によるREIT進出が目立った。2005年11月末現在では上場銘柄は26となっている。 現在上場を目指している不動産ファンドは30以上あると云われており、上場銘柄は今後もかなり増えるものと予測される。 REITの総資産は急速に増えつづけ2005年11月時点の総資産は2.7兆円である。総資産の拡大は上場REITが増えたためでもあるが、上場済みREITの不動産買い増しも活発である。未来都市総合研究所の調査によれば、2005年度上半期の大口不動産取引において不動産ファンドが買い手の6割を占めたという。第2位の建設・不動産29%の2倍である。1999年頃に登場した不動産ファンドによる大口取引が、REITが上場された翌年の2002年から急速に取引件数を増やしていった結果である。 証券市場のREITの価格(1口単位で売買される)は上場開始以来右肩上がりで上昇している。2003年から公表されている東証REIT指数は、2003年3月末を1000として2005年6月末には1790ポイントとなっている。同じ6月末時点の全銘柄平均の配当利回り(購入価格に対して)は3.4%弱である。ちなみに2005年11月17日時点のREITの価格と予想利回りは、日本ビルファンド 954,000円 3.29%、ジャパンエステイト 902,000円 3.52%、日本プライムリアルティ 322,000円 2.54%、東急リアル・エステイト 756,000円 3.54%等である。 REITは個人投資家の参入をねらいとして創設されたと言われているが、個人への認知度はまだ低い。現在のREIT総投資口数に占める投資の割合は金融機関が58.6%、個人が19.7%、その他法人が13.6%であり、金融機関の中心は地方銀行と信託銀行である。 (3)REITの問題点 前述したとおり15年ぶりの東京の地価上昇はミニバブルではないかといわれている。不動産ファンドが積極的にオフィスビルなどを購入し、地価を引き上げているとみて「ファンドによる物件取得競争がやや過熱気味」と日銀支店長会議で報告された(05.4.26朝日)。日経ビジネス誌04.11.29号では「不動産価格上昇の陰の主役がREITと私募ファンドだ」として、バブル崩壊後に60億円まで評価を下げていた渋谷のビルを120億円で購入した例や、130億円で購入した大阪梅田のビルは地元の不動産鑑定士によると「近隣相場の2倍程度の高い買い物」であたった等の例を紹介している。不動産証券化によって台頭したREIT(公募ファンド)や主に転売益をねらう私募ファンドによるビル獲得競争によってミニバブルの状況が生まれているのである。 しかし一方で、現在の状況はバブルではないという主張もある。収益還元法の考え方で評価すれば、賃料から得る純益が下降しているのに不動産価格が上昇していればバブルと言えるが、いまは不動産価格は上昇しているが賃料からの純益も上昇しているのでバブルではない。前のバブルは不動産に対する絶対的価値観ゆえに地価が暴騰したが、今は相対的価値観で地価が決まっているのでバブルではないという主張(早稲田大学教授)である。はたして収益還元法がバブルの歯止めになるのだろうか。 前述した日経ビジネス誌は、不動産の取得競争が不動産価格を吊り上げているのが現実であり、収益還元法に落とし穴があると指摘している。収益還元法は不動産の賃料から上がる年間純利益を還元利回り(投資家への予想配当率)で割り戻して不動産の評価額を算出する。すなわち次のような関係である。 年間純利益/還元利回り=不動産評価額 この式でいけば、還元利回りを低く押さえれば不動産評価額は上がることになる。いま都心と言われる地域では還元利回りを相場よりも低く設定して割高な不動産を取得するという取得競争が行なわれている。競争が過熱すれば、還元利回りが下がり不動産評価額が吊り上がるというスパイラルが繰り返されることになる。現に数年前には5%台が普通だった還元利回りが現在は3%台まで低下している。さらに最近、一部の地域では不動産価格の高騰で理論的には説明できない還元利回りが相次いで出ている(日経ビジネス誌)という。すなわち不動産価格の上昇が先にありきで還元利回りは後付けとなっているのである。これはまさにバブルの兆候ではないか。 REITの高騰が問題だ、とする指摘もある。例えば日本ビルファンドの投資1口当たりの価格(6月23日現在)が1口当たりの純資産価格に対して1.5〜1.7倍になっている。日本ビルファンドが解散した場合の資産よりもかなり高い金額を投資しているということである。もしREITが倒産すれば投資家は大きな損害を蒙ることになる。その心配が無いとはいえない。REITのしくみに日本との違いはあるが、REITの先輩国アメリカでは1970年代に多くの破綻REITが出ている。 地価の上昇は一時的なもので、マンションの供給過多や工場の海外進出などで今後も地価は下落し、それに伴って賃料も下落するとの指摘もある。そうなればREITの利回りが維持出来なくなり、REITの市場価格の下落も避けられないであろう。 資産規模はREITと同額と言われている私募ファンドは、REITと違い取得した不動産を一定期間(5〜6年程度)で転売するケースが多い。2007年は、2000年に設立された私募ファンドの満期が集中するため、不動産の大量売却が発生する。売却先として想定されているのがREITである。その時点でREITが私募ファンドの受け皿になれば問題ないが、そうでなければ不動産の相場が崩れる可能性があるとの指摘もある。 REITの人気は他の金融商品と比べて利回りがいいのと、比較的リスクが少ないところにあるといわれている。しかしそれは他の金融商品が相対的に有利になればREITが売られることでもある。前述したとおりREITの60%を保有している金融機関が一斉に売りにだしたら、個人投資家はまともに損害を蒙ることになるだろう。長期国債利回りが1.8%を越えたら警戒が必要であるという指摘もある。 以上のように、最近注目され規模を拡大しつつあるREITであるが、その前途を危惧する様々な意見があるのである。 8.小泉内閣の都市再生と不動産証券化 (1)大手ディベロッパーを利する「都市再生」 小泉内閣は自らのうたい文句にしている「構造改革」政策の重要な柱の一つとして、「都市再生」政策を推進してきた。その政策の流れと実相を追うならその実態が明らかになってくる。 2002年7月に発表された「都市再生基本方針」(閣議決定)では、都市再生の意義を次のようにいう。すなわち、@21世紀、我が国の活力の源泉である、都市の魅力と国際競争力を強める、A民間の資金やノウハウを都市に振り向け新たな需要の喚起を都市再生につなげる、B土地の流動化を通じて不良債権問題の解消に寄与する--------。 そして具体的には、内閣の都市再生本部からトップダウンで「特定の地域」(都市再生緊急整備地域)を指定して、そこでの開発プロジェクトの推進に国家的支援をおこなうというものだ。 この都市再生事業の恩恵を最も受けるのが大手の不動産会社やゼネコンであることを証明したのが、東京・大手町合同庁舎跡地を利用した「都市再生」プロジェクトだ。発端になったのは、大手町・丸の内・有楽町地区再開発計画推進協議会(会長は福澤武・三菱地所会長)が2000年7月に石原慎太郎都知事に提出した「東京の新しい都市づくりのあり方『中間のまとめ』に対する意見」だ。ここでは、「大手町合同庁舎跡地等の有効活用」として「例えば、大手町合同庁舎跡地を大規模なインフラ整備の種地として積極的に活用し、業務機能の集積に止まらず、住宅等の生活利便施設の集積に重点をおいて再開発してはどうか」と要望するのである。 そして2003年の7月に「大手町まちづくり株式会社設立発起人」(三菱地所、日本経団連、日本経済新聞などが名を連ねる)が、都市基盤整備公団(現都市再生機構)に「大手町都市再生に向けた要請事項」を提出する。「要望事項」では、@再開発地での建築物整備は、民間がおこなうことを基本にする、A合同庁舎跡地の取得に当っては、現行容積率700%を前提とした評価をもとに交渉をおこなう、B開発メリットは、事業施工者や参画地権者の貢献度に配慮し、適正に配分する ―――などだ。 要するに、都市再生機構が事業主体となっておこなう大手町の合同庁舎跡地再開発事業に民間企業が参画し、同機構が介在することによって、国有地を安く入手してもらい、そこで民間が再開発をおこない、開発利益は事業への貢献度に応じて山分けする ―――というものだ。しかも虫のいいことに、再開発事業地に移転する日本経団連会館は「新たな資金拠出なしで、日比谷通り沿いに現会館と同等の床面積が確保できる」。しかも容積率アップで生まれた床面積分として51億円もの「余剰金」を受け取るというだ。まさに“濡れ手に泡”とはこのことを指すというべきだろう。 しかもこの貴重な国有地を異例の入札なしの随意契約によって超安値で三菱地所など大手デベロッパーに売り払い、その後、土地の容積率を一気に現行の2.4倍、最高クラスの1690%まで引き上げて延べ床面積を大幅に増やし、開発する三菱地所などに大きな利益をもたらす。 一言で言えば、国有地を安く購入し、容積率を大幅にアップし、特定大企業である大手デベロッパーを利する ―――これが「都市再生」事業の本質といえる。 (2)投資ファンドが背後に こうして、小泉内閣は地方の公共事業を抑える一方、都市とりわけ東京で再開発を促した。敷地面積にたいする床面積の割合を示す容積率の緩和は、高層ビル建設とマンション建設ラッシュを招いた。バブル期を上回る勢いで高業績と経常収益を大幅に伸ばしている大企業が、オフィスビルのIT対応と耐震性能向上を急いだこともその背景にある。 しかし何よりも、それを金融面で支えたのが不動産投資信託(REIT)など不動産の証券化である。証券を小口化することによって個人投資家も呼び込み、不動産にお金を呼び込んだのだ。すでにREITの時価総額は2兆5000億円に達している。超低金利政策が続くなかで、投資対象としての不動産の魅力が高まったことも大きな要因だ。 マンション業界も同様に好調である。人口減少時代を迎えているが、非婚、晩婚化の影響で逆に世帯数が増え、定年退職を控えた団塊の世代と団塊ジュニアのマンション需要は今後も続くといわれている。三井不動産の岩沙弘道社長は「少なくともあと5年間は首都圏で年間8万戸半ばの高水準なマンション供給が続く」(「日経新聞」05.9.23)と楽観的な見方をしていた。しかしマンション設計偽装事件が発生した現在、この強気の読みも狂うことは間違いない。 マンションブームは東京など大都市だけではなく地方にも広がりつつある。専有面積が90u〜100uと比較的広く、価格は2000万円台の後半から3000万円台というマンションも供給され始めた。REITのニューシティ・レジデンス投資法人の藤田哲也執行役員は、「投資対象の物件は限られるが、全体の利回りを引き上げるうえで地方には魅力がある」と語っている。(「日経新聞」05.9.23) こうして国土交通省が発表した7月1日時点の都道府県地価(基準地価)は、東京都区部では、住宅地が0.5%、商業地は0.6%値上がりし、土地バブル崩壊以降15年ぶりの上昇に転じた。しかも都市再生事業による再開発地域の値上がりは顕著なものになった。 例えばJR名古屋駅前では、バブル並みの30%も上昇する地点も現れた。東京・銀座や青山などの都心部では、REITによる投資が活発だ。今年3月、不動産投資信託「ジャパンリアルエステイト投資法人」が、銀座中央通り沿いの商業ビルを約168億円で購入。その結果、今年の路線価は1u当たり1408万円で前年より9.1%も上昇した。 石澤卓志・みずほ証券チーフ不動産アナリストは、「銀座には大規模再開発計画が複数あり、将来の可能性を見越したバブル需要なのでは」と分析している。(「朝日新聞」05.8.2) こうして都市再生事業の進行とそれによる都市再開発の活発化の背景には、投資ファンドによる流入資金がけん引していることは明らかである。こうした結果が生んだ結末が今回のマンション設計偽装事件にあるのではないか。私たちは今一度、都市のありかたとそこで働き、生活する人々の視点で都市再生事業を考える必要性を迫られている。 9.外資系ファンドの活躍 1990年代後半、日本経済はバブル崩壊に伴う金融危機から不良債権が増大した。この急増した不良債権を格好の事業機会ととらえた外資系ファンドが多数参入した。不良債権(企業や不動産)を低額で買収し、再生・転売して高い利ざやを稼ぐイメ−ジから、当初、外資は「ハゲタカファンド」と言われた。不良債権処理が収束に向いつつある現在、転売による荒稼ぎの機会は減少した。次の獲物を求めて日本を離れるかに見えた外資系ファンドは、日本に踏みとどまり、日本の収益不動産市場に長期で構えるスタンスに転換した。その理由は、不動産証券化により日本の不動産への投資環境が整ってきたことと同時に次のような理由による。 イ.不動産の市場規模が大きい。特に、東京はニュ−ヨ−ク、パリ、ロンドンに匹敵する有数な都市であると同時に不動産価格の値下がりで利回り上魅力が増した。 ロ.世界規模で有望な投資先を探している外資にとって、日本は不動産市場への資本不足で「買い」のチャンスである。 ハ.市場が政治・経済的に安定している。 ニ.日本での調達金利と賃料等のイ−ルドギャップ(長期金利と不動産利回りの格差)がまだま だ大きい。 外資系企業の参入例には以下のようなものがある。 ラサール インベストメント マネジメントは世界最大の不動産投資運用会社で運用資産残高は240億ドルに上がる。日本には2001年から本格的に進出を始め、オフィス、賃貸マンションを始め、千葉県船橋、北海道千歳・札幌などの大型商業施設に投資している。2004年には物流施設に特化した「ラサール日本ロジスティックファンド」を立ち上げ、今後2年間で1500億円の投資を予定している。またそれ以外のファンドでも日本国内で毎年1000億円規模の投資を目標にしているという。 カーライル・グループは米国の老舗の投資ファンドであり、世界レベルで24のファンドを運用し、その規模は2兆円である。2004年にさいたま市の「大宮センタービル」を買収して日本の不動産投資に参入した。早急に1000億円規模の達成を目指している。 コロニー・キャピタルは年金や大学の資金、機関投資家の資金を調達する米国の不動産ファンドである。1997年に日本へ進出し福岡のホークスタウン(福岡ドーム・シーホークホテルアンドリゾート)を買収している。日本での投資規模は4000億円になるという。 キャピタルランド・ジャパンはシンガポール政府系の不動産会社である。2000年に日本への不動産投資を開始し、三菱地所と組んで住宅開発などを行っている。傘下の「キャピタルテール ジャパンファンド」では、日本の主要都市の商業施設に1000億円の投資を行なう予定である。 外資系企業はREITへも進出している。ニューシティ・レジデンス投資法人は住宅特化の銘柄として2004年12月に上場した。シービー・リチャード・エリス・インベスターズという米国を中心に世界48カ国で不動産関連の事業を行なう大手企業及び他の米国企業が株主となって設立したREITである。2005年11月現在の資産総額は678億円である。 現在の不動産ブームは、アメリカなどで経験を積んだ外資系不動産企業が、不動産市場の開放を機に日本へ進出し、不動産流動化を牽引した結果である。かつてハゲタカと呼ばれた外資は、今ではしっかり日本市場に根を下ろし、今後も日本の不動産証券化・流動化ビジネスを先導していくであろう。 10.大手ディベロッパーと不動産証券化 大手ディベロッパーによる不動産証券化の取り組みは三井不動産が先進的である。2004年3月の日経ビジネス誌は、三井不動産が「土地を持たない経営」という新しい経営モデルの構築に大きく舵を切った、と報告している。不動産会社にとってビルによる収益機会は賃料だけではない。不動産の保守管理、家賃回収、入居者確保、収益性や資産価値の向上対策、金融資産管理など資産全体の管理を行なうアセットネジメント、不動産の建築的評価、市場価値や収益性、法的権利関係の調査を行なうデューデリジェンス、などの手数料収入と云われる収益機会がある。莫大な資金のかかる不動産取得は証券化の手法を活用して他の出資者との共同取得とし、不動産会社として蓄えたノウハウを活かした手数料収入の分野で稼ぐ。これが三井不動産の資産を持たずに稼ぐ経営モデルである。 三井不動産は1999年に米大手保険グループのAIGを共同出資者として新日鉱ビル(東京都港区)を取得した。三井不動産が不動産の証券化を手がけた始まりであった。その後銀座並木ビル、大川端リバーシティ21(賃貸マンション)、銀座アイタワー(事務所・住宅)などを対象物件とした私募型ファンドを立ち上げている。また六本木防衛庁跡地再開発では開発型証券化手法を活用して1000億円程度を機関投資家から調達する予定である。不動産の取得に当たって、社外の共同出資者が投じる金額のことを三井不動産は預かり資産と呼び、2008年を見据えた経営計画では預かり資産を3兆円と見込んでいる。 住友不動産も不動産証券化には積極的だ。負債が多く資金調達がままならない状態にあった住友不動産は証券化手法として活用して資金調達を図り業績好転に結びつけたという。 三菱地所は1998年に戸数約1000戸、分譲総額970億円の超高層分譲マンション2棟(東京・汐留)に開発型証券化を採用した。その後大崎一丁目ビルでも開発型証券化を活用している。今後は私募型ファンドにも進出する意欲を見せている。 森ビルの六本木ヒルズでは総額2863億円のうち建設段階で1700億円を証券化手法で調達している。また多額の有利子負債を抱える森ビルは、自社が保有するビルをファンドに売却し、建設したビルの投下資金を回収して新たな開発にその資金を廻すため、その受け皿となる私募ファンド「森ビル・アーバンファンド」を立ち上げた。 その他野村不動産、東京建物、東急不動産、藤和不動産など大手ディベロッパーは不動産証券化による資金調達を積極的採用してきている。 大手ディベロッパーはREITへの進出にも積極的である。前述したようにREITを最初に上場したのは三井不動産と三菱地所である。2005年11月17日現在で三井不動産を母体とする「日本ビルファンド」の資産総額は4,032億円でトップ、三菱地所が母体の「ジャパンリアルエステイト」は3,115億円で第2位である。不動産会社を主要株主とするREITは以下のとおりである。 会社名 主要株主 ・日本ビルファンド 三井不動産、住友生命 ・ジャパンリアルエステイト 三菱地所、東京海上、第一生命 ・日本プライムリアルティ 東京建物、明治安田生命 ・東急リアル・エステート 東急不動産、東急電鉄 ・野村不動産オフィスファンド 野村不動産 ・森トラスト総合リート 森トラスト・アセット・マネジメント ・クレッシェンド 平和不動産 ・福岡リート 福岡地所 住友不動産は「REITを運営してそこに自社の高収益物件を入れるより、利回りの低いものを他社のREITに売却した方が、平均利回りが高まり有利だ」(2005年2月日経ビジネス誌)としてREIT進出には消極的であった。しかし2005年以降には上場する予定となっている。 大手ディベロッパーの事業全体から見ればまだまだ保有不動産による賃料が主要な事業収入である。しかしバブルの崩壊で受けた多大な損失を教訓とし、リスク分散ができる証券化をいち早く取り入れたのが大手ディベロッパーであった。、開発型証券化によるプロジェクトの開発、開発物件の売却先としての私募ファンドの立ち上げと開発投下資金の早期回収、さらに私募ファンドからREITへの売却などディベロッパーの取り組みから様々な構図が見えてくる。不動産証券化は大手ディベロッパーの「所有する経営」から「持たない経営」へと経営戦略の大きな転換を生み出している。 11.大手ゼネコンと不動産証券化 大手ゼネコンは開発型の不動産証券化を有望分野ととらえ、積極的に取り組んでいる。大手ゼネコンとって開発型証券化は、単独で行なうよりも少ない資金で開発事業を進め、新築工事の増加につなげることが出来るのである。しかし開発型証券化は、これから建設される物件に投資家を募り資金を調達する仕組みであり、投資家にとってはまだ存在しない物件への投資となり、リスクが高い投資である。従来は証券化の対象としては考えられていなかったのであるが、1999年頃より事例が見られるようになり、その後急速に実績を増やしている。 鹿島は早い時期から証券化に取り組んでいる。2000年12月、港区に総事業費は100億円の分譲マンション・オフィス2棟の開発を証券化手法を採用して着手した。その後2002年に「秋葉原再開発」、2004年の「虎4計画」など大規模開発を含む開発型証券化を積極的に推進している。 清水建設は不動産事業の新たな展開手法として不動産の証券化に本格的に取り組むために、2002年4月投資開発本部を設置した。2004年9月現在で「豊洲ISTビル」「ホテル・ユニバーサルポート」など7件、総事業費1200億円のプロジェクトで開発型証券化手法を活用している。投資開発本部長は、10年後に清水建設全体の利益の半分を担うようになりたいと抱負を語っている。 大成建設も東京・汐留に総事業費200億円のオフィスビルと賃貸住宅の開発を証券化を活用して進めている。2005年度には都心で3件程度の開発事業を立ち上げる計画である。 大林組の浦和駅東口駅前の再開発事業、竹中工務店の赤坂2丁目プロジェクトなど、大手ゼネコン各社はこぞって開発型証券化による大規模開発を進めている。 大手ゼネコンは不動産ファンドにも進出している。鹿島は2005年2月にゼネコンとして始めて私募型の不動産投資ファンド「鹿島不動産ファンド」を立ち上げた。鹿島が開発事業として手がけた稼動中の賃貸オフィス4棟を対象とした290億円規模の投資ファンドである。鹿島は不動産ファンドを立ち上げた意義を「不動産証券化商品に対する投資家ニーズを取り込むとともに、アセットマネジメント業務をファンドから受託することなどにより、新たなビジネスの機会を生み出しつつ市場競争力を高めていくこと、さらには、開発プロジェクトの出口として、従来からの個別売却という方法に加え新たな可能性をつくることにあります」と述べている。鹿島は時期は未定だが、REITへの進出も予定している。すなわち鹿島の戦略は、開発型証券化で開発したプロジェクトを、完成後に不動産ファンドに売却し、不動産ファンド事業で賃料収入のほか不動産の運営・管理手数料を得、さらにはREITへの売却も視野に入れると言うことであろう。 REITのひとつ日本プライムリアルティ投資法人に出資している大成建設は、「(出資を通じて)関連する多くのノウハウを吸収できた」と延べ、新たな投資ファンドへの進出意欲を見せている。 不動産証券化はゼネコンにとっても有望分野として期待され、バブル崩壊以後鳴りを潜めていた不動産開発をゼネコンが再開するきっかけとなっている。2004年10月に建設経済研究所が実施したゼネコンの大手43社、中堅16社のアンケートでは、3割の企業が今後不動産開発に証券化手法を活用したいと回答している。しかし証券化手法を活用したとしても開発には資金力が必要であり、今後も大手ゼネコン中心に開発が進行していくことは間違いない。 12.まとめ 小泉内閣は構造改革の名の下でいわゆる新自由主義経済への全面的な移行を図ろうとしている。金融システムについては日本に定着していた間接金融をアメリカ型の直接金融へ転換することを目指している。銀行を経由して企業に貸し付けられていた資金を、様々な金融商品を介して企業が投資家から直接調達する方法である。不動産の証券化はその典型ともいえる金融商品である。 いま不動産証券化が呼び水となって一部地域で地価が高騰し「ミニバブル」「ファンドバブル」の時代だと言われている。もし第2のバブル崩壊が起これば、不動産証券に投資された個人資産や年金基金が大きな被害をこうむることになる。もちろん日本経済にも打撃となるだろう。それを起こさないために情報公開が不可欠だとも言われている。確かに不特定多数からの投資を募る不動産投資信託は情報公開の範囲が株式会社などよりも拡大されている。しかし投資家に不利な情報が確実に公開されるという保証はない。企業が公開する情報は企業の利益が優先すると考えるのが自然である。 金融システムを直接金融から間接金融への転換することは、金融機関が負っていたリスクを投資家に転化することである。すなわち直接金融を担う金融商品は元本の保証されない投機的商品である。郵政民営化を含め、小泉内閣の進める金融改革とは国民の預貯金をリスクにさらすことに他ならない。不動産の証券化も投機的金融商品である。投機的商品は「いずれ誰かがババをつかむ」危険があるのである。 |