建設政策研究所 編
自治体研究社
2002年12月発行
定価 1,800円(税別、送料別)
ISBN 9784880373720
PFI事業は、建設物のみを発注する従来の公共事業の場合と異なり、「企画」から建物の「設計」、「建設」、「維持管理」、さらに「運営」、「資金調達」 に至るまで、長期にわたる公共事業の全体を民間営利業者が担うものです。公共事業改革の本命として巷で注目され、計画が目白押しとなっています。
建設政策研究所は、PFIが日本に導入され始めた当初から問題点を指摘し、警鐘をならしてきました。前書『「日本版」PFIを問う』 (自治体研究社、2000年)では、PFI法やガイドラインに含まれている問題点が詳しく述べられています。
前書出版以降、PFI事業が各地、各分野で実施に移される中で、地方議員や住民団体から具体的対応等についてのさまざまな相談が研究所に持ちこまれ、個々のPFI事業の実施過程の検討がはじまりました。本書の出版にあたって、廃棄物処理事業、教育施設、医療事業というPFIの主要な分野毎に事例検討を深めて纏めたものです。
本書での具体的事例の検討から明らかになったことは、PFI事業の導入にともない当初の計画が大きく変更され、事業の性格が一変する場合が見られるということです。例えば、東京都の青年の家を統合してつくられようとしている区部ユースプラザは、PFI事業化に伴い研修施設中心の当初計画が、宿泊施設中心の計画へと変更されました。収益確保のために教百施設がホテル施設へと変質させられたものです。また、倉敷市の廃棄物処理施設は、産業廃棄物処理を含む計画として、巨大な処理能力を持つ施設となりました。PFI促進法などに規定されている透明性、公平性などの原則に反する状況が計画段階から生じているのです。落札業者との癒着も従来の公共事業に優るとも劣らないものです。
以下に本書の目次を掲げておきます。
民間営利業者が公共事業を担うというPFI事業の基本的な性格から、公共事業の内容が歪められる危険性は大きく、小泉構造改革の下、各地・各分野で PFI事業の展開される中、市民、住民、また労働組合による監視と事業内容改善の取り組みが待たれています。本章が、PFI事業を分析し、検討していく上で、不可欠のものとして、広く読者の参考となることを希望しています。(『建設政策』第87号、2003年1月、p.44.)
第1部 日本版PFIの特質と問題点
第1章 日本版PFIの概要
第2章 PFIの動向
第3章 日本版PFIのねらいと問題点
第2部 事例検証日本版PFI
第4章 PFIによる廃棄物処理事業
第5章 教育施設のPFI
第6章 医療におけるPFI事業の問題点